便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア   作:マスターBT

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……あれ?なんか湿度が……あれ?


いぇーい!今回の主役はムツキちゃんだよ!

「鷹さーん!ご飯だよー!ってあれ?寝てる?」

 

 ゲヘナにこんな天井まで届く立派な図書館があった事にも驚きだけど、本当にこの三日間ぐらい図書館に篭りっぱなしの鷹さんにも驚いたよね。

 まぁ、カヨコちゃんはどっちかと言えばまた無理をして……って感じで呆れていたけど妙に絵になるというか、奥さんっぽくて揶揄ったら怒られちゃった。

 

「おーい鷹さん?」

 

「……んぅ……」

 

「ありゃりゃ、ぐっすりだ」

 

『ムツキ室長。彼の睡眠時間は現在、一時間弱ですのでこのまま寝かせてあげてください。徹夜続きですから』

 

「なるほどねぇ……道理で突っついても全く起きない訳だ」

 

 『先生』もそうだけどヘイローが無いのに結構無茶をするよねぇ大人って……庇って貰った私が考えることじゃ無いかもだけどさ。

 あ、意外と頬っぺたが柔らかいんだね鷹さんっていうか、このヒビ割れた鷹の仮面どうやってくっ付いてるんだろ?がっつり机に突っ伏してるのに、全くズレてないよねコレ。

 

「くふふっ!折角だし寝顔の一つでも一枚撮って皆に共有をっと」

 

 大人としての矜持なのか基本的に私達が眠るまで寝ないし、起きるのも早いから鷹さんの寝顔って彼が怪我をした時くらいしか見れなかったんだよねぇ、しかもそんな状態で眠るからこんな安らかな寝顔を見たのは初めてかも?

 

『ムツキ……何やってるの』

 

『バイステンダーが素直に寝てるなんて珍しいわね。起こさないようにね』

 

『お疲れなんですね……』

 

 皆の反応は……うん、大体予想通りだね。

 カヨコちゃんは一緒にピースで写り込んでる私に突っ込んで、アルちゃんはいつも通り労って、ハルカちゃんは自分の感想を溢す。

 

「さてと……どうしようっかなー。私も一緒にご飯を食べるつもりだったし、この後の時間空けてるんだよねぇ」

 

 アルちゃん達も風紀委員会に依頼って形で出向してるから、戻れば居るんだけど書類仕事は退屈だしなぁ……それに当たり前だけど風紀委員会の子達も居て真面目な空気が強いから揶揄って遊ぶ事も出来ないし!

 だから鷹さんを弄って遊ぼうかなって思ってたけどぐっすりだしなぁーうー、つまらないよぅ。

 

「まーた無理してるんだろうねぇ……多分、私達の為に」

 

 悪い大人って言ってる癖に基本的には私達の為に動いてるの知ってるんだよー?

 私を庇った時もそうだけど、ヘイローのない弱い身体で私達の為に身を粉にして……そういうところ『先生』もあるけどあの人は分かって自分を投げ捨てに行ってる分、まだ鷹さんよりマシだよね。

 

「ねぇねぇ、ケイちゃん。調べ物って何してるの?」

 

『主にトリニティの歴史ですね。特にユスティナ聖徒会に関してが重点的かと』

 

「ふぅん。じゃあ、私も暇だし手伝ってあげよ!」

 

 えっと、多分このノートがそうだねぇ……うわっ、すごい文字がびっしり書かれててザックリでも内容を把握するのに時間かかりそうだ。

 それでもまぁ、退屈な時間を潰せて起きた時の鷹さんの反応を見れるのなら何も苦じゃないかな。

 

 それから大体、二時間ぐらいの時間が経ってムクリと鷹さんが起き上がった。

 

「あ、起きた?やっほー、ムツキちゃんだよー?」

 

「……ん?ムツキ室長。何故、此処に?」

 

 うわぁー、これは完全に寝惚けてるね……こんなふっわふわな鷹さんの声は初めて聞いたよ。

 

「鷹さんのご飯を持ってきたんだけどねぐっすりと気持ち良さそうに寝てたから、優しい優しいムツキちゃんはこうして待ってあげていたんだよっ!」

 

 ぼーっとしてるからノートを目の前で広げながら見せてあげたけど、大丈夫かな?何回かパチパチ瞬きをしてるけどもうちょっと寝かせた方が良いかなこれ?

 

「……ん、あぁ。それはすっかりと寝入ってしまって悪い事をしてしまったな。私の調べ物もどうやら手伝ってくれたようで助かるよムツキ室長。ところで、ケイには来客があれば起こしてくれと伝えてある筈だが」

 

『そうでしたか?私も私でやる事があったので聞こえませんでした』

 

「はぁ……まぁ久方ぶりの読書で限界を見誤った私に非があると思う事にしよう」

 

「まぁまぁ、ケイちゃんも心配だったんだよねぇ?」

 

『……』

 

「無言は認めてるようなものだよー?」

 

 もぅ、ケイちゃんってば可愛いんだからー!

