便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア   作:マスターBT

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漸くきたゲマトリアメイン回


ゲマトリア会議

「お久しぶりですねバイステンダー。キヴォトスはどうですか?満喫しておられます?」

 

「観光大使か何かかね?黒服」

 

 正直に言えばゲマトリアの会議に出席する時間は惜しいのだがサボり続けて敵対した結果、便利屋68の面々を危険に晒すのも本意ではないから足を運んだが私を待っていたな黒服め。折角、時間ギリギリに来たというのに台無しではないか。

 

「貴方より先にキヴォトスに足を運んでいますからね。それなりに詳しい自覚はありますよ」

 

「ほぅ。なら、美味い甘味がある場所を教えて貰おうか。土産として持ち帰りたいのでな」

 

「クックックッ、貴方が今アルバイトとして在籍している便利屋にですか?」

 

「あぁ」

 

「なるほど。それならばちょうどこの近くにある百鬼夜行連合学院の自治区にある百夜堂に寄るといいでしょう。キヴォトスでも名の知れている喫茶店ですよ」

 

 どうせゲマトリアの活動ばかりだろうと無理難題のつもりで発した質問にあっさりと答えが返ってきて思わず、会議室に向かう足を止めて黒服をマジマジと見てしまった。

 ビナーが連なるデカグラマトンにてっきりかかりっきりだと思っていたが、存外黒服には余裕があったのか?確かに他の連中よりはまだ周囲を利用しようとするタイプだが……いやそれにしても喫茶店を利用してる姿が微塵も想像出来ない。

 

「クックックッ、やはり貴方はキヴォトスに来て正解だった様ですね。退屈以外の表情を見せていなかった貴方がその様な表情を見せてくれるとは予想外でしたよ」

 

「……駄目だな。何度想像しても喫茶店にいる黒服がヴァルキューレに連絡される姿しか想像出来ない」

 

「ンンッ、貴方の中での私がどうなっているのか気になるところですがどうやら到着したみたいなので次回にしましょう」

 

 プシュという軽い空気抜けの音がその部屋の秘匿性を示しているのだが同時に漂ってきた嫌な香水の匂いに顔を顰める。

 関わっている異性が軒並み子供達であった弊害だなこれは……内面の醜さを覆い隠す為の着飾った香り。これを品の良い香りと称する者も多いらしいが私にはどうにも鼻が曲がる陰湿な匂いにしか感じられんな。

 

「おや漸く来ましたか。子供のアルバイトなんぞに付き合っているのだから時間なんて有り余っているものかと思いましたが、どうやら子守りに忙しい様で。良いですねぇ……仕事をサボれる人は」

 

「マエストロ、ちょっと良いかね。君の作品である複製の技術を聞きたいのだが構わないか?」

 

「珍しいな貴君からの要請とは」

 

「少しばかり考えがあってね。無論、マエストロが嫌と言うならば引き下がろう。私自身、信頼関係の構築に疎い自覚はあるとも」

 

「……完成品ではなく技術を欲しているのならば教えよう。芸術とは模倣から始まるものだ」

 

「感謝する」

 

 マエストロの技術が何処まで流用可能かは不明だが、感情からそして教義から実体を生み出せる技術は私の計画の為にも通じる部分がある。そこから私の分野である神秘と科学の融合を何処まで重ねられるかが問題ではあるが、先ずは元を手に入れなければ話にならない。

 

「……遅れてきて無視とは良い度胸ですねバイステンダー」

 

「なんだ私に話しかけていたのか。同時に入室したのは黒服も同じの為、気が付かなかったな。すまなかったベアトリーチェ」

 

 分かりやすい本音(建前)を語りながらベアトリーチェにもっとも遠い場所でいつもの椅子を取り出して座り、片手で本を開く。

 

「キヴォトスでのごっこ遊びを随分と楽しんでいる様で。眺めるだけの時間を終えたかと思えば、次はお人形遊びですか?」

 

「ククッ、女王様気取りでご満悦な君が言うかねベアトリーチェ」

 

「……なんですって?」

 

