便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア 作:マスターBT
本心を隠して醜い権力に溺れた欲と金の匂いをうっすい笑顔と濃い香水で誤魔化し、私達は仲良く隣人と手を取り合っていますなんて面で気に食わない奴を貶め排除するあの場所が。
「ハッハハハ!!ガスマスクなんぞで着飾って
イーグルの改造でスパイクみたいな銃剣になったが使い易いなこれ。
遮蔽物込みの戦闘だと傭兵的には嬉しくない弾を消費する事になってたが、コイツで近づいてしまえば接近戦なんて殆ど想定してないキヴォトスの連中のがら空きな腹に叩き込んで、気絶させる事が出来るのが傭兵好みだわ。
「グハッ!?」
「テメェらには哀悼の意を称するよ。トリカスに人生を狂わされたのも同情する──まぁ、明日の飯になってくれ」
トリニティが嫌になってゲヘナに行き、そこでも元トリニティって足枷が邪魔をして気が付けば路地裏で暮らす傭兵になった訳だが、結果的にこんなに面白い祭りに参加出来てるんだから人生って不思議だ。
『これは皆に聞いている事だが、何故私の誘いに乗った?命と安全を選ぶのならシャーレの先生を頼るのが最適解だ。事前の通達通り、私は君の命を保証しない。つまり、掃いて捨てる駒の一つとして使うだろう』
アリウスの生徒をまた一人ぶちのめしながら、ふとイーグルの野郎との面談を思い出して思わず吹き出しそうになった。
なんならあの時も腹抱えて笑って、突然笑い出した私をあの野郎は不思議そうに見て『何か可笑しな事を言ったか?』なんて尋ねるから面白くて仕方がなかったんだ。
『いやぁ悪い悪い。なにせ、誘い文句に悪い大人なんて言ってた癖に私の古巣より嘘の一つもなくてな。私の場合、トリカス共を見慣れてるのもあるが傭兵業をしてれば自ずと本音を隠した建前ってのに慣れていくんだ。そうでもしないと死ぬからな』
明らかに依頼内容と報酬が見合ってないなんてわかり易い地雷から始まり、妙にこちらを持ち上げる文句が多かったり真人間を装った狂人だったり内心では見下しまくってたりとそういうのに引っ掛かって二度と帰ってこない奴を何人も知ってる。
だからこそ、生き延びてる傭兵ってのは地獄を踏破出来る腕前か嘘と建前を見抜く事に長けている。
『だからまぁ、私の様な木っ端傭兵を一人の個人として見てる事が面白くてな?』
『……あぁ、なるほどそういう事か。だがまぁ、安心してくれたまえ君達一人一人に心を砕くほど私は善人ではない』
『でしょうね。必要になれば私を殺す命令を出すのがアンタという男ってのは態度で分かる。けど、誘い文句ほど悪い大人でもねぇだろ』
『ククッ。君の目にそう映るのなら私も随分と変えられたものだな』
目を細めて笑うイーグルからは親愛の情がはっきりと感じられて、そんなものを真正面から見せられているこっちの方が恥ずかしくなったくらいだ。
『私は私の大切な者を守る為に、君に死ねと命じる大人だ。それでも君は君自身の目的の為に私の駒になるかね?』
笑みを浮かべる事をやめ、真剣な表情へと切り替わり今更な事を尋ねてきた訳だが、こういう様式美が意外と大切な事をトリニティで知っている為に私も意識を切り替え、イーグルから渡された首輪を敢えて見せびらかす。
『この首輪に誓おう』
──慣れ親しんだ動きは回想に浸っていても撃ち切った弾倉を次の弾倉に切り替え、それと共に私の意識も今に戻ってくる。
この感じ……どうやらネームドを引いたな?ちょうど良い、ガスマスク連中だけじゃ退屈してたしネームドを落とせばたんまり金を貰えるだろう。
「はぁ……強いのはゲヘナの風紀委員長だけじゃなかったの?誰、アンタ」
「私か?そうだなぁ……是非、親しみと畏怖と絶望を込めて呼んでくれよ──」
『そうか。では、今より君のコードネームは──』
「『レイヴン9』ってな?」
「……は?呼ぶわけないじゃん」
