便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア   作:マスターBT

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雀魂、アル社長引けません……辛いです……


子兎小隊VS便利屋68

 これは不正を暴く戦い、即ち我らに正義ありと未だに未熟なれどその心に宿す柱は揺るがぬ事を知らない無垢な熱意を激らせ三匹の子兎が治安維持を目的とした警察組織──ヴァルキューレ警察学校の地下三階へと侵入を果たす。

 

「こちらRABBIT1、現在時刻は2300。只今ポイントE(エコー)に到着しました」

 

 先陣を進むは鉄仮面の如き、冷たい表情の下に誰よりも優しく熱い正義の心を持つ小隊長月雪ミヤコ。

 彼女が付近の安全を確認したのちに、合図を送ると残り二人のメンバーも並び立つ様に現れ慣れた動きで警戒態勢へと移行する。

 

「哨兵の姿は無し。向かい側の廊下に監視カメラらしき多数の機器を確認」

 

『こちらキャンプRABBIT。その監視カメラについてはもうハッキング済みだから気にしないでOK〜』

 

 薄らと灯る燐光に照らされた廊下を監視する機器は、信頼出来る仲間によってハッキングされているため安全だと思えるのに何故か、この時のミヤコの心中は何かこの先に潜んでいる様な言葉にするのが難しい感覚に襲われており周囲で話す仲間達の声が少しの間、聞こえなくなっていた。

 

「おい、どうした?30分しかないんだから行くぞ」

 

「え、あはい。行きましょう二人とも」

 

 信頼出来る仲間──風倉モエ──によるハッキングは有効時間が30分と短く、迅速に動かなければならない以上今この場で先を促すのは正しくミヤコは促して来た仲間の空井サキの言葉に従い武器を握り直すともう一人の仲間である霞沢ミユと共に三人で廊下へと進み始める。

 言葉に出来ない警戒心……それは特殊な作戦に対応する為に生まれた学園であるSRT特殊学園の出身である彼女であっても、足りない実戦経験があれば注意する事も出来たであろう。

 

「ポイントS(シエラ)に向かいます」

 

 つまるところ、彼女達は未だ経験不足な子兎でありバックに『先生』が付いていたとしても、未熟の一言で片付けられてしまうのだ。

 訓練により身に付けた動きは例え、空間が限られた建物であっても音一つ立てる事はなく潜入作戦として花丸を出せる程の動きでありモエと共にモニターで状況を確認している『先生』も凄いと感心している時だった。

 

「ぐっ!?」

 

「RABBIT2!!」

 

 一直線上の廊下に足を踏み入れた瞬間、一発の銃弾がRABBIT2──空井サキ──を鉄帽ごと吹き飛ばした。

 サキは咄嗟ではあるものの受け身を取ったが、吹き飛んだ鉄帽が甲高い音を立てながら廊下を転がっていく光景は彼女達に侵入作戦の失敗を告げるのと共に最大限の警戒を促す。

 

「──ッッ、急いで隠れてください!」

 

 ミヤコが指示を出し、身を屈めた瞬間頭部があった場所を銃弾が通り抜けていき冷や汗をかきながらRABBIT小隊の面々は来た道を引き返し一先ず身を隠しながら廊下の先を伺う。

 一分、二分と時間が経つが誰かが歩いてくる様な音は聞こえず、監視しているモエも銃声と鉄帽の落下音を聞いて誰かがやってくるかとモニターを注視していたが誰もやって来る事はない。

 

「……どうなっている?」

 

「ここまで動きがないとなると」

 

『”敵はこの先に皆んなを行かせないのが目的だろうね”』

 

「はい。私もそう思います『先生』」

 

 目的地であるポイントSは目と鼻の先ではあるが向かうにはこの一本道を使うしかなく、先程の狙撃からしてこの遮蔽物のない環境は敵側に有利でありミヤコと『先生』は互いに敵の出方を予想し思考を重ねていく。

 

「RABBIT4であれば、狙撃による反撃は可能ですが」

 

『”敵の方が先に君達を見つけている分、先手は打たれるだろうね”』

 

「RABBIT2と私の頭部を狙った正確無比な攻撃……アレが偶然だとは思えません」

 

『……”ミユ、射撃の瞬間敵は見えた?”』

 

「い、いえ……それらしき影は見えましたが……向こうも隠れながらの攻撃だと思います……」

 

 優れた視力と狙撃の腕前を持つミユだからこそ、敵側の攻撃の瞬間を見る事が出来たが見えたのは狙撃銃とゲヘナらしき角だけでサキが受け身を取っている間も姿を晒す事はなく、ミヤコを狙った時のみ同じ様に一瞬だけ姿を晒したと言う。

