便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア   作:マスターBT

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計画を乱す者達

 全くもって忌々しい……!!

 私の用意した策が一歩のところであの男の未来視より先を行った事で漸く、何年間もあの男が死んだ時に一杯やろうと残しておいた秘蔵のワインを飲めると思っていたところにマエストロがやって来たかと思ったら。

 

「歓喜に打ち震えているところ水を刺すが、バイステンダーは生きているぞベアトリーチェ。そもそも手駒の一つが戻って来て居ないというのに仕留めたと判断するのはそなたの審美眼はかなり曇っているとみえる」

 

 あぁ──今でも思い出しますわ、ギシギシと奏でる木製人形の不快な音と共に告げられた内容とマエストロの呆れ返った声を。

 そもそもの話ですが、なぜ黒服もマエストロもあの男に好意的なのかが分からない。

 

「……あんなしたり顔で横から人の研究にケチをつけてくる男の何処が……!!確かにアレの神秘と科学を融合させる技術は有用ですがあの目以外トンチキな物ばかりじゃない!!『神秘を意図的に暴走させる事で録音音声再生後、爆発する機械』や『レーザーが撃てる代わりに一秒後には熱で溶け落ちる拳銃』、『馬鹿みたいな同時処理を要求してくる念じるだけで動くドローン』果てには『殴れるベアトリーチェ様(笑)人形』とかいうゴミばかりじゃないの!!」

 

 おかしい……アレの所業を思い出せば思い出すほどに私はむしろ、褒められるべきでは?という考えしか浮かんでこない。

 

「ふぅ……まぁ良いでしょう。サオリが敵の手に渡ったのは想定外でしたがアツコを贄にする際の障害が消えたのも事実。既に準備は終えているのですからこのまま、あの男が何かを手を打つより早く逃げ切ってしまえば良いだっ!?な、なにこの揺れは!?」

 

 地震というよりは何かが地下で暴れている様なそんな破壊音!?

 

「な、なにが起きて……は?」

 

『あっははは☆この程度じゃあ私達を止めるのは無理だよー☆』

 

『ミカ少しは背中を気にしろ!!私らの負担が多いんだが!?』

 

『気持ちが良いくらい猪だな……ミカ、ナイン、頭を一瞬下げてくれ』

 

 空中へと投影したモニターが映し出すのは、暴れに暴れている聖園ミカと彼女に合わせて阿吽の連携を取っている捕まっている筈のサオリとあの男が雇った傭兵がユスティナ生徒も含めた私の兵を吹き飛ばしていく光景と。

 

『”ごめんね。通らせてもらうよ”』

 

 彼女達の破壊痕から侵入してくる『先生』と便利屋68の面々が映り、思わず奥歯が砕けるほどに食いしばる──計画は最終段階だというのに、こうもワラワラと邪魔をする害虫共が何処からともなく現れる!!

 

「カイザーから借り受けてる兵と、バルバラも出しなさい!!条約は未だこちらの手にあるのです……足止めの一つくらいして貰わなければ労力に見合いません!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユスティナ聖徒会。

 トリニティが生まれる前の最も凄惨で陰鬱な水面下の争いと、表立った分派同士での戦争の時代に生きたとされる生粋の戦闘集団。

 

「はっ!……御伽話は真実だったって訳か」

 

 両手にガトリングとかいう盛大に頭が悪い装備をしている癖に、発せられる神秘は今まで感じた事ないレベルのソレで釣られるように気が昂っていくのをレイヴン9と呼ばれる少女は感じていた。

 ユスティナ聖徒会、最強の『バルバラ』──古の時代に君臨した最強の聖女が彼女の祖先であった。

 

「……アレは私の獲物だ。とっとと先に行け二人とも」

 

「そうしたいのは山々なんだけどさぁ……後ろにも居るんだよね」

 

「はぁ?バルバラは一人だけじゃ……いや、幽霊に数を問うのは馬鹿か」

 

「だね。じゃあ、そういうわけで私も残るからサオリは先に行って」

 

「一人でも泣くなよ?」

 

 自然と本当にそうするのが当たり前の様に二人は背中を合わせ、サオリを先に行かせることを選んだ。

 旦那の仇討ちをしたいのは事実だがまぁ、此処から先は私の様な縋る縁もない傭兵よりも守らなきゃならない者がいる生徒の方が適任ってやつだろうよとレイヴン9は獰猛に笑いながら、ご先祖様と戦えるなんていう千載一遇のチャンスを捨てる訳にもいかないしなぁ!と滾る。

 

「二人とも……良いのか?」

 

「ナインちゃんはアレと因縁があるみたいだし、私は贖罪の為だしね。居るんでしょ?助けたい人が」

 

 二人の会話を他所にレイヴン9がリロードを済ませると、まるで彼女の戦意に応じるかの様にバルバラがガトリングを構え復活したユスティナ生徒を呼び出すのを見て、三人は話をしている暇は無いと悟り一瞬の目配せの後に頷く。

 

「……任せた」

 

「「任された」」

 

