便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア 作:マスターBT
「さて盤面を改めて整理しようか。我々、大魔王連合の戦力は相手側と比べて精々一割に達していれば御の字というレベルのものだ。質が高いお陰で撃墜を免れてはいるが、何かしらの手を打たねば刻限までに我々は撃墜される、そんな未来を見た」
“キヴォトスの全戦力を敵に回して即座に落ちない時点で十分なんだけどね……”
「その場合は『先生』の今後は何も確約出来ないが……ふむ、そうかそうか。それがご希望なら今すぐに”わぁ!!ごめん!!ごめん!!”──ククッ」
やはり揶揄い甲斐があって楽しいな『先生』は。
まぁ、事実『先生』が言っている事も何も間違ってはいない。こうして呑気に話をしているが、ヘリの何かに捕まっていなければ立ち続けるのが難しい程の荒い運転で飛び交う弾幕を潜り抜けているケイの運転技術と──
「ッッ!!アル社長!!来ますよ!!」
「任せてケイ!!」
──規格外な神秘から呼び出される隕石を撃ち抜くアル社長の力量がなければ、我々はこの時点で容易く堕とされているのだから。
そういう意味では彼女が駆け付けと同時にヒナ風紀委員長を乗せたヘリを撃墜してくれているのも大きいな。
「極めて優秀な人員で成り立っている均衡だが、時間をかける程に敵の勢力は勢いを増していく。あくまで我々は各校の先遣隊をどうにか退けているに過ぎん」
“……気になってたんだけど右目、キラキラしてるよね?”
「ん?あぁ。なに、私も無駄に放浪をしていた訳ではないという事さ。今までも行なっていた未来視を負担なく行える程度には神秘も使い熟している」
同時に色彩の力由来でもあるが……まぁ、今はこれを言う必要はないだろう。
「っと……流石は混沌のゲヘナ。手段を選ばないのは得意だな」
私が進む進路を読み解いたのはあの、羽沼 マコト議長か。
右目が見せる未来にはこのまま、誘導されるがままヘリを飛ばしていると低空になった瞬間に虎丸の砲撃と対空兵器の展開される光景が映し出されている。
「短い時間でよく陣地を構築したものだな。だが、あいにくと我々はそういったものを突き崩すのは得意でな──そうだろう?便利屋諸君」
ゲヘナの完成された陣地。
そこに鎮座された砲は真っ直ぐと自分達に向かってくる我々に向けられている。
『くふふっ!!お帰りの花火には少し小さいかな!!』
『ゲヘナの小隊潰してるけどね……まぁ、でもそうかも』
『爆弾の設置終わりました!!いつでもいけますアル様!!セラさん!!』
あぁ……久しぶりに聞いたせいか勝手に口角が上がってしまうな。
「私が合図を送っても良いかなアル社長」
「もちろんよ。むしろ、こんな面白い大役を貴女が私に任せる訳?」
「ククッ!!それもそうだな!!では、便利屋諸君よ。派手な爆発を奏でたまえ!!!!!」
パチンっと指を鳴らした瞬間、轟音と共に爆煙が立ち昇りゲヘナの陣地が粉々に破壊される。
視界の端に吹き飛んでいくアフロ頭が見えた気がするが、私の予想通りの人物であれば放置しても逞しい生命力で立ち上がるだろうから無視するとしよう。
「あぁもぅ!!貴女達はいつも派手ですね!!この煙幕の中を通り抜けなきゃいけない私の身にもなってください」
「君なら何も問題あるまい?」
「そうですけどッッ!!」
全く、悲鳴をあげるのなら煙幕の中でもきっちりと障害物を避けて見事な飛行を続けている自分の腕前を憎むんだなケイ。
「さて……次は……ほぅ。子兎か」
あの演説の時、凄い目で私を見ていたから大人しくしているとは思わなかったが、此方に与する訳ではなく自らの手で『先生』を奪いに来たか。
「『先生』は私のものです……!!」
「別にお前のものじゃないからな?」
向こうのヘリは特殊任務にも耐えられるように調整された完全に軍用仕様のもの。
対し、我々が乗っているのはあくまでミレニアムの移動用に使われるもので護衛程度の機銃はあるが彼方の装甲を抜ける程の立派なものは着いていない。
「鴉に告げる。厄介な狐諸共、兎を啄め」
さぁ、久しぶりの運用だが鈍っていない事を証明するが良いレイヴン。
「はっ!!アタシらが狐と遊んでる事までお見通しかよ。たくっ、何処まで目が広いんだ旦那は!!」
「ぐっ!!」
押されている……!!
