便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア   作:マスターBT

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セイアちゃん実装されなかった……


実績作りinトリニティ後編

「他のトリニティ生徒であれば品がどうこうと悩むより、歴史があるかどうか下品に言ってしまえば金のかかっているものかどうかで選べば良いが補習授業部の面々は違うだろうな。ハナコ嬢が把握している限りで構わんが、誰がどんな好みか分かるかね?」

 

「えっとそうですね……ヒフミちゃんとアズサちゃんはモモフレンズ、取り分けペロロ様に絞れば外れないと思いますがコハルちゃんがなにを好むかは……無難に可愛らしいものでしょうか」

 

 トリニティ近くにある大型ショッピングモールに到着し、一先ずケーキなどの甘味が多く取り揃えられている場所に足を運んだ訳だが流石は女性客を狙っているだけはあって何処も彼処も煌びやかだな。

 とはいえトリニティの近くだけあってブランドを誇る店が多いな……これではハナコ嬢が目当ての物は見つからないだろう。

 

「なるほど。ならもう少し奥に進むぞハナコ嬢」

 

「はい?っとその手は……」

 

「この混み具合だ。離れると面倒だろう?」

 

「……わ、わかり……ました……」

 

 ハナコ嬢にしては珍しく蚊が鳴くような声だな。

 まぁ良い、とっとと進んでしまうとしようか。

 

「……」

 

「……そう言えばハナコ嬢の好みを聞いていなかったな。君はどんなものが好みだ?」

 

「えっと……余計な飾りが無いものでしょうか。ただそれだけで完成しているもの、シンプルなショートケーキやチョコケーキとかですかね」

 

 本当に拗らせているなハナコ嬢……今此処で、偽る事が良いだと悪いだのと論じるつもりはないが少なくとも彼女は偽る事を嫌っている。

 他の誰よりも自らを偽っているというのに。

 まぁ、これは悪い大人であった私ではどの面下げてという案件ゆえに彼女が本当に解決したいと思うのなら『先生』に任せる方が適任だろうな。

 

「ククッ、気が合うな。私もショートケーキは好きだぞ。シンプルが故の苺の酸味とクリームの甘さがとても良く舌に馴染む。私は珈琲派だが紅茶と合わせるのならアッサムのミルクティーと共に味わう事が多い」

 

 私はただ私らしくハナコ嬢と向き合った方が互いに気が楽だろうって、なんだその目を丸くした表情は。

 珈琲派の人間が紅茶を嗜んでいるのが不思議か?全く、それぞれ違った良さがあるというのに。

 

「本当にあなたは……」

 

「ん?何か言ったかね?少しばかり周りが賑やかで聞こえん」

 

 ええい、メインだと思っていたブランド物のエリアは抜けたというのに一般エリアに入った事で、キヴォトスらしい喧騒を取り戻してしまったぞ。

 流石に銃弾が飛び交うほどのゲヘナではないが、それはそれでも賑やか過ぎる……!

 

「……ふふっ、いえなんでもありませんよセラさん!」

 

「そうか」

 

 なんだ良い表情で笑えるじゃないかハナコ嬢。

 

 

 

 

 

 

 

 

 『先生』は常に私達一人一人をよく見て時に並んで歩いてくれたり、一歩だけ先を歩きながら振り返ってくれるそんな陽だまりの中にいる様な心地良さをくれる底抜けに優しい大人。

 あの人に比べてしまえば、確かに今私の手を握ってくれている人は優しくないし心情なんか思い遣ってない辛辣な言葉が飛んでくる事も多い……だけど何処までも能力ではなく、ただの個人、ただの子供としてこの人は見てくれる。

 

 『先生』が暖かく照らしてくれる太陽だとすればこの人は風だと私は思います。

 時に向かい風となって道を歩く辛さを教えてきたと思えば、いつの間にか追い風となって背中を押し歩き易くしてくれる……そんな気紛れで何処までも自分勝手な風。

 

 この風に誑かされてしまった子達は大変だろうなぁ……なんて思いつつも繋いだ暖かさと恥ずかしさから逃げようとした『ただの私』を何処までも見続ける綺麗な蒼い瞳を少しでも覚えようとしてしまっている私も同類ですね。

 

「ヒフミ嬢にはペロロ様レアチーズケーキ、アズサ嬢にはスカルマンフォンダンショコラ、コハル嬢にはラズベリーケーキ……ふむ。良いセンスだと思うぞ」

 

「今日は本当に付き合ってくださりありがとうございます。お陰で楽しいパーティが開けそうです」

 

