便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア 作:マスターBT
「さて、意気込んだところに水を刺すようで悪いが、ヒナ風紀委員長、力を貸してくれるかね?」
皆が揃ってガクッとリアクションしているところ悪いのだがね?
あの大蛇の兵器を相手するには、少々、便利屋68の戦力だけでは足りない部分があり、そこを補填するのに彼女はとても都合が良い。
本当は暁のホルスを借りられれば良いが、向こうからの私の心情はゼロ通り越して、マイナスだろうからな……背を預けられない信頼関係では意味がないのだ。
「構わないけど、どうして私なのかしら?」
「そうよ。私達だけで十分じゃ」
「我々は言葉を選ばねば、テロ行為の方が得意だ。爆破して相手が混乱している時に鎮圧といった具合に。だが、アレはそれが通じる相手ではなく……単純な真正面戦闘となれば、被害が出てしまうだろう。それは私の望むところではない」
こうして、呑気に話をしている間にも、あの兵器は元気にミサイルを放ち、砂漠を縦横無尽に動いている以上、意地や確執だので揉めている暇はないのだよアル社長……うむ、視線で意図を汲んでくれて助かるよ。
レーザーは例外だとして、いくらキヴォトス人が頑丈とはいえ、盾も持たずにミサイルを受け続けて、無事で居られる保証はない……ヒナ風紀委員長レベルの神秘の濃さであればその条件も覆るが。
「我々は遊撃を担当する。ヒナ風紀委員長には、奴のヘイトを可能な限り取って欲しいが、無理はするな。特にあのレーザーの直撃は君でも致命傷になりかねん」
「分かったわ。けど、貴方はどうするの?戦場で身を晒すのは愚かだと思うけど」
「案ずるな、私は目が良いんだ。では、『先生』?物語のフィナーレは貴方に任せる」
そろそろ、アビドスの者達からヘイトを引き継がねば、彼女らも限界だろう……私は傍観者だ、物語に干渉は出来ても、結末を与えられる者ではない故に、『先生』貴方の選択をもっとも最前席で見させて頂く。
「アル社長、シロコ嬢がリロードに入ったのを目視後、奴の顔面に一撃を。爆煙が晴れた瞬間に、ヒナ風紀委員長は前進、それ以外の者達は物陰に隠れ、合図を待て」
「「「「「了解」」」」」
「……」
ん?便利屋68が、素直に指示に応じて動いているのがそんなに珍しいかねヒナ風紀委員長。
苦労したのだよ、これほどの信頼関係を構築するのには……いや、私が楽しんでいるうちに気がついたら信頼されていた気もするが、まぁ、そこはなんでも良いだろう。
うむ、相変わらずアル社長の狙撃の腕は良いな、見事に狙い通り奴の目を潰しているし、他の皆も配置についているな、私も目を複数飛ばし、未来視も併用するとしよう。
「ッッ……この頭痛さえ、無ければもう少し使う気になるのだがな」
もっとも起き得る可能性が高い未来から、遠い未来まで濁流の様に押し寄せるそれらを流し見で処理していく……ほぅ、あの兵器の名は『ビナー』というのか御大層な名前だな。
……ミサイルが付近に着弾しているのに、涼しい顔をしているヒナ風紀委員長へとビナーが動き始めたこのタイミングだな。
「ムツキ室長!!奴の十メートル前方、そこにたっぷりの爆弾を投下してくれ」
「はぁーい!」
綺麗な弧を描き、投擲された鞄は狙い通り、ビナーが指示した場所に差し掛かる直前に落下し、勢いよく爆ぜ、轟音と共に巨大な穴が開き、巨体を誇るビナーですら、足止めを余儀なくされる。
「ククッ、自らの移動で地盤がガバガバになっている事を演算していなかった様だな。這いあがろうとするところを、ヒナ風紀委員長、ハルカさん、ありったけの弾丸を喰らわせてやるといい」
「死んでください死んでください死んでください……!!」
「……別人?」
憎々しげに自らに弾丸を降らせる彼女らを見たところで、そもそもの失策はお前だぞビナー?
