便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア 作:マスターBT
兵一つ一つは彼女らの足元に及ばなくとも、倒した先から倍の数が動員されれば話は変わってくる。
戦争とは優れた個の戦力も大切ではあるが、何よりも勝敗を大きく左右するのは数であると彼女らは知ることになる。
──第二虚妄のサンクトゥムタワー攻略戦開始──
「ははっ!!やるじゃねぇかお前!!」
「きひひっ!!ひゃっはー!!」
ネルとツルギが圧倒的な暴力で目の前の機械兵を役立たずのスクラップに変える。
流石は両学園の最高戦力なだけはあり、彼女らの前に現れた機械兵は一呼吸の間に見るも無惨な状態へと破壊され尽くす──ガシャンガシャンとその亡骸を踏み越える圧倒的な数の軍勢で無ければ容易く勝敗はついていたことであろう。
「入り口からの敵はFOX小隊が抑えてくれてるけど……」
「数が多すぎるな……」
本来であれば生産力よりも生徒達の突破力が上回るのだが、色彩によって染め上げられ強化されたケセドの生産能力は容易く彼女らの突破力を上回っており、このままであれば彼女らの消耗の方が先に限界を迎える。
──そう誰もが脳裏に過った時、一糸乱れぬ軍靴の音と戦車の重低音なエンジン音が響き渡る──
「あん?」
FOX小隊と外の部隊の戦いを文字通り、引き潰しながら現れたのは白と赤に統一された軍隊。
部屋を埋め尽くすほどのまるで、冬の雪崩の如き大軍勢が偉大なる将軍に指揮された統一されし武力として、数を誇るケセドを打ち滅ぼさんと現れる──!!
「おいらこそが、このレッドウィンター連邦学園の生徒会長であり、環境美化部部長兼、書記長兼、清掃部部長兼、風紀委員長兼、給食部部長の──」
権力が偏りすぎ?公平性に欠ける?否──否、否!!このキヴォトスという大地において、ただ一人過剰なる権力をその小さくも偉大なる手中に収めて良い人物がいる!!髭が似合う彼女の名は!!
「偉大なるチェリノ様だ!!」
ゲヘナ以上の混沌と自由を誇る──レッドウィンター学園、ここに参戦!
「カムラッドの救援要請を受けて諸君達を助けに来たぞ!!この一大事に、おいらが居なくては皆が困るだろうからな!」
不思議なことにケセドの機械兵すらも一瞬停止するという見事に場の空気を凍らせるチェリノであったが、若干一名、彼女の髭に格好良さを見出す生徒がいたとかいないとか。
だが、これにより彼女達に欠けていた数という欠点は無くなり、あとは単純な戦力による削り合いを制するだけとなる。
『”戦力は揃ったようだね。じゃあ皆、やろうか”』
全員の通信に『先生』の声が届く。
彼の声のトーンはいつもよりも低く、彼と戦いを共にした事がある者達は本気であると察して笑みを溢す。
「はっ──良いとこ、持って行かれてばっかりってのはウチの沽券に関わるよなぁ……トキ!!」
「はい。先輩」
直後、ケセドが誇る生産設備の一つが巨大な爆発と共にその機能を完全に喪失する。
モクモクと黒煙をあげる施設の中から、ボンッと黒煙が飛び上がったかと思うとネルのすぐ隣に見事なヒーロー着地で何かが着地する。
「──コールサイン04、飛鳥馬トキ。アビ・エシュフで見参です。……どうでしょうか私は格好良かったですか?ネル先輩」
エリドゥでの戦いの後、しっかりとリオによって回収されセラと共に改良が施されたアビ・エシュフは武装こそ変わらないものの演算能力の向上、及びトキの操縦データとの同期が行われており、まさしく彼女専用機という仕上がりとなっている。
「おう。このまま私らで大暴れして見せ場食っちまうぞ」
「──それは出来ない相談ですね」
「あん?」
突然、梯子を外されたネルが訝しげにトキを見上げれば見事なドヤ顔を浮かべたトキ。
「何故なら私が全部、倒してしまうからですよ」
「言うじゃねぇか……なら、付いてきな!!」
レッドウィンターの圧倒的な数から放たれる銃火の中を怯みもせず、ネルが一気呵成に突っ込んでいくのが合図となりツルギ達も動き出す。
ケセドも自分の生産施設の一つが破壊された事に驚きはするものの、与えられたオーダーに従うべく機械兵達に指示を出し先ずは突出したネルを撃破しようとするが陣形が動いた瞬間、チェリノの乗る戦車が出鼻を挫く。
「おいらを差し置いて活躍しようとはなんたる事か……!!皆、前進だ!!」
『”ふふっ、そのままレッドウィンターの皆に合わせてイチカとエイミも前進しつつ、ネルやトキの援護をお願い”』
「了解っす」
「分かった」
『”C&Cの皆は砲撃とは逆側をお願い。トキ、合図をしたらアビ・エシュフを殲滅モードに。ネル……信じてるから好きなだけ暴れてきて”』
『先生』の指揮通りにC&Cが動くと、チェリノの砲撃を受けて陣形を整えようとしていたケセド側は見事に不意を突かれる形となり、連携力に優れるC&Cを前に瞬く間に瓦解していく。
しかし、それでもと追加の兵が壁に見せかけたハッチが開くと共にゾロゾロと現れる。
『”今だよトキ”』
「はい──アビ・エシュフ殲滅モード!」
重心を落とし、しっかりと脚部を固定したトキのアビ・エシュフから放たれる青い極光はバイステンダーが改良を施したアバンギャルド君に搭載された巨大レールガンと引き分ける程の高威力を誇る。
そんなものがハッチが開かれた瞬間にその場所へ向けて放たれればどうなるか──瞬きの間に追加の軍勢はその背後にあった生産施設ごと、消し炭となった。
「負けてらんねぇな……オラオラ!!そんなもんかよ!!」
そんなトキの大活躍を見て、より一層闘志を昂らせたネルは四方八方を敵に囲まれている状態からブレイキングダンスの様な動きで、敵の包囲網を破壊すると全力疾走のままマガジンを放り出し、目の前を塞ぐ巨大な兵器──ゴリアテ──の弾幕を掻い潜りながら駆け上り飛び上がる。
「これでも喰らいなぁ!!」
空中でリロードを済ませ、クルクルと回転をしながら銃弾の雨をゴリアテに降らし破壊すると、着地の勢いを地面を滑る様な足捌きで無くすとケセドを守る様に配置されている砲塔を二本、それぞれ両手に持つSMGで撃ち抜き破壊した──見事な暴れっぷりである。
『”道は出来たよツルギ”』
「ヒャッハァァー!!」
圧倒的な数の軍隊、優れた個と、最後の守りその全てを失ったケセド本体にツルギが飛びかかる。
彼女自身も敵陣を中央突破してきたこともあり、傷を負っていたが桁外れの再生力によってその傷は既に完治し敬愛する『先生』の信頼が向けられたこともあってハイテンションである。
そんなツルギの圧に屈したのか、それとも最後の防御機構なのかケセドはコアを守ろうとする。
「させねぇっすよ?」
だが、その為に必要な機構の大事なところをイチカによって撃ち抜かれ、ケセドはコアを守る事ができない。
そんな処刑されるだけの彼の最期のログは──
「『”チェックメイトだ”』」
──『先生』と息ぴったりなツルギの満面の笑みと共に放たれるショットガンの暴力であった。
これがレッドウィンターマジック……!
感想やここ好き待ってるぜ!