便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア 作:マスターBT
『先生と我々の間に結ばれた契約に従い、本作戦は行われる事となる。最も優先すべき目標は、旧アビドス本校舎地下にて、拘束されている小鳥遊ホシノの救出の為に、先生並びにアビドスの生徒達を送り届ける事だ』
『諸君らは分かりきっていると思うが、道中にはカイザーPMCとゲマトリアの大人『二名』による防御陣形が展開されている。君達が担当する事になるであろう、北部はきっと見慣れた陣形だが、気を抜かずに敵兵の悉くを蹂躙すると良い』
『また、本作戦はアルバイトの身に危険が迫る可能性があるが、君達は本隊の援護を最優先してくれたまえ……なに、案ずる事はない。生き汚なさにはそれなりに自信がある』
『最後になるが、イレギュラーの介入が発生した場合は各自の判断を最優先とする……では、戦場で会える事を期待しているぞ』
アビドス旧本校舎近くにあるカイザーPMCの駐屯基地は、ハッキングによる停電の後に襲撃を受けていた。
「くっ、何処のどいつだ!!」
「報告によれば数は少ないらしい!!援軍が来るまでグアっ!?」
「時間稼ぎなんてさせませんよ……えっと、添付された地図によればこの辺に爆弾を……」
暗闇からヌッと出てくるように突き出されたショットガンが火を吹き、次々と兵士達を吹き飛ばしていくと、やがてその部屋には気絶した者達しか居なくなっていた。
そこまでして漸く姿を現したハルカは慣れた手つきで、爆弾を設置していく……起爆した際に、この部屋で気絶している者達も一緒に藻屑へと変わりそうな気配はするが、その辺りは敵なので気にしていないようだ。
「設置完了ですアル様!」
『よくやったわハルカ。じゃあ、見つからない様に戻ってきて』
『こっちも終わったよ社長』
通信をしてきたのは、カヨコであり彼女は現在、このカイザーPMC基地のメインコンピュータルームへと潜入していた。
「基地の来客と、ここ数日の監視映像を見たけどバイステンダーの関与は無し。ただ、ゲマトリアって単語はあるから、彼の同胞か誰かは来たかもしれない。念のため、全部データは消してあるけど良かった?」
『えぇ。カヨコも無理をせずに撤退して。こっちは、私とムツキでどうにかするから』
「ん、分かった」
エンターキーを押すと同時に全てのモニターが真っ赤に染まり、警告音を響き渡らせるが一分も立たないうちに、警告音は停止し、ただ赤く光るモニターを他所にカヨコは、メインコンピュータルームを去っていく。
「さてと……久しぶりね、カイザーPMC理事。ご機嫌は如何かしら?」
「何故、貴様らが其方に与している?あの男は先程まで──」
不用意な発言をしたカイザーPMC理事の右頬を、ムツキが放った弾丸が抜けていく……驚くべき事にその射撃にカイザーPMC理事はおろか、彼に付き従っていた兵士ですら発砲されるまで彼女の動きに気がついていなかった。
「くふふっ、鷹さんの居場所を知ってるなら早く吐いた方が身の為だよー」
「な、何を言って」
「そうね。一方的にふざけた依頼だけ送ってきて……今、私達、凄く機嫌が悪いのよ──」
ムツキとアルは揃って、とてもイイ笑顔を浮かべながら自らの武器を構える。
カイザーPMC理事は、後にこの時の光景をこう語った──『恐怖を覚えるほどの美しい笑顔だった、叶うのならもう二度と見たくない』と。
「──八つ当たりに付き合ってちょうだい」
「ククッ……これはあとが怖いな」
確かに自分勝手な事をしたのは認めるが、まさかああも怒りを露わにする程とは思わなかったぞ。
的確に周辺の基地も潰している様だし、これはほぼ勝ち目などないだろうな、未来視をするまでもなく明らかだ……なにせ、今なお降り続くトリニティの砲撃と、大軍を相手にしているゲヘナ風紀委員会まで戦場にいるのだから。
「……先生を舐めていた訳ではありませんが、随分と簡単に進んできますね。まさか」
「私が情報を与えたと?ククッ、『先生』とは確かに商談をしたとも。だが、それはあくまで便利屋として、だ。つまり、何か私が彼に話していたとしても、私には守秘義務があり何も言える事はない」
「はぁ……悪い癖ですね全く」
「さて何の事だか」
あからさまに呆れてくれるな黒服。
私という男をよく知っておきながら、対処を間違えたお前にも責任はあるのだぞ……あ、カイザーPMC理事が縛り上げられたな。
「とは言え、最低限の役割を果たさねば、今にも頭部に風穴が空いてしまいそうだな。P-1、P-3聴こえていれば、今すぐその場から南西の方向にある廃棄列車まで移動すると良い……弾幕の雨が来るぞ」
「……」
「殺意を隠せていない様だが、そんなに私の存在が気に食わないかね?錠前サオリ」
背後から常に殺気をぶつけられるのは、あまり心地の良いものではないのだが、まぁ大方、ベアトリーチェの奴になにか吹き込まれたか元々そういう性格なのだろう。
「……」
「気晴らしの会話すら出来ないか。所詮は、マダムの操り人形で都合の良い道具に過ぎないという訳だな、つまらん」
「……下らない会話をするぐらいなら、もっと真剣に指揮をしたらどうだ?お前はその為に通信機を持っているのじゃなかったか?」
「指揮か……そもそも戦場に出ている多くはカイザーPMCの者達で、私の直接的な部下ではない。多少の融通は利くが、素直に聞いて貰えるかはあそこで風紀委員長の弾丸にやられている間抜けを見れば、足りない頭でも分かるはずだ」
折角、仕事してるアピールの為に指示を出したというのにP-3部隊の者達め、目先の手柄に囚われ返り討ちとは、本当にPMCの連中か?
