便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア   作:マスターBT

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 ドレスヒナちゃんの笑顔に浄化され


“ちょっと私の両肩重くない?”

“カヨコ達はホシノがアビドスのラーメン屋に連れて行ってくれたから今がチャンスかな”

 

 研究漬けになっているリオやケイの代わりに、沈んだ表情を浮かべていたアル以外の便利屋68メンバーの気分転換としてホシノが連れ回しているみたいで今日もラーメン屋に行くと張り切っていた。

 本当は私がしなきゃいけない役割でもあるんだけど、彼が託したものを先ずは確認しないとね。

 

“えっと……この机かな”

 

 便利屋事務所の入り口に一番近い机……私物が少ないしパソコンとかの機械類ばかり、うん彼の机だね。

 さてと何処を探せば良いのかな?こういう時、大抵は一番大きくて物が入れられる下の段が相場な気がするけど……合ったよ、なんか四角い金庫みたいな機械が入ってる。

 

“ん?てっぺんに電光掲示板が取り付けられてる……『私は誰だ?』……もしかしなくてもこれが鍵なのかな”

 

 それっぽいとこ弄っても開く気配はないし、なんか弄ってたらご丁寧に横からキーボードがガチャガチャっとSF作品でしか見たことない展開のされ方して出て来たし、本当に浪漫が好きだね君は!

 

“普通に考えれば彼の名前を入れればそれで良いんだろうけど、多分違う気がする”

 

 なんて考えながらもこれって正解はもう思い浮かんでるんだけどね。

 彼の性格を考えればこの質問の答えは単純に、この机の持ち主を問いていると見せかけてそんな単純なわけがないと時間をかけさせるのが目的だろう。

 わざわざこの机を漁る様な相手がこの机の持ち主の名前を知らないとは思えないから。

 

“となると、ある程度彼を知っている者なら開けられる仕組み……つまり解答は『便利屋68のアルバイトバイステンダー』となる”

 

『……正解だ。どうかこれが役に立つことを祈っているよ』

 

“正解したら表示される文字変わるとかほんと手が込んでる”

 

 カチッという音に続き、プシュッと空気が抜ける音が聞こえ金庫の蓋が上に迫り上がるように回転しながら開いていく。

 ギミックが止まるまで待ってから、金庫の中身を覗くと何かの書類が先ず目に入ったので取り出して開いてみる。

 

『さて、これを読んでいるものが先生である事を先ず始めに祈る。隠している場所も、開ける為のパスワードも簡単なものだ。

 カヨコ課長やムツキ室長であれば、或いは開けてしまっているだろう……その際は疑心または好奇心に蓋をしてこの書類を元の位置に戻して欲しい。

 

 

 

 先生、貴方がこれを読んでいるという事は、私は既にこの世界を去っているか死に瀕しているのどちらかなのだろう。

 端的に言ってしまえばこれから私が語る事は私自身の死を避ける為に必要な手段に関してだ。

 知っての通りゲマトリアはこの世界に干渉する為に契約を用いるが、私はその契約によって元の肉体を失っているため肉体的な死因の他に契約不履行となっても私は死ぬ。

 ここまで貴方と便利屋68に気を許してしまっている私は正直、いつその死を迎えても不思議ではないのだ……だからこそこの書類を残した。

 私が姿こそ変われどこの世界で貴方達と共に生きる為に。

 

 その為の条件の一つだった『私の生死が不安定である』事に関してはこの書類に目を通している時点でクリアしている筈だ。

 もしも死んでいるのなら今すぐにこの書類を燃やして記憶から消してくれたまえ。

 

 第二に必要となる条件は『先生が私の力を心の底から望む』事だ。

 貴方には苦痛を強いるかもしれないが私の死を嘆いている者達を前にしても、決して貴方の善意でこれから知る事を実行してはならない……私を殺したいのであれば話は別だがね?

 

 三つ目の条件は、『新たな私を先生が名付ける』事だ。

 より安定した生命としてキヴォトスに降り立つ為の必須条件と言える事柄がこれだ。

 黒服から盗んだもとい、オマージュした契約書と封筒を同じ場所にしまっているから契約書に新たな名前を書き込み、封筒に先生の名を書き封をすれば完成だ。

 名前に関しては私のわがままとして是非とも萬屋(よろずや)を苗字に使って欲しい……便利屋というのは個人の名前には似合わないのでな。

 

 この三つが達成されていれば成功率は五十%といったところだ。

 確実性を求めるのであれば、先の三つの条件に加えて『便利屋68』が揃っている場面を選ぶと良い、そこが私の帰る場所だ。

 

 シッテムの箱と大人のカード、そして先生が揃っていれば私は恐らく貴方の生徒として再び、キヴォトスに肉体を得る事に成功するだろう。

 詳しい原理は無事に、私を呼び戻せたらその時に講義するとも……だから、頼んだぞ私の希望(先生)

 

PS:私が不完全な状態で消えた事でケイは自身の無力さを呪っているかもしれない。

 代わりに伝えてくれ、君は決して無力ではなく私に必要な存在であると』

 

“……うん!情報量が多いよ!?!?”

