便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア 作:マスターBT
“此処は私が頑張る場面だね”
「ほぅ?ソレの使用には対価があるのだろう。私は構わないぞ?死ぬ気で戦ってこいと命じても」
“しないよ。私も大人だからね”
此処で君を頼るのは確かに簡単だけど、ソレをすれば私は『先生』としてあり続ける事は出来ないし、何よりも自分が自分で許せなくなる──って、君なら分かってるだろうに態々悪魔の囁きをしてくるんだからタチが悪いよセラ。
ニヤニヤと愉しげな笑みを浮かべている彼女を横目で見つつ、一歩前に出て大人のカードを取り出す。
“……これはいつか、何処かの私が結んだ縁を手繰り寄せるもの”
ユスティナ聖徒は同じ様な神秘的存在だからなのかな?
私の取り出した大人のカードを見て、何かを警戒する様に各々の武器を構えつつも即座に攻撃をしてくる感じはないね。
うん、助かるよコレは使おうと思ってから少しだけ時間が掛かっちゃうからさ。
“強力な攻撃で相手を倒せる生徒……お願い、ミカ、ヒナ”
大人のカードが青白く光ると共に私しか聞こえない声が届く。
『まっかせて!!先生!!』
『分かった。先生の敵は私が全部倒す』
──満面の笑みを浮かべるミカと見慣れた事務的な表情を浮かべるヒナが私の前に現れ、後ろの方からこっちのミカが息を呑み驚く声が聞こえてくる……そりゃあ、もう一人の自分が居れば驚くよね。
“ミカはバルバラを。ヒナは全部をお願い”
シッテムの箱によるアシストで敵の名前と体力を視覚化し指示を飛ばす。
楽しげに走り出すミカの後ろでヒナが武器を構え圧倒的な弾幕を放ちユスティナ聖徒を瞬く間に消し飛ばしていく中、彼女の放つ弾丸に全く被弾する事のないミカがバルバラの一体を銃で撃って怯ませると胸に手を当てた。
『祈るね☆』
ミカの膨大な神秘が怯んでいないバルバラを飲み込むと、眩い光の中へと消し飛ばした……うーん、相変わらず凄い威力だね。
怯んだバルバラが体勢を戻し、ミカを襲うとしたところでその顔面を殴り飛ばす様にヒナの銃が叩きつけられ──
『面倒』
──先程までユスティナ聖徒達を消し飛ばしていた攻撃が全て、バルバラに一点集中されて再生していく先から吹き飛ばしていき、やがて完全にバルバラの姿が消えた。
『イェーイ!流石は最強の風紀委員長だね☆』
『……貴女もね聖園ミカ』
スッと手を上げた二人がパチンッと手を叩き合う光景は、トリニティとゲヘナの生徒だとはとても思えない光景でなんかもう後ろのミカは混乱しまくっており、そんな彼女を見た『ミカ』が駆け寄っていく。
「わわっ!?」
『きっと色々と大変だろうけど、貴女なら大丈夫。辛かったら先生を頼るんだよ?だって、私は先生のお姫様なんだからね!』
その声は私にしか届かないけれど、『ミカ』は困惑する自分を優しく抱き締めて子供あやす様に頭を撫でてからニコッと満面の笑みを浮かべる。
“……うん。ミカは私のお姫様だから何があっても助けるよ。だからもっと頼って欲しい”
『えへへ……ありがと!先生!!』
「うん……ありがとね『先生』!」
二人のミカが同じ笑顔を浮かべると『ミカ』が消えていく。
彼女は今の私が知るミカではないけれど、良かった……あんなに自然に笑える様になるんだね。
『先生』
“ん?ヒナ!お疲れ様!!”
『わっ……ふふっ、先生は変わらないね』
小さく裾を握るヒナの頭をわしゃわしゃと撫でてあげれば、フニャッと小動物みたいな笑みを浮かべてくれる……うーん、ヒナ可愛い!!!!!
一通り撫でてあげるとヒナも満足した様子で消えていき、今度はセラがミカの近くにいた少女の近くに膝を曲げて視線を合わせた。
「だ、旦那……私、その」
「ククッ、契約不履行だと私を罵る事も出来るのに先ずは謝罪とはな」
「えっ、あっ!そうだったな……先に契約を守らなかったのは旦那の方だったな?」
「あぁ。遅くなったがお前達には約束の報酬を支払うつもりだ。他のレイヴン達は何をしている?」
「それなりに近くで待機してる筈だ。ただまぁ、その報酬の話なんだがよちょっと良いか?」
「ふむ。なんだ?」
全く……君はそうやって甘さを見せるんだから生徒達は気を許していくんだよ?