「マダムからお前の敵対行為が確認された場合、処理して構わないと指示を受けている。この言葉の意味が分かるな?」
私の頭に拳銃を突きつけるとは、随分と短絡的な思考回路をしている……ベアトリーチェ、この娘に何を吹き込んだ?
少々、煽った事は認めるが沸点が低いにも程がある事に加え、初めから私への殺意を隠そうともしていなかったとなると、ゲマトリアに於いて最も意見が噛み合わないどころか、邪魔し合う可能性の高い私を消す気満々で、色々と有る事無い事吹き込んだと見て間違いないだろう。
「さっさと守秘義務とやらの内容を話して貰おうか。お前だって死にたくはないはずだ」
そして、この行動を止めないところを見るに、黒服も静観を決める様だな……であれば、此度の共闘はここまでだ。
「ククッ、脅しとは絶対的に優位であるから成立するものだ」
「この状況で何をふざけた事を」
「──私は兵士では無いという事だ錠前サオリ」
直後、基地全体を大きく揺らすほどの爆発と共に、天井に大穴が開きアビドスの砂煙が、舞い込んでくると共にまるで、子供番組の戦隊ヒーローの様なカラーリングの者達が、大穴から飛び込んでくる。
「ッッ、貴様!?」
「視線を一瞬でも外すとはまだまだ甘いな」
僅かに意識が逸れた瞬間に、拳銃を掠め取り座っていた椅子を蹴り上げ、ヒーローの様な者達──私が、個人的にコネを作ったカイテンジャーの側へと駆け寄り、手を伸ばしているグリーンの手を掴み取る。
「とんだ初仕事を任せてしまったな」
「報酬が支払われるのなら幾らでもやりますよ」
風貌はヒーローなのだが、金に煩い連中だ……だが、こういう連中は金を支払う限り、裏切る事のないからある意味、安心出来るというものだな。
少なくとも、あそこで楽しそうな笑みを浮かべている黒服よりは信頼して良いだろうな。
「先に危害を加えようとしたのは其方だ。異論はないな、黒服?」
「えぇ。今回はこちらの不手際です……なので、そこから出られるまでは見送りますよ」
「ククッ、お前らしいな」
そのまま、グリーンに抱き抱えられ投げ込まれたロープによって上へと引き上げられる……ブラックが居ないと思ったら、引き上げ役を担当していたのか。
さて、此処から先ずはカイテンジャーを戦力に『先生』と便利屋68に合流を……なるほど、そうかそうきたか黒服!!
「さぁ、『先生』!!状況は予測から外れたぞ!!貴方の力が真実であるのなら、私の期待通りであるならば超えてみせるが良い、この難敵を!!」
砂嵐を巻き起こし、砂漠の大地から起き上がる機械仕掛けでありながら、ヘイローを宿す蛇の異形から視線を変え、救出した小鳥遊ホシノとアビドスの面々、それに加え、便利屋68を指揮下に収めている『先生』を見て、思わず歓喜の声が溢れる。
みんな大好きビナー君の登場です。個人的にビナー君のBGMめっちゃ好き。
先生側の詳しい経緯が知りたい人は、ブルアカをインストールして、ご自分の目で見るんだ。先生が変態だって分かるぞ()
感想など待ってるぜ!!