便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア   作:マスターBT

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アビドス編の序章って感じかな?

あと、TSに関してご心配のお声を頂いておりますが、それ込みでストーリー展開を考えているのでご安心くださいませ。


最高の気分に水を注されるとはこの事か

 月夜が差し込む繁華街の裏通りを更に進んだ先にある廃工場に、その場に似つかわしくない格好の五人組が姿を現す。

 彼女らの格好は、一見すると巫山戯ているのかと言いたくなる様な、蛍光色に彩られた服装で明かりの殆どない廃工場であっても、目を凝らせば視認出来るほどには目立っていた。

 

「ハッハッハッハッ!無限回転寿司戦隊・カイテンジャー参上!」

 

 訂正をしよう、堂々すぎる名乗りで派手に位置をバラしていた。

 

「我々と話がしたいとはどのような用件だ?」

 

「これ、残業手当とか出るんですよね」

 

「そもそも差出人不明のメールにわざわざ真に受ける必要あったの?」

 

「──ようこそ、カイテンジャーの諸君。私の召集に応じてくれて先ずは感謝しよう」

 

 思い思いの発言が出る中、視線を逸らしていなかったカイテンレッドの視線の先から、機械音声が響き渡る。

 全員が視線を其方に向けると、一台のノートパソコンが設置されており、ヒビ割れた鷹とBという文字が表示されていた。

 

「其方は姿を現さないつもりとは卑怯な」

 

「姿を見せない無礼は詫びよう。こちらにも事情があってね、一アクション、間を置かせて貰う必要があったのだっと、そんな話はどうでも良い。カイテンジャー諸君に、私は一つの提案を持ち掛けたい」

 

「我々と?一体、何を目論んでいる?B」

 

 レッドの問いかけには喉で笑うククッという特徴的な声だけが返ってくる。

 

「君達に資金を提供しよう。代わりに私からの要望を引き受けて欲しい」

 

 ──これが彼らの初めての出会いの瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「連邦捜査部、通称シャーレか。確かにこのキヴォトスは、各学園の個性が強すぎて纏まるなんて無理だろうな」

 

 手が空いてる時間に調べたが、研究と技術が一番と掲げるミレニアムサイエンススクール、テロリストしか居ないのかと言いたくなるアル社長達の母校、ゲヘナ学園、成り立ちからして問題を抱えているトリニティ総合学園……これらが三大学園と数えられ、それ以外にも腐敗が進むヴァルキューレ警察学校、正式な生徒会を持たないが故に、いざという時の統率が取れるのが不明な百鬼夜行連合学院等、様々な個性豊かで面白そうな学園がひしめき合ってる。

 

「ぐぬぬ……」

 

「私は面識がないが、連邦生徒会長なる人物が居た時は纏まっていたのかね」

 

「少なくとも治安は良かったよ。今みたいに、あっちこっちで問題は起きてないね」

 

「遠目でチラッと見た事あるけど、雰囲気がもう全然違ったねぇ〜」

 

「は、はい。私なんかとは違って、自信に満ちていました」

 

 なるほど……少なくとも反感を買う様な性格ではなかったのだろう。

 まぁ、不良生徒には少々、当たりが強かったのであろうことは先日起きた、シャーレ襲撃事件を見ればなんとなく分かる……仕事が入っていなければ、是非とも先生を一目見たかったのだがね。

 

「ぬぬっ……」

 

 ……さて、そろそろいいか。

 視線を端末からポーンが全滅し、黒のキングが白の駒に完全包囲されている盤面を必死に、逆転出来ないかと凝視している我らがアル社長へと向ける。

 

「リザイン(投了)をお勧めするが?」

 

「ぐぬぬ……はぁ、無理!私の負けよ!もー、バイステンダー強すぎ!」

 

「カヨコ課長ほどではないさ」

 

「60手打って、そっちが根負けしただけでしょ」

 

 思わず、未来視を使おうかと思うほどカヨコ課長とのチェスは楽しかったよ。

 互いに駒を削り合い、互いの王を獲ろうと戦略をぶつけ合わせ、彼女より攻めっ気を出していた私が駒不足に気がつき、リザインしたんだったかな。

 

「機会があればまた手合わせを頼むよ。アル社長、そろそろではないかね?」

 

「そうね。カイザーコーポレーションとの打ち合わせに行きましょうか。皆んなは、事務所で待っていてバイステンダーと行ってくるから」

 

