便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア   作:マスターBT

66 / 144
雪が凄いですね。皆さんは大丈夫ですか?


あぁ……これは楽しいな

 ベアトリーチェとバイステンダー。

 同じ、ゲマトリアという組織に所属していながらも二人の相性は極めて悪かった。

 己の目的の為であれば現場に出ることも厭わず、目的達成の為ならば何であろうとも使い潰し己だけの物語をより高く積み上げていく彼女と目的があったとしても事の成り行きを眺める事に徹し、自らが動く時はほぼ道楽でしかなく積み上がっていく物語に後からケチを付ける彼のスタンスが合う訳もなく、互いに顔を合わせれば罵倒し合うそんな関係であった。

 

 しかし、それでも両者が同じ組織に所属する事が出来た理由は存在していた。

 ベアトリーチェはバイステンダーの技術力を、バイステンダーはベアトリーチェの目的の為なら努力を厭わない姿勢を認めてはいた為、軋轢こそあれど致命的な対立を避ける事は出来ていた──彼がキヴォトスに降り立つまでは。

 

「バイステンダーァァァ!!」

 

「叫ばずとも聞こえている」

 

 アリウスの荒廃したバシリカ。

 未だに秤アツコが贄として掲げられている祭壇の奥、光差し込むステンドグラスを背にし長年積み重ねてきた鬱憤と殺意を込めて叫ぶベアトリーチェの変質した腕から放たれる赤黒い光弾を、再臨した萬屋セラは好戦的な笑みを浮かべながら避けると嘗ての身体とは比べるまでもない力に身を任せてボロボロな石畳を砕きながらベアトリーチェへと駆ける。

 

「近寄らせるな複製(ミメシス)共!!」

 

"左右から君を挟み込む様に敵が迫るから正面を"

 

 召喚される複製(ミメシス)の数は左右に五体ずつの累計十体が、条約の主であるベアトリーチェを守る為にセラへと銃を向けるが彼女の動きは依然として変わらず、ベアトリーチェへと駆ける。

 顔があれば確実に笑みを浮かべているであろうベアトリーチェの赤黒い光弾と共に、複製(ミメシス)達も発砲し銃弾と檻を作り出すが──関係はなかった。

 

「ククッ、代償がないのは使い易いな。感謝するぞセイア」

 

 己へと迫る無数の銃弾と赤黒い光弾の軌道をセラは既に視ているのだから避けることなど造作もない。

 既に導き出した答えに沿って、ダンスを踊っているかの様な巧みなステップで速度を維持したまま全ての銃弾と光弾を避けベアトリーチェへとすれ違い様にフルオートショットガンで二発叩き込む。

 

「ぐっ!」

 

 例え高位の存在に至ろうとも神秘に絶対的な耐性を得る訳ではなく、叩き込まれた二発はベアトリーチェの身体を芯から揺らし適正距離から放たれた攻撃によって鮮血にも似た何かが噴き出すが、桁外れの再生力によって瞬く間に塞がってしまう。

 

「この程度で!!」

 

“高エネルギー反応を確認。飛んで避けて”

 

「了解した」

 

 花の部分に赤黒いエネルギーが集まると四本の光線となり放たれ、地面を粉々に砕きながらセラへと迫る攻撃を彼女は『先生』の指示通りに飛び上がって避けると、足元から迫る光線に全く怯む事なく犬歯を剥き出しにして笑う──今、彼女は楽しくて楽しくて仕方がなかったのだ。

 

「ククッ、ハハハ!!」

 

 舞台に上がった傍観者は、昂る戦意そのままにもう片方のソードオフショットガンに防御することなど微塵も考えず、注ぎ込めるだけの神秘を注ぎ込むとベアトリーチェの光線の発生源である花目掛けて放つ。

 

「──ッ、ギャァァァ!?!?!?」

 

