便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア   作:マスターBT

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雀魂、未だアル社長を引けておりません……


アウトロー便利屋68

「……私達はヴァルキューレとカイザーコーポレーションの間に違法なリベート行為があった証拠を手に入れる為にやって来ました。市民に奉仕すべき警察組織が一つの企業の為に働くのは間違っています」

 

「ふむ」

 

 RABBIT小隊隊長のミヤコ嬢の言葉を信じるのであれば、何故この場に我々が集められたかも理解が出来るというものだな。

 恐らく、アル社長に依頼を出したのはカイザーの息がかかった者で連中は何処からか、RABBIT小隊の動きを感知し我々に護衛という依頼を出す事であわよくば共倒れを狙い、RABBIT小隊が残れば警察組織に侵入したという罪を、我々が残れば犯罪組織に手を貸したとヴァルキューレに責任を押し付けながら捕えるか……まぁ、どちらにしろ大人の汚いやり方に変わりはないな。

 

「大凡、そちらの状況は理解したが……『先生』君は相変わらず生徒のやりたい事のためとは言え、犯罪行為に手を貸すのだな」

 

『”うっ……もちろん、先生として責任を取る覚悟だったよ”』

 

「底抜けの善人め。この一件で君を良く思わない者が、責任としてシャーレに制限をかけたり、SRT特殊学園の閉鎖が可及的速やかに行われ彼女達の最後の寄る辺を壊す可能性だってあったんだぞ?」

 

『”責任は全て私が負うさ。それにまだ完全に詰んだ訳じゃない。そうだろう?セラ”』

 

「口説くつもりなら相手を間違えているぞ『先生』。今この場の主人は誰だ?」

 

 全く……冗談でも狂言でもなんでもなく、『先生』は本当に今回の騒動が悪い方向に向かった場合に全ての責任を背負うつもりなのがタチ悪い。

 まぁ良いさ、なんであれ私の疑問は解消された。

 あとはアル社長に任せるとしようか。

 

『”そうだね。アル、君はどうするつもりかな?”』

 

 『先生』の言葉と共に全員の視線がアル社長へと集まり、ポケーっと私達の話を聞いていたアル社長の顔が一瞬でキリッとした表情へと変化するのを見て、我々便利屋メンバーはクスリと笑う。

 

「そうね……引き受けた仕事のためにも此処で彼女達を捕縛してヴァルキューレに引き渡す」

 

「「「ッッ!!」」」

 

 自分達を捕えるという発言で一瞬にして、殺気立つRABBIT小隊の面々だが即座に我々が銃口を押し付け動きを静止させる──静かにしたまえ、此処から先が本題なのだから。

 

「──のはやめましょうか。セラ、私達の受けた依頼の復唱を」

 

「ククッ、我々の正体を隠したままこの先にある書類を守り通す事だ。おや、どうやら我々は既に一つ間違いをしている様だなムツキ室長?」

 

「くふふっ!そうだねぇ、まさか『先生』が敵にいて私達の正体に気がついちゃうなんてねぇハルカちゃんもびっくりだよね」

 

「は、はい!アル様が考えた完璧な変装を見破るとは流石は『先生』です。で、ですがこの場合ってどうなるんですかカヨコ課長」

 

「そうだね。正式な報酬は受け取れないかも。書類は守ったけど正体はバレちゃってるし。良くて、半額。悪くてタダ働きかな社長」

 

 まるで打ち合わせをした様に次々と言葉を連ねて行く私達の様子を、ポカンっとした表情で眺めるRABBIT小隊の面々と通信機越しから楽しげな笑い声が漏れ出ている『先生』の意識が再び、問い掛けられたアル社長へと向くと彼女は人誑しの見惚れる様な笑顔を浮かべる。

 

「クリーンな便利屋68の時間は終わりよ。これからはアウトローでいくわよ!」

 

 ククッ、そうこなくてはなアル社長!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ……一体何が起こっている!?」

 

 混乱の始まりは地下で起きた爆発からだった。

 地震と錯覚する様な揺れと共にビルの電源が落ち、暗闇が支配すると僅かな静寂の後に公安局長カンナを除く全てのヴァルキューレ生徒による悲鳴と混乱が始まり事態への対処は遅れた。

 どうにか混乱を治め、対処を開始した頃には十分の時間が経過しており武器庫へと向かった生徒達が目撃したのはそこへ至る為の通路が崩落によって通行不可になっている光景であり、彼女達はその報告をカンナに告げた直後に「ごめんなさい、ごめんなさい!」という声と共に通信が途絶。

 

「常備しているハンドガンを携帯し、情報収集に勤しめ!第一目標は電源の復旧と通信が途絶えた者達の捜索だ。無線は常に入れておけ!」

 

「「「「了解!!」」」」

 

 次に準備を整えた彼女達を襲ったのは、理解の外側、常識を俯瞰し時に嘲笑う元・傍観者と世界を滅ぼしかねない厄災の神官による機械のハッキングだった。

 

「きゃっ!?」

 

 無線はスイッチを入れた瞬間に爆発し、電源復旧の為のブレーカーは内部の配線が焼き焦げており傍受の危険性を考慮してまで取り出した携帯は、全て鷹のマークが浮かび上がるだけの鉄板に成り下がっていた。

 瞬く間にヴァルキューレの面々は組織として活動する為の基盤を失い、流石のカンナも打つ手は無しと苛立ちと共に机を叩く。

 

「……」

 

 そんな中、暗闇を利用し一人のヴァルキューレ生徒が集められた部屋からそっと、廊下へと逃げ出し胸ポケットに入れていたペンライトで暗闇を照らしながら外を目指して走り出す。

