便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア   作:マスターBT

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思ったより長くなったぞぅ!

今回のアビドス旅行中のセライメージをAIくんに頼って生成しました。相変わらず、仮面は諦めです。

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実績作りinアビドス後編

“で、どうするの?アビドスで何かしらの実績を作るって言ってたのに今のところ、喧嘩しかしてないけど?”

 

「ククッ……」

 

「ごめんねぇ『先生』……コイツがよりにもよっての姿だからちょっとおじさんらしくなかったよねぇ〜」

 

「あれだけ暴れておきながら責任は全て私に押し付けるとは……やれやれ」

 

「……落ち着け私。コイツはわざとやってる……怒れば思う壺だから」

 

「ほぅ。少しは頭を使うことを覚えた様だな感心感心」

 

「……ほんと、ふざけんなよお前?」

 

「ククッ、どうした?顔が怖いぞ。深呼吸の一つでもしたらどうかね?」

 

 小鳥遊ホシノと萬屋セラ。

 どちらか一人ずつなら片方は元大人である為に当然ではあるのだが、落ち着きがあり冷静沈着で頼りになる存在なのに揃った瞬間極めて程度の低い場所で罵り合うのだから、どうしたものかと『先生』は思いながらこのままだと第二ラウンドを開始しかねない二人の頭上に拳骨を落として落ち着かせる。

 

“はい。次はセラだけ二倍ね”

 

「……理不尽では?」

 

“主に君が煽るからでしょ”

 

「……さて本題に入ろうか。私は小鳥遊ホシノと喧嘩をしに来た訳ではなく、生徒として実績を作りに来たのだ。何か私に手伝える事はあるかねアビドスの諸君」

 

 逃げたな?と思いつつも『先生』はそれを指摘してしまえばまたしても話が逸れていく為に彼女に向けていた視線をアビドス対策委員会の面々へと向けると、少しした後にノノミが手を挙げた。

 

「あの〜、アビドスに人を呼び込める画期的な案とかあったりしますかぁ?」

 

「ノノミ先輩!?」

 

「うへぇ……それ言っちゃう?」

 

 ホシノを巡るカイザーとの一件により、膨大な金利に跳ね上げられた借金は通常のソレに戻ったもののアビドスには変わらず学生だけで払い切るには難しい借金が残っており、ノノミはお礼として多額の金を持ってくるセラに対して解決策を期待したのだろう。

 無論、アビドス対策委員会の総意としては自分達で解決するべき課題だと思っており特にセリカは不服そうな表情を浮かべているがセラの横に居るホシノは似た様な表情を浮かべながらも此方の意を汲んだ意見を出してくるのだろうとその瞳は悠然に語っていた。

 

「……ふむ。此処まで寂れ碌に大人も居ないアビドスで興せるものなど限られているのだが、そうだな過去にはアビドス砂祭りというものが行われていたと記録が残っている。オアシスを起点にしたもので今はもう行えないが、アビドスにあるこの無数の砂は利用価値があるかもしれないな」

 

 立ち上がり窓まで歩くと僅かに吹き込んでいた砂漠の砂を指に取るセラは暫く、指で砂の触り心地を確かめると小さく頷く。

 

「やはりな。かつては祭りが行われていただけはあり条件は満たしている。アビドス対策委員会の諸君、私が教えるのはあくまで方法だけだ。具体的な実行に関しては各々が知恵を合わせて結論を導くと良い。無論、私という出資者をどうやって口説くかもな」

 

 振り返り窓の縁に両肘を乗せて、微笑むセラの顔は控えめに言っても悪人のソレではあるのだがもはや彼女の人物像を分かっている彼女らは若干、呆れつつも顔を見合わせ、やがて笑い彼女らの代表者であるホシノがセラと向かい合う。

 

「お前を頼るってのが凄く癪だけど……祭りって夢は私も見たいものだから教えてくれる?」

 

「ククッ、良いだろう!!結論から先に言ってしまえば、砂像を作るという祭りを企画する事だ」

 

「砂像って言うと……」

 

「ん。砂で作る像だけど、アビドスの砂漠で作れるの?」

 

「良い疑問だシロコ嬢。極度に乾燥しガラスとなった砂ではいくら水を撒いても固まることはないが、かつてはオアシスが成立する程度には水を溜め込む事が出来ていた土壌だ。全部とは言えないが、この広大な砂漠の何処かにはまだ水と混ぜ合わせ固まる砂があるだろう」

 

 砂漠の様に乾燥しきった砂は粒子一つ一つの隙間に空気の層が出来上がり、水をかけてもほとんど浸透しない為に砂像を作るのには向いていないがセラが先程確認した砂はそこまで乾燥しきっている訳ではない為、適した環境さえ作れれば可能だと判断した様だ。

