便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア   作:マスターBT

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馬鹿者達を従える王様

「こっちよ!!」

 

『───』

 

 これで五発目ぐらいかしらね頭を撃つのは。

 自惚れでなければ彼から貰った特注の弾丸にたっぷりと神秘を込めているのだから、並大抵の相手なら二発も喰らえば一溜りもない筈なんだけど煙幕が晴れて見えるその顔は依然、ダメージを負っている様には見えないわね。

 

『───』

 

「っと!」

 

 コイツの厄介なところとして攻撃モーションが非常に分かりづらいのよね……あんなに大きな図体をしてる癖に杖みたいなのが少しだけ動いたら何処からともなく、光弾が放たれるなんて予想外も良いところよまったく。

 ハルカが前線を張ってくれていたお陰で今は、タイミングを掴めて避けられるけどそのせいでハルカが真っ先に落ちてしまったのは明確な私の作戦ミス。

 

「あーもう、あんた達もしつこい!!」

 

 それでも攻撃を与え続けられると思っていた矢先に突然、召喚された青白い幽霊みたいな連中も攻撃力が高くて、一気に数を減らそうと爆弾を投げたムツキが一斉砲火を浴びてしまった。

 しかも、ムツキがせっかく頑張ってくれたのにすぐにコイツらは復活してカヨコを狙うし今も私の後ろにいるみんなを先に狙って攻撃しようとしているのがなんとも腹立たしい……大人しく私を狙いなさいっての。

 

「耐久性がイマイチなのは救いね……」

 

 デカいのと違って私の爆発である程度は一気に消し飛ばせるのがせめてもの救いだけど、高耐久高威力のデカいのと高威力無限湧きの幽霊……さすがはバイステンダーの同僚なだけあって容赦がないわ。

 ……それでも私が負ける訳にはいかないのよ!!

 

 ──目を閉じればすぐにでも思い出せる彼の死にかけた姿と徐々に冷たくなっていく身体を。もう二度と、あんな思いはしたくない──

 

「私は便利屋68の社長!!陸八魔アルよ!!社員を守れなくて何が社長よ!!」

 

 今度は力に呑まれずにみんなを守ってみせるのよ陸八魔アル!!その為にヒナのところに行ったのでしょ!!

 

「はぁぁ!!」

 

 足元に広がった魔法陣と迫る光弾を避け、迫る銃弾を空中で身を捩り躱しデカいのと幽霊達の中間地点に狙い通り弾丸を撃ち込み爆発で纏めて吹き飛ばし、着地と同時にデカいのに最接近してほぼ真下から銃弾を叩き込む……これならと思いたいけど、煙幕が晴れた先には僅かに欠けたデカいやつの顔がそこにはあって思わず溜息を溢す。

 

「お望み通り何度でも喰らわせてやるわ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 少しは戦えると思っていた。

 あの日から社長が纏う神秘は明らかに濃くなっていて、きっと何か壁を越えたんだろうと思っていたけれどこれ程までに差が開いていた事を便利屋の面々は現実として見せつけられている。

 

「ケホッゴホッ……」

 

 ヒエロニムスの攻撃をその身で受け続けたハルカは、全身に浅い傷が目立つのだがその見た目以上に内部のダメージが蓄積しており肩で呼吸をしながら時折、詰まった血を吐き出す様な咳を溢している。

 幸い、肺が潰れたという訳ではない様だが臓器に何かしらのダメージが入っている事は明らかだろう。

 

「ハルカ大丈夫?」

 

 彼女の背中を摩るカヨコだが、彼女もユスティナ聖徒による攻撃により数秒ではあったが、意識を失うほどのダメージを受けておりハルカがどうにか今隠れている遮蔽物まで連れてきてくれていなければ危なかった者の一人だ。

 

「アルちゃん……」

 

 そしてこの中でももっとも重症である筈のムツキはヒエロニムス達と戦うアルの背を心配そうに見つめながら、自身の口から溢れる血を拭う事もしていなかった。

 バイステンダーの一件もあり、完全に血が昇っていた彼女はユスティナ聖徒相手に半ば自爆テロの様な形で攻撃を敢行しており、負っている傷の中には自身の自爆による自傷も含まれており服で守られていない部分からは血が止まる事なく流れていた。

 

「……悔しいね」

 

「「……はい/うん」」

 

 『先生』と一緒に仇討ちのつもりで乗り込んだというのに自分達は全く戦えず、むしろ足を引っ張るお荷物の様な状態になっている事に悔しさが込み上げてくる三人。

 覚醒したアルはキヴォトスでもトップクラスの実力を誇る存在になった為に、その背に続くことは容易ではなく今の現状がゲヘナの風紀委員会の様であるとカヨコは一人、自らの滑稽さに嗤ってしまう。