 薄暗い廊下かつ、一瞬のピークだけで頭部を的確に狙われたという事実に戦慄が走る彼女達であったがその程度で作戦を諦められる程、正義の心は弱くなくすぐに意識を切り替えるとミヤコは懐からスモークグレネードを取り出す。

 

「煙幕で視界を切るのはどうでしょうか?」

 

『その手で行くなら少し待って欲しい。今、火災報知器をこっちで切るから』

 

『”気をつけてね。向こうは多分、手練れだ”』

 

「……分かっています。では、RABBIT2、RABBIT4。準備は良いですか?」

 

「あぁ。出来てる」

 

「う、うん」

 

「では、1、2、3、で行きますよ」

 

 ピンを引き抜き、身体が向こう側から見えない様にピッタリと壁際にくっつきながら全員の顔を見渡しミヤコはゆっくりとカウントしながらスモークグレネードを放り投げる。

 彼女の狙い通り、敵側の方へと綺麗な放物線を描くスモークグレネードは──中間地点で撃ち抜かれ目的より近くで煙幕をばら撒く。

 

「ミ、ミヤコちゃん……」

 

「ッッ、敵の目は遮ったはずです。このまま勢いに乗りましょう!」

 

「時間もないしな!」

 

 改めて狙撃は偶然ではなかったという証拠を見せられ、驚くRABBIT小隊であったがすぐに気を取り直しミヤコを先頭に煙幕の中へと駆け込んでいく。

 SRT特殊学園でも使われるスモークグレネードは、視界の有効距離をかなり減少させてくれている為に煙幕を抜けるまでは彼女達が驚異的な狙撃に襲われる事はないが、それは敵側が大人しくしていればの話だ。

 

「ッッ!!足音が複数、正面です!」

 

「「……」」

 

 ミヤコが異なる足音を拾ったのとほぼ同時に、ショットガンの銃声が響き渡り煙幕に散弾の穴が開く。

 

「このっ!!」

 

 自分達とは異なる場所に放たれたことで見えたマズルフラッシュに、サキが突貫していき敵を一人体当たりで煙幕の外へと弾き出す事に成功するが、薄明かりに照らされた敵は薄紫色ショートカットにヴァルキューレの制服までは普通だったが、一際目を惹くのが牡牛を模した仮面を着けている事だ。

 仮面の奥から覗く瞳は自信の無さが感じられるが、それとは真反対の鋭い蹴りが呆気に取られたサキの腹部へと叩き込まれる。

 

「援護をッッ!」

 

「ククッ、させんよ」

 

 ミヤコの邪魔をする様に青空と同じ色をした髪色の生徒がショットガンを放ち、動きを止める。

 彼女もまた仮面を着けており、それは鷹を模したもので『先生』にはとても見覚えがあるものだった。

 

『”……なんで君達が”』

 

「くふふっ、もう終わり〜?」

 

「思ったより早かったね」

 

「あうう……」

 

 ミユの背後から現れた二人、一人は黒と白が混ざった髪に魚を模した仮面を、もう一人は真っ白な髪に黒いリボンが特徴的で獅子を模した仮面を着けておりそれぞれの武器がミユの後頭部へと向けられていた。

 

「なんでと言ったかしら?それはね、『先生』?私達が此処を守る様に依頼されたからよ」

 

 そんな彼女達の視線の先、晴れていく煙幕の向こう側からカツンカツンとヒールの音を立てて現れるのは美しいワインレッドの髪に黒い梟を模した仮面を身に付けた生徒で彼女こそ、この仮面集団の頭目であった。

 

『”……色々と言いたい事はあるんだけどよく似合ってるね。便利屋68のみんな”』

 

「ふふっ、そうでしょうそうでしょう。結構悩んだのよこれ」

 

「ククッ、まぁ正体を隠す目論見は見事に失敗に終わった訳だが」

 

「あ」

 

 張り詰めた空気が一気に緩んだものへと変わっていくのを鷹の仮面の生徒──セラは感じ取り喉を鳴らしていつもの様に愉しげに笑い、釣られる様にアルを除く他の便利屋68メンバーも笑うが依然、銃口はしっかりとRABBIT小隊を捉えている。

 その事実にミヤコは今漸く、此処に突入する前に感じた感覚の正体へと至り悔しそうな表情を浮かべた。

 

「……貴女達の気配だったんですね」

 

「さてなんのことだか。アル社長」

 

「っと、そうね。どうやら『先生』も居るようだし、なんでこんな事をしているのか教えて貰っても良いかしら?RABBIT小隊の皆さん」

 

 にっこりと笑うアルだが、それはこの状況に置かれたRABBIT小隊にとって死刑宣告にも等しく彼女が狙った様な緊張を解すといった効果は見られずに残された制限時間の間、便利屋68とRABBIT小隊の話し合いが行われる事となる。

 




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