便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア 作:マスターBT
「リオ嬢。最終確認だが、君はもう引き返すつもりはないのかね?」
「意外ねバイステンダー。貴方なら、迷うなって私の背中を押してくれると思っていたけど」
バイステンダーが資金を提供したお陰で、エリドゥの改修は進み月明かりの下で動く警備ドローンは、当初の倍の数が配備され、それに伴う防衛設備やシェルターの数も増加しており、リオの見立てより要塞都市としての機能を高めているエリドゥ中央タワーで、二人の悪役は月明かりの下、肩を並べていた。
「私には帰る場所がある。しかし、君はこの偉業を成し遂げた後に帰る場所はないぞ、アリス嬢は短時間であったが、ミレニアム学園に馴染み愛されている子供だ」
「……バイステンダー、貴方はトロッコ問題を知っているかしら?」
「あぁ。知っているとも、レバーを引かずに五人を殺し一人を救うか、レバーを操作し一人を殺して五人を救うか。所謂、思考問題と呼ばれるものだな」
「私はレバーを引く事を選んだの。アリスにも、そして彼女の死に少なからず心を痛める子達にも悪いとは思っているわ。でも、これは誰かが必ずやらなければならない選択。どれだけ苦しい選択でも、受け入れなければならないの」
バイステンダーが視線を横に向ければ、覚悟を語るリオの手は震えていて気丈にも泣かず、正面を見続けている彼女の心中が、どれだけ苦しいものか悟り、僅かにその表情が歪む。
だが、リオが背負うと決めた覚悟を彼は引き受けてあげる事も、変わってあげる事も出来ない……物語にどれだけ介入しようとその本質が、傍観者であり続ける彼には。
「……さすがは私の共犯者だ。では、変わらずに君の選択を見届けよう、そして願わくばキヴォトスが救われる事を」
「ありがとうバイステンダー。ねぇ、貴方ならトロッコ問題をどう答えるの?」
窓に手を当て、リオは隣に立つバイステンダーを見ると、彼も応じる様に彼女の方を向き、二つの視線が真っ直ぐにぶつかり合う。
「私か……そうだな、失いたくない側を選ぼう。どちらも等しく興味がなければ、私は何もしない」
「命に付加価値をつけるの?……悪い人ね、貴方は」
「ククッ、そうだとも。私は悪人だからね」
今まさに、アリスという一人の少女を殺す悪を以て、キヴォトスを全ての者達を救おうという正義を実行しようしている共犯者達は、互いを見ながら笑い合い、『本筋』の世界には居なかった理解者を得た事で、覚悟の決まったリオは静かに目を閉じ、これまでの選択に間違いはなかったのだと結論を導き、再び目を開く。
「……トキ、バイステンダー、『先生』達が来たら対処をお願い。エリドゥの全システムが、整ったら私が──アリスを殺すわ」
「分かりましたリオ様」
「了解した。改修したアバンギャルド君を使用するが、構わないな?」
「えぇ。全兵力で彼らを迎撃するわ」
エリドゥの警備システムが、不法侵入者を告げる──今ここに、二つの正義がぶつかり合う戦いの火蓋が切って落とされる事となるのだった。
C&Cとは、ミレニアム最強のエージェント集団である。
その謳い文句に偽りはなく、数々の依頼の達成とその際に発生する法外な被害総額が、彼女達の行動の結果にはあり、彼女達もその自覚と誇りを持ってC&Cの看板を背負っている。
「……来ましたね先輩方」
そして、それは両腕のガトリングガンが特徴的な全身型パワードスーツを着込むトキも同じであった。
「わぁ……なんか凄いもの持ち出してない?」
「初めから全力という事でしょう」
「あの装甲を貫くのは少し、難しそうだな」
