便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア   作:マスターBT

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暑い!!!!!
暑いと頭の動きが鈍るから本当にやめて欲しい。


かくして我らは──

「ミレニアムでの仕事?」

 

「そうだ。先日、私の伝手で依頼が入ったのだが、内容はミレニアムで行われる新作発表会、その護衛に我々便利屋68を使いたいとの事だ。どうにも、依頼主は技術力があるものの少々、借金癖があるようでな……我々に対する依頼料すら借金から払うという筋金入りだ」

 

「それ、大丈夫なの?」

 

「カヨコ課長なら心配すると思ってな、私の方で依頼主の連絡先及び、依頼料を踏み倒した場合の逃走経路並びにセーフティーハウスは特定済みだ。もしも、愚かな選択を取る様であれば何もかもを搾り取ってやれば良い。違うかね?」

 

 まぁ、その借金に私も一枚噛んでいるために、一部目を瞑ってあげようと脅してこの依頼を持ってきた訳だが、そこは敢えて語る必要はないだろう。

 重要なのは依頼がある事、行くべき場所がミレニアムの自治区内であればそれで構わない。

 

「ふぅん。まぁ、最終決定は社長に任せるよ」

 

「……そうね。バイステンダーがそこまで裏を取ってあるなら、その依頼を受けましょうか。依頼主とは何処で?」

 

「社交会だ」

 

「……え?」

 

 ポカーンっと見事な間抜け顔を晒すアル社長のリアクションは、まぁ、見事に予想通りであり視界の端で、ムツキ室長と目を合わせ、互いにニヤリと笑う。

 

「今からドレスを買いに行くとしよう。安心したまえ、私が支払うとも」

 

 君達に金銭の管理を任せると、あるだけ使ってしまうからな……本当に私が便利屋68に加わる前は一人一つカップラーメンどころか、四人で一つのカップラーメンを分け合っていたり、テント暮らしをしていたりと良くもまぁ、会社を名乗っていたというレベルだからな彼女らは。

 社交会というワードに目をキラキラと輝かせるアル社長と、いつもの通りの便利屋面々を連れてキヴォトスにある中でも、品質が良くそれでいて比較的値段も良心的な店へと向かった。

 品質だけを求めるのなら、トリニティに行くのが一番だが、あそこはまぁ、さすがの私も全員分一式揃えるには財布が足りん。

 

「ぅぅ……煌びやか過ぎて良いんでしょうか私がこんなところに居て……」

 

「……良いのよハルカ。もっと、堂々としていなさい。これから私達が行く会合の場は、もっと煌びやかなのよ。貴女も便利屋68の一員なのだから、ピシッとしなさい」

 

「その割には目が泳いでるけど……」

 

「しっ、それは言っちゃダメだよカヨコちゃん」

 

「そうだぞ。折角のメッキが剥げてしまうからな」

 

「そこっ!ヒソヒソ話をしない!!ほら、行くわよ!!」

 

 アル社長を先頭に歩き、店内に入ると販売担当のロボットが我々の目の前に歩いてきて、液晶に浮かび上がる表情を笑顔に切り替える。

 

「本日はようこそおいで下さいました。どの様な品をお求めでしょうか?」

 

「彼女達に似合うドレスを見繕って欲しい。予算はあるからそこは考えずに頼めるかね?」

 

「かしこまりました!!では、こちらへ!!」

 

 全く、商売屋らしいと言うべきか。

 金に糸目を掛けないと分かった瞬間に、態度が露骨に変わったな……さてと、私はこれとこれで良いか。

 

「男は楽で良いな。デザインの種類がほとんど無い」

 

「あ、ねぇねぇ、鷹さん!これとこれ、どっちが似合うと思う?」

 

「ふむ」

 

 上半身は薄く透ける黒で、下半身は太腿を露出させたスリットの入った赤のドレスと、黒一色で整えられ裾やフリルの部分に赤があしらわれたドレスか、どちらも身体のラインがはっきりと分かるものだが、そうだな。

