雄英高校に着いた。
相変わらずでかいなあ。入学すればここで学校生活を送る事になるのか。いまいち想像がつかない。
「あ!開人君!!」
僕が門の前に突っ立っていると、後ろから聞き慣れた声が聞こえてきた。
「おはよう、緑谷君。」
振り返り、挨拶を交わす。
「仲良く雑談したい所だけど、入試じゃ僕達はライバル同士。今日は控えようか。まあ、僕は心の中で君が合格することを祈っておくとするよ。君のことだから緊張しているだろうけど、一緒に頑張ろう。」
「そ、そうだね。お互い頑張ろう!」
そう言って、早足で去っていく緑谷君。ガチガチだったので少し心配だ。
「おっと、そろそろ僕も行かないと。」
そう呟き、歩き出そうとした。すると、
「おい、待てや。」
また後ろから声をかけられる。今度は聞き覚えのない声だ。
「なんだい?僕もそろそろ行かないといけないんだけど。」
振り返る。
「てめえがリトルオールマイト、八木開人か。」
「ああ。と言っても、血は繋がってないけどね。」
「……評判通り強えな。」
「?まだ何もしてないけど。」
「強そうな雰囲気だ。」
なるほど。何となくで分かる、いわゆる天才型か。僕に似てるな。
「てめえには、負けねえぞ。」
それだけ言って門を潜っていった。
よく分からないが、リトルオールマイトの肩書を超えたいという事でいいだろう。僕も首席合格を目指しているので、負けられない。
「さぁ、行こうか。」
次こそ門を潜ろうとした。が、
「あ、あのぉ~。」
また声をかけられる。
「何かな?」
少しイライラしながらも、それを表に出すことなく振り返る。
「やっぱり。貴方、リトルオールマイトですよね?」
「はい。そうですよ。」
「わぁ!やっぱり!テレビで見たのとそっくりだ!あ、私、麗日お茶子っていいます!さ、サインお願いしてもいいですか!?」
……凄いな。一応入試前のはずなんだけど。緑谷君にも見習ってほしい程自然体だ。
「いいですよ。」
さっさとサインを書いて渡すと、お茶子さんは礼を言って門を潜っていった。
「さて、ようやくか。」
なんか出鼻を挫かれた感が否めないが、僕はついに雄英高校の門を潜った。
入試の説明を受け、僕は今試験会場に来ていた。
緑谷君とは別々の試験会場だったようだ。良かった。この試験の性質上、僕が彼の入学を妨げてしまう事になっていた。と言っても、今回の入試は緑谷君に向いていない。一応ワンフォーオールの譲渡は完了したものの、試運転の時、緑谷君はゼロか百かの出力しか出せていなかった。一回一回腕をぶち壊して、病院に行ってを繰り返し、一度も制御出来なかった。正直、緑谷君は別の学校に行く事も視野に入れるべきかもしれない。
っと、そんな事は後で考えよう。今は集中すべきだ。さっきから門の前で会ったヤンキー君が、僕の方を見ながら、めちゃくちゃニヤッとしている。獲物を見つけた猛獣みたいだ。あの子、めちゃくちゃ強そうだし、気を引き締めないと。
「ハイ、スタート!」
いきなり先生の声が聞こえる。僕とヤンキー君のみが、すぐさま声に反応し駆け出す。実戦形式だ。こういうこともあるだろう。
視界にあるロボは1体。近くのロボの気配は6体。まずは視界に入っているロボにヤンキー君よりも素早く辿り着き、殴り壊す。
「ッ!チッ!!速え!!」
ヤンキー君の声を聞き流し、壁の先にある気配に向けて殴り壊したロボを放り投げる。
「オリャア!!」
投げ飛ばされたロボはそのまま壁を突き破り、壁の先に居たロボを破壊する。僕はその間に次のロボヘ向かって駆け出す。さて、どんどん行こうか!
制限時間が残り5分を切った。
僕はある程度ヤンキー君と差をつけた後、他の受験生達の怪我に気を配りながら順調にポイントを集めていた。何でライバルを助けるのかって?僕が目指している
だけど、少し困った事に、何人かの女の子が僕に声援を送ってくる。それどころか、僕のスピードにはついて来られないが、僕の行動を観れるようについて来る子なんかもいる。早々につらくて入試を諦めてしまった子達が僕を鑑賞しているのだ。正直やりづらい。大体、僕を見る需要なんてないと思う。恐らくヒーローを応援するファンとかと同じ気持ちなのだろうが、僕はファンサービスどころか笑顔の一つも満足に出来ないのだ。まあ、見る見ないはその人達の勝手だし、僕もそのままでも問題はないからいいけど。
そしてそのまま時間は過ぎ、
『終了〜!!!!』
先生のアナウンスが響く。
「ふぅ。ま、こんなとこかな。」
僕が手に入れたポイントは85。あのヤンキー君は大体75〜80くらいだったと思うから、少なくともこのブロックでは一位かなと思う。さて、どうなることやら。
一週間後
「雄英から手紙が、来た!!!」
お父さんが玄関から走ってきた。どうやら雄英からの合格発表が来たようだ。と言っても、お父さんがこの一週間、家に居るときずっと上機嫌で嬉しそうだったから、結果は分かりきっているが。
お父さんから手紙を受け取り、封を開ける。中には『学力、実技共に首席合格』と書かれた紙があった。
「あれ?映像は?」
お父さんが呆けている。どうやらある筈の映像が入ってないらしい。と、封の隙間から別の紙が出てきた。
『オールマイトが喋り過ぎて尺が長くなり、編集が手間だったので映像はカットしました。文句は喋り過ぎたオールマイトに言って下さい。』
「……お父さん?」
「…………ごめん開人君!!つい嬉しくて!!」
「はぁ。気をつけてね?」
「ああ!次からは失敗しないよ!」
なんだか、最初から最後まで締まらないまま、僕は雄英高校の席を獲得したのだった。