便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア   作:マスターBT

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アニメ観ました。あの、初手にあの子を出すという事はそこまでやるんですか?そうなんですか?

ところで、ついにモブ生徒にすら声を先越しされたセイアちゃん……ドウシテ?


つまらない者だと判断すれば私は君を容赦なく捨てるとも

 何処で間違えた!?なんで私が組み伏せられ、彼女を見上げることになっている……!!

 いえ、いえ……落ち着くのです不知火カヤ、窓を破りどういう手を使ったのかは見当も付きませんが連邦生徒会に人を紛れ込ませてまで此方を取り押さえたのですからじきに騒ぎを聞きつけた者が助けを、

 

「ククッ、何を考えているか大凡分かるがそうだな。先ずは希望を一つ手折るとしようかね」

 

「……何を」

 

「残念だがすぐに助けが来ることはないよ不知火カヤ防衛室長。君達のシフトは入手済みかつ、改竄済みだ。暫くの間、この付近に寄り付く者は居ないし緊急の仕事もシャーレに回す様に手配した。そしてケイ」

 

『はぁ、こんな証拠隠滅に使う事になるとは…… プロトコルATRAHASIS限定稼働』

 

 またこの声……一体誰なんですか、外部から此方に干渉しているのは確かな筈ですが、これ程までに鮮やかな手腕を見せるのはミレニアムのヴェリタスぐらいかと思っていましたがそれとも違う、全く聞き覚えのない声……ってなんですか、FOX小隊の皆さんがあり得ないものを見たかの様にこっちを……は?

 

「窓が直って……え?」

 

「ご覧の通り窓は修復させて貰った。レイヴン9」

 

「見られるなんて下手は打ってないさ。他のレイヴンがちょっとした事故を起こしたからそっちに視線が向いている筈だ」

 

「……ヴァルキューレに捕まっても面倒は見ないからな」

 

「ハハっ、心配すんなよ旦那。全員、無事に撤退済みだ」

 

「なら良いがね。おっと、話を逸らしてすまなかったな防衛室長殿。状況は理解して貰えたかね?」

 

 カチャッと飲み終わったコーヒーが机に戻される音を聞きながら、整えたと思い込んで、否思い込まされていた盤面が崩れていくのを漸く理解する。

 此処から状況を巻き返す一手は……必ずある筈です、考えなさい不知火カヤ!!私はあの女の様に超人になると決めたでしょう……こんなところで蹈鞴を踏んでいる暇はない筈です!!

 

「この状況で尚も、私を睨みつける反骨心は結構。時に人はそれを傲慢だと罵るが組織の長足らんとするならば必要な事だ」

 

「……確かに防衛室(私達)から無礼を其方に働いたのは認めましょう。ですが、これは度が過ぎているのでは?」

 

「ほぅ?」

 

 品定めをする様な視線が気に入りませんが、この状況では彼方が格上なのは事実。

 であれば……この場以外、具体的に言えばキヴォトスにおいての優位性を語るしかありませんね。

 

「連邦生徒会との不和は其方にとっても痛手のはず。此処は互いに目を瞑るということで」

 

 和解を、と続けようとしたところこの場を取り仕切っている彼女の、萬屋セラの目つきがスッと細くなり思わず口を閉じてしまった。

 

「解放しなければ我々に害を与えると?ククッ、なるほど確かに。連邦生徒会という立場を使うのなら最も単純でかつ分かりやすい手だな」

 

 そう言いながらソファから立ち上がった彼女はゆっくりとした足取りで私の方へと歩いてくる……ただそれだけの筈なのに、その一歩が、此方を見る彼女の目が、空気が、まるで私が今断頭台にいる気分にさせ呼吸が僅かに乱れる。

 そしてそんな私を嘲笑うかの様に目の前でしゃがむと顎を持ち上げられ、無意識のうちに逃げていた視線を合わせられてしまった。

 

「──私が権力如きに怯えると思ったか?」

 

「なっ……正気、ですか?」

 

 その言葉の意味が分からないほど私は愚かではない。

 彼女は本気で連邦生徒会を敵に回せると言っており、表情や声からして虚栄でもなんでもない──あぁ、あの人が居ればこんな事にはならなかったのに。

 