どうせ自覚がないんだろうなぁ、首輪に大切そうに指を這わしつつ少しだけ涙目になって君を見ているのに手持ちの金で足りるか?みたいな思案顔してるもの。
「……これからも旦那の専属って訳にはいかないか?」
「……ククッ!命が幾つあっても足りないぞ?」
あーあ、嬉しそうに笑っちゃって……自称悪人が聞いて呆れるよ。
「覚悟は出来てるさ」
「良かろう。お前に従うレイヴン達も同じか?」
「何人かは普通の報酬を望んでいるが概ねは」
「リストに纏めておいてくれ。適宜私の方で対処するとして……先ずはお前だなレイヴン9」
「うわっ!?」
凄い自然な動きでお姫様抱っこに移行したけど、どうやったのソレ?
ミカがチラチラと私の方を見ている気がするけど、気づかないフリをしておこう。
「先ずは此処から帰るとしよう。『先生』ミカ嬢の方は無事かね?」
“……うん。ミカ、歩けそう?無理なら手を貸すけど”
この際、何も突っ込まないと決めてミカを連れ添ってセラの後に続いていき便利屋のみんなやサオリ達と合流し私達はアリウス自治区から脱出した。
後で聞いた話だけど、私達が去った後にゲマトリアのゴルコンダを名乗る人物が手負のベアトリーチェを連れ帰ったらしく、サオリ達は謝罪を口にしていたけれど同席していたセラが
「ふむ……まぁ、良かろう。問題があればいずれ『先生』が解決するだけだ」
と言っていたのであっさりと流れた……まぁ、私としては絶対未来を見た上で全責任を投げてきた彼女に言いたい事はあるんだけどどうせこの上なく厚かましい信頼を向けられるだけだから聞かない事にした。
そうそう、サオリ達と言えばあの後ミカを心配して駆けつけたティーパーティと正義実現委員会を前に投降して、ちょっとした裁判とかがあったんだけど最終的にはミカが彼女達の権力的な後ろ盾になる事と、トリニティの政治にシスターフッドと救護騎士団が加わりバランスを取る事を条件にアリウス分校は独立した学園としてトリニティから認められ、今はサオリを生徒会長に新たな挑戦をしている。
「良かったのかミカ。お前からすればわざわざ弱みを作る様なものだが」
「今更それ言うサオリ?元々、私はアリウスと仲良くしたかったんだよ。凄く遠回りしたけど、『先生』やナギちゃん達の協力で此処まで辿り着いたんだから。むしろ、大変なのはサオリの方だよ。アリウスに向けられる憎悪と真正面から向き合うんだから」
「覚悟は出来てるさ。スクワッドのみんなもいるし、何よりセラに胸を張って生きると誓ったからな」
「もぅ、そんな顔されたら私も頑張らなきゃじゃんね。『先生』と今度会えたらたっぷり甘えようっと」
トリニティとアリウスの間にある憎しみの連鎖を断ち切るのは難しいかもしれないが、きっとあの二人なら成し遂げる事が出来るだろう。
そして、そんな裏で恐らく暗躍していたであろう何処かの傍観者はと言うと──
「ム、ムツキ室長……締まっている……首が呼吸ができん……」
「心配したんだからね鷹さん!!」
「身長差あるのに無理やり頭を抱えるから……うん、アレは完璧に極まってる」
「カヨコ課長……冷静に分析を……あっ」
「ちょ!?ムツキ離してあげて!?!?ヘイロー消えてる!!消えてるからぁ!?!?」
「あわあわ!?み、水を汲んできます!!」
「拷問?」
「水汲んで来ました!!えいっ!!」
「──ガハッ!?冷たっっ!!」
──今日も元気に賑やかで掛け替えのない大切な時間を歩んでいるのだった。
エデン条約完!
次回は掲示板回みたいなのを考えていますが、作者が掲示板に慣れてないので時間かかるかもです!!
感想やここすき待ってるぜ!!
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