便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア 作:マスターBT
「ふむ。相手の行動に纏まりがありますね。旗印となって動くのならアルだと思っていましたが、予想していた場所に居ないとなると向こうに優れた軍師があの人以外にも居たということですか」
事前に避難する様に一般市民の方々には通達しておいたお陰で、今この瞬間は恐らくこのサンクトゥムタワー周辺がキヴォトスで最も静かな場所でしょうね。
まぁ、分かりやすく配置したカイザーの方々が騒がしいので静謐とは言い難いのですが。
「狐からの報告では彼方もそれなりの数を揃えて向かって来ていると。カイザーからの報告が無いと言う事は未だ、彼らの索敵範囲には入っていない様ですね」
彼らよりFOX小隊の皆さんを前線に出しているのですから当然と言えば当然ですけど、何のための最新鋭装備なのか頭痛がしてくる。
「……誰かに指揮されているとしても所詮は烏合の衆。こちらが先手を確保すれば」
勝ちの目が拾える──そう続けようとした瞬間、凄まじい爆音と共に此処、連邦生徒会室までもが揺れる衝撃が訪れる。
ああもう!!この珈琲高いのにまだ一口しか口を付けてないじゃないですか!!
「カヤ代行!!」
「カイザーの方々は何をしていたんですか?此方が攻撃を加えるより早く、敵の砲撃が撃ち込まれるなんて」
「そ、それが……」
白い連邦生徒会の制服を着ている者なら兎も角、私と同じ黒い連邦生徒会の制服を着る者が言い淀む事態ですか。
「……サンクトゥムタワーを守る第一陣、最も外縁であるエリアを担当していたカイザーの部隊は先程の一撃で戦闘不能状態となりました!!そして、そのすぐ後に観測された結果から敵が放ったのはたった一発の銃弾です!!」
「はい?」
此処から最も遠い外縁エリアに着弾した一発の銃弾が起こした爆発があの揺れを起こした?
どれだけ離れていると思っているんですか?此処から一キロは先です!!戦車の砲撃や、ミレニアム製の爆薬なら兎も角、ただの銃弾で……
そこまで考えて私の脳裏に一人のワインレッドの髪が似合う人が思い浮かぶ。
「報告!!敵の狙撃は此処から二キロ離れた場所です!!」
思わず、ダンっと机を叩き、腹の底から叫びました。
「やってくれましたね!!アル!!」
折角、治安が良くなって保全事業費を浮かせられると思っていたのに!!
『ほむ。聞いていた通り……いえ、それ以上の実力ですねアルさん』
「……今の私は梟よ。ニヤニヤ教授」
以前、身に付けた時以来だから上手く狙撃出来るか心配だったけど、流石は私ね。
ちょっと視界が悪い程度なら問題なく狙い撃つ事が出来たわ。
『そうでしたね。しかし、これで敵の陣形には穴が空きましたから突入部隊も多少は気が楽でしょう』
「そうとは限らないわよ。カヤが彼女に影響されたのなら、最も外側にはどうでも良い連中を置くもの。敵を足止め出来れば良し、駄目なら駄目でどうせ元から失う予定のもの。まぁ、せいぜい私のせいで大きな穴が空いた道路の修理費に頭を悩ませてるって感じかしら?」
確かに私の神秘は爆発に秀でているから、敵の陣形を跡形もなく崩すのに向いているから此方の無駄遣いを避ける事は出来たでしょうね。
けど、向こうが初めからそのつもりなら吹き飛ばしたカイザーの後ろに控えているのはカヤの信頼を勝ち得た強者がいる部隊。
『……梟の考えがあっていた様ですね。たった今、突入した部隊からの悲鳴混じりの報告が入りました。どうやら妙に手強いロボット市民と、装備が潤沢なヴァルキューレによって此方の突入部隊は半数がやられた様です』
「でしょうね」
『ふふっ。楽しくなってきました。新たな変数を加味した結果、貴女達の出番が早くなりますが構いませんね?』
「良いわよ」
今後の事も考えて一応、仮面で正体は隠しているし元々私達はじっとしてるのは得意じゃないからね。
『ではお願いします。ヴァルキューレ及び、マフィア組織を壊滅させてきてください』
あー、これは全てが終わってからカヤに恨まれそうね……まぁ、その時はその時としましょうか。
耳に着けている小型通信機の周波数を皆のモノへと合わせる。
「ニヤニヤ教授から話は聞いてるわね?」
『おっけー!ハルカちゃんと一緒に暴れてくれば良い?』
『アル様、私頑張ります!!』
『社長……良いの?これ割と捨て駒扱いだけど』
「頼んだわよムツキ、ハルカ。大丈夫よカヨコ、むしろカヤの本命を相手しなくて済むから助かるわ。それにサンクトゥムタワーの近くで戦ってる方がどさくさに紛れて鳥籠を開けられるでしょ?」
『なるほど。そっちが目的ってわけ』
私の意図を汲んでくれたカヨコの返事を聞きながら、セラが作った私と相性の良い弾をリロードする。
あっちはムツキ達が大暴れしているから、反対側のヴァルキューレが持ってきた戦車部隊を潰すとしましょうか。
「お仕事中にごめんなさいね?」
引き金を引き、狙い通りに飛んでいった弾丸が戦車部隊を一纏めに粉砕するのを眺めて、リロード。
この銃弾、私が神秘を込める都合上、上手い事連射するのには向いてないのよね。
『ケイです。其方にヘリが一台接近しています』
「ん。了解」
今回、私達のオペレーターを引き受けてくれたケイの警告を聞き狙いを空へと向け……ん?なんかすっごいスピードで来てるんですけど!?
「ちょ、ビルに突っ込むつもり!?」
私を放置すれば厄介だって潰すにしてももう少しやり方ってものがあるでしょ!?
リロードは済ましたけど、あの速度で突っ込んでこられると上手くやっても破片が私に……というか乗ってる子だって危ないわよ!!
「見つけたぞ!!!」
「ひぃぃぃ!!……あっ」
操縦席の人が凄い怖い顔をしたからつい、反射的に撃っちゃった!?
「って、嘘でしょぉぉぉ!?」
何かのアクロバット飛行!?
上下がひっくり返って、私の弾丸を避けるとか全く予想してない……というか危ない危ない!?
「ヴァルキューレ公安局だ。大人しくしろ!!」
「ヘリから飛び降りて来たぁぁぁぁ!?!?」
「ちょ、姉御!!無茶振りしないで!!」
ヴァルキューレに配備されている盾で上から押し付けようとしてくる人を、飛び起きながら避けて通常弾で狙ったけど落下の衝撃なんてなかったみたいに盾を放り投げて来た事で私の銃弾が当たり、狙いが逸れる。
「くっ!」
「接近戦ならば此方が有利!!」
腰の拳銃を引き抜き構えるのが素早く、無駄がない。
リロード……いや、向こうが接近して私を撃ち抜くほうが速い、なら!!
「せいっ!!」
「っっ!!」
不意を突いたつもりだったけど、上手く上半身を逸らす事で銃床部分での突き出しは避けられたわね。
でも、避けてくれたから一度距離を取る事が出来る。
「狭い屋上でどれだけ距離を取り続けられるか見ものだな」
「ふふっ。ダンスのパートナーとしては申し分ないわね狂犬さん」
「……む?その仮面、もしかしてあの時の!!」
流石はヴァルキューレの狂犬、尾刃カンナ……しっかりと私達が暴れた事を覚えている様ね……どうしよう。
感想やここ好き待ってるぜ!!