 

「……アコ達の事を馬鹿に出来ないね」

 

 隔絶した実力を誇る絶対的一の存在。

 それがこんなにも遠く、そして追いつくイメージすら浮かばせないとはずっと近くに居た筈なのに思ってもいなかった。

 

 そんな暗い考えばかりが三人の思考を支配し、未来を閉ざそうとしている時だった──いつもとは違うけれど、聞き慣れた声が聞こえてきたのは。

 

「視線を下げるな!!前を向け!!君達はアルを一人にさせるつもりか!?」

 

 ベアトリーチェの攻撃を『先生』との未来視によって完璧に読み切りながら、セラはいやバイステンダーは叫ぶ。

 

「アルは確かに強くなった。それは揺るがない事実だ!!しかし、君達は彼女に庇護される事をただ黙って受け入れられるほど殊勝で賢い精神の者達であったか!?」

 

 ベアトリーチェの意思によって召喚されたユスティナ聖徒を粉々に吹き飛ばし、光線の檻を駆け抜けながら彼は消え掛かっている彼女達の心に火をつけるために叫ぶ。

 彼が愛している便利屋68とはそんな組織ではなかった筈だと。

 

「否!!断じて否!!私の知る君達はアルの実質無計画にも等しい行動に振り回され、まともな生活が送れなくなってもなお彼女の隣にあり続けた馬鹿者達である筈だ!!例え、アルが地獄を歩く事になったとしても喜んで供をするのが君達と私ではなかったのかね!!」

 

「なんか私のこと馬鹿にしてない!?」

 

「君は今黙っていたまえ。ほら、攻撃が来るぞ?」

 

「当事者なのに!?」

 

 まさかの発言権無し宣言に白目を剥きながらも、アルは器用に敵の攻撃を避ける。

 そんな切羽詰まっている筈なのに、不思議と笑えてくるそんな空気にいつの間にか三人の間に漂っていた暗い空気は消え去り代わりに滾るほどの闘志が三人の胸から迸っていく。

 

「一番新参に言われちゃ役職持ちとして立つ背がないね」

 

「くふふっ!でも答えだよね。だって、これからも面白おかしいアルちゃんをたっぷり見たいし!」

 

「……アル様をお一人にはさせません!!わ、私はアル様が、皆さんが大好き、で、ですので!!」

 

 先程まで立ち上がる元気なんて微塵もなかったのに三人はボロボロの身体に鞭打って、立ち上がりそれぞれの武器を構える──もう此処に、置いてかれる事を憂う賢しい者達は居なかった。

 

「「「はぁぁぁ!!」」」

 

「みんな!?」

 

「ククッ!」

 

 代わりに居るのは我武者羅に手に持っている銃はなんなんだと言いたくなるほどに綺麗な体当たりで、ユスティナ聖徒を吹き飛ばしアルを囲う様に立つ馬鹿三人だ。

 

「社長を一人にはさせない。みんなで帰るんだから」

 

「アルちゃん一人だと泣いちゃうもんねぇ」

 

「アル様のお側に!!」

 

 ボロボロの背中であった。

 今にも倒れそうな身体を無理やり、気力で保たせている事が丸わかりで自分が庇わなくてはならない筈なのに微塵もその気は起きなくて──笑顔を浮かべて、いつもの様に彼女達の真ん中、その一歩先に立つと誰もが見惚れる様なドヤ顔を浮かべるアル。

 

「──行くわよ。便利屋68!!」

 

「「「おぉー!!」」」

 

「ククッ!!それでこそ君達だ」

 

 瞬間、アルのヘイローが一際輝き周囲に光の輪を走らせるとセラを含む便利屋68メンバーのヘイローも呼応する様に光輝き、全員に今まで以上の力が湧き上がってくる感覚が走った。

 

──真に極まったアルの神秘の特性、それは自らに従う者達の強化であり、まるで『王』の如くただそこに立つだけで、仲間を鼓舞する力であった。

 

「なんかすっごい力が湧き上がってくる!!」

 

「これなら……うん。やれる」

 

「流石はアル様です!!」

 

「……凄まじいな。ククッ、アルには驚かされてばかりだ」

 

「ふふふっ……(えぇ!?なんかみんなが私を褒めてくるんだけどなんなの!?)」

 

 ……なお、肝心の王本人が自分の力をよく分かっていないのはご愛嬌というものだ。




ベリアル

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