 

「此方の方が君によく似合うだろう。ムツキ室長は、自分の武器が何かよく分かっているようですし」

 

「くふふっ、鷹さんがそう言うならこっちにしよ〜!」

 

 私が選んだスリットの入った赤のドレスを抱えながら笑うムツキ室長に、カードを渡しながら次に完全に固まってしまっているハルカさんの元へ行く。

 

「あ……あ……」

 

「……大丈夫かね?」

 

 グルグルという表現がよく似合う目だなハルカさん。

 察するに普段から、地味なものを好む彼女にとって、ドレスの良し悪しは全く分からず、自信の無さも相まってフリーズしたというところか……ん?これなら似合うのではないか?

 

「ハルカさん、これはどうかね?少し、上半身は透けているがスカートは広がっているし、何より黒一色で目立ち辛いものだ」

 

「……た、助かります……正直、どれを選んで良いのかさっぱりでした」

 

「だろうな。ムツキ室長にカードを渡してあるから、買いに行くと良い」

 

 おずおずとドレスを抱き締め、去っていくハルカさんを見送り、歩き出そうとすると既にドレスを手に持っているカヨコ課長と、難しい顔で複数のドレスを見ているアル社長が目に入り、其方へと向かう。

 

「決まったかね?」

 

「あ、バイステンダー。うん、私はね。社長はまだ悩んでるけど」

 

「ふむ……紺色でかつ、色気もあるドレスか。かなり、上半身の露出が多いが良いのかね?」

 

「これがピンときたからね」

 

「なるほど。確かにカヨコ課長によく似合うデザインだと思うよ。露出は多いが、決していやらしくなく、美しくそれでいて少女らしい可愛らしさを残したドレスだ。腹部が露出しているから冷えには気をつけたまえ」

 

 さてと、問題は複数のドレスと睨み合いを繰り広げているアル社長だが、チラリと見る限りどのドレスも彼女によく似合うものが選出されている辺り、私が何か口を挟む必要は無さそうだが……

 

「んー……こっちの方が……でも、値段が高いし……それならこっちの方が……」

 

 全く、本当にアウトローに向いていないな君は。

 

「店員。このドレスを買おう、会計に私のカードを持った者達がいる筈だ」

 

「え、ちょ!?」

 

「君によく似合うと思ってな。つい、衝動的に買いたくなってしまっただけさ」

 

 店員が私の選んだドレスを持っていくのを横目に見ながら、申し訳なさそうな表情を浮かべているアル社長に告げる。

 別に嘘は言っていない、背中が大きく開いているデザインに加え、全体がアル社長のイメージに合う赤でありながら、胸元から下腹部がワインレッドに染められており、同じ赤ながらに彩りが加えられているのは、さすがと言うところだ。

 

「バイステンダーってキザだよね……」

 

「ふむ?単に思ったことを口にしただけだぞ」

 

「そういうとこだよ」

 

 言うだけ言って、歩き出したカヨコ課長の後ろを首を傾げながら、顔を赤くしたアル社長と共に続く。

 

「……ンンッ、ありがとう、バイステンダー。このお礼は社長としてしっかり給料という対価で」

 

「それは有り難いが、私は別に金で困ってはいないぞ」

 

「それはそうでしょうけど……もー……」

 

「……はい!お支払いは完了致しました。是非、今後もご贔屓に!!」

 

「それは彼女らが気に入るかどうかだな」

 

 さて、そろそろ行かなければ彼女との待ち合わせ時刻に遅れてしまうな。

 

「会場まで送ろう。着替えは……会場の更衣室を借りてくれ」

 

 着替えていく時間があれば良かったのだが、思っていたより全員のドレスを見繕うのに時間を使ってしまった。

 リオ嬢との会合の時間は日没直後、つまり、現在の夕暮れ間近な時間帯は非常に都合が悪い……可能な限り、仕事を片付けておいたとはいえ、今回の依頼の提案をしたのが昼過ぎになっていたのは悪手だったな。