リオが開発したパワードスーツ『アビ・エシュフ』の銃口は、一切の油断なく彼女の前にいるアスナ、アカネ、カリンに向けられているが、全員、驚きの表情は浮かべているものの、そこに恐怖や諦めといった感情は浮かんでいない。
「抵抗は無意味です。どうかこのまま大人しく投降をお願い致します」
「ほぅ……なるほど」
「う〜ん、それはちょっと難しいかなぁ?」
瞬間、爆発が起き爆炎がトキを包むが、すぐに煙は晴れ、無傷どころか爆破による汚れすら一切付着していない『アビ・エシュフ』が姿を現す。
「挨拶のつもりとはいえ、避ける素振りすらしないとは……随分と硬い、いえ、素早い装備なのですね」
「……なるほど。あの方の言う通りの展開です」
トキの駆る『アビ・エシュフ』が地面を滑る様に横を向くと同時に、二つあるガトリングが目の前の彼女達と、自分の後ろに向けて火を吹く。
「「「っっ!?」」」
「はっ!!こっちの作戦なんて丸わかりってか!!コールサイン05の入れ知恵だな?」
ガトリングから発射される弾丸の雨を避けるために、散開する三人の中には居なかったC&C部長、ネルが好戦的な笑みを浮かべてガトリングの雨の中をトキへと迫る中、彼女はブリーフィングを思い出していた。
『先ずは出し惜しみは無しだ。使える物は全て投入しなければ、『先生』相手に勝ちを拾うのは無理だと言っておく』
『その為にアビ・エシュフを使うと?』
『それだけでは足りんな。おそらく、私の見立てが正しければリーダー、ネルは君とのリベンジマッチを選ぶだろう。理屈ではない、彼女はそういう手合いだ』
『……なるほど、確かに先輩方を全員、相手にするにはアビ・エシュフが必要かもしれません』
『私の見立てであれば、アビ・エシュフを用いれば君は勝てるだろう。だが、『先生』が私に読まれている事を考慮していないとは思えん。油断はするなよ、リオ嬢の計画の為には、時間が必要だ』
「……命令を遂行します」
トキとて、思う事がない訳ではない。
しかし、それはリオの専属ボディーガードとして考えることではなく、仮に考えたとしても自分では及びもしない苦難をリオが抱えている事を知っている為に、全力を以てC&Cの面々に圧倒的な暴力を向ける──例え、この果てに自分が嫌われる事になろうとも。
C&Cの面々がトキとの戦闘を開始している頃、『先生』を含む本隊は地下鉄を利用したエリドゥへの侵入路から、ヴェリタスの助けを受けアリスが囚われているであろう中央タワーへと走っていた。
“ふぅ、ふぅ……全力ダッシュは疲れるね!”
「先生大丈夫?少しだけ休む?」
“いや、今は少しでも急いだ方がいい。おそらく、アリスが起こした事件は向こうにとっても予想外の出来事だった筈……なら、まだ準備は全て終わっていないだろうからね”
息を切らしながらも、アビドスの一件からデスクワークばかりではなく、ちょっとした運動やシロコとのライディングを取り入れた『先生』は、明日の筋肉痛に怯えつつも、その足はしっかりと前に向かって動いている。
『不法侵入とは……とても『先生』がしていい所業とは思えないが、その辺りはどの様なお考えで?』
中央タワーまであと、半分といったタイミングでエリドゥに配備されているスピーカーから、バイステンダーの胡散臭い声が響き渡ると同時に、ビルに隠されていた防衛設備が次々と顔を覗かし、『先生』達をターゲットに捉える。
“アリスを返して欲しい。彼女は私の生徒だ”
『ほぅ。リオ嬢から滅びを招く存在だと教わっている筈だが、どうやら考えは変わっていないらしい』
“君には私の考えが変わらない事なんてお見通しだろう?だから、こうして話し合うより早く、武器を展開した……脅しとはらしくないね”
『ククッ、我々は我々のやり方でキヴォトスを救おうとしているだけだというのに』
「馬鹿な事を言わないで!!アリスを犠牲にする方法が、正しいなんて私、信じない!!」
