便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア   作:マスターBT

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実績作りinミレニアム後編

“うーん……見事に捕まっちゃったねぇ”

 

「いやなんでそんな呑気なんだよ『先生』……これじゃあ白兎を捕まえられねぇってのに」

 

「にははっ!ネル先輩がどれだけ強くても檻の中にいるんじゃあ良い見せ物ですね!」

 

 煽るなーこの子……まぁ、彼女から見れば私達は今鉄格子の中に入ってて武器も持ってないし、守衛も二人つけられてるという圧倒的に不利な側に居る訳だから分かりやすく調子乗るのは仕方ないとは思うけどね。

 アスナとセラは大丈夫かな?前者はともかく、後者は連れ去られる私達をがっつり見てた癖にルーレットに勤しんでいたのは知ってるんだけど多分、何か考えがあるかいつも通り未来を見てるんだろなぁ。

 

“まぁまぁ……ネルも少しはトキを見習って休んだら?”

 

「……なんでコイツはスヤスヤと『先生』の膝を枕にしてんだぁ?少しは状況を変える努力をだな」

 

「んんっ、先輩うるさいです……遊び疲れたんですから寝かせてください……それに寝ないと大きくなれませんよ」

 

「お前ほんとは起きてるだろ!?」

 

 ナチュラルにネルを煽ったねトキ。

 私の膝なんて柔らかくないだろうに枕代わりにして頭を痛めたりはしないか少しだけ心配だな。

 うーん、それにしてもしっかりとしたコンクリートの床と鉄格子、壁には窓の一つもなくて通気口も無し……流石は賭博場なだけあってきっちりと脱出経路を潰している。

 

“此処から出るのは簡単じゃないだろうねぇ”

 

「せめて爆弾があれば……」

 

「真っ先に回収されたからな」

 

「連中も馬鹿じゃないって事だ。おい、白兎。お前、ミレニアムの金をどれだけ使った?」

 

「え?使いたくなれば片っ端から使ってたのでいくらかなんて覚えてる訳ないじゃないですかぁ!」

 

 ケラケラと快活に笑う感じからして、全く罪悪感とかそういうのを感じてる様子はないね。

 私はなにをするにも努力が必要な人間だったから分からないけど、これがきっとなにもせずとも出来てしまう側の人間なのかな?

 苦労をしない、困った事がない、なぜ周りが出来ないのか分からない……うん、これは手のかかる問題児だ。

 

“コユキ”

 

「はい?」

 

 でも、だからって見捨てる訳にはいかない──何故なら私は『先生』だから。

 

“君がなにも考えずに使ったお金はセミナーのみんなが苦労して工面したお金だ。数多くの部活動を管轄してる彼女達にとって、そのお金は責任を持って預かり配当しなければならないものでユウカなんかは実費で補填をしていたんだよ”

 

 まぁ、そこまで苦しくなったのはリオの一件もあるんだけど、今は彼女も真面目に仕事に取り組んで穴埋めをしていると聞いた。

 

『それで会長なんですけど……その必要最低限の暮らしが出来ればといった具合しか自分の手元にお金を残していないんです。確かに横領をしたのは問題ですけど……毎日、栄養バーと水だけで過ごしてるのを見るのは辛くて』

 

 リオを心配するユウカの姿は私にとって、未熟さを突きつけてくるものだ。

 もっと私が上手く出来ていればユウカやリオにとってもっと良い未来があったのかもしれない……これを彼女達に告げる事は出来ない、それは彼に止められたから。

 

“──コユキ。今は分からなくても良い。でも、いつか君の周りにいる人達の考えを知りたくなったのなら私に連絡をしてね。いつでも何時間でも君に付き合うから”

 

 だから私は私に出来るやり方で生徒達とまっすぐに向き合おう。

 もう二度と会話すら出来ないなんて結果にならない様に。

 

「……なんで」

 

 コユキが私の顔を見て何かを言おうとした瞬間、扉が開いてアスナとガードの人達が入ってくる……もしかしてアスナも捕まっちゃった?