 

「着いたぞ此処だ」

 

「ミレニアム・ホテル……自治区の名前を背負っているだけはある外見ね」

 

 ミレニアムの技術がふんだんに使われた最新鋭のホテルは、その名に恥じぬ全面強化ガラス張りかつ、プロジェクションマッピングによる映像が来客達を歓迎しているという見事なものであった……それもそのはず、このホテルの地下はエリドゥに繋がる貨物線が走っており、それらを覆い隠すためにリオ嬢が資金提供及び、開発したホテルなのだから。

 

「……ロボットの絵面が独特なのが、少し残念ではあるがまぁ、学生と見れば微笑ましいだろう」

 

「ん?何か言った?」

 

「いや、何も。依頼主を待たせている、行こうか」

 

 便利屋68の面々を引き連れ、ホテルに入ると少々、小太りの犬型キヴォトス人が、額に冷や汗を浮かばせながら、近づいて来る。

 

「Dr.ワン。ご要望の便利屋68をお連れしましたよ」

 

「あ、あぁ!ありがとう、バイステンダーく、君!!」

 

 ……もう少し、依頼主らしく振舞ってくれないかね?万が一でも、私と貴方の繋がりが彼女らに疑われると面倒なのだが、まぁ後先考えず借金を積み重ねる研究以外はまるで能無しの男にそれを求めるのは無茶か。

 

「む、失礼。電話をしてくる」

 

「!さ、さぁ!!皆さん、此方へどうぞ!!詳しい話は会場で、だ、誰にも聞かれない様に!!」

 

 ……不安だ、あの男にこの先を任せるのは……とは言え、これ以上、時間をかけていては本末転倒だ。

 通話をしているフリをしながら、便利屋68の皆んなから離れ、男性トイレへと向かい、一番奥の個室に入る。

 

「さてと……此処か」

 

 コンコンっと、本来なら隣も何もない壁にノックすれば、ガチャリと扉が自動で開き、暗がりの道が姿を現し、そこへ一切の迷いなく足を踏み入れ、降っていくとやがて、自動操縦の無人列車が待機している駅へと到着し、乗り込むこと数分後、一つの町の様な場所──エリドゥへと辿り着く。

 

「対面では初めまして。リオ嬢」

 

「えぇ、せめて有意義な話し合いになる事を祈っているわ」

 

「それは君の目的次第だ」

 

 隠れ潜む視線が一つ、なるほど、さすがに手放しで此方を信用するほど愚かではない様だ。

 周囲に張り巡らされた無数の兵器群に、僅かに見える床の亀裂からしてこの高い街並みそのものを隔壁として使用出来るシステム、そしてハッキングで明らかになったシェルター……まるで、戦争でもするのかという設備だな。

 

「リオ嬢、君は一体、なにに備えて此処を作っている?」

 

「……エレベーターで話すわ」

 

 中央の塔に入ると同時に投げかけた質問に流し目で、答えると彼女はそのままエレベーターまで、移動し自身のIDカードを読み込ませ、乗り込む。

 その後に続き、乗り込むと暫くの沈黙の後にリオ嬢はポツリと話し出した。

 

「確証があるわけではないの。だから、これから話す事は幾つもの不確定要素を孕んだ内容だと考えて欲しいわ」

 

「ほぅ」

 

「……貴方には通話で言ったけど、私はこの選択がキヴォトスの未来の為だと信じている。数えきれないほどの無数のデータと、幾つもの検証を行なって辿り着いた結論は、キヴォトスが滅びるというものだった。目覚めてしまった『名も無き神々の王女』によってね」

 

 ……その名を聞く事になるとはな、無名の司祭が絡んだ案件となればキヴォトスに滅びが齎せるのは必然という訳か。

 

「……到底信じられる話じゃないわよね。私自身、不確定な部分は多いし、笑いたければ笑うと良いわ。そういうの慣れているから」

 

