便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア   作:マスターBT

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箸休め回


いや、うん……そのなんだ……君達はそうだったな

「そっちの仕事は順調かね?」

 

『えぇ、概ねは。猫探しの依頼とか、落とし物の捜索、果てには何故か寿司の出前まであったけど……ま、まぁ、順調よ!』

 

 寿司?何故、便利屋に寿司の注文が?

 似た番号の寿司屋などあっただろうか……いや、総じて間違い電話の類を真剣に推理したところで意味はないか。

 

「なるほど……カヨコ課長や、ハルカさんが活躍しそうな依頼だな」

 

『さすがね。猫の居場所はカヨコが、飼い主から猫の好みや性格を聞いて候補地を絞り出してくれたから、その場所を時間変えて巡るだけで簡単に捕まえる事が出来たのよ!ハルカもハルカで、落とし物が発見し辛い物陰とか沢山知っててね、一見すると何処にも繋がっていなそうな場所にも入って行って、無事にそこに転がってた落とし物を見つけてくれたわ。さすがは、私の優秀な社員ってところよね!!』

 

 顔は見えないが、恐らくウキウキで満面の笑みを浮かべているに違いないなこれは。

 知ってはいたが、部下の成果を誇り、まるで自分の事の様に喜ぶ……ククッ、アウトローとしては少しばかり残念な気はするが、社長としての適正は相変わらず高いな彼女は。

 

「ククッ、君達の活躍を直に見れないのは残念だが、その残念ついでに依頼をしたいアル社長」

 

『なにかしら?ちょうど依頼はなくて、皆んなで暇をしているところよ』

 

「それは良かった。依頼内容は、ミレニアム領内に点在している廃墟の調査だ。私が指定する場所に向かい、廃墟内部を調査し、内部構造及び、今も稼働している機械を報告して欲しい。この時、敵性存在が現れ戦闘行為が発生した場合は、そのデータを提供してくれれば追加報酬を払おう。どうかね?」

 

 アリス嬢の中で、発動の時を今か今かと待ち続けている『ATRAHASIS』というプロトコル……名前からしてアトラ・ハシースの箱舟に関連するものなのは分かったが、どれだけの数のロボットがこのプロトコル発動に紐付けされているのかは未だに不明だ。

 散発的に現れる敵性ロボットはリオ嬢が人知れず排除しているが、彼女の処理限界を迎えた時のため、備えておくに越した事はないだろう……私が好きに弄れるモノが欲しいのは否定しないがね。

 

『……送られてきたマップと報酬金を確認しました。我々、便利屋68は、其方の提案に完全合意し依頼を引き受けましょう……ところで、バイステンダー?そっちから凄い金属音が聞こえるんだけどなにをしてるの?』

 

「ん?あぁ、気を付けていたつもりだが聞こえていたか」

 

 そう言って私は二階のバルコニーから、一階を見下ろしそこに鎮座している独特な造形の巨大ロボット──『アバンギャルド君』を改造しているドローンと臨時で雇ったカイテンジャー諸君を見る。

 

「無人兵器……特にAI制御の兵器というのは合理的な判断で与えられた役割を達成出来る一方、不測の事態に滅法弱く、また制御を奪われた際はそのまま相手の手中に落ちるという弱点がある」

 

『え、急になに?』

 

「故に許可を得るのに苦労したが、完成したアバンギャルド君に乗せるという約束で、完全合意に至ったアバンギャルド君有人化計画……その為の改造音だとも。素晴らしい音色だとは思わないかね?」

 

『……えっと、なんだかよく分からないけど、貴方が楽しそうなのは分かったわ。じゃあ、依頼の準備があるから私はこれで落ちるわね!』

 

 むぅ、逃げられてしまった。

 致し方あるまい……アル社長は電話越しで直に改造されていくこの光景を見ている訳ではないのだから、私とのテンションの差が生じてしまうのも必然だ。

 

『……多分、違うと思いますが。どちらかと言うと呆れている感じでしょう』

 

「しれっと私の心の中を読まないでくれるかね、鍵の神官」

 

『分かりやすかったので』

 

 先程までアル社長と通話していた携帯端末に映し出される呆れ顔の鍵の神官。

 彼女との交渉は破談に終わった筈なのだが、相変わらず私の端末に自由にアクセスしているし、こうして話しかけてくる……一体全体何が目的なのかは分からないが、一先ず泳がせておくことにした。

 

『有人化の改造。もしかしなくても私対策ですか?』

 

「その一面もあるな。無人管理はハッキングに弱く、私達と敵対する存在は見ての通り、あらゆる電子機器を容易くハッキングする厄介な存在だからね」

 

『嫌味ですか?』

 

「さて?」

 

『……有人化したとしてもハッキング対策が完璧とは言えないでしょうが、貴方が乗るのなら話は別です。メインシステムのハッキング、その片手間で相手するのは無理でしょう』

 

 未来視を使って君の選択を先読みし、手を打っているだけなのだがどうやら鍵の神官から見て、私は優れたハッカーの様だ……別に訂正する必要もないな、この方が得だ。

 

「私との勝負が随分と堪えている様だな」

 

『……』

 

「ククッ、無視とは。少しは人らしい感性でも育ったかね?」

 

「主任!!此処の改造どうしますーー??」

 

「今其方に向かおう」

 