「まぁまぁそこまでにしておきましょう。我々で啀み合っていても話は進みません。先ずは各々の成果の発表から始めましょうか」

 

 私としては単なる真実を突きつけただけなのだが、黒服の言う事は一理あるしこのまま全員の成果を黙って聞いていることに決めたのだが入室時点で明らかにテンションが高い者が居ない時点で察していたが、各々の報告は今まで通り多少の成果はあれど各々が求める崇高には程遠いという事が改めて共通認識となるだけであった。

 

「では最後にバイステンダー。貴方は何かありますか?」

 

「そうだな。見ているだけでは不明だったキヴォトスの神秘にある程度の解釈をした事と、無名の司祭が遺したオーパーツの一つと緩やかな共闘関係を結んでいるというだけだな。先に言っておくが、黒服。貸さんぞ」

 

「おや残念。無名の司祭のオーパーツであれば研究に使えると思ったのですが」

 

「私の支配下にある訳ではないからな。あくまで共闘関係だとも」

 

 それに黒服にケイを貸してしまえば、もう二度と戻って来ないかもしれん。私と共同で計画を進めている以上、ここでケイを失うのは本格的に時間が足りなくなる。

 

「ただ眺めるだけであった貴君がどの様な記号を見出したのか興味がありますね」

 

「そういうこった!」

 

「ふむ。そうだな、それくらいであれば今この場で語るのも悪くはない。私が見出した神秘の解釈は『可能性』だ。なぜ、我々大人には神秘が備わらずキヴォトスに生きる子供達にのみ神秘が宿りそして個人で差があるのか。この何故を数多の物語を見届け、実際に体験する事で私は子供が故に持つ未来への『可能性』が神秘として具現化していると定義させてもらった」

 

 大人は言ってしまえば既に自身の在り方を定めた存在だ。私がゲマトリアであり、『先生』が『先生』である様に。結果、大人は自らの可能性を一つに絞ってしまうが故に可能性が極めて少ない状態で固定される。

 しかし、子供は違う。これからの経験で如何様にも何者に転じる事が出来るために無数の可能性を秘めている。総量に差があるのは子供といえど持ち得る天性の才能や思考パターンによって伸ばせる領域に限界があるからだろう。

 そう考えるとキヴォトス最高の神秘を持つ小鳥遊ホシノの存在が一気に気になってくるが、今は彼女に関わる余裕はないな。

 

「黒服の契約が生徒を縛る事が出来るのも、契約という縛りで可能性を制限出来るから。そして、私のホルスの義眼が数多の世界を覗けるのも神秘そのものが可能性であるから。理屈は通っているだろう?」

 

 やはりゲマトリアというのは根っからの研究者集団だな。私の言葉を受けてあのベアトリーチェまでもが全員、思考を巡らせ私の主張が通るかどうかを精査している。

 暫くの沈黙の後、口を開いたのはやはり私と視点が似通っている黒服であった。

 

「貴方の解釈であるならば恐怖とは可能性を失った状態となる訳ですが、ならばどうして恐怖は神秘と同様に観測が出来るのですか?」

 

「可能性を全て失った存在というのは否定しておこう。可能性とは成功と失敗両者を併せ持つものだ。だが、そうだな黒服の質問に答えを出すのなら恐怖とは可能性を簒奪するが為に観測できる代物だとでも」

 

「……なるほど。バケツ一杯の水が穴を開けられる事で減るという結果から穴の存在が分かるのと同じというわけですか。クックックッ、興味深い」

 

「可能性……簒奪……これは良い作品が作れるやもしれない」

 

「虚像と非実在とは似ているがまた別の見解……なるほど可能性と簒奪……面白いですね」

 

「そういうこった!」

 

 ふむ、この面々から目立った反論がないという事はある程度の正しさは立証されたとみて良いだろう。そこのベアトリーチェは難しい顔をしているが私と根本的に考え方が異なる以上、言わんとしている事は分かるが理解は出来ないという感じとみて良いか。

 