アリウススクワッドの一人、戒野ミサキが引き連れるアリウス生徒は四人であり誰もがグレネードランチャーを装備した爆破特化構成だ。
それに対し、レイヴン9を名乗る傭兵が持つのはレッドウィンターで開発されたAKシリーズそのコピー品にスパイクを取り付けたアサルトライフルであり、優れた装弾数のため多対一のこの状況に適してると言えるが環境はアリウス側の味方をしていた。
ケイの活躍によってミサイルによるテロは最低限の被害に留められたが、爆発による影響をゼロにした訳ではない為に彼女らの戦場には無数の大きな瓦礫が転がり遮蔽物が多く、レイヴン9の攻撃はそれらに防がれるがアリウス側は纏めて吹き飛ばしてしまえる環境の為だ。
「しかしテメェらも数が多いなぁ。トリカスやゲヘナの自治組織が戦い始めてなお、髑髏ばっかり見えるわ。この辺は私が全部下したが、何処からともなく増援が来ても可笑しくはねぇな」
「……」
「会話する気なしってか。良いねぇ、こんな馬鹿騒ぎを企てる連中らしいや」
会話による時間稼ぎは寧ろ不利になると判断したレイヴン9は力なくぶら下げていた武器を即座に構え発砲。
アサルライフルを片手で、かつ0.5秒以下の速度で構えられた一撃は正確無比にアリウス生徒一人のガスマスクを砕き、開戦の狼煙をあげた。
「ッッ……周囲の瓦礫を纏めて吹き飛ばす様に攻撃。逃げ場を無くす事を意識して」
「「「「了解」」」」
「っはは、来なァ!!アリウス!!」
犬歯を剥き出しに戦意を昂らせるレイヴン9は、即座に身を屈め瞬発力にモノを言わせた走りで自身を包囲する様に放たれたグレネードランチャーによる攻撃を振り切ると、そのまま足を止める事なく愛銃を乱れ打つ。
先程とは打って変わり、狙いなど殆ど付けられていない攻撃はただの一人にも当たる事はなかったが先手として威力を見せつけていた事で、攻撃よりも防御を優先したアリウス生徒達は頭を下げ攻撃をやめる──それが狙いだという事にミサキだけが気がついた。
「攻撃を止めるな!」
彼女にしては珍しく、張り上げた声を出したが遅い。
アリウス生徒達が慌てて、顔を出した先にレイヴン9の姿はなく彼女達は困惑するが答えはすぐに上からやってきた。
「先ずはテメェを貰っていく!」
「なっ!?」
ガスマスクが破壊されている生徒の顔面を無慈悲に、取り付けられたスパイクが叩きつけられゴシャという嫌な音共に吹き飛ばされピクリとも動かなくなる。
このまま立て続けに敵を仕留めようと動くレイヴン9だったが、優れた直感に従い飛び退くとその場所にミサキのサブウェポンである軽量小型リボルバーの弾丸が数発着弾し、続く様にアリウス生徒達もサブウェポンを引き抜き発砲しながら距離をとる。
「チッ、さすがに反応が速いな」
「……トリニティだったんだ。品性が欠片もないからゲヘナだと思ったよ」
レイヴン9の制服を破る形で肩甲骨の辺りから伸びているのは、大きな黒と白が入り混じった羽根は彼女が忌み嫌うトリニティ生徒であったことの証。
それを不機嫌そうに羽ばたかせながらニヤリと嗤うレイヴン9は側にあったトリニティの看板を撃ち抜き、リロードする。
「元だ。二度とトリカスなんかと同じ括りにするんじゃねぇ」
強い怒りを顕にするレイヴン9であったが、その頭は何処までも冷え切っており先ほどの攻防で一人しか落とせなかった事に早速、想定がズレた事を認識し次の作戦を考え──無理、負けたという結論を導き出していた。
──数で負け、地形で負け、練度はまぁまぁ同じ?そして向こうのネームドはまだ表立って動いてないから力量不明ときたもんだ。せめてあと一人ぐらい落としていればもう少し未来はあった気がするんだがなぁ──
あの練度からして同じ手が通じる相手じゃないだろうしと思考を巡らせたところで、インカムに通信が入りあの胡散臭い声が聞こえてきた。
『レイヴン9、どうやら君の目の前にいる相手は私に少しばかり因縁がある相手の様だ。手が無ければ貸してあげるがどうするかね?』
「──はっ!策があるなら聞かせな。アンタの因縁も纏めて払ってやるよ」
