便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア 作:マスターBT
思っていた以上に反響が大きいので、頑張りたいところさん。
「便利屋全員での依頼?」
「えぇ、そうよ。ゲヘナ近くの倉庫で取引があるらしいんだけど、そこで警備を引き受けて欲しいって。何処から漏れたのか分からないけど、最近、優秀なバックアップも加わったのでしょ?とかなんとかで。だから、危険は承知の上だけどバイステンダーも来て欲しいわ」
ふむ……態々、便利屋全員を指名し、かつ直接的な戦力にはならない私まで動員して欲しいと?
随分と珍しい依頼の仕方をする客も居たものだ……罠である可能性もあるが、ここ最近、私経由での依頼も見つけられていないし、久しぶりのアル社長直々の大型依頼、怪しさはあるが顔を立ててやるのが下の立場というものか。
「了解した。それが先方の条件だと言うのなら引き受けるしかあるまい」
「で、でも、バイステンダーさんは、その怪我でもしたら……」
「君たちの元で世話になっている以上、危険は承知の上だ。しかし、心遣いは感謝しようハルカさん」
「い、いえ……」
チラリと視線をカヨコ課長に向ければ、小さくため息を吐かれてしまった。
彼女の視線的に、私が良いのなら良いという感じだ。
「おやおやぁ、いつの間にカヨコちゃんと目で通じ合う仲になったのかなぁ?」
「へ?も、もしかしてあなた達ってそういう!?」
「落ち着けアル社長……ムツキ室長、彼女の慌てた顔を見たいのは分かるが、私をダシにするのは止めてくれ。心臓に悪い」
ニヤニヤという効果音が似合う笑みを浮かべ続けているムツキ室長は、事あるごとに誰かを弄ったりして、相手の反応を見て楽しむというちょっと厄介な性質を持っているのだが、私を引き合いに出されると反応に困る。
「うら若き乙女のノリに、私の様な男は付いていけないのでね」
「またまた〜そんなこと言って、この前の依頼の時にアルちゃんが格好付けた時に笑ってたくせにぃ」
「アレは……自分で隠密するわよ!って言って缶を蹴り飛ばしたと思ったら、アウトローなら正々堂々と戦うものよ!なんて言い出すからククッ、面白くてな」
軽いやり取りは出来ているが、他の便利屋の面々と比べて僅かに壁を感じるのがムツキ室長だ。
今も、僅かに瞳の奥には警戒の色が浮かび上がっている……まぁ、彼女はかなりアル社長の事が好きだからな、彼女の為ならいつでもその銃口を私に向けられるという事だろう。
「んんっ!!兎に角、依頼は引き受けるからね!各自、準備をしておくように!!」
顔を赤くしたアル社長に全員が笑いながら、返事を返し各自、準備を開始する。
私がやるべき事は、通信機の動作確認と念の為のノートパソコンの用意、それと今回の依頼者を少しばかり探っておくとしよう。
依頼を引き受けてから数時間後、我々は現在、銃火の嵐の中に身を置いていた。
「どうしてこうなるのよ!!」
君はまんまと嵌められたという事だよアル社長。
現場へと向かう道中、依頼主である組織を調べたのだがそれなりの時間をかけても、ヒットする組織はなく不穏な空気を感じていたが、実際に我々の目の前で武器や金品などの取り引きそのものは行われていた事で、気を抜いてしまった。
所謂、商売仇とは言え少数の便利屋68を共同で潰しに来るなど誰が想定出来るか。
初めて会った時に、私は彼女らを一瞬ハズレだと思ったが今日まで彼女達がアル社長の方針に従い、アウトローを貫き通せてきただけあって、彼女らは強い。
チンピラ相手なら圧倒的に、正規の武器を持った連中相手でも勝利をもぎ取れるほどには強く、しかも手付金を貰わないというスタイルは少しでも金を渋りたい裏組織にとっては、有り難い商売相手でありそれは即ち、高い手付金を取るだけ取り、雑な仕事をする連中にとって邪魔であったのだろう。
「まったく……自らの経営方針の愚策を押し付けないで貰いたいものだな。ハルカさん、右方向に敵の伏兵!出鱈目に撃て!!」
「りょ、了解!」
「ぐあっ!?」
「アル社長、六時方向、コンテナの上に三名!」
「そこね!!」
「ぐぁぁ!」
狙撃武器のアル社長が遮蔽として、使っている場所にお邪魔し目を飛ばしながら、逃走経路を探しているが……流石に情報過多で頭痛が酷いな……目を通して得られる光景を全て、自分自身で処理しなければならんのが使い勝手の悪い部分だ……まぁ、未来視を使っていない分、マシではあるが……
「ぐっ……ッッ、ムツキ室長!!正面に爆弾を!!」
「はいよぉ!」
「うぐっ……視界が……」
「ちょっと、バイステンダー!?頭、フラフラだけど大丈夫!?」
「気にするな!!それより、敵を逃してるぞ!!」
私のことを気にするのは良いが、敵が抜けてカヨコ課長の近くまで来てしまったっと、流石はアル社長だ、見事なヘッドショット。
……一旦、銃声が静かになったか?