彼女らの技量を舐めていた訳ではないが、一度は同じ手勢で確保まで持ち込めた筈なのにどうして私達が負けそうになっているんだ!?
「悪りぃな。旦那に呼ばれた以上、もう此処で遊んでる暇はないんだ狐の」
「このッッ舐めるな!!」
「──舐めてねぇよ。あの時も今も。理想に裏切られた奴が真っ当に再起するって強さをアタシは持てなかったからな」
至近距離で放った弾幕が右に左と踊るようなステップで避けられ、それならばと引き抜いたナイフもコースが完全にバレているのか指の隙間を通して止められる。
「だが、この首輪を預けた奴が呼んでるんだ。飛ばない訳にはいかねぇだろ?アタシらは『首輪付き』──あの人に命を捧げてるからな」
私の首を掴みながら、彼女──レイヴン9はビルの窓を私で割り、勢いのまま飛び出す。
このまま地面に叩きつけるつもりかと思った瞬間、彼女の黒と白が入り混じった羽根が大きく広げられて私を掴んだまま、上へと飛び上がった。
「なっ──!?」
キヴォトスには確かに羽根が生えている生徒もいるが、あくまで飾りで実際に飛ぶような機能はなかった筈……いや、そう言えばレイヴン9は変わった道具を使っていたな──ワイヤーが取り付けられた銃を。
「アタシに続けレイヴン共!!」
レイヴン9の指示に応えるようにビルの彼方此方から、服装こそ黒で統一されているものの様々な姿をした生徒達が飛び出し、彼女を追うように空へと飛び出す。
ワイヤーを使う者、足場を見つけて次から次へと飛び移る者、パルクールの要領で移動する者、バイクで追いかける者……彼女達は各々の手段で動き、統一感など全くないのに私の目には彼女らがこう見えた。
一匹の大きな鴉に。
「9!!どうやら旦那さんの敵は随分と硬そうだぞ」
「お前のご自慢の狙撃銃なら運転手だけ狙えるだろ4」
「……ふむ。確かに出来るが、その後はどうする?」
「決まってるだろ。奪うんだよ」
なっ!?あのヘリは確か後輩の──させて、たまるか!!
「っと暴れんなよ。折角、可愛い後輩に届けやるんだから楽しめって」
ぐっ、こう首を締め付けられては苦しくて抵抗が……そうこうしているうちに後輩達が乗るヘリがかなり近づく。
「レイヴン4!!」
「分かっている──外しはしない」
後方のビルの屋上。
偶然見えたその場所には、大きな対戦車ライフルを構えた者が居て何処か狼を連想させる髪型の彼女は見事な狙撃姿勢を取ると引き金を引いた。
「に、げ!!」
聞こえる訳もない警告をかき消すように彼女が放った弾丸は操縦している後輩──モエの額にクリティカルヒットし、昏倒させる。
「モエ!?」
「──お届け物だぜ兎諸君」
狙撃によってひび割れたガラスを私で撃ち破りながら、ヘリへと乗り込んだレイヴン9は獰猛な笑顔を浮かべて宣言する。
「このヘリはアタシが貰う。安心しろ、怪我なく降ろしてやるから」
……私の額に銃口を押し付けながら言っても説得力がないと思うんだが……
感想やここ好き待ってるぜ。
ケイチャンカワイイヤッター