 刹那、甲高い悲鳴を上げるベアトリーチェ。

 当然、放った光線の制御など出来るわけもなく自由落下するセラに当たる前に霧散していき安全に着地した彼女は浮かべる笑みをそのままに中折れ式のソードオフショットガンを折ると打ち切った中身を器用に充填する。

 

「傷の再生が遅い!!……バイステンダー何をしたぁ!?」

 

「醜悪極まるその花に触れてみれば分かるだろうさ。お前を苦しめている物がな」

 

 言われるがままベアトリーチェは自身の花に手を伸ばし触れると、完全に内部へと入り込まなかったものが音を立てて地面へと落下していきその正体が判明する。

 

「コイン!?」

 

「弾丸は貫通する為にお前との相性が悪いが、コインは内部に入り込み再生を阻害する。丁寧に弾込めをしなければならないが良い破壊力だとは思わんかね?」

 

“うっわぁ……ソレ、生徒相手にはやらないでよ?”

 

「無論、込める神秘を調整するとも」

 

“やるにはやるんだね……”

 

「当然だ。今は私も生徒の一人なのだからな」

 

 先程の狂気的な笑みとは違う純粋に楽しげな笑みを浮かべるセラの視線に含まれる期待を感じ取った『先生』は、彼女と同じ様な笑みを浮かべて返すと更にセラの笑顔は深まり、リロードの終えたソードオフショットガンをガチャリと構える。

 

「さて続きといこうか。ベアトリーチェ、どうせお前は微塵も諦めてなどいないのだろう?」

 

「当然です……!!ずっと、目障りだったのよバイステンダー!!いつもいつも、常に上から見下ろして!!」

 

「ククッ、それでこそ次の思想を試す価値がある。『先生』、酔うなよ?」

 

 セラの青い瞳に赤いグラデーションが加わり、彼女から発せられる神秘の圧が一段上に上がると同時にその変化は起きた。

 『先生』の視界が突如として、二つの視点が重なり合うという情報量の多いものへと変化し彼は思わず膨大な情報量からくる言葉に出来ない気持ちの悪さに襲われ、反射的に口元を抑える。

 

“なにこれ……”

 

「私の未来視をその箱を通して同期させた。戦術という限定分野で今の貴方は未来が視える。今の我々ならそうだな……二手三手、いや五手先ぐらいは読み切って動く事も出来るはずだ。理論上はな」

 

 あまりの無茶振りに『先生』は天を仰ぎたくなった。

 互いに未来を視ているのだから、確かに相手を上回って戦う事も可能と言えるだろうがそれは二人が同じ選択をすればというものであり、少しでも選択が異なれば不和を起こし逆に遅れを取る事にもなるだろう。

 

──それなのに、『先生』を見るセラの表情には一欠片も不安を感じさせる要素はなくいっそ、厚かましいまでの信頼があった。

 

“次からは相談してね。これ、すっごく気持ち悪いから”

 

「ククッ!善処しよう」

 

 自分の信頼に応えようとする『先生』を視ながら、セラはぶっつけ本番の思い付きである事は胸の内に秘めておこうと静かに決め再び、光線を放ってきたベアトリーチェの攻撃を今度は真正面からソードオフショットガンから放たれるコインで打ち消すと第二回戦開始と言わんばかりに、笑いながらベアトリーチェへと駆け出していくのだった。

 

 

 

 古くそして長きに渡る因縁がぶつかり合っている頃、マエストロが生み出したヒエロニムスと戦っている便利屋68はというと。

 

「うぐっ……」

 

「強い……と言うより」

 

「私達が弱い……アルちゃんは一人で渡り合ってるもん」

 

 アルを除く、面々が決して浅くはない傷を作りながら片膝をつきそんな彼女達を守る様に──

 

「これ以上後ろは狙わせないわよ!!」

 

 ──ヒエロニムスの近距離でアルが一人で戦っていた。




感想やここすき待ってるぜ!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。