 っと、鷹さんもやる事があるんだしあんまり時間を無駄にさせる訳にはいかないよね。

 

「はいっ、ムツキちゃんの手作りサンドイッチだよ!ハムとレタス、それにチーズを使ったオーソドックスなやつだからソースとかが溢れる心配もなく調べ事の片手間でも食べれるよ」

 

「ほぅそれは有難いな。今はあまり時間を無駄には出来ん」

 

 やっぱり凄く忙しいんだねぇ鷹さん……んー、ほんとは遊びたかったけど真剣な表情を見る限り今は誘っても断られそうだなぁ。

 

「……だがまぁ、気分転換も無しというのも効率が悪いな。ムツキ室長、何か良いものはあるかね?」

 

「えっ!?遊んでくれるの!」

 

「サンドイッチを食べて食休みをしている間はな」

 

 前から悪い大人らしくない優しさを見せる事はあったけど、今みたいに発言の奥に何一つも打算がない姿を見せてくれる様になったのはミレニアムから帰って来てからとても増えたんだよね。

 何かのキッカケがそこにあるんだと思うけど……それが少しだけ悔しいなぁって思っちゃうのはムツキちゃんだけの秘密。

 

「それじゃあねぇ……あ、オセロ持ってきたからやろやろ!」

 

「良いとも。では私は黒を選ぼうか」

 

「じゃあ私が白だね」

 

 パチンパチンと少し癖になる音を立てながら、交互に黒と白の石を置いていきながら本当にたわいの無い話……アルちゃんが格好良くサインをしようとして書類を破いた話とかカヨコちゃんと風紀委員の副委員長が意外と仲が悪いみたいで、口を開けば牽制し合う様な口論をしている事、ハルカちゃんに他の風紀委員会の子がビビっちゃってそれにショックを受けている事、みんなが籠りっぱなしになっている鷹さんを心配してる事などをゆっくりまったりと話をしてそろそろかなーって思ったからちょっとだけ踏み込んでみることにした。

 

「ねぇ、鷹さん。サンドイッチ美味しかった?」

 

「ん?あぁ、とても美味しかったとも。また機会があれば作ってくれると嬉しいぐらいにはな」

 

「くふふっ、上手だねぇ鷹さんは!」

 

「ククッ、本心だとも」

 

「……じゃあその本心ついでに聞きたいんだけどさ。鷹さん、私達に隠してることあるよね?」

 

 ほらやっぱり。

 鷹さん、凄く賢いし嘘を吐くのが上手なのに不意を突かれるとそうやって固まるよね。

 

「最近の鷹さんはどこか生き急いでいるというかそんな雰囲気があったんだよね。今だってすっごい沢山の調べ物をしてるけどさ、私達の仕事はあくまでエデン条約が結ばれるまでの警護だよね?風紀委員長直々ってのが少し怪しいけど、それでもこんなに歴史を漁る必要はないはず……ねぇ、鷹さん。一体何に怯えているの?」

 

 パチンっと黒の石が置かれて白の石が横一直線に塗り替わる間、鷹さんは何も言わなかった。

 角が二つ取られちゃったなーなんて事を考えていると顔を上げた鷹さんと目があって──あぁ、駄目なんだって悟った。

 

「君達を裏切る様な事はしないさ。ムツキ室長に話すには私の中で確証が足りていないのでな、不確定な情報で不安を煽るよりはこうして私一人が無茶をしている方が被害が少なくて良いだろう?」

 

 そう言って笑う鷹さんの顔は、あの時私を不意の狙撃から守ってくれたものと同じだったから。

 

「……じゃあ、確証が取れたら教えてくれるの?」

 

「あぁ。約束しよう」

 

 パチンと黒の石が置かれて、オセロの色は誰がどう見ても黒色が多く私の負けだった。

 

「それじゃあ私はこれでまた調べ事に戻るとしよう。皆によろしく伝えておいてくれ」

 

「はぁーい。鷹さんもしっかり休むんだよ」

 

「ククッ、ご忠告痛みいる」

 

 持ってきた物を全部片付けて、いつもの様に笑って鷹さんに手を振れば彼も同じように胡散臭い笑みを浮かべながら手を振り返してくれる。

 名残惜しいけどこのまま此処に居ても出来る事は何もないから図書館から出て──

 

「……怯えているように見えるのだな今の私は──」

 

 ──そっか、心配すらさせてくれないんだね……ずるいよ鷹さん。

 ほんの少しの間だけ出てすぐの所から私は動けなかった。

 




ムツキって距離感を取るのがめちゃくちゃに上手いので、多分相手が踏み込んで欲しくないってアピールすると踏み込めなくなっちゃう子だと思うんですよね。そしたらなんか湿度が上がった……

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