「っと思考を深めるのも良いですが、次の議題に移りましょう。近々、キヴォトスでエデン条約と呼ばれるゲヘナ・トリニティ間で結ばれる条約の調印式が行われてるという話を聞きましたが、ゲマトリアとして介入を行うかどうかですが」

 

「ベアトリーチェに頼まれた物は用意できた。私が介入するのはこの程度だろう」

 

「同じく」

 

「そういうこった!」

 

 マエストロとゴルゴンダ・デカルコマニーは何かベアトリーチェから提案を受けていたのか。ふむ、それにしてもエデン条約か。また『先生』の出番がありそうな案件な気がしてきたな。どうにか参加する手段はないだろうか。

 

「おや、皆さんも提案が持ち掛けられていたのですか。私の方もオーパーツを一つ貸しましたよ」

 

「つまり除け者は私一人と」

 

「何度も連絡を無視したのは貴方でしょうバイステンダー……まぁいいでしょう」

 

 そういうとベアトリーチェは何やら端末を操作すると共に私の持つ端末がピコンっと通知を告げる……さすがにこの会議にケイを連れてくる訳にはいかなかったが、こうなるなら連れて来て無視するべきだったか。

 

「……なんだこれは。地図かね?」

 

「大規模な物を貴方から借りる事はないですが、知恵くらいは貸しなさい。貴方であればその状況からどの様に兵を使います?」

 

 地下にあるものが目当ての代物か?教会を連想する間取りだが、なんだこの敵性存在の多さは……神秘の総量が少ない生徒達とはいえ、この数をたった三名でどうにかしろと?馬鹿なのかこの女は。

 

「……圧倒的に手数が足りないのはわざとかね?」

 

「作戦の全部を貴方に見せるわけないでしょう」

 

「やれやれ……そうだな。手数に劣るのなら徹底的にゲリラ戦をするべきだ。幸い、市街地も近いのだから適度に数を減らしていき駆け抜けるだけの穴を作れれば、地下に行けるだろう。その後の事は知らん。どうせ何かあるのだろう?ベアトリーチェ」

 

「えぇまぁ……貴方でもゲリラ戦に徹すれば勝ちの目があると思うのですね?」

 

「そうだな。ざっと見た限りそれくらいの力量はあるだろう」

 

 というかこのデータの一人、錠前サオリだな?私を殺そうとした生徒を見せつけてくるとは、さすがは性根が腐り倒した女だな。

 

「なるほど……黒服、ゲマトリアとして介入する必要はありませんわ。ワタクシだけで成し遂げてみせましょう」

 

「そうですか。では、本日の議題はここまでとしましょう。あとは、個人的に話をするのならお好きに」

 

 黒服が締め括ると同時にベアトリーチェはさっさと退室していき、私とマエストロは複製に関しての情報共有を行い軽く、ゴルゴンダ・デカルコマニーと共に知見を深めた。

 

「こちらのショートケーキがお薦めですよ」

 

「実は暇人だったりするのかね黒服」

 

 何故か黒服と共に百夜堂に行き、彼のお薦めと私が気になったものを数点購入し便利屋68へと戻るのだった。

 ちなみにお薦めだけあって、ショートケーキはかなりの美味であった。相当、通い慣れているな黒服め。




バイステンダーから見たゲマトリアへの評価

黒服→視点が似ている相手。ゲマトリアの中ではもっとも話が合う

マエストロ→芸術とやらは詳しくは分からないが、面白い解釈だとは思う

ゴルゴンダ・デカルコマニー→仕事仲間だな

ベアトリーチェ→香水の匂いが好きじゃない。あと、普通に嫌い。

ゲマトリアから見たバイステンダーへの評価

黒服→良い友人ですよ。ただ、表情が豊かになってるのは少し心配ですね。

マエストロ→雰囲気が変わったな。以前より接しやすい。

ゴルゴンダ・デカルコマニー→新たな解釈を聞けるのであればもっと関わりを深めておくべきでしたね、そういうこった!

ベアトリーチェ→可能性?意味が分からない。やはり理解し合えない相手ですね。
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