「私は悪人だからな。君達が必死に取り繕ってなお、綻びが隠せない連邦生徒会の一つや二つ潰す算段は幾らでもあるとも。例えばそう……カイザーと防衛室の癒着とかね」

 

「ッッ!?」

 

「おや気がついていないと思ったかね?巧妙に隠してはいたとしても、金の流れや物の流れは必ず何処かに記録として残る。ましてや、互いに腹の中を探り合い信頼し合えていない者同士であれば、敵に回った際の切り札として秘密裏の契約を都合の良い形にして公表出来るように残すものだ。そう、君が表向きはなんて事のない書類データの奥深くに残しているようにね」

 

 バレている……アレは誰の目にも付かないようにオフラインで管理していた筈なのに。

 まさか以前からスパイが?だとしても隠しカメラや、ログの確認は定期的に行なっているし一体全体どうやって……あぁもう、なんなんですかこの人は!!

 

「そこまでして……何が望みですか?防衛室を乗っ取るつもりですか?それとも此処を足掛かりにキヴォトスの転覆でも?」

 

「私をそこら辺のつまらん悪役と同じにしないでくれたまえ。だが良い質問だ不知火カヤ防衛室長殿」

 

 講義をする教員の様な物言いに何度目か分からない苛立ちを覚えますが、まぁ良いでしょう。

 早く続きを言えと睨みつければ、楽しそうに喉を鳴らし私を見下しながら彼女は口を開いた。

 

「私は君を見定めるのが目的だとも。今日此処に来たのもその第一歩だ」

 

「……は?」

 

 心の底からの言葉が飛び出した。

 私を見定める?何の為に?というか色んな労力を支払った上でやることなのでしょうかそれは?……分からない、目の前に立っている彼女の考えが何一つとして分からない。

 

「連邦生徒会は生徒会長の不在によって、明らかに機能不全を起こしている。シャーレという『先生』個人でどんな事も出来てしまう組織が今までの連邦生徒会の代役を果たし、求心力すらも下がっている。そしてSRT特殊学園の閉校やヴァルキューレ警察学校の資金不足……これではまともに治安すら維持出来ない。防衛室長として何か思う事があっても不思議ではあるまい?」

 

 あぁ、これはもう私の悪事は全部バレているのだろう。此処までくればもはやどうでも良い。

 今は少しでもこの女の真意を探るのですよ不知火カヤ。

 

「……ええまぁ色々とありますよ。それで?私を見定める事に何の関係性が?」

 

「私も連邦生徒会の現状に思う事がないわけではない。だが、私は真っ当ではないのでね。リン行政官とはあまり方針が合わないだろう……そこで君ならば話も合うだろうと思った次第さ」

 

 思わず頬が引き攣ったのが分かる。

 この状況を作り出した人間が言うセリフではない……どの口でいけしゃあしゃあと言ってるんですかねこの人は。

 

「それなら初めから話に乗ってくれれば良かったのでは?」

 

「ククッ、君達が予想を上回ってくれていればそれも考えたが、現状ではあまりに粗末……全く話にならん」

 

「言ってくれますねぇ……」

 

「言うとも。そこでだ、不知火カヤ防衛室長殿。一つ私と契約をしようじゃないか」

 

「……なんですか?」

 

「君が一度でも私を出し抜けば、その時は君に従う道具でも何にでもなろう。だが、もしも君が私の期待に沿わない存在だと判断した時はそうだな、今日の続きを披露しようか」

 

 この化け物を相手に想定外を突けと?……しかもそれが出来なきゃ今日の続き……つまり、私の完全失脚ですか。

 此方が失うばかりで向こうは失うものが何もない不平等な契約を持ちかけてきましたね……!!