気が昂ってる時のハルカさんは普段とは全く違うからな。その気持ちは分からなくもないぞヒナ風紀委員長、私も慣れるには少々、時間を使ったからな。
しかし、硬いな……狙いをほぼ頭部に絞り、攻撃を加えているが脆そうな目すら煙を上げんとは。
「ハルカさんは一度撤退、ヒナ風紀委員長は引き続き攻撃を……恐らく、レーザーの発射体勢を見せるが、その時はアル社長とカヨコ課長、君達の鉛玉をたっぷりと喰わせてやるといい」
大穴から大きく飛び出す様に姿を現すビナーは、既に隠れたハルカさんを探す素振りを見せたが、すぐにヒナ風紀委員長の弾幕が奴の顔面を襲い、狙い通り、ミサイルの通じない彼女を焼き殺そうとレーザーの発射体勢を見せる。
「やらせないわよ!」
「風紀委員長は、少しくらい怪我してくれると本当は楽なんだけど……まぁ、いいか」
カヨコ課長は、本当に身内以外にはドライだな……だが、その性格のせいか彼女が攻撃の際に込める神秘には、当たった対象の恐怖心を煽る性質が宿っている。
鶏が先か卵が先かは不明だが、この恐怖を煽るという性質は非常に興味深く、可能であれば試してみたい実験も幾つか思いつくのだが、ソレをすれば間違いなく私という存在は消し炭にされるから自重しよう。
つまり、何が言いたいかというと、口に爆弾を放り込まれる様なアル社長の攻撃と、喰らえば喰らうほどに恐怖が刻まれていく攻撃の組み合わせは。
「鬱陶しいだろう?」
ビナーは溜め込もうとしていたエネルギーを散らし、アル社長とカヨコ課長を狙おうと動き出し、再び、ヒナ風紀委員長の攻撃に晒される。
ふむ、我ながら非常に鬱陶しいなこの攻撃サイクルは。
ヒナ風紀委員長も私の狙いを理解している様で、何も言わずともビナーの顔面をひたすら攻撃してくれている、奴にとってダメージがさほどなくても目の前を虫がウロウロすれば鬱陶しいと思うのと同じで、ある程度、彼女らが逃げれていれば狙いをヒナ風紀委員長に戻してくれる。
「そして、ミサイルが通じない彼女を倒すにはその身体で押し潰すのが最適と……合理的だな、誘導されている事を抜けば。ムツキ室長」
「まだまだあるよ〜☆」
砂漠は潜り放題でビナーの領域なのだろうが、移動のし過ぎだ間抜け。
再び、大穴に落ちるビナー……ふむ、単なる間抜けではなかったか。
「バイステンダー!!」
「指揮官を狙うか……」
幸い、阻止された時の中途半端なエネルギーだ、私が今盾にしている廃列車がある程度のエネルギーを受け持ち、私への被害は……まぁ、片腕で済むか。
死ななければやす──ほぅ?
「──したり顔で何やってんのさ」
「……まさかお前が助けに来るとは思わなかったぞ、小鳥遊ホシノ」
廃列車が熱で溶け、私の右腕を貫こうとしていた光を防いだのは、まさかの小鳥遊ホシノであった。
『先生』が作戦を思いつくのは、知っていたが彼が何を指示しても彼女は、間に合わない演技でもして私を捨て置くと思っていたのだが。
「そりゃ、お前の事は嫌いだけどさ……ここまで来て、バッドエンドは嫌じゃん」
「……ククッ、ハハハッ!一度手放したお前が語るかね?」
「手放したから、こそだよ。みんなが笑顔で元いた場所に戻るには、お前が生きてなきゃ意味ないでしょ〜ってね」
やれやれ……これだから子供は見ていて面白い。
「ククッ、言うようになったではないか」
「うへ、なんか保護者面しててムカつく〜」
「大人だからな。さて、そんな私より数段も優れた大人に後は任せるとしようか?」
“ハードル上げないでくれるかなバイステンダー”
苦笑いを浮かべながらも、しっかりとビナーを見ている辺り、『先生』もやる気が高いようで安心するよ。
“ふぅ……此処からは
無限時間稼ぎ編でしたね。
感想やここ好きを楽しみに待っているぜ!