 私が無言になっている事をどの様に受け取ったのかは知らないが、エレベーターが目的地に着いたのを告げると同時に、沈んだ顔をするのは少々、ギャグが過ぎるぞリオ嬢。

 

「笑わないとも」

 

「──え?」

 

「君は不確定要素が多いと言ったな。だが、本当に疑心があるのであれば、エリドゥなど作らずにより確実な証拠を得るか、静観に徹するのではないかね。しかし、実際の君はこうして突如、姿を現した私の様な胡散臭い男を招いてまで、予見した滅びに抗おうとした……であるのなら、そうするだけの確証が君の胸にあるのではないか?」

 

「……それは」

 

 私は未来を視る事が出来る故に、あまりに巨大すぎる滅びに抗う様な気力は持ち合わせていない。

 だからこそ、絶対の滅びを予見したというのに必死に抗おうとしているリオ嬢、君に興味が湧いた──何故、そこまでの行動が取れる?

 

「私は未来を視る。それも無数に枝分かれしたものをだ、恐らくその中には君の語った滅びもあるだろう」

 

 クルリと振り返り、追い越したリオ嬢へと視線を合わせ、ニヤリと笑みを浮かべる、気分はそう壇上に立って観客を煽る役者の様に。

 

「私がソレを視たという事は、リオ嬢。君の足掻きは残念ながら、無駄に終わったという事だ……それでも君は抗うと?」

 

 他の世界線の彼女もきっと、抗う選択を取ったのだろう。

 しかし、キヴォトスとは例外なく滅びる……その中には彼女の予見した滅び以外もあったのだろうが、これだけの準備をしてもなお、彼女は足りなかったという事だ。

 

「貴方の発言が真実かどうかを私は調べられないわ」

 

「この様な場面で君の覚悟を嘲笑う様な嘘を吐くとでも?」

 

 一度目を閉じ、再び開かれた彼女の瞳は力に満ちていた──良い瞳だ、美しいとすら感じられるよ。

 

「……例え、そうであったとしても今の私がその道を辿るとは限らない。私は私の行いが正しいものだと信じているわ、どれだけの苦痛が伴う選択であったとしても」

 

 清々しさすら覚えるほどの独善的な選択だな……だが、何かを成し遂げられる人間というのは総じて、迷いのない自分が正しいと信じる道を歩む事が出来る独善的な人間であり、彼女もまたその一人という事なのだろう。

 

「ククッ、良いだろう。私の名はバイステンダー、傍観者のゲマトリアではあるが、リオ嬢。君に興味が湧いた。私の知る未来を教えよう、君が持つ情報と擦り合わせより精査していこうではないか」

 

「……信じるの?キヴォトスが滅びるなんていう荒唐無稽な話を」

 

「信じるとも。これより私と君は共犯者だ、キヴォトスの為に清濁を共に飲み込み、滅びに抗うな」

 

 君が望む物は全て私が手配しよう。

 君が愚痴を溢したければ珈琲とお菓子を用意し、聞こう。

 君が苦しければ、その苦しみを共に背負ってあげよう。

 

 ──だからどうか、諦めるなどというつまらぬ結末を私に見させないでくれよリオ嬢?




もしも、各学園の生徒会と出会っていたら?
ミレニアムサイエンススクール→今回の話を見ればよく分かると思う。

ゲヘナ学園→マコトの暴走がより悪化し、エデン条約で裏切る

トリニティ総合学園→セイアに強い興味を持ち、未来について語り合い、ミカと共にアリウスを潰そうとする。

レッドウィンター→ノリについていけず、去るか脳破壊されてクーデターマンになる。

アビドス→時期による。ユメ先輩存命時だったら、黒服との全面戦争

山海経→キサキの後ろに立ってる怪しい奴になる。悪事は全部キサキにバレるので基本、飼い殺し。

シリアスしてたりシリアルになったり、忙しいなコイツ……感想やここ好き!待ってるぜ!!
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