 でも楽しい時間というのはあっという間に過ぎるもので、周囲から話し声しか聞こえなかったショッピングモールで買い物を済ました私達はあと少しで学園に戻るところまで来てしまいました。

 未練がましく手を繋いではいますが、流石にこれ以上引き止めるのはセラさんも用事がありますから止めた方が良いでしょう。 

 

「それは良かった。あぁ、これは私からの餞別だ。甘いものばかりでは胃が疲れるだろう」

 

「これは……良いんですか?」

 

 差し出された紙袋に入っていたのはお菓子の詰め合わせで、ケーキの甘さを打ち消す塩味のものが多くいつの間にこんなものを買っていたのでしょうか?ずっと隣に居たと思うのですが。

 

「構わんよ。オススメの紅茶の茶葉も同封してあるから好きな時に飲むと良い」

 

「なにからなにまで……本当にありがとうございますセラさん」

 

 改めてお礼を言うとちょうど学園に到着し、スルリと私の手からセラさんの手が離れていく……冷えますね。

 

「ではなハナコ嬢。私はこれからサクラコ嬢との用事が入っているから失礼するよ」

 

「……はい。では、私も皆さんのところに遊びに行ってきますね」

 

 このやり取りを最後に私達はそれぞれの場所へと向かって歩き出す。

 ……あーあ、やっぱり寂しいですねぇ……もっと我儘を言ってみるべきだったでしょうか。

 

「あら?」

 

 ふと視線を紙袋に落とすと、さっきは気が付かなかった桃色の紙が隠す様に入っている事に気がついた。

 なんとなく手にとって折り畳まれているソレを開くと、思わず私は笑みを溢してしまいました。

 

「これ、連絡先ですよね」

 

『愚痴くらいはいつでも聞いてあげるとも』という文字の横に書かれた英数字を見て、セラさんが歩いて行った方へと反射的に目を向けてもそこにあの人はいなかったけれど、澄み渡る青空と髪を撫でる心地の良い風がとても気持ち良かった。

 

「……狡い人」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「少々遅れてしまったなサクラコ嬢」

 

「……いえ、大丈夫ですよセラさん。私は待つ事に慣れていますから」

 

 トリニティの伝統ある組織の一つ、シスターフッド。

 その本拠地ともあれば荘厳な空気が流れ、教会全体が一種の聖域である事を無神論者である私にも知覚できる……ベアトリーチェが居た場所を想起させて僅かに嫌な気分にはなるな。

 

「よく来てくれましたセラさん。あぁ、ご安心ください。人払いは済んでいますので」

 

「ほぅ」

 

 別段、私が顔を顰めていた理由は警戒していた訳ではないのだが、事前に聞いた話ではただレイヴン9に関して話がしたいというだけだったはず。

 にも関わらず、人払いを済ますとは罠ではない証拠か?それともレイヴン9の件はただの建前でシスターフッドの長としてゲマトリアであった私を罰するつもりか?

 

「それはまた念入りな歓迎だな」

 

「えぇ。大切な案件ですからね。どうぞ此方に。隣に居た方が話やすいでしょう」

 

 武器は置いてきたが……ニコリと微笑む彼女の真意が読めんな。

 だが此処で隣に座る事を断り警戒しているという意図を変に伝えるのは向こうのテリトリーである状況で選ぶのは愚策、従う他にないか。

 

「では失礼して……サクラコ嬢、確か事前に伺っていた話では」

 

「はい。ココノエさん……今はレイヴン9さんでしたか?彼女の話をお聞きしたく招待致しました」

 

「ふむ。しかし彼女はエデン条約以降、表立って動かしてはいない。何処で彼女を預かっているのが私だと?」

 

「えぇまぁ、これでもシスターフッドの長を務めていますから」

 

 なるほど……ほぼゲヘナ学園に通っていない便利屋68であってもシスターフッドの情報網にしっかりと活動を探知されていたと。

 レイヴン9に関する案件は、私とケイで情報が漏れない様にしっかりと守っていた筈だが電子的な手段を用いないスパイや遠方での物理的な観測となると十全とは言えないため、その辺りから情報を拾われたか。

 

「ならばわざわざ私を通さなくても良いのではないかね?」

 

「いえ。他ならぬ貴女から私は聞きたいのです。その、彼女は元気にしていますか?」

 

「…………………あぁ、元気にやっているとも。先日も私の金で焼肉を食べさせたところだ」

 

「まぁ……ふふっ、それはとても楽しそうですね。他には?」

 

 ニコニコと楽しげに笑うサクラコ嬢を見て確信する。

 此処までの考え、全て私の考え過ぎであったことに。

 

