便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア 作:マスターBT
それと再び、FAを描いて貰いました!!私のXの方から見れるので是非是非、其方から確認してください。格好いいバイステンダーとセラを見る事が出来ますよ!!
「証拠を公表しない代わりに、貴女方便利屋68とヴァルキューレの間に起きた戦闘行為を不問にする……電話一本で告げられた時の私の気持ちが分かりますか?セラさん」
久しぶりの休みで気持ち良くベッドで横に入って一日を終えようとしている時に、カンナ公安局長から襲撃の連絡とほぼ同時にこの悪魔からの裏取引を提案されて思わず頭を抱えましたとも。
SRTのRABBIT小隊が『先生』側になっている事を知れたのは大きかったですが、ただでさえ信用値の低いカンナさんに更に嫌われ挙句、カイザーとの取引で脅されるとか……身から出た錆ですが些か私の胃に優しくなさすぎでは?
「ククッ、寛大なご配慮に感謝するよ。やはり持つべき伝手は防衛室だな」
「そう思うなら少しはこっちに従ってくださいよ全く……それで?本日はどの様な案件で来たんですか」
「罪を黙殺してくれた礼と君の方針の確認をしたくてな。先ずはコレを」
彼女がそう言って私の机の上に置いたのは、珈琲豆の入った瓶でってこれ今年取れた物の中では最高品質と言われている豆じゃないですか!
あまりの品質の高さからマニアの間では財産を手放してでも、手に入れたいと話題になりブラックマーケットではこの珈琲豆の名前を謳った劣化品で溢れ返り、もはや正当な手段で手に入れるのは難しいと言われているあの!
「目を輝かしている辺り気に入ってくれた様だな。なに、金なら腐るほどあるしこれでも顔は広いのでなちょっと本腰を入れれば簡単に手に入れる事が出来たとも」
「……そんな簡単に言って良い物ではないのですが……いえ、余計な事を言うのは止めておきましょう。貴女にも人の心というものがあったのですね」
「それを余計な一言と言うのでは?」
「それくらいは疲れましたし、散々秘蔵の一品を軽々しく飲まれてますからね!……で、本題は?」
彼女の事だから先に私の気を良くしておいて、後の本題を飲み易くするぐらいはするでしょうから緩む頬を押さえて本腰を入れるとしましょうか。
なにやら感心した様に頷いているのが癪ですが、貴女の機嫌が私の未来を左右するぐらいはもう気がついているんですよ。
「鴉からの報告で君が未だにカイザーとの会談を重ねている事は知っている。その上で、リン代行とも会談をした様だな。私の目から見て綺麗に今の君は二兎を追う者にしか見えん。超人足らんとする君の真意を聞かせて貰おうか?」
……なるほど、来るべき時が来たと言う事ですか。
もとより、この女は私を見定めるのが目的であり取るに足らないと判断すれば斬り捨てるつもりだった筈なのでこの会話が行われている時点で、少なくとも私の何かがこの女の判断に引っ掛かったと考えて良いでしょう。
若しくはカイザーによる連邦生徒会の転覆路線と、リン代行と共に現連邦生徒会を改善していく温和路線の二つをほぼ同時に見ている現状に呆れているのか……いえ、この線はないでしょうね。
目の前の萬屋セラという女の引き金は軽いですから。
こうして思考に耽っている間も、裁定者を気取る青い瞳は愉しげに此方を見透かしていますしある程度私という女を理解した上で直接、答えが聞きたくなったという感じでしょうかね。
「……二兎を追う者ですか。そうですね、確かに今の私はその様に見える事でしょう」
となれば、下手に本音を隠すのではなく真っ向から意見を伝えるべきでしょうね。
はぁ、これほど緊張するのはいつぶりか……少なくとも連邦生徒会長がまだ居た時以来でしょうね。
「カイザーは私を子供と侮り、何度か会談を重ねてはいますが耳障りの良い言葉を並べるばかりで私を利用する気満々なのが伺えます。なのでまぁ、背中を預け信じ合えるというのは無理でしょうね。この点で言えばリン代行の方が話が通じ、彼女が私の期待に応え続けてくれるのであれば良い関係を続ける事も出来るでしょう」
「ククッ、その両者を共に裏切る様な行為を重ねている側の言葉とは思えんな」
「私の本心は兎も角、見える行為は別にどちらも裏切ってはいませんからね。強いて言うならただの蝙蝠ですよこんなのは」
笑うのですよ不知火カヤ。
今、ここで微笑み自らの計画に自信ありと振る舞うのが超人の姿なのですから。
「……ふむ。両者の目を欺き、信用を嘲笑う蝙蝠はどの様な空を飛ぶつもりだ?」
「分かりきった質問ですね。何処までも澄み渡る穢れのない青空を飛ぶのです」
「ククッ、飛べるのかね?誰よりも綺麗な空を望む君自身の翼はとうに穢れていると言うのに」
えぇその通りですよセラさん。
超人であろうとした私は、私の不足を埋める為にありとあらゆる行為で手を汚し罪を重ねてきました。
