便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア   作:マスターBT

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駄作の香りがしてきたな……まぁ、私には関係のない事だ。

 アビドス対策委員会と便利屋68の奇妙な対ゲヘナ風紀委員会同盟との戦いは、彼女達を指揮する者達──即ち、シャーレの先生、バイステンダー、天雨アコの戦いでもあり、この三人の指揮官の戦いは、二人の大人による優勢を示していた。

 

“シロコ、ドローンを展開しセリカの支援。ノノミは、便利屋に迫る左舷へと一斉掃射”

 

「ムツキ室長はいつものを。着弾を合図にハルカさんは、敵へと突貫。アル社長は、敵軍後方の投擲弾をピンポイントで狙撃、カヨコ課長は敵軍を混乱させてくれ」

 

 事前の打ち合わせなど一切していないというのに、大人二人の指示は見事に噛み合っており、異なる指揮官からの指示だというのにまるで、同一の指揮官から指示されている様な連携をアビドス対策委員会と便利屋68の面々は見せていく。

 彼らの指示により、風紀委員会の軍隊に大きな穴が生じるが、そこは数に勝る風紀委員会だけあって即座に埋まり、弾幕による牽制が開始される。

 

『第三、第五部隊はそのまま弾幕を張りつつ前進し、敵が頭を下げた所にイオリを筆頭に雪崩れ込んでください』

 

 押されるばかりにはいかないとアコの指示により、風紀委員会の弾幕密度が上がり、流れ弾であっても致命傷になり得る大人二人による戦場の目視を封じるが、シッテムの箱により護られリアルタイムで戦場の状況が伝えられる『先生』と、目を作り出し自身は防弾仕様に改造してある車という、安全圏から戦場を見下ろすバイステンダーにとっては残念だがその行為に意味はない。

 

“シロコ”

 

「ムツキ室長」

 

“「弾幕を断ち切ってくれ」”

 

「ん」

 

「りょーかい!」

 

 空を飛ぶドローンと、爆弾の詰められたバックが空中で交差し、それぞれの目標(第三、第五部隊)へと着弾し、大きな爆炎を上げるとともに弾幕を張っていた者達を気絶へと追い込む。

 しかし、一瞬でも弾幕が止んだこの瞬間を駆け抜ける影が一つ、煙幕の向こう側から現れる。

 

「ゲヘナ風紀委員会のスナイパーを、舐めるな!!」

 

 他の風紀委員が足を止めようとも、切り込み隊長であるイオリは、その役割に恥じる事なく、軽快な足取りで迎撃しようと銃を向けるアビドス対策委員会の銃口から、クルリと身を逸らし最も前進しているハルカへと銃弾を放つ。

 素早く勢いの乗った動きと共に放たれたにも関わらず、イオリの卓越した射撃技術により、弾丸は吸い込まれる様にハルカへと向かうが、狙われている彼女に恐れの表情はない──バイステンダーからの指示は飛んでいないのだから、自らは動く必要がないと信頼しているからだ。

 

「アル社長」

 

「えぇ、片手でも十分よ!」

 

「なっ!?銃弾で銃弾を撃っただと!?!?」

 

 その信頼に応えるべく、バイステンダーは指示を出しハルカへと迫る弾丸が、アルの放った弾丸とぶつかり合い、関係のない看板に風穴を開ける──そして、曲芸に驚き、足を止めてしまった彼女を見逃すほど、大人は甘くない。

 

“セリカ、相手は動かないから落ち着いて”

 

「──えぇ、任せて!」

 

「しまっ!?」

 

 隙を晒したイオリの額へと弾丸は綺麗に吸い込まれていき──直撃の寸前で、割り込まれた紫のマシンガンによって、受け止められた。

 

「全く……出張が早く終わったのに面倒を起こさないで。イオリ、怪我は?」

 

「無事……って、い、委員長!?」

 

「そう、なら良い。後で、アコと一緒に反省文を書いて貰うから」

 

 ゲヘナ最高戦力、空崎ヒナの登場によって、戦場は再び静かな時を取り戻した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ほぅ、ただその場に居るだけだというのにこの威圧感、調べた通りの強さだな風紀委員長」

 

 混沌の極めるというゲヘナを武力だけで、鎮圧しているだけはある。

 弾丸を防いだあのマシンガンを見た限り、傷一つ無しと……やれやれ、相変わらず神秘というのは既存科学を鼻で笑ってくれるな。

 

「さて、私はこれで失礼しよう。彼女達も上手く風紀委員会に紛れて逃げ──」

 

 ……やれやれ、ただの大人に足元とは言え、銃弾を撃ち込むとは随分な挨拶ではないかね、ヒナ風紀委員長?

 

「悪いけど貴方には二、三、質問したい事があるの」

 

「何なりとお答えしましょう。死にたくはないのでね」

 

「まず一つ、最近キヴォトス上空で見られた謎の発光飛翔体、アレは貴方?」

 

 どれの事を言っているのかは不明だが、まぁ、私が観測した期間にその様な飛翔体を見た記憶はない、となれば彼女が聞いているのは恐らく、私がアル社長と出会った時のことを言っていると考えて、間違いないだろう……まさか、アル社長が流した事柄を彼女から問い掛けられるとは思わなかったな。

 

「一筋の流星の様なものを指しているのなら肯定しよう。私はキヴォトスの外から来た者だ」

 

「先生と同じと。二つ目、貴方は便利屋を使ってなにを企てているの?」

 

「いや、別に何も?」

 

「……え?」

 

 物凄く殺気を向けながら聞いてくるものだから、なにを聞くかと思ったら……キヴォトスで活動するだけの居場所が手に入れば、別にそれだけで良かったのだ。

 

「彼女らには大変よくして貰っているよ。私の様なものをアルバイトとして雇用するぐらいだ。ククッ、もしも今回の詫びが必要であれば私がそれを請け負うとも。だから、この場は見逃してくれると助かるのだがねヒナ風紀委員長?」

 

「……はぁ、貴方一人を連行して彼女達に乗り込まれる方が面倒。分かった、この場は目を瞑ってあげる」

 

「ククッ、感謝しよう」

 

 恭しく頭を下げ、車に乗り込む……さすがは防弾仕様に改造しただけはあるな、風紀委員の者達を引き飛ばしたり、銃弾の雨を受けたが目立った外傷はなく、エンジンも無事にかかる。

 

「ではな、先生。あとの事は貴方に押し付けるとしよう」

 

“バイステンダー君って人は……分かったよ”

 

 ハハハ、私は『先生』ではないのでね、自らの身に災難が降り掛からなければ他の事は知った事ではないのだよ。

 私を何処か呆れた表情で見送る『先生』に窓から手を振りながら、車を走らせ便利屋68の事務所に向けて走らせる……む、買っておいた缶コーヒーがすっかり温くなってしまっているな何処かコンビニでも寄るとしよう。

 

「……ん?あの姿は小鳥遊ホシノか。そう言えば、あの場所に居なかったな」

 

 まぁ、私には関係のない──なんだ、その憂いを浮かべた覚悟の表情は。

 

「……」

 

 小鳥遊ホシノに声をかける事もなく、私はすれ違ったのだが、妙な胸騒ぎを感じずにはいられなかった。

 何か……私にとって酷くつまらない事が起きる様なそんな気がしたのだ。

 

「下らんな、何があろうと私はただの傍観者。物語を外側から眺める者に過ぎん」




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