便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア   作:マスターBT

51 / 144
はい。こいつ、また趣味に走ったなと思ってください。




「傭兵を募ろうと思い足を運んだのだが、まさか君達が入院をしているとはね。連絡の一つでも寄越してくれれば見舞いや入院費ぐらい支払ったというのに」

 

「ハーハハッ!!貴方ならそう言うと思っていたからな。少々別件があると断ったのだが……まさか気分転換に風を浴びに行ったグリーンが見つかってしまうとは。流石のレッドの目をしても見抜けなかったぞ」

 

 それはコチラのセリフだカイテンジャーレッドよ。

 一通り、納得のいく形で調べ物が終わった為にブラックマーケットに足を運んでみればまさか病院に彼女らが居るとは思わなかったのだからな。

 

「頼む筈だった依頼はアビドスの生徒が完遂してくれた。それで私に連絡をしなかったという事は、君達が手傷を負う原因になったのは私だな?」

 

 そもそもカイテンジャーの者達は側から見れば、巫山戯ていると思われる格好をしているがその実力は極めて高くはっきり言って私の指揮が無くとも、並大抵の連中に負けるとは思えず、更に言えば逃げの嗅覚も優れている彼女らが危機を察知出来ない程に上振れている敵などこのキヴォトスでは多くない……故に私への連絡を絶っていた事から考えられる敵はただ一つしかない。

 

「アリウス。錠前サオリが率いる者達だな?」

 

 私がそう問い掛けると意志の強い赤い瞳を盛大に泳がせながら、レッドは認める様に小さく頷いた。

 周りを見渡せばレッドと同じ様にそれぞれの色を主張する瞳がスッと私の視線から逃れる辺り、真実なのだろうと察する──入院という事で彼女達は今、揃って素顔でありベッドに目を向ければ彼女達の本名も分かるのだが、それをするのはズルな気がして名前を見ずにいつもの様に彼女らを呼んでいる。

 

「申し訳ない。私が原因で君達に不必要な損害を与えてしまった事を此処に謝罪する」

 

「……頭を上げてくれ。正義の為とはいえ非合法な手段を取る時点で今回の様な事が起きるのは皆、覚悟の上だ。それに我々は資金面や技術面で貴方から支援を受けている以上、優秀なパトロンを命欲しさで売るなどという不誠実な事が出来るわけがない」

 

「そうですね。我々だけではあのロボを完成形に持って行くのにもっと時間を費やしていたでしょうし」

 

「それに残業代もしっかり払ってくれていますし」

 

「浪漫を追い求める者同士、これくらいは安い安い!」

 

「まぁ、そんな感じ。私達は私達の正義に従っただけなので」

 

 レッドを皮切りに次々とカイテンジャーから告げられる言葉に思わず、呆けてしまったがそんな私の姿を見てクスクスと笑う彼女らを見て私も釣られて笑う。

 

「やれやれ……全く大人である私が恥ずかしく思えるほど強いな君達は」

 

「当然だな!我々は正義のカイテンジャーなのだから!!」

 

 大衆向けの正義では無い気はするが。まぁ、私がとやかく言えた立場ではないな……しかし、反射なのかもしれないが名乗ると同時にポーズを決めようとして痛みで悶絶する姿は中々に情けないと思うぞ?

 

「ンンッ、まだ傷も癒えていない様だし手短に行くとしよう。君達を襲撃した者達の具体的な装備と戦術を教えて欲しい」

 

「うぐぐ……やはり彼女らと一戦構えるのだな」

 

「あぁ。その為に少しでも情報は多い方がいい」

 

「分かった。先ずは──」

 

 ゲリラ戦が巧みであり、気が付けばいつの間にか罠を構築され不意を突かれたかと思えばそれ一辺倒ではなく、単純な白兵戦もまた強かったとレッドは錠前サオリを評価し、そんな彼女に同行する様に立っていたもう一人の女子生徒は傷を隠す為なのか包帯を巻いていたが、決して動きは悪くなく大きなロケットランチャーの様な武器の割には俊敏に動き、錠前サオリの罠の安全圏を潰す様に地面に拡散される特殊な弾は確実に此方の自由を奪う脅威であったと続けた。

 

「総じて連中の準備が整っている状況というのが厄介だな。先ずは連中の想定を崩さなければ勝ちを拾うのは難しいだろう」

 

「なるほど……概ね、我々の予想通りというわけか。ありがとうカイテンジャー諸君、これは情報料だと思って受け取って欲しい」

 

 紙袋一杯の現金をすぐ近くの机の上に置くと、中身を察したのであろうレッドと目が合い途端に呆れた表情を浮かべるが何も言う事はなかった。

 

「ではな。ゆっくり養生してくれ」

 

「我々が言う事ではないとは思うが」

 

「ふむ?」

 

 病室から出ようとした時に投げかけられた言葉に振り返ると、なんと全員が私を見ており少しばかり驚く。

 

「「「「「死ぬなよ」」」」」

 

