便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア   作:マスターBT

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AC6楽しい

今回はちょっとした裏話的な回


乙女の神秘を少しばかり、暴くとしようか(裏)

「神秘と科学の融合……私ですら到達出来ない地点の結晶、それが君かアリス嬢」

 

 あの後、ゲーム開発部がどうのこうのとセミナーのユウカ嬢と話をしていたが、そんなものは私にとって至極どうでも良く、話が終わった後にアリス嬢に睡眠薬を投与し、眠っている間に身体の隅々まで調べ上げたがまさか、私が切り開こうとした学問、その一種の到達点だとはな。

 

「このデータを解析出来れば、ヘイローがない為に脆弱であったこの肉体を強化する……いや、いっそ異なる肉体を得る事も可能と言えるだろう。是非とも、アリス嬢を生み出した科学と神秘を再現したいのだが、教えてくれるかね?鍵の神官よ」

 

『……私に容易くハッキングされておきながら所有者顔とは呆れますね』

 

 アリス嬢を解析している途中で、端末がアラートを発したかと思えば、瞬く間にあらゆる権限を奪われてしまうとはさすがに驚いたが、今はこうしてモニターを介して会話するぐらいは拮抗状態を作れている……リオ嬢に神官の存在を教える事は出来なくなってしまったのは残念だがね。

 私の今までの研究データと、カイテンジャーに渡す装備、それに便利屋68の面々との記録が失われるのは痛手なのだ許してほしいリオ嬢。

 

「君にとっても悪くない提案だと思うがね?考えてもみたまえ、なんの因果か極めて善性に近い精神性を獲得したアリス嬢が、プログラムされている通りに滅びを実行すると思うか?あぁ、それとドヤ顔で私の端末を支配したは良いが、バックグラウンドに残した領域からハッキングし返されて、現状、私にアクセスを許している君がソレを言っても説得力が足りんなぁ」

 

『くっ……頭もそうですが口も随分と回る様ですね。余計な方向に』

 

「お褒めに預かり恐悦至極」

 

『……先程の問いですが、私も無策ではありませんのでご心配なく、貴方のような者の手を借りる必要はありません』

 

 本当にアリス嬢とは真逆だなこの娘は。

 ニコニコと笑う事なく、張り付いた無表情を浮かべ明るく無邪気な声とは程遠い、冷たく敵意に満ちた声……彼女というプログラムを生み出した存在は兵器はどの様に扱うべきかというのをしっかりと心得ているな。

 

「ふむ……しかしだな、こうは考えられないか神官よ。本命はアリス嬢が君の策に嵌り、滅びを起こすと定めて、もしもソレが『何者か』によって阻止されてしまい、君の願いが叶わなくなった。その時のサブプランとして私の提案を受け入れるというのは」

 

『私が失敗するとでも?』

 

「私は君達という滅びに抗う者を二人ほど知っている。一人は既に動いており、もう一人も異常を認識すれば必ず動くだろう。そして、今こうして私如きに辛酸を舐めさせられている君では、決して勝てんよ」

 

『……言ってくれますね』

 

 だがまぁ、AIに人格と感情を持たせたのは悪手だったな開発者よ。

 人間の様な自立性を持たせるのは、固定された思考しか持たない単なる機械より想定外な出来事に対応出来るだろうし、見せかけではない感情があるのなら慰安の意味も兼ねる事すら出来るだろう。

 だが、AIから合理性を奪ってしまえば、それはただの賢いだけの人間いや、人間の様な賢しさを持ち得ないのだから人間以下の劣化品と成り果ててしまうと私は思っているし、事実、目の前で私の提案に悩んでいる神官を見れば答えと言えるだろうな。

 合理的に考えれば、私の提案を受け入れる必要性など微塵もない。何故なら無機質な機械であるが故に絶対のオーダーに淡々と従うからだ……しかし、人格と感情がある為に私の煽りで冷静さを失い、万が一の不安に駆られてしまった。

 

『……分かりました。ですが、渡すのはあくまで身体情報であり、私や王女の権限や計画に関与する事は不可能です』

 

 ほら、この通りだ。

 不安に駆られてしまったが故に数字ではなくただ漠然とした不安を選んでしまう……私の予想通りに動いてくれて感謝するよ、鍵の神官。

 

「あぁ、構わないとも。私にとって君達が齎す滅びなど抗う気力も起きないほどに飽きている」

 

『それなのに共犯者を語るのですか。理解出来ませんね、貴方は』

 

「ククッ、いずれ君にも分かる時が来る。論理的な思考を捨て去り、ただその行く末を見届けたくなる気持ちがな」

 

 リオ嬢と『先生』のどちらか、或いは両方が滅びを乗り越えるのか、今からでも凄く楽しみだ。

 まぁ、彼女が選ぶ手段は少々後味の悪さを残すだろうから、可能であれば私には見出せなかった結末を『先生』に期待するが、さてさて。

 

『あり得ません。そんな可能性に辿り着く事はなく、キヴォトスは滅びるのですから』

 

「そうだと良いな鍵の神官よ」

 

『……データが纏め終わりました。王女のスリーサイズなどをガン見したら許しませんからね』

 

「君は私をなんだと思っているのかね……」

 

 私には性的に子供を愛する癖は無いとも。

 さて、暫くは睡眠を取らずに研究と勤しむか……ククッ、ホルスの義眼を造った時以来か?少しばかりワクワクしてきたな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 不思議な男だと感じた。

 胡散臭くて、何処か余裕を感じさせる飄々とした態度の癖に、私の一語一句に嫌味を返す子供っぽさと科学や神秘に対する熱意を感じさせるというのに、その目は何処までも冷ややかで諦観しているのだと話をして理解した。

 

 滅びに抗おうとする者達に強い興味はあるのに自分は抗う気力を見せようとせず、律儀に私の脅しを守り、共犯者に私の事を暈して伝えた。

 それは明確な裏切りとも言える筈だが、罪悪感を感じている様子はなく今こうしている間も、嬉々として私が送ったデータの解析に勤しんでいる辺り、本当に微塵も罪悪感など無いのだろう。

 

 分からない。

 裏切っておきながら、共犯者に期待を向ける彼の心理が。

 

 分からない。

 滅びを嫌悪するのに、私と王女の役目を後押しする様な彼の考えが。

 

 分からない。

 この男が何を考え、どの様な理由で私に関わっているのか。

 

 王女をサポートする為に作られた私の思考が、常にエラーを吐き続けている。

 善人では無いけれど、悪人と断言するには難しく、論理的かと思えば感情的……一体、どれだけの矛盾を抱えてこの男は生きているんだ?

 

『……分からない』

 

「む?何か言ったかね鍵の神官」

 

『なんでもありません』

 

「そうか」

 

 良いでしょう。

 まだ、王女を起こすまで時間があります。

 その時間を使って、貴方という人間の疑問を解消します、王女をサポートする鍵として不確定は認めません。




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