便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア   作:マスターBT

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アウトローは従わない

「……やってくれたわねカヤ」

 

 キヴォトスで銃器の制限が発令されてから既に一週間、当然の展開ではあるのだけど便利屋として荒事が大きな収入源になっていた私達の懐はどんどん涼しいものになってしまっている。

 何が最悪ってカヤが敷いた監視網を掻い潜って依頼をくれる人達も居たんだけど、少しでも規模の大きい争いを起こせば即座に最新鋭の装備を取り揃えたヴァルキューレが派遣されてきてどうにか逃げ帰ってきても依頼主が捕まり報酬が支払われないのよ。

 それを何度か繰り返している内に依頼をくれる人も殆ど居なくなってしまったし、はっきり言って便利屋稼業を畳むかどうかの選択を迫られている。

 

「あの防衛室長がこんな手を打ってくるなんて。どうするの社長」

 

「便利屋辞めないよねアルちゃん!だって此処は鷹さんが帰ってくる場所だもん!」

 

「お、思い出も沢山あります……叶うなら出て行きたくありません」

 

 状況が状況なだけに思い出ばかりに浸っていたみんなも動いてくれているけど、日を追う毎に状況は悪くなっている。

 苦しい……泣き言の一つぐらい吐きたい……けど!!

 

「ふぅ……大丈夫よ。便利屋68の看板を下ろすことはないから安心して」

 

 社長の私がそんな情けない姿を見せられないし、何より便利屋68はセラが帰ってくる場所なのだからたかが財政難と仕事の目処が全く立たない程度なんの問題もないわ。

 それに恐らくだけどそろそろカヤが敷いた政治の亀裂が起きる頃合いでしょうしね。

 

「……社長。策があるって感じだね。良ければ聞かせて欲しいんだけど」

 

「良いわカヨコ課長。先ず、貴女も予想出来ているとは思うけど今のキヴォトスは一見すると平和な分、裏ではとんでもない爆弾が眠っている状態よ。先が見えないのか我慢出来ない一部が馬鹿な事をしたけど、それでもあまりある爆弾が点火の時を待っている」

 

「爆弾ですか?」

 

「そうよハルカ。当然の事だけど、今までの自由が奪われればその分の不満が募っていくわ。元々、キヴォトスには日常茶飯事に起きていた銃撃事件や爆破テロがあの政策が発表され、FOX小隊や最新鋭の装備に身を包んだヴァルキューレによって次々と鎮圧されていった結果、今ではとても静かになってしまっている」

 

 先生がいるD.U.地区は治安が良いけど、他の場所ならセラが車を出す時に銃弾が飛んでくるからと荒い運転になったりするのが当たり前だったのに今では銃声一つ聞こえない静かな街並みになってしまっている。

 平和なのは良い事だけど、はっきり言ってこれはキヴォトスじゃあ異常事態にも等しい。

 

「そりゃそうよね。表立って武器を振り回せば自由を奪われ、捕まってしまう。じゃあ、どうするか……分かる?」

 

「えっと、私達が今している様に隠れ潜むでしょうか」

 

「正解よ。確かに表は静かになった……けど、それは全てのアウトローが捕まったのと同義じゃない。私達の様に隠れ潜んだアウトロー達は必ず次の一手を打つわ。だって、今まで当たり前にあった自由を簡単に手放せる訳ないもの」

 

 みんなの視線が私に向いているのを確信してから、机の引き出しから何枚かの手紙を取り出し机の上に並べる。

 紙の種類も書かれている文字も、差出人すら違う見事にバラバラな手紙達はしかし、不思議なことに書かれている内容は全て同じもの。

 ふふっ、正直、これらの手紙を受け取った時、私の胸の内はワクワクが止まらなかったわ。

 

「『連邦生徒会を討つ。数々の功績を持つ便利屋68はこれに協力して欲しい』……アルちゃん、これって」

 

「何も不思議な話じゃないわよムツキ室長。私達、便利屋68は表にも裏にも名が売れているしセラのお陰で取引がある組織も多い。今回みたいな非常時が起きればこの手の召集の一つや二ついえ、もっとたくさんくるものよ」

 

 戦う事を生業にしつつも、理性的な組織がより集まった『反連邦生徒会』連合の数を正式には把握していないけど、ケイに頼んでおいたから数日中にはこの連合の全貌も見えてくるでしょう。

 ただ一つ、セラの影響を強く受けているあのカヤがこの事態を予想していないとは到底、思えずアウトロー達が集まる事にワクワクしている私だけどこの展開全てが彼女の計画に組み込まれている可能性が脳裏から離れないのが凄く嫌な感じなのよね。

 

「……社長。全部仕組まれていたらどうする?」

 

「その線は私も考えたわ。でも、此処で様子見をして戦力が減ればもっと苦しくなる……嫌な感じだけど、私達が私達らしく居るにはやるしかないのよ」

 

「まぁ、そうなるよね。打ち合わせは社長が?」

 

「えぇ。任せてちょうだい」

 

「えー?アルちゃん大丈夫?難しい話にちゃんとついていけるぅ?」

 

「大丈夫よ!!これでもセラと一緒に勉強したんだから!!」

 

 全くもうムツキはすぐに私を揶揄ってくるんだから!!……でもまぁ、揶揄ってくるだけの元気は戻ってきてるみたいね。

 カヨコも今は意識を切り替える時って感じの顔付きになってるし、ハルカもちょっと早いけど戦意を昂らせているし。

 やっぱりやる事があるって云うのは良いわね、暗い考えを振り払えるもの。

 

「はいっ!じゃあ、難しい話は一旦終わり!!みんなで柴関ラーメンでも食べに行きましょうか」

 

「え、いや良いの?色々と詰める事が」

 

「良いの良いの!!それに貴女達、ここ最近、暗い顔してばっかりで碌な食事してないでしょ。駄目よ。何をするにもエネルギーは使うんだからちゃんと食べないと」

 

 自分の席に戻って戦力分析を始めようとしていたカヨコの背中を押しながら、ムツキの手を引っ張りハルカに来なさいと命じて事務所を出る。

 雲一つない晴天に一瞬、目をやられたけどみんなを連れて柴関ラーメンへと軽い雑談をしながら向かった。

 

 

 みんなで食べる柴崎ラーメンはとても美味しかったし、自然と笑顔を浮かべる事が出来たわ……だから、早くあなたも帰って来なさいよセラ。




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