便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア   作:マスターBT

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書きたい事、やりたい事を詰め込んだ


第一の虚妄のサンクトゥムタワー攻略戦

『作戦内容を通達する。これより我々は色彩によって強化されたビナーとの決戦に挑む。部隊は大きく分けて二つだが、危険度が最も高いのは小鳥遊ホシノがリーダーを務めるアビドス部隊だ。君達はサンクトゥムタワーを犬の様に守り続けているビナーを、挑発し適度に引きつけながらタワーから離さなければならない。

 この時にビナーの口に備わっているビームを喰らえば……まぁ、小鳥遊ホシノが居ればどうとでもなるだろうが足を取られて転んでしまえばつまらん結果を招きかねないので頭の片隅に入れておく様に』

 

「ちょっと真面目にやってよ〜」

 

『お前の神秘からして問題ないとケイとリオが導き出した以上、案ずる必要性はない。皆を生存させたければ精々、その無駄に硬い身体を活かしてビナーの攻撃を防ぐ事だ』

 

 既にビナーとの戦闘データがあるとは言え、ケイとリオ両者から全く問題ないと太鼓判を押されてるほどの神秘とはつくづく小鳥遊ホシノには勿体無い。

 だがまぁ、私個人の好き嫌いを置いておけばこれほど頼りになる駒もないという訳だ……実に癪だがな。

 

「ちょっと、通信機越しにイラつかないでよぉ。私、悪くないでしょ〜?」

 

 どちらかと言えば今更の癖に、他校の生徒がいるからとおじさんボイスで私に話しかけてくるのが悪い……だがまぁ、私の方が大人だからな此処は多目に見てやるとしよう。

 

『……引き剥がしたビナーにトドメを刺す役割はアル社長率いる便利屋68部隊が担当する。君達にはアビドス部隊を邪魔する連中の露払いの役割もあるが、いつも通りにやれば何一つとして問題はない。列車の運用には廃棄された砂漠横断鉄道を使用する。既にケイの手によって破損箇所は修復済みの為、脱線に怯える必要はない』

 

『便利な修理道具程度の扱いに私としては物申したいのですが……この人に何を言っても無駄なので新品同様に仕上げましたよ』

 

 こんなところでケイの力をフルパワーで使う必要が何処にあると言うのかね?

 モニターの一つにわざわざ現れてまで、私不服ですと顔でアピールされてもな……何よりカヤ防衛室長との一件でもっと雑な使い方をした筈だが。

 

「了解よ。ビナーには挨拶代わりに列車をぶつけるけど構わないわね?」

 

「はい。既に使われていないものですし、それにアビドス衰退のキッカケになった列車が世界を救う為に使われるのなら本望です」

 

『引き剥がしたビナーを撃滅後、全火力を集中しタワーを粉砕するのが最終工程だ。タワーが折れるその瞬間まで決して、油断する事のない様にな。私は上空でヘリにて待機し、マキ嬢及びアヤネ嬢と共に常に戦況を観察しているから状況に変化があればその都度、通信するため通信機の電源は切らない様に。さて、質問はあるかね?……ないようだな。諸君らが優秀で私はとても楽だよ』

 

 では、一時間後に作戦を開始すると通達し、通信機の電源を切ってからヘリの椅子に背中を預ける……さて、もう一つの仕事をするとしよう。

 

「レイヴン各位、状況を伝えよ」

 

『シャーレ防衛部隊隊長レイヴン5。はっきり言って、暇の一言だ。此処だけ切り離されたように静かだぜ』

 

『……トリニティ防衛部隊隊長レイヴン9。ミカを筆頭にティーパーティの助力もあって楽出来ている……で、嫌味か?旦那』

 

『ゲヘナ防衛部隊隊長レイヴン11ですぅ。弾いっぱーいばら撒けて嬉しいでーす!』

 

『ミレニアム防衛部隊隊長レイヴン20。総帥の計画通りに進行中であります』

 

『百鬼防衛部隊隊長レイヴン1。まぁ、着物の裾が汚れた程度でありんす』

 

 ふむ、どうやらレイヴン達は各々の役割を無事に果たしている様だな。

 各学園の自治組織と軋轢を生むかと思ったが、念のため普段の制服ではなくシャーレの制服に着替えさせ、カヤ防衛室長直筆の手紙を持たせた事が事を楽に運ばせたか。

 

『えっと……山海経担当のレイヴン8ですけどもあの、門主さんに断られたので皆で暇してします』

 

「そうか。念の為付近で待機し、危険を察知すれば介入しろ」

 

 揃えるだけの信用を揃えた上で、怪しまれるのなら致し方あるまい。

 しかし、噂に違わぬ警戒心だな山海経の黒い門主様は。

 

「レイヴン各位、残弾の管理及び負傷の有無はすぐに伝える様に。こんな木端の戦いでお前達を失うつもりはない」

 

『クッハハ、世界を救う戦いを木端呼ばわりとは流石だな私らの旦那は』

 

「当然だ。勝つと決まった戦いで命を落とすほど馬鹿な事はあるまい」

 

『──ハハッ!そりゃ確かに!!お前ら!!この過保護な旦那の為にも五体満足で帰る事を頭に叩き込んでおけよ!!』

 

『『『了解』』』

 

 全く、調子の良い連中だな──だが、悪くない傾向だ。

 下ばかり見て俯いていた連中が自分達の力を信じて空を翔ける様になったのなら、より一層切っ掛けである私への忠誠心が高まると言うものだ。

 

『カヤ防衛室長よりメールを受信しました』

 

「む?見せてくれ」

 

 こんな時にわざわざメールとは、何か傍受の危険性がある秘匿性の高い案件だろうか?