そんな私があの人が統治していた頃の様な、完璧で平和なキヴォトスを目指そうとするのは滑稽極まりないでしょうね──理想を形にした時、私が座る席は無いのですから。
ですが、そんな事は今、どうでも良いのです。
未来で私は苦しむ事になるでしょうが、そんな未来も今の私が目指そうと足掻かなければ決して辿り着く事が出来ない理想郷でしかない。
であるのなら、なにを躊躇う事があるのでしょう?ねぇ、貴女もそうだったのでしょうセラさん。
「飛んで見せますよ。私は私の間違いと過ちを全て飲み込み、このキヴォトスという大空を飛んで見せます──覚悟はとうの昔に決めましたから」
あぁ──悪い顔ですねセラさん……でも、その顔を引き出せたのなら良かったと思いますか。
私の目をじっと見つめて、覚悟を謳い未だに不器用ながらも笑って見せる不知火カヤの顔は私にとって馴染み深いものだ。
なにせ、バイステンダーとして活動し便利屋68のアルバイトとして生きると決めた私と同じなのだから。
「ククッ、君の覚悟は伝わったよカヤ
「──やっと私をそう呼んでくれましたねセラさん。これは認めて貰ったと受け取って良いのですか?」
「漸くスタート地点に立ったに過ぎんよ。わざわざ言わなくても今の君になら伝わると思ったのだが」
「分かってますよ。少しくらい調子に乗りたくなっただけです」
これから君が歩くであろう茨の道を思えば、調子に乗らせるのも優しさだとは思うが生憎とこの先の未来は私の目でもはっきりと見えないのだ。
私が彼女を急かす様な真似をしたのも、ここ数日はどうにも未来視の光景が安定せず今日ここに来た時点では最早、明日の未来すらまともに見えなくなった以上、悠長に個人的な趣味に耽る訳にもいかなくなった為だ。
「ならば具体的な話に──ぐっ!?」
「セラさん!?」
両目が焼ける様に熱い!?
なんだこれは……セイアから奪った神秘がこのタイミングで暴走しているというのか?それとも何か別の要因で──
世界が赤く染まる。
そこには美しい物語など、青春の物語が介在する余地は一欠片もなくただ全ての神秘を奪い尽くすナニカがあるだけだ。
『なんだこれは……』
私の声がまるで、洞窟の中で発しているかの様に響き渡るが今現在、私が立っている場所は瓦礫に沈んだキヴォトスの街中であり微塵も声が響き渡る要素はない。
そもそもとして、先程まで防衛室に居たというのに崩壊したキヴォトスの街中に居るといいのも可笑しな話だ。
『血の如き、赤い空に赤いサンクトゥムタワー……コレは……以前の私が見た時よりも数段地獄の光景だな』
ホルスの義眼と同調する事で制御下に置いていた筈のセイアの神秘が、制御を外れてまでこの光景を私に見せてきた理由……仮説の域を出ないが、本来であればこの光景を彼女が見ている筈だったのかもしれん。
ホルスの義眼に取り込む以前にこの光景を見る事が運命的に決まっていたのであれば、宿主が変わろうとも起きる事象は変わらん、そう考えればあの時私が引き取って正解であったな。
『であれば、アレの正体は
赤く染まったサンクトゥムタワーの先に不気味に輝く光源こそが、キヴォトスに破滅を齎した色彩なのだろう。
『ん?』
『──』
『……何者だ?』
仮面を身に付けた男がジッと私を見つめ──右手を動かしたかと思えば、急に周囲の色が正常に戻り私の意識は元の防衛室へと帰還を果たす。
「セラさん?」
「……カヤ防衛室長。詳しく説明をしている暇はない。君の計画を後回しにしてくれ、キヴォトスの危機だ」
私を不思議そうに見つめていたカヤ防衛室長に告げると、すぐに顔が真剣なものへと切り替わり連邦生徒会へと連絡を始めたのを確認し、私はスマホを取り出しケイを呼び起こす。
『どうかしましたか?』
「ケイ、『先生』とリオに連絡を。それと便利屋68の面々に武器の準備をしろと伝えてくれ」
『既にリオには話を通してあります。本日の夜21:00には時間を作れる様です』
「話が早いな。なら『先生』には私の方から直接……」
──私とカヤ防衛室長は共に動き出したが、事態は既に水面下で進行している事まで考えは回らなかった。
「ハ、ハハハ!!これであの傍観者を語る愚か者も、シャーレの『先生』も全て全て終わりです!!」
憎悪に狂った元同僚の動きを察知する事が出来ず。
「防衛室との関係はこれで終わりだな。向こうも縁を切りたそうにしていたし、良い機会だろう」
我欲に走る大人の企みを阻止出来ず。
『───』
「……」
「ククッ、貴方の選択を見届けさせて貰うとしようか偽りの──」
未来視を歪めた介入者へと思考は巡らず──
まぁ、彼方の世界線にもいるよね。
次回からは本格的に最終章へと話が進んでいく訳なのですが、その為にもう一度じっくりと話を読み返すのでまた少々、時間がかかるかもしれません。筆が進めば話は別ですが予定は未定なので!
感想やここ好き待ってるぜ!!