便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア 作:マスターBT
SRTからはRABBIT小隊の面々が、ミレニアムからはゲーム開発部の面々が、そしてゲヘナからは最強のヒナが集められた廃遊園地『スランピア』は現在、独特な沈黙に包まれていた。
「わぁ……レベルカンストガチ勢のヒナだけではなく、あのアバンギャルド君までパーティに加わるとは!!アリスとても心強いです!!」
正確にはテンション高く、瞳を輝かしているアリス以外は先程スランピアにヘリ三台によって運ばれてきたアバンギャルド君にどういう言葉を投げかけて良いのか分からないでいた。
そんな場の空気を通信機越しである為か、全く感じ取れない──生来の気質の可能性高し──人物は目を輝かせるアリスを見て胸の内の罪悪感を刺激されながらも努めて明るい声で話し出す。
『アリス。正確にはアバンギャルド君 Type YUZU QUEENよ。エンジニア部とセラの協力を受けて脚部は二足歩行へ変更。バランスの悪くなった腕を二本にし、背中に武器コンテナを積む事で戦況に応じての武装変更を可能としているわ。基本武装は右腕がパイルバンカー、左腕にユズの武器と同じグレネードランチャー、武器コンテナには六連ミサイルとレールガンを積んであるから好きな様に使ってちょうだい』
『説明は私の十八番なのですが……いえ、説明しましょう!!基本設計はセラさんが既に詳細なデータを残してくださっていたのでその通りにしましたが今回は、エネルギー武装ではなく弾幕や重量級となったので手っ取り早くエネルギーを確保するために内燃式を採用してあります!!ですので、一気に使い切ってしまうと再燃まで少々時間を有するのでご注意を!更に件の敵は別存在からの侵蝕を受けているそうなので、万が一でも本作戦中に機体が汚染された場合は迷わずに自爆スイッチを押してくださいね!』
『えぇそうね……折角の新型が自爆してしまうのは避けたいところだけど、敵に鹵獲されるよりはマシよ。それに──』
『はい!』
『『『『自爆はロマンだからね(よ)(ですから)』』』』
「……ミレニアムって個性豊かね」
もしもこの場にユウカがいれば、あの浪漫狂いと一緒にしないで!!というか会長はもっとクールでしたよね!?みたいな発言が続いたが、残念なことに今ここにいるミレニアム生は自分達が個性側だと理解しているので、愛想笑いを浮かべるだけで誰一人としてヒナの言葉を訂正することはない。
『えっと……わ、わたしで大丈夫ですか?』
「ユズ!自信を持ってください!!格ゲーをしてる時のユズの指先はアリスでも見えません!!」
『ケイから貴女のデータを受け取って反映してあるから、きっと思い通りに動かせる筈よ』
『ケイちゃんいつの間に……』
アバンギャルド君 Type YUZU QEENを遠隔操作で任されたユズの不安を打ち消す様に、アリスとリオから励まされ少しだけ顔色が良くなるユズ。
現在、彼女はミレニアムにあるゲーム開発部の部室に用意されたコックピットに乗り込み、VRヘッドを身に付けている状態だ。
「凄いな……今ここに居る面子で小規模な学園なら落とせるんじゃないか?」
「サキ……」
「本気にするな!たくっ、それぐらい心強いって話だよ」
サキはゲーム開発部の実力を知らないが、『先生』が自分達と組ませても大丈夫だと判断したということはそれなりの経験があると踏み、加えて噂が絶えないゲヘナの風紀委員長が居る事で安心感に包まれていた。
「そうですね。私としては褒められるのは私だけで良いんですが。心強いのは確かです」
「ミヤコ?」
「……『先生』に褒められる……」
「そういう事ならアリスも負けませんよ!!『先生』の撫で撫でを貰うのはアリスです!」
これから決戦が始まるというのに彼女達の間にはとても、ゆるふわな空気が流れている。
キヴォトスの世界の危機には似つかわしくない緊張感ではあるが、これで良いのかもしれない──何故なら、彼女達は子供で青春を謳歌する者達なのだから。
『──ククッ、廃墟となった遊園地か。実に私達に相応しい舞台じゃないかね』
そんな穏やかな空気に水を差すように胡散臭く、そして明確な悪意を宿した男の声が響き渡り、彼女らがスランピアの入り口の方へ視線を向けるとまるで遊園地の支配人の様に後ろ手を組んだ黒い影の様なバイステンダーが立っていた。
『姿は似てるのね』
『おや声や性格も生徒の姿になる前と同じだが不思議な事を言うなリオ嬢』
『……笑わせないで。彼はもっと優しい声よ。悪意を表に出すとしても貴方の様に下手じゃない』
『──ふむ。それはそれは手厳しいな』
下手じゃない、そう言われた瞬間、僅かに影は動揺した様に揺れたがすぐに優雅な佇まいへと戻り生徒達から向けられる銃口になど一欠片も怯む様子を見せずにその手に本を具現化させる。
『掲げた正義は腐り落ちた。もはや己は正義の体現者足り得ぬのを自覚してなお、理想に夢に焦がれたが故に諦める事を知らず無様に足掻き続けた。その結果、積み重なるは数多の犠牲!!救おうとした者達よりも、多くの命が転がり落ちてなお彼女は正義であろうとした──さぁ、笑うが良い!!理想は枯れ果て正義という名の奴隷に成り果てた求道の娘を!!』
嘲笑う様に罵る様に、それでいて何処か後悔を噛み締める様に影は本が放つ昏く、何処までも昏い光の先を冷たく見据える。
「……私?」
立っていたのはミヤコと同じ姿をした人物。
纏う制服はボロボロで、薄汚れているが身の丈に合っていないコートは連邦生徒会──シャーレの制服で彼女とのサイズ差からして本来、それを誰が着ていたかは考えるまでもない。
RABBIT小隊の特徴的な兎耳を模したヘッドセットは、片耳に穴が空いており使い物になりそうもないが現れた彼女は冷え切った目で、ミヤコ達を見てからそのヘッドセットを撫でる様に触る。
『さぁ──開演の時だ。精々、楽しむが良い。朽ち果てた理想郷で行われる遊戯をな』
影の背後で扉が開き、そこから『色彩』に汚染された兵器やアリスの一件で現れたDivi:Sionが群れを成し現れ最後にネズミがモチーフの『シロ』とカラスがモチーフの『クロ』が姿を現し影はその軍勢の中へと消えて行った。
『……彼がなんであろうと私達がする事に変わりはないわ。皆、準備は良いかしら?』
「はい!」
「よく分かんないけど良いよ!」
「お姉ちゃん……」
『だ、大丈夫!』
「えぇ」
「私がもう一人……少し気味が悪いですがいつも通り戦います」
「ふっ、それでこそミヤコだ」
『いつでも火力支援の準備は出来てるからねぇ〜』
『狙撃……いつでも出来ます……』
影の介入はあったものの、やるべき事に変わりはなく依然、彼女らの戦意は高いままだ。
敵の軍勢の先頭を歩く『ミヤコ』はいささか、不気味ではあるものの彼女達とて今まで積み上げてきた経験と正義があるのだから。
『なら……作戦開始!!』
『……』
──輝く今と朽ちた過去が今、ぶつかる。
感想やここ好き待ってるぜ!!