 ……先日のムツキ室長の時もそうだが、今の私はどれだけ危うそうに見えているんだろうな。

 無論、私も自らの命を簡単に捨て鉢にするつもりはないのだが。いや、この命を捧げる事で『先生』や便利屋の皆を救えるのなら私は喜んでこの命を差し出すのだろうな。

 だから彼女らは私に釘を刺すのだろう。

 

「気をつけるとも。まだこのキヴォトスには面白い事が多いからな」

 

 

 

 

 

 

『キヴォトスで全てを失い、未だ燻る者達へと告げる。これはこの地に広く強く根付く君達への依頼である』

 

 突如として発せられた通信はキヴォトスにおいて、学園という拠り所を失った者達が似た繋がりを求める為に使用している独自の回線によって齎されたものであった。

 大手を広げて扱える代物ではない為に、酷く音質の悪いその通信は不思議な事に今回に限ってはとても明瞭で一語一句足りとも聞き逃すことを許さない様に感じられた。

 

『君達は嘗ての己が犯した罪或いは、他者から向けられた悪意によって本来在籍している筈の学園からその地位と名を剥奪された者達であり、並大抵の努力では普通の暮らしを送る事すら出来ない』

 

「んだよ。この通信……私らを馬鹿にしてんのか?」

 

 通信を聞いた一人の傭兵が呟けば周りも同意する様に言葉を返す──故に発された言葉に理解が追いつかなかった。

 

『私は君達に依頼を出したい。応じてくれるのであれば前金として一人頭五十万を支払い、見事に達成した者には二百万の報酬と私が出来得る限りでのキヴォトスにおける生活を保証しよう』

 

 前金と達成報酬が狂っていると誰もが思った。

 しかも、この放送をしている奴の発言が正しいのであればキヴォトスにいる全ての傭兵に届いている……成功した者が半分であったとしても成功報酬を払うだけでとんでもない金額が飛んでいく事となるのだから。

 

『但し、前金を貰ったのであれば撤退を許す事は出来ず更には引き受けてもらう仕事の危険度も高い。その上で、君達には私の依頼を受けるかどうかを考えて欲しい』

 

「……なるほど?支払うだけのリスクはあるって訳だ」

 

 ブラックマーケットの路地裏で座り込み、粗悪な煙草を吸っていた傭兵がニヤリと笑い立て掛けてある愛銃を手に取ると立ち上がる。

 

『天使と悪魔が手を取り合う式典に楽園からの追放者が乱入する。君達はその戦いに持たざる者達として私の指揮下に入り戦って欲しい。歴戦の君達であっても手痛い傷を負い、不運な者は死に至る可能性もあるだろう──しかし、その様な戦いだからこそ君達が底より這い上がる絶好のチャンスとなり得ると私は君達に提案する』

 

 戦場が何処であるかなど、胡散臭い男の声と共に告げられた言葉で傭兵達は理解し総じて頷いた──トリニティとゲヘナ、この両者が手を取り合おうと言うのだから気に食わないと考える者が居ても理解出来ると。

 

『今一度問おう。キヴォトスに燻る全ての者達よ。自らの運命を変えたいと願うのであれば、明日の夜にこれから告げる座標にある使われていない廃倉庫へと来るが良い。私の名はバイステンダー、傍観者を気取る愚かな大人であり君達に手を差し伸べる悪い大人だ──青い空に再び、力強く羽ばたこうとする鴉が一匹でも多い事を願うよ』

 

 通信が終わり暫くの間、傭兵達はこの巫山戯た依頼を受けるのどうか迷い、そして力に絶対の自信がある者、目先の利益に飛び付いた者、もはや縋れるのであれば罠でも構わないと言った者達が指定された場所へと集い、総勢100の群れを形成する事となった。

 

「ようこそ。君達には今から配る首輪を嵌めてもらう。事前の通告通り、前金を貰い逃亡という手段を取らせない為の、まぁ発信機だと思ってくれたまえ。作戦開始時に不在、或いは破壊を試みた時点で君達の情報を然るべきところへリークするのでそのつもりで」

 

 この問い掛けにより金だけのつもりで来た者達が逃げ出したが、それでも数は八十を超えておりその結果にバイステンダーは満足そうに頷き首輪を付けた鴉達を見下ろす。

 

「では具体的な話に移ろうか鴉達よ」

 

「なぁ、それは私らって事で良いんだよな?作戦中もそれで行くのか?」

 

 路地裏で煙草を吸っていた傭兵が手を質問を投げかけると、バイステンダーは頷く。

 

「具体的な番号は後で割り振るが作戦中、君達のことは鴉と呼ぶ。私の事も鷹或いはイーグルとでも呼ぶと良い」

 

「ハハッ、なるほどなるほど。んじゃあ、鴉ワンとかじゃ格好悪いからよ私らもレイヴンと呼んでくれよ」

 

「ふむ……確かに其方の方が格好良さそうだな。ではレイヴン諸君、よろしく頼むよ」

 

 ヒビ割れた鷹に統制された鴉の集団が此処に結成され……そしてエデン条約を迎える事となる。




感想やここすき待ってるぜ!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。