『ククッ、それは頼もしい。では彼女らの攻撃に合せて君は全力で後方500mまで引きたまえ』
「了解」
逃げた先で何があるのかどうかをレイヴン9は聞かずに一つ返事をした──捨て駒にするのならすると良い、そういう条件で首輪を嵌める事に了承したのだから疑問は必要ない。
「何かある……とは言え、こっちは出来る事が少ないか。やれ」
レイヴン9の瞳に今までは違う色が生じたのに気がついたミサキだが、結局自分が率いる部隊は爆撃しか出来る事はなく敵が策を弄するのなら、その策ごと爆破するしかないと割り切り指示を出す。
ポンっとグレネードランチャーが一斉に放たれるのと同時に、レイヴン9は反転し身を屈めて走り出し跳躍と同時に先程の奇襲に使った種──フックショットを窓ガラスが割れたビルの窓枠に引っ掛けると煙が立ち上る空へと飛び上がり、羽根を羽ばたかせ滑空する。
「追いかけて。地に足がついたところを吹き飛ばす」
「「「了解」」」
キュルキュルと巻き上げるフックショットと、自身の羽根を使い器用に対空時間を伸ばしながら加速して逃げるレイヴン9と追いかけるミサキとアリウス生徒。
時折、地面やビルに足をつけるタイミングで爆撃が行われるがその爆風すら利用する様に羽根を広げ加速するレイヴン9の方が一枚上手であり、指定されたポイントまである程度の余裕を残しレイヴン9は着地した。
「着いたぞ。ここからどうするんだ?」
『君はただそこに立っていれば良い』
「ほー、私の丸焼きが出来上がらない確証があるって訳だ」
『あぁ。君は確かに捨てる様に使える駒ではあるがね』
何かを待つ様に言葉を区切るバイステンダーにこれから何が起きるのかワクワクするレイヴン9は自分を射程内に収める敵をジッと見つめ、僅かな光を反射する線に気がついて笑った。
瞬間、上にばかり視線が誘導され気が付かなかったアリウス生徒達はピンっとソレを自らの足で引っ張ってしまい、仕掛けられた爆弾が一斉に爆発し轟音と爆煙が巻き上がった。
『有能な駒を投げ捨てるほど愚かではないつもりだ』
「アッハハハ!!アンタ、私が飛ばずに来たらどうするつもりだったんだ?」
『フックショットの事は事前に聞いているとも。まさかあの状況で歴戦の傭兵である君が使わないなどという愚を犯すとは思えなくてね?』
「つまり考えてなかった訳だ!アッハハハ!!これは傑作だよ全くどの口が言うんだか!」
『ククッ、君がアレと一緒に吹き飛ぶのであれば無能な駒だ。ほら、嘘は言っていないだろう?』
詭弁だそんなものはと問い詰める事も出来たが、レイヴン9は面白くて仕方がなかった。
信頼しているの一言で済むものをこんなにも、悪意ある言葉に改変出来る大人が居た事に笑って笑って、久しぶりに心の底からゲラゲラと笑えた。
『ハルカさんが仕掛けた自慢の爆弾だが、恐らくネームドクラスはすぐに意識を取り戻すだろう。君はすぐに持ち場を離れ古聖堂の戦いに加勢して欲しい。どうにも連中まだ戦力を隠していた様だ』
「あいよ。たくっ、傭兵使いの荒い旦那だ」
懐から取り出した煙草に火をつけ煙を味わいながらレイヴン9は走り出す──安い煙草が妙に美味く感じられたのはきっと気のせいではないのだろうと笑みを深めながら。
プロフィール
名前:レイヴン9
フルネーム:そんなものは捨てた
レアリティ:☆3
役割:STRIKER
ポジション:FRONT
クラス:アタッカー
武器種:AR(56式自動歩槍)
鋭い目つきと肩甲骨の辺りから生える黒と白が入り混じった大きな羽根が特徴的な生徒。ほぼ原型はないがトリニティの制服を改造したものを着ており、真っ黒なその姿は名前の通り鴉を連想させる。
頭上に浮かぶヘイローは、灰色で見えにくいが二重に描かれた円に彼女の羽根と同じく大きな羽根が描かれたデザインをしており、まるで羽ばたく直前の鳥の様に見えなくもない。
というわけで趣味に走ったオリジナル生徒でした!!
感想やここ好き待っています!!皆様、良いお年を!!