 

「それなら私分かるかも。今度、ライディング中に良さそうな場所を見繕ってくる」

 

「なら私がその候補地を具体的に調べてみますね。セラさん、その時は手伝って貰って良いでしょうか?」

 

「構わんよアヤネ嬢」

 

「でも、仮に都合が良い場所を見つけたとして連中が使わせてくれるの?」

 

 現在、アビドスの多くはカイザーによって購入されておりホシノの疑問は正しいと言えるがその疑問を払拭する様にセラは悪どい笑みを浮かべてホシノを見る。

 それに対してホシノは嫌そうな表情を浮かべるが、セラからすれば日常の事などでスルーし手の内を明かす。

 

「祭りが可能というデータを君達が集めれば私の方で土地は確保しよう。連中は君達に売るのは渋るだろうが、これ程までに砂漠化が進行した土地は基本的に利用価値がなく売り物にならず、土地代だけが差っ引かれる謂わば金食い虫だ。連中としても手放せるのなら、手放したい代物だろう」

 

「……お前に得あるのそれ?」

 

「新たな催し物が開始されれば、否応なしに市場が動く。誰よりも早くその市場に手を出せるのだから私にとって悪い投資ではないさ。なにせ、目の前で君達が利益を出せると保証してくれるのだからなぁ?」

 

 セラからすれば実績作りの一端になるだけで十分、得を得ているのだがそれだけでは負い目になるだろうと大人らしい利益の話を分かりやすく悪人面で提示する。

 『先生』とホシノはその真意を見抜き、呆れるのだが他の面々は見た目通りの言動にあっさりと騙され融資を得る為に頑張らなくてはというリアクションをとる。

 

「はぁ、まぁ良いか。なんか企んでるみたいだけど『先生』もいるこの状況で悪どい事を考えてる訳はないだろうし、こっちとしても寄りかかって甘え切りという訳でもないし……みんなはどう思う?」

 

 大人だから出来る一方的な救いであれば、ホシノはどんな優れた提案であろうとも飲み込むつもりはなかったがセラの提示した条件は普段、借金を返している時と同じ依頼を受けて報酬を受け取るという仕組みと殆ど同じもので、自分達の頑張りが否定される訳ではなかった為に最終的な結論を仲間達に託すことに決めた。

 

「ん。私は賛成」

 

「そもそも私から質問した内容ですしねぇ〜それにお祭りを開くのはとても楽しそうです♪」

 

 アビドス対策委員会の中でも、古株でホシノに近い二人はすぐに賛成を表明しそこにはホシノに対する強い信頼があった。

 

「そうですね……ぶっ飛んだ案でもないですし、現実的な意見だと思います。ちょっとどころではなく、準備が大変そうですけど」

 

 それに続く様にアヤネが賛成を表明し、残りは大人に対して強い疑念のあるセリカに皆の視線が集中する。

 向けられた視線の多さに思わず、ビクッとするセリカであったが視線をセラへと向けると真剣な表情を浮かべた。

 

「……その、アンタは色々とお礼として融資してくれている事は知っているわ。だから……凄く失礼な事を言うかもだけど」

 

「構わんよ。好きなだけ私に疑問をぶつけると良い」

 

 今までとは違い、目尻を和らげ優しげな表情を浮かべるセラ。

 セリカが何を言おうとしているのか既に想像出来ている彼女は、少しでも質問しやすい様にと空気を変えそんな様子にセリカも不安感が払拭されていき落ち着いた声で尋ねる。

 

「──私達を騙そうとしている訳じゃないのよね?」

 

「あぁ。萬屋セラとして、そしてバイステンダーであった者として誓おう。私は君達の努力を嘲笑うつもりはない」

 

 姿勢を正し、どこまでも真っ直ぐに自分を見つめるセラに『先生』とはまた違った大人の責任を見出したセリカは発せられた言葉を何度か自分の中で反芻させ、やがて納得の表情で頷いた。

 

「なら私も賛成よ。やってやろうじゃないのアビドス砂祭り!!」

 

“もちろん、私も手伝うよ”

 

 土地を選定し知識のない祭りの準備を進めると言うのは、想像するまでもなく労力の必要とする行為ではあるが今此処に集まっている者達の中には微塵も不安はなかった。

 自分達なら出来るという自信と仲間達に向ける信頼、そして何よりも迷った暗がりの先を照らしてくれる二人の大人が手を貸してくれるのだから不安を感じる必要性は全くと言って良いほどにないのだから。

 

 