 

「あ、コユキじゃん!此処にいたんだ?」

 

「……にはははは!こんにちわ、先輩!そして警備の皆さんはお疲れ様でした!」

 

 すっかり元の調子に戻っちゃったねぇコユキ……でもアスナの横にいるガードの人達、護衛ってよりは付き従ってる私兵感が出てる気がするんだけどまさか……いやうん、アスナだからあり得ない話じゃないな。

 

「……皆様。大変失礼致しました釈放です」

 

“わぁ……”

 

 予想通りというかなんというか、アスナはやっぱりSランクに届くだけの稼ぎを獲得してきた様でガードの人達は彼女に従い私達を解放してくれた。

 この時になにやら、もう一人の方がネル達の暴れた際に生じた損害を補填してくれたとかなんとか言ってたんだけど多分セラだろうね。

 

「来たばっかりでしょ!?この短時間でSランクとか嘘だぁぁ!!」

 

 文字通り、脱兎の勢いで部屋を飛び出して逃げ出すコユキを追いかけたいところなんだけどネル達、武器没収されてるんだよね……アスナも流石に武器までは回収して来れなかったみたいだし。

 

「お困りの様だなC&Cの諸君?」

 

“……武器屋でも始めたのかなセラ”

 

「ククッ、ナイスタイミングだアスナ嬢。仕込みは完了した。さぁ、兎狩りと行こうか?」

 

 そう言っていつもの様に悪い顔で笑うセラにみんな、安心感を覚えて続く様に主にネルが悪い顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……なんでか分からないけどガードの人達、お金を握ってくれませんしロープが引いてあるだけみたいな古典的な罠もあってすぐに追いつかれると思ったけど、どうにか屋上まで逃げて来れた……此処までくれば!!」

 

 途中で転んだのか白いスーツにところどころ汚れと、ケーキにでも突っ込んだのか顔面にクリームを付けたコユキは不思議なことにネル達に追いつかれる事なく、ゴールデンフリース号の屋上まで辿り着き少しだけ呼吸を整える。

 

「ふぅ……よし此処に隠しておいたってアレェ!?なんか知らない箱になってる。あ、でもコレなら」

 

 秘策を隠しておいた場所には何故か、鷹の絵が描かれた青い箱が置かれていたがそのロックが電子ロックである事に気がついたコユキはウキウキと電子ロックを解除し──再びロックされる。

 

「二段階認証?小癪な……!」

 

 しかし天性の資質を持つコユキには大した障壁ではなく、再び簡単に解除すると何もない空間に映像が投影され少しだけ悔しそうな表情をした黒髪の少女が映し出され、彼女は呆れを含んだ声で話し出す。

 

『バイステンダーよりタチの悪い人がいるとは驚きですね。ですがまぁ、頭の方は残念で良かったです』

 

「なんか初対面の子に馬鹿にされてるんですけどぉ!」

 

『はぁ、悔しいですが私は負けです。ですが私達としては勝ちとさせて貰いましょう。では、機会がありましたらまた遊びましょうねコユキさん』

 

「なんで名前──って、箱がガタガタ揺れてうわぁぁ!?煙!?」

 

 黒髪の少女──ケイ──が消えるのと同時に青い箱から白い煙幕が大量に溢れ出しコユキを包み込むと何処からともなく、胡散臭い女性の声が聞こえ出す。

 

「ククッ、ほんの少しでも逃げられた。そう思ったかね?」

 

「残念ですが私達はいえ、先輩方はそこまで甘くはありませんよ」

 

 続く様に抑揚のない声がコツンコツンという足音共に響き渡ると、ピカピカと点滅する赤い光が白い煙の中コユキの周りに浮かび上がる。

 

「うふふ。あと少しでしたねコユキさん」

 

 状況を漸く理解したコユキが後退りをした瞬間、顔の横をレーザーポイントが通り抜け動きを見せれば撃つと威圧感を与える。

 

「逃げようなどと思うなよ」

 