なら、今のうちに逃走経路の構築を……よし、これで取り敢えずは逃げられるだろう、状況が変化したらその時々で対応をすれば。
「各自、端末にルートを送信する!確認してくれ!!」
ハルカさんが、敵に突撃している間に、アル社長とムツキ室長が端末を見て、ルートを確認し、ハルカさんのカバーに爆弾を投擲。
その煙幕に紛れながら、ハルカさんが撤退し、ルートを確認し全員が一斉に走り出す……いつの間にカヨコ課長は見ていたんだろうな?
「……一瞬だけ未来視を使って確認を……ッッ!?」
視えた光景は、ムツキ室長が狙撃を頭に受け、昏倒する瞬間だった。
……今此処で、火力が減るのは避けるべきか……であれば、負傷すべき者は誰か自ずと導き出せるというものだな。
「……え?」
ムツキ室長を押し出し、私の右肩に敵の放った銃弾が命中する。
「ちょ「アル社長!!四時方向!!鉄塔の上だ!!」ッッ、了解!!」
幸い、込められている神秘は薄く被弾と同時に、私の腕を消し飛ばすほどの威力はなく、至って普通の狙撃銃といったところか。
ククッ、腕が上げられない程の激痛と、じんわりと広がっていく熱……なるほど、これが銃で撃たれるという事か!!
「得難い経験だな……これは!」
「馬鹿言ってないで走る!手当ては後でするから!」
「感謝するよ、アル社長」
彼女の肩を借りて、どうにか我々は夜の闇に紛れる形でこの場から離脱するのだった。
その日の明け方、傷の手当てを受けた私はヴァルキューレ警察学校へと、今回の連中を匿名でチクっていると、事務所のドアが小さく開かれ、ムツキ室長が申し訳なさそうな顔で姿を現した。
「む。随分と早い出勤だな、まだ誰も起きてきていない時間だが」
「それは貴方もね……って、そうじゃなくて……その、私を助けてくれてありがとう。ほら、ドタバタしてて言い忘れてたから」
「……あぁ、気にしなくて構わない。咄嗟に身体が動いただけさ、寧ろ、私という足手纏いが発生した事を詫びるところだ」
未来視の事を教える訳にもいかないから、適当に誤魔化しておこう……まぁ、勝手に動いたというのもあながち嘘ではない。
考えるより早く、あの時の私は駆け出そうとしていたのだからな。
自分でも、正直、なんで身体が動き出そうとしていたのかはっきり分かっていない……所詮、理屈は後回しみたいなものだからな。
「ねぇ、バイステンダー」
「何かね?」
「気づいてたんでしょ?私が貴方に敵対的だって」
「あぁ」
「それなのにどうして?」
チクりが終わり、手を止めてムツキ室長を見る。
彼女は真剣な表情で私を見ており、その瞳の奥には私への警戒心の色はなく、その事に思わず笑ってしまう……身を挺した事で信頼を得られたと判断して良いのだろうな。
「ちょっと、笑わないでよ」
「ククッ……カヨコ課長にも言った言葉だが、
おぉ、見事にポカンと口を開けて固まったな、写真を撮れないのが残念だ。
アル社長に見せれば、二日間ぐらいは弄れるネタになるのだが、腕が上がらん。
「……くふふっ、貴方って結構、キザなこと言えるじゃない。その気になれば、私達のノリにもついていけるんじゃない?」
「ふむ……では、こういうのはどうだろうか?ムツキ室長」
ちょいちょいと彼女を呼び、今し方思いついた悪戯を彼女に告げるとニンマリとした笑みを浮かべる。
「くふふっ、凄く簡単な仕掛けだけど、昨日の今日だし、皆の驚く顔が見れるかも」
「そうだろう?では、早速、準備をしよう」
この日、事務所のドアにムツキ室長ご自慢のクラッカーを結びつけ、開くと同時に音が鳴る仕掛けを作り、目立つところで私が倒れておくという共同ドッキリは、例外なく、皆が引っ掛かり面白い反応を見せてくれた。
「「いぇーい」」
私とムツキ室長はハイタッチで、互いを称えたのだが二人揃って、怒ったカヨコ課長に正座させられる事となった。
感想待ってるぜ!あと、ここ好きとかもあったらやってくれると、ニマニマしながら見るぜ!