便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア   作:マスターBT

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ちょっと遅くなりました……ちょいちょい、主人公が居ないシーンが続くと思いますがよろしく!


カヤとFOX小隊の憂鬱

「貴方達、FOX小隊は最も数による戦いが予想されるミレニアム郊外の閉鎖地域に行っていただきます」

 

 カチャリと音を立てるのはカヤが手に持つコーヒーカップの音であり、漂う香りと共に今この場に集められた者達にとってはとても聞き馴染みのある音だ。

 強いて違う点を挙げるのなら、この場に居ないために当然なのだが喉を鳴らして愉しげに笑う声がないくらいだろう。

 

「それは構わないが」

 

「……疑問があるなら答えますよFOX小隊隊長、七度ユキノさん」

 

「『先生』に協力することがSRTの復興に繋がるのか?以前なら兎も角、今の貴女はあの女にいい様に使われている様にしか思えない」

 

「ふむ」

 

 臨時としてシャーレの一室を借り受けている部屋は、彼女のテリトリーである防衛室よりも調度品は少なく真っ白で安心感を与える場所であったのだがユキノの質問を受けてカヤがコーヒーカップを机に置いた瞬間──冷えたものへと変わった。

 

「ふふっ……はははっ、大局が見えていませんねユキノさん。今はキヴォトスにとって一大事。当然、連邦生徒会もシャーレも一丸となって動かなければならない事態です。そこで『防衛室』が大手を振るって動く……その意味が重要なのですよ」

 

 カヤは防衛室の戦力を分かりやすい程に動かしている。

 それは『先生』やリン行政官とは違い、各自地区の者達の避難行動を最優先にそして避難所での炊き出しなど、多くの一般市民の目に留まりやすい動かし方をし部下達には腕章として防衛室所属だと分かりやすくさせ、市民達から質問があれば口頭でも所属を明らかにする様に徹底させている──全てはこの厄災を乗り越えた先を見越してだ。

 

「道具であると自らを定めたのであれば黙って従う事ですね。それが出来ないのであればその頭で考える事です。以前なら兎も角、今の私は愚鈍な者は好みませんよ」

 

「ッッ」

 

 ニコリと微笑むカヤから発せられる圧に思わず、FOX小隊の面々は唾を飲み込み怯みもっとも彼女の圧を受けているユキノは僅かに顔色を悪くするほどに不知火カヤという一人の生徒に気圧されていた。

 かつてはあの災厄の狐と謳われる狐坂ワカモ相手に大立ち回りを繰り広げたFOX小隊の姿は此処にはなかった。

 

「……ではお願いしましたよ。あそこは人員的に無駄な仲間割れをしてそうですし」

 

「……分かった。行くぞ」

 

 結局、道具であると決めたユキノに命令に従う以外の選択肢などある訳もなく彼女は仲間達を引き連れて部屋を出ていく──その際にニコだけがカヤに視線を向けていた為、彼女達の中でもっとも何かを変えられる可能性を秘めているのなら彼女だけだとカヤは内心で思いながらコーヒーを手に取る。

 

「道具のままなら……使い潰してしまうかもしれませんよFOX小隊の皆さん」

 

 ──優雅に笑うカヤの姿は何処ともなく、彼女が敬愛してやまない人物と似通っているのだった。

 

 

 

 

 

 

「くひひっ……きぇぇぇぇ!」

 

 狂った笑顔の裏に隠されたもっともトリニティで優しく、そして凶暴な剣先ツルギが奇声を上げながら突撃をすれば──

 

「はははっ!良いぞ、次はこいつだ!!」

 

 ──戦いの悦に浸り、その笑み同様の獰猛さを小さな体躯に持つ猛獣美甘ネルが飛び避けながら、銃撃の雨を降らす。

 これから第二虚妄のサンクトゥムタワー破壊作戦に挑むと言うのに、トリニティとミレニアムの最強はどっちが強いかという今、決める必要性が全くない戦いに勤しんでいた。

 互いに最強同士、所属する者達も長を敬愛するあまり止める事がない無益な戦いであったが、そんな両者の間に割って入る者達がいた。

 

「あん?」

 

「くひひっ……」

 

「──そこまでだ。連邦生徒会防衛室より、救援に来たが仲間割れとはどういう事だ?」

 

 ネルの弾丸をクルミが盾で受け止め、ツルギの突撃にニコが割って入り少し遠方から彼女の頭にオトギが狙いを定め停止させ、ユキノが両者を見ながら言葉を投げかける。

 一瞬で両者の動きを止めさせる辺り、FOX小隊の実力と連携力の高さが伺い出来る。

 

「はっ、あの連邦生徒会が後方勤務以外も出来たとはな」

 

「今は互いに武器を向ける時ではないはずだ」

 

「……興醒めだ。アタシらの戦いを止めたんだ。雑魚はお前らが片付けてくれるんだろうな?」

 

「あぁ。元よりそのつもりだ」

 

 煽ったところで今のユキノに効果はない。

 何処までも冷え切った目と声で返すその在り方に、ネルの方が張り合う気を無くし仲間の元へと戻って行き、ほぼ同じタイミングでツルギも戻って行った。

 

『ケンカを止めてくれてありがとう。作戦内容は聞いてる?』

 

「あぁ。私達は工場正面に配置された敵を殲滅すれば良いんだろう?」

 

『うん。その後、余裕があったら工事内部でケセドと戦って欲しいんだけど』

 

「了解した。えっと……」

 

『ん?あ、自己紹介をしてなかったね。私はエイミ、今回の作戦のオペレーターを担当するからよろしく』

 

「あぁ、よろしくエイミ。私は防衛室指揮下のFOX小隊隊長のユキノだ」

 

 簡単な自己紹介と作戦の共有を済ませ、通信を終わらせるユキノ。

 必要以上に馴れ合うつもりなどない彼女らしい通信ではあったが、他のメンバーとの空気感の違いは隠す事は出来ずFOX小隊の面々は少しばかり気まずい表情を浮かべていた。

 

「えっと……作戦時間までどうしてよっか」

 

「今からあっちに行っても気まずいだけでしょ」

 

『まさか本当に室長が言ってた通りとはねぇ〜』

 

「てか、オトギは早く合流しなさいよ!」

 

『クルミが暇なだけでしょ?私は狙撃ポイントに向かわなきゃいけないんだよ』

 

「……」

 

 いつもの様に振る舞うFOX小隊の面々を他所に、ユキノだけは何かを考える表情のまま無言を貫いていた。

 

「ユキノちゃん?」

 

「……ん?なんだニコ」

 

「難しい顔してどうしたの?私で良ければ聞こうか?」

 

 ニコのそんな言葉と共にユキノが思い出すのは、先ほどのネルやツルギ達であり自分達に比べれば圧倒的に緩い筈の彼女達の方が強く見えた事だった。

 それが自分達にはない精神的な余裕からくるものだとユキノは、思い至る事はなく自分を気遣う様に首を傾げるニコに問題ないと告げて少し離れた場所で武器のメンテナンスを開始してしまった。

 

「ユキノちゃん……」

 

 その背に投げかけられる仲間の心配など気にも止めずに。




次回は第二虚妄のサンクトゥムタワー攻略戦かな。

ここ好きや感想待ってるぜ!!
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