 そんな事を考えながら、ケイが私のすぐ近くのモニターにメールの内容を映し出した時、思わず笑みが溢れてしまった。

 

『珈琲淹れて待ってますので』

 

「──ククッ、あれだけ集められた生徒の前で約束した事柄をわざわざメールで告げるとはな」

 

 いつもの様に防衛室で、互いに向き合う様に座り珈琲を飲みながら雑談に興じる……そんな日常がいつの間にか彼女にとっては随分と大切なものになったらしい。

 やれやれ、私の様な悪い人間に絆されるとはカヤ防衛室長と呼んだのは早計であったかな。

 

「ククッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──第一の虚妄のサンクトゥムタワー攻略戦開始──

 

「うへ、みんな行くよ〜」

 

『列車の上から邪魔な敵は撃ち抜くわ』

 

 社長ちゃんがそう言うなら任せちゃおうかな。

 ノノミちゃんと、セリカちゃんを連れて走り出せば次々と私達の邪魔をする色彩の兵達が撃ち抜かれて爆散していくのは面白いねぇ……これなら余力をたっぷり残してビナーのところに辿り着けそうだよ。

 

「よっと」

 

 偶に抜けてくる敵もボロボロになってるしおじさん的には楽出来て嬉しいねぇ。

 ……うーん、本当にアイツのお気に入りじゃなきゃアビドスに欲しいぐらいだ。

 

「そろそろビナーがこっちを感知する頃かな?」

 

「って言ってる間にこっちに来てるわよホシノ先輩!」

 

「わわっ、じゃあみんな走って〜走って〜」

 

 サンクトゥムタワーを守るのなら、一定距離から離れない方が得だと思うんだけどアイツの作戦通りにアッサリと釣られたねぇビナーの奴。

 ミサイルとか飛ばしてきてるけど、それをするなら距離詰める必要ないんじゃないの?

 

「……兵器の事を考えても仕方ないか」

 

『ッッ!!みんな、避けて!!ビナーのビームが来るよ!!』

 

 ありゃ、本当だ。

 んじゃ〜おじさんはおじさんの役目を果たすとしようかねぇ〜。

 

『ホシノさん!?え?直撃……』

 

『マキ嬢。案じるなと言った筈だ。アレの防御があの程度で破れるのなら、私も苦労しない』

 

「ケホッ、なんでナチュラルに敵視点なのさお前」

 

『ん?お前はこのキヴォトスで最も雑に使っていい駒だからな』

 

「……ほんといつか潰す」

 

『ククッ、ほらほら足を止めれば追いつかれるぞ?』

 

「だから!!なんで敵側なんだよ!!」

 

 あーもぅ、ブリーフィングの時は我慢したけどやっぱりムカつくぅ!!

 通信機越しの筈なのにニヤニヤ笑みが浮かんできて、ぶん殴りたくなる!!

 

「楽しそうにしてるところ悪いけど、作戦地点よホシノ!!」

 

「してない!!っと、了解!!」

 

 いつの間にか指定ポイントまで走ってきていたみたいだねぇ。

 視線の先から走ってくる列車の上で仁王立ちしている社長ちゃんは、コートが靡いてるのもあってすっごく絵になる格好良さだけどあのままで大丈夫なのかな?

 

「くふふっ、アルちゃん!爆弾の起動を完了したよぉ!」

 

「こ、こんな時もあろうかとケイさんと一緒に用意していた特注品ですアル様!」

 

「ありがと。二人は降りて構わないわ」

 

「ん?アルちゃんはどうするの?」

 

「──決まってるじゃない。ギリギリで飛び降りてハードボイルドに決めるのよ」

 

 ……なーんかすごい会話してないあの子達?