 改造を行っているカイテンジャーブラックの呼び声に応じ、一階へと降りていく……ククッ、どの様な姿になるか楽しみだなアバンギャルド君よ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という訳で、ウチの我儘なバイトからの依頼よ。ハルカ、準備は出来てる?」

 

「は、はいアル様!カヨコ課長から指示を貰った場所への設置完了してます。あ、あとは合図一つで、ド、ドカンです」

 

「お願いだから早まってスイッチを押さないでね?ムツキ、カヨコ、見張りの動きは?」

 

『概ね、予想通り。指定されたルートをただ巡回しているだけだね』

 

『準備が出来たのならもう仕掛ける?さすがにずっと隠れてて、暇だよ〜アルちゃん!』

 

「そうね……それじゃあ、便利屋68。廃墟探索大作戦!始めるわよ!!」

 

 廃墟の入り口、そこを狙え。周囲の監視ロボットの索敵範囲外で愛銃を構えるアルが号令を出すと同時に、物陰に隠れていたカヨコ、ムツキ両名が態と勢いよく飛び出し監視ロボットに存在を認識させ、増援がアルによって目視されると方向転換。大量のロボットを引き連れ寂れた廃墟を駆け抜けていく。

 

「……アレは危なそうね」

 

 二人に追いつきそうなロボット、或いは追いかけるのを止めて持ち場に戻ろうとするロボットをアルが狙撃し、次々と破壊していく。

 

「ヒュ〜さっすが、アルちゃん!」

 

「やれる時はとことんやってくれるよね社長」

 

 追いかけてくるロボット達と付かず離れずを維持していた二人が、アルの銃声が一つ上がるたびに楽しそうにしながら駆け抜けていき、ある地点を越えると一気に加速、カヨコが信号弾を取り出し空へと打ち上げる。

 

「へへへ……みなさん、吹き飛んでください……!」

 

 ポチッとボタンが押され、周囲の建物や瓦礫に隠された爆弾へ一斉に合図が送られると、彼女達の目論見通り爆風と倒壊する建物によって、追ってきたロボット達は粉々に粉砕されていった。

 

「おー、派手だねぇ」

 

「これ毎回やるの?お金、大丈夫……」

 

「心配いらないわ。バイステンダーが提示してくれた依頼料で、十分お釣りが来るはずよ」

 

「こ、これで邪魔者は居なくなりましたねアル様!」

 

「えぇ。それじゃあ、張り切って中を調べるわよ!」

 

「……バイトから金をせしめるってどうなの?」

 

「まぁまぁ、二人が納得してるんだから良いんじゃない?」

 

 爆発によってボロボロになった風景など知らんっと言った感じで、肩で風を切りながら進んでいくアルと、そんな彼女に目を輝かせて続くハルカの後ろを何処か疲れている表情のカヨコとニコニコ笑顔のムツキが続き、指定された廃墟内部へと入っていく。

 中は何処からか電気を供給しているのか薄らと明るいが、廃墟故に手入れされていない埃の積もった道が続いており、部屋の一つ一つを逐一調べていく彼女達だったが、これといって目に付くものはなく、徐々に『依頼料発生しないのでは!?』と顔を青くし始めるアル社長。

 

「な、何もない……」

 

「外で見たのと同じロボットは何体か居たけど、その程度だったねぇ」

 

「な、何か彼が気に入りそうなものはって、きゃあ!?」

 

 報酬金が出ない焦りに駆られたアルは、足元が不注意になってしまった様で伸びていたコードに足を引っ掛け、転びそうになる身体をどうにか支えようと必死に手を伸ばし──ポチッと手をついた壁から音が鳴った。

 

「うん?」

 

『生体認証開始…………該当者無し。侵入者として排除します』

 

「え?え?」

 

 機械音声が流れると共に隔壁が降り彼女達を閉じ込めると、アルが手をついた壁とは反対側の壁が開き、十体程度の丸い身体に触手の如くコードが伸びている存在、通称『Divi:Sion』がその姿を現す。

 

「見事にトラップを踏み抜いたねぇアルちゃん」

 

「……どうやら戦うしかないみたいだね」

 

「……ふっ、ふふっ!!計画通りね!!!!!!!!虎穴に入らずんば虎子を得ずとはよく言ったものよね!!!!!!!!」

 

「さすがはアル様!!わざとトラップにかかったんですね!」

 

「当たり前よ!!さぁ、ボーナスを稼ぐわよ!!!!!」

 

 盛大に見栄を張るアルの行為は、ハルカ以外にはあっさりと見抜かれているのだが、いつも通りと言えばいつも通りなので、何かツッコミを入れる事なく、彼女達は持ち前の戦闘力の高さと連携力で、見事にトラップを食い破り──この廃墟施設を丸々、爆弾で倒壊させながら見事に脱出するのだった。

 

『……あー、アル社長。依頼の完遂を先ずは、おめでとうと言っておこう。君達が持ってきてくれた情報で、また一つ解析が進んだのは確かなのだが……その廃墟一つ潰したのはさすがに予想外だ。どうにか、ミレニアムの目は逸らしておくが、約束通りの金をすぐに支払うのは難しくなった。そのなんだ、極力急ぐからどうにか凌いでくれ、以上だ』

 

 暫く、便利屋68の面々が質素な生活を送る事になったのは言うまでもない。

 

「どうしてこうなるのよー!?」




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