 その日の夜。

 日が沈み、寒くなったアビドスの屋上でホシノとセラはフェンスに背中を預けて共に月を見上げておりそこには昼間の喧騒は全くない。

 

「実績作り……すぐ出来るものじゃないけど良かったの?」

 

「元より困窮したアビドスに即時性は求めていないとも」

 

「そっか……」

 

「どうした?随分としおらしい態度ではないか」

 

 先に月明かりを眺めていたセラの元に後からやって来たホシノはそこから三十分ほど無言であり、漸く喋ったかと思えば自分に向ける態度らしくないとセラは揶揄うが期待したリアクションは返ってこず、ただ静かに横目でホシノを見るだけに終わる。

 そこからしばらく沈黙が続いたが、ポツリとホシノは口を開いた。

 

「以前も居たんだ……祭りを復活させようって言ってた人が」

 

「ふむ」

 

「でもね、当時は今よりももっと苦しかったし余裕がなかったから無理だって」

 

「だろうな。何をするにも基となる金がアビドスにはない」

 

「……うん。だから凄く不思議な気分なんだ……」

 

 ギュッと自分の膝を抱えて丸くなるホシノ。

 なぜ、彼女がこの様な状態なのか大凡の予測は出来るがセラは何も言う事はなく、ホシノが続きを話し出すのを待つ。

 

「……どうしてあの人もお前も……アビドスの現状を前にして笑って未来を語れるのかな……あの時も私が同じ様に出来ていれば何かが変わったのかな……」

 

 笑って夢見た未来を当時のホシノは受け入れられなかった。

 頑張っても頑張っても何も状況は変わらず、むしろ苦しくなっていく状況に精神的な余裕がなかったのかもしれないがホシノは夢を語る人の希望を破り捨ててしまった……補修はしているが彼女の後悔は今も色濃く残っている。

 

──偶然だろう、風がセラの髪を運び縛っていなければかなりの長さがある青空色の髪が膝に隠されていないホシノの視界の中に入り込む。

 

「私と誰を重ねているのかは知らんが、そうだな私は信じているから笑えるのだ。今が苦しくて辛くとも、未来は無限に広がっているのだから笑顔で夢を語るのさ」

 

 ホシノが顔を見上げてセラを見るとどこまでも自信満々に笑う姿があった。

 似ていない……微塵も似ていないのにホシノはそこに思い出(ユメ)を重ねる。

 

「見果てぬ夢であったとしてもお前達には目指す自由がある。であれば後は必要なのはそこへと辿り着く確固たる強い意志だけだ……やってしまった過去は変わらないが未来は変えられる。小鳥遊ホシノ、お前の中にある強い後悔をそのまま引き摺るか、燃料とするかはお前次第だ」

 

 月明かりを背に笑うセラは何処までも、澄んだ青い瞳でホシノを見つめる。

 

「それともまた全てを投げ出し、大人を頼るか?」

 

──あぁ、それだけは出来ない。

 あの時の過ちをもう一度重ねてしまえば、もう二度と小鳥遊ホシノ(わたし)はこの場所で笑う事も泣くことも、何もかもができなくなってしまう。

 それに目の前のコイツに強い失望を抱かれるのは──嫌だ。

 

「……そうやって責任を向けてくるんだから。少しくらいは『先生』みたいに代わりに背負ってくれても良いんじゃないの?」

 

「ククッ、生憎だが私はそこまでの善人ではないのでな」

 

「まぁ、確かにそんな事されたら気持ち悪すぎて寧ろ、裏があるんじゃないかって探るけどさぁ」

 

「ククッ」

 

「良いよ私も覚悟を決めた。あんな事をした私がって悩んでいたけど、きっとあの過去があるから今の私がいるんだって何処かの悪い人を見てたら思えたからおじさんも頑張ってみるよ」

 

 ──だからさ、もしも全部が上手くいったら喜んでくれるよねユメ先輩。

 

「……それにしてもだが」

 

「ん?」

 

「そんなにも私とユメ先輩とやらは似ているのかね?」

 

「──お前の数十倍、いや数百倍は優しい人だよユメ先輩は。だから調子乗るなよ?」

 

「ククッ、やはりお前はそうでなくてはなぁ。つまらん」

 

「人を玩具が何かみたいに言わないでよ……」

 

「ほぅ、遊ばれている自覚はあったのだな」

 

「……昼間の続きやろうか?」

 

「互いに銃は手元にないがどうするつもりだ?」

 

 そう問い掛けながらも立ち上がったホシノに続く様に屋上の中央へと歩いていくセラ。

 ──次の日、揃って頬を腫らした二人は『先生』や対策委員会の面々に怒られ、子供の様に笑うのだった。




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