「まさか本当にソレが目的だったとは……」

 

「はい?初めからそう言ってますよ?」

 

 あぁ、うん君は悪くない、悪くないともサクラコ嬢。

 シスターフッドという秘密主義組織の長であるという先入観と、彼女の雰囲気につい引き摺られてしまったがこの少女、本当に心の底からレイヴン9を心配していて雇い主である私に様子を聞くためだけに人払いをしているのが表情から分かってしまった……裏をかこうとかそういうのは微塵も考えてないぞ。

 

「あぁすまない……そうだな、私と彼女は雇用主と労働者の関係性ではあるが不当に彼女を働かせている訳ではないから安心してくれ。傭兵という立場を選んでいる為に仕事は苛烈だが、出来る限りの福祉保障はしているつもりだ」

 

「彼女が信頼したお方なら大丈夫だと信頼してはおりましたが……そうですか、彼女は今笑えているんですね?」

 

 私はサクラコ嬢とレイヴン9の関係性を知らないが、楽しそうにしていると知って笑った顔や今浮かべている何処か寂しげな表情を見ていれば察するぐらいの事は出来る。

 ……かつては友達であったのだろうぐらいはな。

 

「あぁ。そんなに心配なら直接自分で聞くと良い。取り合うぐらいの手配はするぞ?」

 

 私の質問に迷う素振りを見せずにサクラコ嬢は首を横に振った。

 彼女にとって自らの心配を取り払うであろう提案を断った表情は、寂しさとそして決意に満ちた笑みであった。

 

「今の私はまだ会えません。以前に比べてシスターフッドは隠し事を減らす事は出来ましたが、それでもまだレイヴン9さんが望む在り方には程遠いものです。約束しましたから……私がシスターフッドを変えると。ですからそれを成し遂げるまでは会えません」

 

「……ククッ、そうか。では私の方から伝えられる限りの今を伝えるとしよう」

 

「はい!お願いします」

 

 嬉しそうに笑うサクラコ嬢と共に空がオレンジに染まり、月が上るまでの間ずっとレイヴン9の近況を話し時折、彼女から過去話を聞いたりなど一秒たりとも尽きる事のない時間を過ごした。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()気がつけば彼女が寮に戻らなければならない三十分前となった。

 

「本日はありがとうございましたセラさん。お陰で安心する事が出来ました」

 

「これくらいで良ければいつでも。楽しい会合だったよ」

 

「そう言ってくださると助かります。では、また機会が合えば」

 

「あぁ。ではなサクラコ嬢」

 

 律儀というか真面目と言うべきか私の姿が見えなくなるまで手を振り続けるサクラコ嬢を見送り、スマホを取り出すと『先生』からシャーレに戻っているという連絡が一時間ほど前に来ていたので、今から帰ると連絡し駅までの道を歩いていると羽ばたく音と共に3歩後ろに彼女が降りてきた。

 

「旦那」

 

「ククッ、良い友人を持ったなレイヴン9」

 

「クソッ恥ずかしい……途中で止めてくれって連絡したのに他の連中とゲームしながら寝落ちした話までしやがって」

 

「彼女は君が楽しんでる話を欲していたからな。ゲーム寝落ちなど楽しんだ最たる例だろうさ」

 

「だからって……あぁもう、アンタはそういう人だよな」

 

 今回はそういう約束をして彼女との対談に臨んだのだから当然だとも。

 だがこれでティーパーティー、シスターフッドとトリニティでは大きな組織と繋がりがある事を示す事が出来た。

 実績としては他に比べて弱いが政治色の強いトリニティではこれで十分……アリウスとの一件が上手くいけば一枚噛んだ者として箔付けにもなる。

 

「……サクラコのやつ、律儀に約束を守ろうとしてんだな」

 

「良い覚悟であったよ。シスターフッドは間違いなく変わるだろう」

 

「だな。んじゃあ、私も頑張らないとな!なんか良い仕事回してくれよ旦那」

 

「ククッ、恐らくそう遠くない内に仕事を頼むことになるだろうさ」

 

「へぇ!楽しみにしてるぜ旦那」

 

 向こうの出方次第ではあるがね。

 まぁ、未来視をした限り彼女は何かしらやらかすだろうから安心したまえ……なぁ、連邦生徒会防衛室長殿?




次はカルバノグ!……と見せかけて、アルちゃんとの二人だけ回とかにしようかなって思ってます。
あと、多分そんなにRabbit小隊と関わらないかも?予定は未定。

感想やここ好き待ってるぜ!!
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