便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア 作:マスターBT
なお、バイステンダーの異形の感じはAI調教能力が足りなかったので諦めました()
ふむ……どうやら時間の様だな。
「身体が引っ張られる感覚がある。残念だが楽しいお茶会の時間はここで終わりの様だ」
「む、そうか。これ程までに腹を割って話したのは久しぶりだったよバイステンダー」
「そうですね……我々は立場が自由を許してくれませんでしたから」
連邦生徒会長には背を向けている以上、表情は見えないが聞こえてくるから声のトーンからして一抹の寂しさぐらいは感じているらしい。
セイア嬢に至っては、紅茶に落とす視線と狐耳がペタンとしているのがなんとも微笑ましいな。
「さて……セイア嬢、少し私の方を向いてくれるかね?」
「ん?なんだって、急に私の両目を隠すとは何をするつもりだい!?」
「少し大人しくしていたまえ」
「耳元で……んんっ」
私とは異なる形式とはいえ、未来を見る力であればその根源は必ず目に宿っている筈だ……彼女の神秘にも強く結びついている為に全てを貰い受けるのは無理だが、せめて意識が混濁しない程度には済む様に友人として手を貸してやるとしよう。
「……よし、もう良いぞ」
「それは……なるほど、神秘を取り出すとは流石はゲマトリアと言ったところでしょうか?」
「この空間だから出来た事だ。本来なら肉体による護りでこうもスムーズには取れんよ」
魂、或いは神秘そのものが剥き出しであるこの空間だからこそ出来た裏技だ。
薄いグラデーションの様な赤色をした彼女の瞳と同じ色を放つ神秘をゆっくりと、自分の瞳に重ね合わせて同期させる……なるほど、これは確かに私が作り上げたホルスの義眼よりも精度が優れているな。
やはり天然の神秘は凄まじいものだな。
「……急に……眠く……」
「そのまま心地よく眠ると良い。安心したまえ、君はもう二度と悪夢に苦しむことはない」
「……君は本当に……ずる……いな……」
セイア嬢の瞳が完全に閉じると共にこの空間から消えていくのを連邦生徒会長と共に見送る。
ミカ嬢とナギサ嬢との問題は、君だけの今を存分に使って解決すると良いセイア嬢。
「末端から徐々に消え始めたか。セイア嬢の神秘を貰い受けた事でイレギュラーが起きるかと思ったが、流石は黒服の契約を流用しただけはある。むしろ引っ張られる力が増している」
「……貴方ともこれでお別れですね。存分に楽しんできてください。私が愛しているキヴォトスを」
セイア嬢はこの空間にアクセスしていた力の根幹を失い、私は死にかけた事で偶然彼女に引き摺られる形で此処に辿り着いただけな為、キヴォトスに戻ればもう連邦生徒会長と話をする機会は二度と訪れないだろうな。
であれば、言いたい事は言っておくとするか。
後で言っておけば良かったなどというつまらん後悔をしたくはないしな。
「君の物語は悲しい結末を迎えた」
「突然なんですか?」
「君の行動は誤りであり、無数の悲劇を生み出しそして愛した舞台を降りた」
「……」
「それを無意味だと、君の物語は何も残せなかったと心無い結論を下す者もいるだろう」
「……」
「だがこの世界に無意味な物語などないと数多の物語を見てきた傍観者が断言しよう。君の間違いがあったからこそ、『先生』は今キヴォトスで悲劇を喜劇に変える事が出来ている。そして私の様なただの悪党でしかなかった者に愛すべき物語がある事を教えてくれた。故に!私は今此処で改めて君に伝えよう」
私に連邦生徒会長を救う力も権利もない。
それはこのキヴォトスにおいてはただ一人、ヒロインを笑顔にする力がある主人公の資格を持つ『先生』だけだ──故にこの言葉は何も響かないかもしれない。
それでも私はこれだけ頑張った者に何一つとして褒美も労いもないのが許せなかったのだろうな。
「ありがとう連邦生徒会長。君のお陰で私は生きるべき世界を見つけられた」
この言葉がせめて彼女の久遠を慰めるものになれば良いと祈り、私の意識は完全にこの空間から消え去るのだった。
「ぉおおお──!!素晴らしい!!あぁ、今の貴君を見るだけで興奮が治まらぬ!!神秘なき者に神秘が宿るとは── は、ハハハハハ!!そうかなるほど、
「ククッ、流石はマエストロだな。この状態の私を一目見るだけで自らの芸術が何処に使われているか理解するとは」
「芸術とは模倣する事から始まり、やがてその者のオリジナルへと辿り着くものだ。故にこそ、模倣された側は即座に理解しまた次のオリジナルを生み出す。そうした数多の研鑽こそが芸術の真髄であるのだから私が理解出来ぬ──否、仮に理解出来なくとも理解しなければならない!!」
「なるほどそういうものか……確か君はその肉体に不満があったな。必要とあれば教える事も厭わんが」
「不要!!その在り方は驚愕に値こそするが、私の目指す芸術の在り方ではない」
「ククッ、君ならそう言うと思っていたよマエストロ」
カタカタと興奮した様子で身体を揺らすマエストロと、このまま話をするのも悪くないかと思い始めたタイミングでふわりと『先生』から上着を被せられる。
“とりあえず服を着ようね?”