「お姉ちゃんの言うとおりだよ。会長も貴方も間違ってる!!」
モモイとミドリが割り込む様に溜め込んでいた不満をぶつけると、通信の向こうから小さな溜息が溢れる。
「むっ、なにさ!私達はアリスとずっと過ごして、どんなに良い子かよく知ってるもん!!」
『良い子が部室を壊すほど暴れ、他人に怪我を負わせると?ククッ、随分と変わった定義を持ち出すのだなモモイ嬢』
「そんな事はどうでも良いの!!私はアリスに会いたい!!このままさよならなんて、バッドエンドが嫌なだけ!!!!!」
『……もはや、まともな議論ですらないな。だが、バッドエンドが嫌なのは同意しよう』
彼らの視線の先、中央タワーの屋上から何かをぶら下げたヘリが飛び立ち向かってくる。
遠目からでも、ぶら下げられているものは独特な形状をしていたが、近づくとソレが独創的では、少し表現しきれないモノである事が分かった。
『君達の望む結末とリオ嬢が望む結末は完全に分岐し、交わらない。故に、望む結末に辿り着きたければ私を倒して貰おうか』
ガシャンっと音を立てて、ヘリからワイヤーが外されぶら下げられていた機体が、地面へと着地するとギャリギャリと脚部に使われているキャタピラが唸り声を上げ、勢いよく『先生』達の前に迫り、四本ある腕の一つ、右腕下部に装着されたチェーンソーが火花を散らしながら彼らへと振り下ろされる。
「うわぁぁ!?」
「なんかあれ、ダサい外見だけど装備の殺意が凄くない!?」
「ちょ、直撃したら……」
「取り敢えず、これで……!」
ヒビキが迫撃砲を構え放つが、砲弾が直撃するより早く、左腕上部のエネルギーバリア展開装置によって展開されたバリアで防がれ、バイステンダーの駆るアバンギャルド君はその速度を一切緩める事なく左腕下部のバズーカから拡散弾を放ち、『先生』の生徒達を吹き飛ばす。
“……アロナ”
『はいっ!』
『先生』が居なければ圧倒的な暴力で決着がついた戦いだが、『先生』がアロナに触れると共に、全員が青白い光に包まれ、立ち上がる。
『漸く戦う気になったかね『先生』』
“押し通させて貰うよ。バイステンダー”
『ククッ、では私も本気でかかるとしよう』
その言葉と共に防衛設備が起動し、装備された弾丸が吐き出され、生徒達の動きを封じるとアバンギャルド君の最後の武装、右腕上部に装備されたレールガンが背中に装備された筒と連結しただでさえ、大きなアバンギャルド君を以てしても大きいと呼べるサイズの砲身を向ける。
「これは……なるほど、アリスの光の剣を解析したね?」
『この機体に合わせる為に少々、巨大化したがね。さて、これの威力はよく知っているな?』
長身の砲から溢れんばかりの電気が、漏れ出し辺りを青白く染め上げる。
“みんな、総攻撃を!!アレを撃たせたら不味い!!”
異なる正義を掲げる大人と子供達の戦いは始まったばかり……此処からより苛烈に戦いは混沌を深めていく事となる。
改修アバンギャルド君装備
右腕上部:レールガン
右腕下部:チェーンソー(刃を潰し、電撃を纏っている)
左腕上部:エネルギーバリア展開装置(展開時は緑色のシールドが展開される)
左腕下部:拡散バズーカ砲
ゲーム的な性能
基本は、バズーカ砲による砲撃をばら撒く。チェーンソーは、範囲内の生徒にダメージを与え、後方へと吹き飛ばし10秒間のスタンを与え、展開されるシールドは生徒のEX攻撃を一度防ぐと消え、30秒後再展開される。
タイムオーバー、2分50秒辺りを経過するとレールガンの充電が終わり、問答無用で全ての生徒を吹き飛ばす。
シールド消滅後は、ダメージの通りが良くなる為、ミカで吹き飛ばすのが攻略最適解
ちなみにまだ、何か隠された装備があるらしい
感想やここ好き待ってるぜ!!