 走り出したサオリの進路を開ける為にレイヴン9とミカは互いに翼を叩き合い、同時に目の前の敵へと向けて駆け出す。

 背中からくるであろう攻撃は警戒する必要はない──信頼出来る相手に背中を預けているのだから。

 

「かかってこいよ……古き最強!!」

 

『───』

 

 レイヴン9の放った弾丸全てが復活したばかりのユスティナ生徒の頭を吹き飛ばし、駆ける勢いそのままにバルバラへと銃剣を突き出すが取り回しの悪さなど微塵も感じさせない滑らかな動きで器用にガトリングで受け流される。

 反転するまでの僅かな時間に背後から回転する音が聞こえ始めたレイヴン9は素早くフックショットで飛び上がるが、バルバラもそのまま逃さない為にガトリングを持ち上げる。

 

「イかれた筋力してんなオイ!!」

 

 このままじゃ、蜂の巣にされるのがオチかと判断したレイヴン9は、一旦フックを外し慣性に身を任せたまま右斜め下の柱に向けてフックを突き刺す。

 

「ぐっ」

 

 空中で勢いそのままに進路を変えたことによる負荷が一気に彼女を襲うが、そんなものは覚悟の上であった。

 空中で進路を変える相手は流石のバルバラも初見だった様で、追撃よりも早く弾が一度切れリロードの隙が生まれそこを見逃すレイヴン9ではなかった。

 

『───』

 

「ありったけの弾丸をくれてやるよ!!」

 

 地に足をつけるのとほぼ同時に、背中の翼を羽撃かせる事で更なる加速力を得たレイヴン9は目にも止まらぬスピードでバルバラへと駆け寄りゼロ距離射撃による容赦のない連射を頭部へと叩き込む。

 辺り一面を照らし出すほどの火花がガスマスクから発生し、弾倉の中身の半分を防いだところで耐久限界を迎えて砕け散り弾丸が右目を貫くとガトリングを手放したバルバラの右腕がレイヴン9の横腹を叩き、彼女をマウントポジションから退けさせる。

 

「ナインちゃん!!」

 

「ッッ、こんくらい大した事はねぇよ。ただ……チッ、やっぱり幽霊だなバルバラ」

 

『───』

 

 手放したガトリングを拾い上げるバルバラの顔面は青白い煙を上げながら再生していき、瞬きの間にそこには先ほどのダメージなど微塵も感じさせない新品同然のガスマスクを身に付けたバルバラが立っていた。

 

「もーぅ!何度隕石を直撃させても平気な顔してるんだけど!!」

 

「……コイツらの大元がくたばるまでは何度でも再生するんだろうよ」

 

「えー……めんどくさ過ぎない?」

 

「その為にサオリを先に行かせたんだろうが。少しは気張れよお嬢様」

 

「はーい」

 

 何度再生しようともミカとレイヴン9はその度に破壊するまでだと軽口を叩き合いながら、バルバラとユスティナ生徒の軍勢を睨みつける。

 

 ──瞬間、すぐ近くの壁が爆発と共に吹き飛ぶ。

 

「ゲホッ……社長、やり過ぎ……」

 

「うぐっ……だって『先生』が真似してみたら?って言うから」

 

“強くなったねぇアル……”

 

「『先生』!?」

 

“やあ、ミカ。手伝いに来たよ”

 

 道中の破壊痕を見て閃いた『先生』によって、アルの爆発を活かした突貫工事によりカイザーの兵士達の予想を上回り、この場に現れた『先生』率いる便利屋68が現れたのだ。

 

「ッッ……先に行って!!此処は大丈夫だからサオリを!!」

 

 自分なんかの手伝いに『先生』が来てくれた事に涙を溢しそうになりながらも、ミカは先に進んだ友達を案ずる。

 確かに無限に現れるユスティナ生徒の相手をするのは大変だが、それでもサオリの方が危険に満ちているとミカは判断し『先生』という特効薬に甘えることを我慢した。

 

“……平気なんだね?”

 

「うん。此処にはナインちゃんも居るから」

 

“分かった。でも、全部が片付いたら助けに来るから”

 

「ッッ……もう、ズルいなぁ『先生』は」

 

 覚悟の決まった表情を浮かべるミカを信じ、『先生』は便利屋68と共に先へと進む。

 

 

 

「目を覚ましてくれ……ミサキ!!ヒヨリ!!」

 

 

 

──その先には、瞳から色の失われたミサキとヒヨリが無抵抗のサオリを攻撃している光景と。

 

「ふふふっ!!アーッハハハ!!私に逆らうからそうなるのですよサオリ」

 

 高笑いをしているベアトリーチェの姿があった。

 




『ヘイローに干渉する装置』

 バイステンダーが作った所謂、洗脳装置でヘイローに干渉する事で対象の意思を縛り傀儡にすることが出来る。
 ちょっとしたヘルメットの様な形をしており、被せる事で洗脳を開始し目の前にいる存在に従うように思考誘導出来るのだが、長時間使用すると精神崩壊及び、ヘイローの破壊を招く為に研究道具として使うのは不向きとして破棄した筈の代物を、ベアトリーチェが拾い増産した。

「あぁアレか……我ながら醜悪でロマンに欠ける代物を作ったと思っている」と本人は語る。
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