 

 驚きすぎてコメントとかする余裕なかったから一気に読んじゃったけど、多いって情報が。

 何かしら生き残る方法があるんだなって黒服との話し合いの時に思っていたけど、まさか生徒として私と契約する事で生き残ろうとは想像出来ていなかったよ?

 

“自分の死亡が可能性として孕んでた癖に、相談の一つもなかった事は後でみんなと一緒に怒るとして……私が君の力を心の底から望む事が条件とは難しい事を言ってくれるね”

 

 わざわざ彼がこうして明記をしているという事は彼が居ない事で感じているこの胸の内の不安感程度じゃあ到底足りないって事なんだろうなぁ……正直、私がというより辛そうなみんなの顔が真っ先に思い浮かぶ今はきっと彼の言う心の底からではない筈だ。

 

“私としてはすぐに使いたいけど『先生』としてその判断は間違っていると分かるのも辛いなぁ”

 

 それでも私はグッと我慢をして君が想定しているであろう来るべき場面を待つしかないんだね。

 ……本当に帰ってきたらなんて言ってやろうかいや、それとも彼に集って焼肉でもご馳走して貰おうかな。

 

“ふふっ、ケイが彼の想定を超えた成長を見せてるし無事に戻って来た時のリアクションが楽しみだな”

 

 よしっ、とりあえず可能性は繋がったし私は託された希望としての役割を成し遂げる事に注力しよう。

 わざわざ、ルビを振ってまで私を希望と呼んだのだからその期待にはちゃんと応えないとね大人としてだけじゃなく、友人の一人として。

 

『先生!ヴァルキューレからの連絡です!』

 

“ヴァルキューレから?繋げてアロナ”

 

『分かりました!』

 

『……あぁ、『先生』繋がりましたか。ヴァルキューレ警察学校公安部の局長、尾刃カンナです。本来であれば正式な場で顔合わせをしたかったのですが、この様な形になってしまった事をお詫びします』

 

 なんだろう……声からもう苦労人の気配が伝わってくるなこの子。

 

“大丈夫だよ。それで私に何か用事?”

 

『えぇ。既に連絡が入っているかもしれませんが、捕らえていた錠前サオリがティーパーティーの聖園ミカさんによって釈放されたのですが、彼女達がある地点で追えなくなりまして……これはただの私の勘なのですが何かこのままだと良くない気がしまして『先生』へとご連絡をと思った次第です』

 

 ……もう情報量の多さで頭がパンクしそうなんだけど。

 ただミカが何をしようとしているのかは想像がついた……私に知らせがないって事はナギサも一枚噛んでると考えて良いかな。

 普通なら生徒の成長を喜びたいんだけどなぁ!方向性がぶっ飛んでると言うべきなのか……

 

“教えてくれてありがとう。その件は私の方で引き受けるよカンナ”

 

『分かりました。その、ご苦労様です『先生』』

 

“君もねカンナ。それじゃあ私はこれで行くよ”

 

 通話を終了させて忘れずに、引き出しに入っていた必要な書類を回収してからリオへとモモトークで状況を知らせる。

 少しのやり取りでこっちの状況を察してくれた彼女はただ一言『任せて』だけ返信し、モニター上で必死な表情を浮かべて羅列している数字を睨んでいるケイの写真を送ってきた。

 

“頑張ってるみたいだね。ミカ達は恐らくアリウス分校へと向かっている筈……アロナ、道分かる?”

 

『少しだけ時間をください!先の襲撃で得られたデータから位置を割り出します!』

 

“さすがアロナ!優秀だね!!”

 

 となると私が他にするべき事は、便利屋68の子達に事情を説明するところからだな。

 先ずはアビドスに向かおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 再び、動き出した事態を前にして生徒や『先生』達の動きが激しくなっていく中──

 

「ククッ、良いぞ『先生』その調子で私が全てを捧げた賭けに勝ってくれたまえ」

 

「『先生』も可哀想だよ。自分で賭け金をベットしたつもりはないのに他人の命を握らせられるとは」

 

「私は別に強制はしていないとも。彼が乗ってくれただけさ」

 

「彼が降りるとは微塵も思っていないだろう君」

 

「ククッ、希望を前に絶望する馬鹿はいないさ。そうだろう?百合園セイア嬢」

 

 ──真っ白な空間で優雅に椅子に腰掛けながら、同じ様な力を持つ百合園セイアと紅茶を飲み交わしているのだった。




 リオ会長とセイアちゃんの実装まだですかーーーーー!!!!!!!!!!




失礼、浄化されきれない欲望が漏れました()
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