 よほど焦っているのか、足を縺らせながら普通の携帯端末とはまた違った特殊なものを取り出してとある会社へと通じる番号を入力するが、やはり既にその端末もハッキング済みで掛かるはずの相手には繋がらない。

 

「なんで……!!」

 

 苛立ちと共にコール音を告げるだけの端末を仕舞うと、タイミング良くビルの外へと通じる玄関の前まで来ており瓦礫で封鎖されていない扉からは、建物内の暗闇とは違い街灯の明かりがまるで、彼女のこれからの未来を指しているかの様で安心感から溢れた笑みと共に彼女は其方に向けて走り出し──

 

「はい。そこまで」

 

「ッッ!?」

 

 ──反射的に声が聞こえてきた右側へと拳銃を向けると、そこには鋭い眼光を仮面の内側から覗かせるカヨコが立っておりその手には彼女の愛用する『デモンズロア』が握られており、しっかりと逃げ出してきたヴァルキューレ生徒の頭に突きつけられていた。

 

「貴女と貴女の背後にいる会社について教えて貰おうかな」

 

「なんで……」

 

 投げかけられた質問だけで、ヴァルキューレ生徒は理解する──彼女は自分とカイザーの繋がりを知っていると。

 何を隠そう彼女こそが便利屋68をこの場に招き入れた依頼者であり、彼女は便利屋68を潰したいカイザー側から金を積まれて引き受けた所謂、悪徳警官であった。

 

「気付かないと思った?こんな事件の中、真っ先に一人だけで逃げようとする……それが何よりの証拠、違う?」

 

 悪い事をしているという自覚が、この異常事態を前にして警察として立ち向かうより自分の身を守るという決断を下させた。

 その愚かさを、そして醜さをカヨコは突きつけると諦めた様に俯いたヴァルキューレ生徒は自分の罪を認め──る訳がなかった。

 目の前にはただ一人、そして持っている武器もさほど強いものではないという事実が彼女を更なる愚かさへと突き動かし、焦りとそして破滅するかもしれない恐怖で顔を狂った笑顔に引き攣らせた彼女はカヨコに向けて拳銃を放とうとする。

 

「──いやはや、見るに堪えん愚かさだ」

 

「ッッ!?」

 

 一発の銃声が彼女の拳銃を弾き飛ばすと、暗闇の向こうから気怠そうな拍手と共にセラと煙を漂わせるアルが現れる。

 

「素直に諦めればまだ可愛げがあったものだが、伏兵の可能性すら考えずに最も安直な方法に走るとはなぁ。あの小鳥遊ホシノの選択にすら劣る愚の骨頂と言わざるを得んな」

 

「……」

 

「おや?今度は絶望し崩れ落ちるか。何から何まで予想の範疇から出ない奴だな。まぁ良い」

 

 落胆しきった表情で崩れ落ちたヴァルキューレ生徒に近づき、その身を弄ると懐にあった特殊な携帯端末──特徴的なタコと王冠の描かれたカイザーコーポレーション製の端末を回収したセラは満足そうに頷きショットガンをヴァルキューレ生徒の頭に突きつける。

 

「さて、何か言い残すことは?」

 

「……悪党め。ヴァルキューレにこんな事をしてタダで済むと」

 

「実にくだらんな。我々は天下のアウトロー、便利屋68だ。ただの公僕如き、恐れるに足らんよ」

 

 ショットガンの銃声がヴァルキューレ生徒を気絶させるのと、ほぼ同時にカンナを除く他のヴァルキューレ生徒の部隊が銃声を聞きつけ現れるとセラ、アル、カヨコの三人を包囲する。

 

「狙い通りか」

 

「……だね。『先生』あの子達につけた盗聴器から聞こえてくる会話からして、局長は向こうに行ったみたい」

 

「ふふっ……完璧に警察組織に喧嘩を売ったわね私達」

 

「私の方で上手く話をしておくさ。さて、警察に取り囲まれ我々は絶体絶命の状況。唯一の出口である玄関も、見ての通り既に回り込まれているがこの状況、アウトローならどうするのかね?」

 

 緊張感のカケラもないセラとカヨコ、少しだけ表情が引き攣ってるアルの三人はいつも通りに会話し、いつも通り最後の選択をアルに委ねると彼女は自信満々にワインレッド・アドマイヤーを外に向けて一発放ち、盛大な爆煙をあげる。

 

「……勿論、正面突破して爽快に去るわよ!!ムツキ!!ハルカ!!」

 

「はぁーい!!車は持ってきたよ!!」

 

 混乱するヴァルキューレ生徒達と、立ち上る爆煙の向こう側から車が飛び込んでくると後部座席の扉が開かれ、ハルカの姿が出てくる。

 

「み、みなさん早く乗ってください!」

 

 その言葉と共に三人は素早く車に乗り込み、ドアを閉める。

 チラリとセラとハルカが視線で合図を送り合うと、ハルカは手に持っていた爆弾のスイッチを押しヴァルキューレ生徒達は真っ白な煙に覆われ何も周囲が見えなくなり、煙が晴れた頃には既に便利屋68の姿はなかった。

 

 

 そして、数日後。

 何故かお咎めのない便利屋68所属のセラは、ここ最近で通い慣れた連邦生徒会防衛室のソファに腰掛けていた。

 

「……やってくれましたねセラさん」

 

「ククッ、元は身から出た錆だろう?」

 

 反省なんてしていない優雅に珈琲を飲むその姿に不知火カヤは、胃の辺りを抑えるのだった。




感想、ここ好き待ってるぜ!!

胃痛枠カヤちゃん
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