「ん?あぁ、すまない。流石に服まで用意するのは無理でな」
流石に服まで考えている余裕はなかったから助かるよ『先生』。
恐らくケイとリオもギリギリまで肉体の調整をしていただろうから、気が回っていなかったのだろうな。
「さてマエストロと話すのも良いが……はぁ、あの様な醜悪な物をわざわざ掘り起こしてくるとはな。いつの間にゴミ漁りが得意になったんだ?ベアトリーチェ?」
「……その物言いといい、本当に貴様は」
「ククッ、悪いが貴様と話す事は何もないのでな……錠前サオリ!!彼女達の右側頭部、そこに直径二センチほどのボタンがあるはずだ。そこを押せばそのヘルメットはすぐに外れる!!」
生徒を使い捨てるのには適しているが、当時の私がしたかったのはヘイローに干渉する事で神秘にどの様な変化が起きるのか試したかっただけで精神汚染の類は私も想定していない副作用であった。
だからこそ、異常が起きた時にすぐに外せる緊急装置を着けているのだが……少しは改造をするべきだなベアトリーチェ。
「……了解した」
「互いに言うべき事はあるだろうが、今は飲み込め。無論、君達もだ便利屋68」
私という予想外の乱入で動きを止めているが、そろそろヒエロニムスもベアトリーチェも動き出す事だろう……本当は私も君達のように駆け寄りたい気持ちなのだがな。
「……そうね。こっちの
「そうさせて貰おう。ケイ!!聴こえているな!!」
『はいはい。そんなに大きな声を出さなくとも聴こえていますよ。リオが貴方の為に作った武器だそうです。愛されていますね?』
その言葉と共に私の両手に転送されるリボルバー式のフルオートショットガンと普通のショットガンに比べれば銃身の短いソードオフショットガンを握り締め、そうするのが自然と無意識に己の神秘を流し込めば、まるで長年連れ添った相棒のようにしっくりと馴染む。
「……パーフェクトだリオと伝えてくれ」
『分かりました』
「それと」
『はい?』
「私の想像を超えてみせたな。見事だケイ」
『ッッ……名も無き神々の王女の神官である私からすれば当然です。特別、褒められるような結果ではありません!』
「ククッ!」
上擦っているぞと伝える事は簡単だが、今は許してやるとしよう。
ガチャリと武器を構えれば、同じようにそれぞれの戦いに挑む者たちが武器を構える音が聞こえる。
「直接、貴方の指揮を味わうのは初めてだな『先生』」
“君に私の指揮必要?って思うけど君が望むのなら指揮を取るよ──行くよアロナ”
頭の中に直接、情報が送り込まれてくるこの感じ……なるほどこれがシッテムの箱の力か。
確かにこの力があれば、私なんぞの指揮では『先生』を一度も倒せないのも納得がいくというものだ。
「大人が子供になど……あり得ない!!あり得ない!!私は……お前を認めないわバイステンダー!!」
「好きにしたまえ。私は元よりお前など眼中にない」
さぁ、この肉体が何処まで戦えるのか試金石となってくれよベアトリーチェ?
【挿絵表示】
仮面が思うように出来なかった……!!マスカレードマスクのようにしたかったのですが、お面にしかならなくて断念しました。なんならもっと胡散臭さを出したい。
絵を描ける人って本当に凄いんだよなぁ……万年美術成績1か2の悲しみ。
感想やここすき待ってます!!