 コユキの顔が恐怖で真っ白になると共に風に運ばれて、白い煙幕が徐々に晴れていくと自分に向かってゆっくりと迫ってくる二人の影が浮かび上がり完全に彼女は絶望することとなる。

 

「いやー、よく逃げたねぇ!待つの苦手だから疲れちゃったよー!」

 

「だがまぁよくやったコールサイン05。お陰で会計から頼まれた穏便にってのを達成できそうだ」

 

 快活な声と威圧感を与える低い声がコユキの耳に届くのと同時に完全に白い煙は晴れ、声の主であるアスナとネルの姿が明らかになりその後ろにカリン、そして自身の背後にはアカネが左右から挟み込む様にトキとセラが立って銃を向けているのが明らかとなる。

 

「な、なんで……」

 

「あん?アタシらが何者か忘れたのか白兎。しゃあーねぇなぁ……おい自己紹介してやれ!」

 

「コールサイン05、萬屋セラ。君とは初めましてだなコユキ嬢」

 

 執事の様に恭しい礼をしつつも、ニヤニヤとした笑みを浮かべるセラ。

 

「コールサイン04、飛鳥馬トキ。以後お見知り置きを」

 

 対照的に無表情に少しだけ頭を下げるトキ。

 

「コールサイン03、室笠アカネ。まさか忘れていませんよね?」

 

 笑顔とは威嚇の意味もあると感じさせる黒い笑みのアカネ。

 

「コールサイン02、角楯カリン……特に一言思いつかんな」

 

 一言が思いつかなかったのを恥ずかしそうにしているカリン。

 

「コールサイン01、一之瀬アスナ!これ、楽しいね!!」

 

 相変わらずキラキラと楽しそうな笑みのアスナ。

 

「コールサイン00、美甘ネル。Cleaning&Clearing──もう二度と忘れんじゃねぇぞ!!」

 

「うぎゃぁぁ!??」

 

 鬱憤が溜まっていたであろうネルのSMGが火を吹き、コユキの意識をあっさりと刈り取ると倒れる彼女をセラが抱き止めトキが両手を後ろにし手錠を嵌め、此処に白兎こと黒崎コユキは完全にC&Cによって捕縛された。

 

「……しっかし、わざわざこんな名乗りする必要あったか?」

 

「ククッ、どうせなら格好良くこの形の方が浪漫があるだろう?」

 

 発案者であるセラがチラリとトキを見ながらそう語るのをネルは、同じ様にトキを見てから小さなため息を溢す──なんて事はない、目の前のお節介野郎が負い目を拭うついでに趣味に走ったのだと理解したのだろう。

 

 この後、彼女達は無事にコユキをミレニアムへと連行する事が出来たのだが、バニーの格好のままであった事に遅れて気がつきセラが持っていたSランクの会員証を利用して再び、船に戻り事なきを得るのだった。

 

「うぐぐ……真面目に事務仕事するのがこんなに辛いとは……」

 

「コユキ嬢、先ほどの書類だが此処と此処に不備がある。それと最終的な計算は合っているが、過程がぐちゃぐちゃだ。自分以外が目を通すという事をもっと意識するんだな」

 

「『先生』ぃぃぃ!!セラ先輩が虐めるぅぅぅ!!」

 

“何処が分からないか私と一緒にやろうかコユキ”

 

 そしてシャーレがかなり賑やかになった。

 今日もそして明日も暫くの間、シャーレから暖かな悲鳴が聞こえない日はないだろう。




なんとFAを描いて貰いました!!ちょっとした夢が叶ってとても嬉しいです。
私のXの方から見れるので、興味がある方は是非是非見てくださいな!!→@MASUTA_BT
ドット絵のみんなが可愛いんだ……!

というわけで、コユキちゃんはシャーレ預かりになってます。先生にゲロ甘なユウカとセラにゲロ甘なリオ、ユウカにゲロ甘なノアなのできっとあっさり話が通ってそうだなって思ったり。

感想やここすき待ってるぜ!!

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