 車の鍵を取り、便利屋の面々と会話しているアル社長より早く、出て事務所の正面へと車──ボンネットに便利屋の社章を描いた黒のCTS-Vを回す。

 海の底へ沈んだ車の代わりに、新たに購入した代物でメインで使う私とアル社長の趣味が合致した車であり、金が吹き飛んだ一台である。

 

「待たせたわね」

 

「いいや、ちょうど回したところだとも。さぁ、乗りたまえ」

 

「いつも悪いわね」

 

「ククッ、アルバイトですから」

 

 私が開けた助手席にアル社長がしっかり座ったのを確認してから、ドアを閉め運転席へと乗り込み、車を発進させながら、グローブボックスに入れて置いた書類をアル社長へと手渡す。

 

「これは?」

 

「カイザーコーポレーションの歴史……とでも言えば良いかね。どの様に発展し、今の地位に至ったか纏めたものだ。私は今回、社長と共に席を座る権利を得たが所詮は、君の雇われでしかない。そんな者が発するおべっかなど何一つ価値はないだろう?」

 

「そ、そういう事ね。わかったわ」

 

 別に私が交渉を担当しても良いのだが、それではアル社長の面目を潰すというもの。

 彼女が居ない場であれば、いくらでも私が話すが同席している以上、過度に喋ればタダのお飾りだと思われてしまっても文句は言えないし何より、私がつまらない……ククッ、真剣な表情で読むのは構わんが酔っても知らないぞアル社長。

 

「っと」

 

「きゃあ!?」

 

「失礼。銃弾が当たりそうだったのでな」

 

 キヴォトスでも比較的、都市部のメインを走っていてもこれか……治安低下とは全くもって私に優しくないな。

 

「旧アビドス自治区まではもう少し掛かるが、何処かに寄る必要はあるかね?」

 

「特にはないわ……凄まじい大企業ねカイザーって」

 

「あぁ。金儲けの為ならなんでもやる……ふむ、この一点は我々と同じだな」

 

 アウトローを目指すのなら参考になるべきところもあるとは思うが、何故だろうなアル社長がカイザーの様にやれている姿が微塵も想像出来ない。

 

「そうね……でも、私はあんまり好きじゃないわ」

 

 眉を顰め、資料を閉じるアル社長に思わず、笑いが込み上げてくる。

 

「え、なに?なにか笑うところあった!?」

 

「ククッ、君は是非ともそのままで居てくれ。きっとその方が面白い」

 

 私にとって、完全無欠や純粋悪というのは面白くない。

 どうしようもなくポンコツであり、善良でありながらアウトローという悪を目指し奔走するアル社長と便利屋の面々だからこそ私はこうして居着いているのだから。

 

「それって褒めてるのかしら!?」

 

「あぁ、褒めているとも。我が道を貫く君のアウトローな生き方は、とても見ていて惹かれるものがある。少なくとも私にとって、君の生き方は興味をそそるものだ」

 

 ……故に残念だ、私が幾つも見届けた物語は全てバッドエンドで綴じている。

 彼女達の素晴らしき物語の果てが、その様なつまらない結末というのは些か、気に食わんがどうする事も出来ない運命という残酷な現実が、夢物語に幕引きを齎すのが、お約束というものか。

 

「ふふっ!なら、貴方も私にちゃんと着いてきなさい!この陸八魔アルが描くアウトローな生き様に!!バイステンダーだって、私の便利屋68の社員なんだからね!!」

 

「──ふっ、私はただのアルバイトだアル社長」

 

「ちょっと!?そこはノリなさいよもー!」

 

 折角、格好よく決めたのに……と愚痴るアル社長を横目に口元に触れてみれば、口角が上がっている事に気がつき私はそのまま、隣に座るアル社長にバレない様にそっと口元を隠し、たわいの無い雑談をしながら車を走らせ続け、打ち合わせの場所であるカイザーPMCの事務所へと到着し、部屋に入ると同時にスッと心が冷えていくのを感じ取った。

 

「……なるほど。私の事も調べていたな?『黒服』」

 

「えぇ。お久しぶりですねバイステンダー」

 

 ……痕跡はあったが、引き当ててしまうとはな。

 ゲマトリア(我々)案件となるとこの仕事、相応に荒れる事だろうとカイザーPMC理事の後ろで佇む黒服を静かに見て、溜息を溢した。




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