 

「あれ大丈夫なの?」

 

『ククッ、見ておきたまえ小鳥遊ホシノ。こう言う場面でのアルはしっかりと決めるぞ』

 

 ふぅん?じゃあ信じて見守るとしようかな。

 ビナーまでの距離がどんどん近づく中、まずムツキって子が先に飛び降りて少ししてからハルカって子が飛び降りたけど、まだ社長ちゃんが降りる気配はない。

 ビナーも私達に釣られているとは言え、目の前に迫ってくる電車の質量を理解したのかミサイルを列車に向けて放つけど──

 

「ふふっ、そんな攻撃目を瞑っても撃ち落とせるわ」

 

 ──やっぱり、社長ちゃん前とは比べ物にならない程に強くなってるね。

 ビナーのミサイルを全て連射性に劣る狙撃銃で撃ち落とすなんて、おじさんには無理だね。

 そして距離が二十メートルを切った瞬間、社長ちゃんは優雅に飛び降り砂漠に着地──背後で爆発する列車とダメージを受けるビナーを背に此方に向かって歩く姿ははっきり言って、とても格好いいものだ。

 

『ククッ、だから言っただろう?』

 

「だねぇ……」

 

 それでもビナーは未だに健在。

 自分に大ダメージを与えた社長ちゃんを憎々しげに見てる気がするけど、彼女はその視線から逃げる事なく寧ろ君臨する者として相応しい態度で睨みつけると私達、全員に響き渡る声で宣言した。

 

「さぁ、みんな……ビナーを倒すわよ!!」

 

 うへ、身体が何か温かいもので包まれて力が漲ってくる……『先生』の時とは違うけど、これも少し心地良いかな。

 

「おじさんも頑張らなきゃね!」

 

 社長ちゃんの前に飛び出し、ビナーのビームを受け止めると左右からセリカちゃんとノノミちゃんが飛び出し、一斉に火力をビナーに集中させ怯ませる。

 そこへムツキちゃんとハルカちゃんが走り込み、ビナーの腹部を撃ち抜きながら走り抜ければそれを追いかけようとしたビナーの目を社長ちゃんが撃ち抜いて一撃で破砕する。

 

「ホシノ!!」

 

「うへ」

 

 こりゃ、おじさんも引退の時は近いねぇ……まぁ、そう簡単にするつもりもないけどさ。

 セリカちゃんとノノミちゃんが気を逸らしている間に、ビナーの真下まで入り込んでさっき便利屋の二人が撃っていた場所に少し本気でショットガンを叩き込むと、パーツをそこら辺に飛ばしながらビナーが悲鳴をあげる。

 

「うんうん。みんな、弱点は作ったよ〜」

 

「……末恐ろしいわね暁のホルス」

 

「うへぇ、あんまりその名前で呼ばないでくれると嬉しいなぁ?」

 

 呼ばれる度に黒服の顔とアイツの怒った顔が浮かんで嫌なんだよねぇって、そんな事を考えているうちにみんなの火力が私の削った装甲に集中してビナーが砂漠へと倒れ伏したね。

 

「よーしじゃ、タワーの方を」

 

「ッッ、ホシノ!!」

 

「うへ?」

 

 振り返った瞬間、そこには再起動を果たしたビナーの口が私を狙っていて……不味いね、流石の私も盾抜きでアレを喰らったら不味いかも──

 

『やれやれ……油断大敵だ。小鳥遊ホシノ』

 

 ──砂漠の砂を巻き上げながら、超低空飛行で突っ込んできたのはアイツが乗っているヘリで持ち得る全ての弾丸を放ちながらビナーの攻撃を中断させると、そこから見慣れた青空色の髪が飛び出してきてヘリがビナーへと激突する。

 

「締めぐらいは混ぜて貰おうか」

 

「後で怒られても知らないよ?」

 

「覚悟の上だ──今回限りだ。合わせろホシノ」

 

「了解、セラ」

 

 私達が持つ武器は互いにショットガン。

 それならもう深く考える事は何もない──アイツと喧嘩してる時と同じ様にアイツの考えを読んで合わせるだけ。

 

 ビナーの突進を二人で、左右それぞれに飛び出し避けつつ互いに近い目を撃ち抜きビナーを怯ませ、奴が頭を上げるより前に私がビナーの頭を踏み台にして飛び上がればビナーの上を取ることが出来る。

 自由落下する私に向けてビームを放とうとするビナーのボロボロな装甲にアイツがたっぷりと、コインの弾丸を食らわせて怯ませた瞬間、エネルギーが充填された口に向けて弾をぶち込んで隣に着地する。

 

「「堕ちろビナー」」

 

 アイツのマガジン地雷が煙を上げる口の中に入ったところを撃ち抜き、爆発させればビナーは天高く身体を伸ばしてから機械音の悲鳴をあげると地の底へと消えていった……うん、今度こそ私達の勝ちだね。

 

「ふむ。この程度か」

 

「うへぇ、今度こそサンクトゥムタワーを破壊しに行こうか〜」

 

「あぁ、そっちは任せるぞ小鳥遊ホシノ」

 

「ん?お前は……あっ」

 

 それはもう良い笑顔を浮かべている便利屋のみんなを見て全てを察する。

 社長ちゃんに首根っこを掴まれて、引き摺られていくアイツに呆れながらなんとも締まらない第一のサンクトゥムタワー攻略戦は終わるのだった。

 

「大人しくしててって言ったわよね!?」

 

「ククッ」

 

「ククッ……じゃないわよもう!!!!!!!!」

 

 ……大変だねぇあの子も。




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