 

「……良いでしょう。結びますよその契約」

 

「ほぅ。随分と話が早いな」

 

「飲まなきゃいつか来るものが、今来るだけでしょう!はぁ……とんだ外れくじを引きましたねこれは」

 

「ククッ、見事に私と言う悪を飼い慣らせるかどうか……見定めさせて貰おうか不知火カヤ」

 

 彼女が顎で指示をすれば、私は解放され視線の先で彼女の手が差し出された。

 この手を取るという事が悪魔の契約である事は分かりきっていますが、取るしかないと覚悟を決めその手を取る。

 

「……その程度簡単ですよ超人である私からすれば」

 

 そう、私は超人だ、超人なのだからこれくらいの事はしてみせなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「旦那、良かったのか?あんな契約を結んで」

 

 帰り道の途中で車の運転を任せていたレイヴン9の声に顔を上げれば、ルームミラー越しに視線が合い疑問と心配の感情が込められている事に気がつき、笑えば恥ずかしそうに視線を逸らされた。

 

「カイザーがこれ以上増長するのを防ぐ為でもある。どうにも連中の動きはきな臭いのでな」

 

 アビドスの一件で痛い目を見たとは思うが、そもそも連中はキヴォトスに広く権力を伸ばしている為に蜥蜴の尻尾切りを行えば末端にダメージこそあれ、本体には大した痛手にはならん。

 未来視によって連中が何かを企んでいる事は分かっているが、不思議な事にその先を見ようとするとやたらと景色がブレて使い物にならない……セイアの神秘を引き継いでなおこれとはな、本当に使い勝手が悪い。

 

「旦那の指示で内部に入り込んだ連中もいるが、どうやら警戒されている様であんまり核心に迫る情報は拾えてないらしい」

 

「無理はするなと伝えておけ。連中、使える武力として確保するのが目的だろう」

 

「あー……泳がせておく理由はそれか。分かった伝えておく」

 

 これだから大人の相手というのは疲れる……先程まで話していたカヤ防衛室長の方がまだ可愛らしさがあるというものだ。

 もう少し先の未来を見る頭があれば手を組むのも吝かではなかったが、今のままではカイザーにいい様に利用されて食われて終わるのがオチだろうな。

 

「……はぁ。あの時、君と話していなければこんな面倒な事をするつもりはなかったのだがね」

 

──連邦生徒会長、とレイヴン9に聞こえない様に続けため息を溢す。

 彼女が青春を差し出してまで救おうとしたキヴォトスには、もちろん不知火カヤ防衛室長も含まれている。

 別に彼女が失敗してどうなろうが私の知ったところではないが、そのせいで『先生』やキヴォトス全体に不利益が生じ、万が一にでも滅びるなんて事があれば連邦生徒会長の献身は無へと帰る……それはあまりにつまらん幕引きだ。

 そういう不穏分子は早めに手を打つに限る。

 

「あぁ、そうだ。レイヴン9、お前から見てFOX小隊はどうだ?」

 

「ん?あー、アレはダメだな。他は兎も角、隊長が腐ってる。なんつうか、ちょっと前のサオリに近いな。道具である事を許容している割にはウダウダと悩んで、その癖思考停止気味だ」

 

「ふむ。やはりそう見えるか」

 

「私らは自分達で考えて、この先絶対に後悔しない自信があって旦那の道具である事を選んだ。でもアイツらは違う。こうしている間にも後悔ばかりだろうよ」

 

「ククッ、忠義心溢れる道具を持てて嬉しい限りだな全く……あのまま、不知火カヤ共々腐り落ちていくのなら、いずれ処分をお前達に任せるだろう。準備はしておいてくれたまえ」

 

「「「「「「了解」」」」」」




不知火カヤという女への解釈

 この作品において彼女は連邦生徒会長に脳を焼かれた上で、その才能を妬み羨み誰よりも切望している子として解釈しています。
 理由としては事あるごとに、まるで自分に言い聞かすように超人と語っていた事と他人を使う能力はあるという点。
 他人の弱みを握り、悪意で持って縛り付ける事しか出来ないカヤと常に笑顔で善意で他者から好かれていた連邦生徒会長、表面的に同じ状況は作れたとしても本質が全く異なるからこそ時として、情を切り捨てる必要のある防衛室という地位にカヤが座っているのではないかと考えています。

 未だ何かカヤにはあるかもしれませんが、本編では書かれてないので!!この作品ではこういう女として書いていきたいと思います。

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