訓練が始まった。
まず建物内に侵入。相手は索敵に長けた個性持ちがいないのでジャンプして窓から侵入する。多少音をたててもバレないので、窓からの方が効率がいい。
今回の訓練、僕はヒーローとして、ヴィランの確保と核を止めるという任務を任されているという設定だ。
制限時間あり、僕は一人でヴィランは四人。このような状況の場合、僕がすべきことは核の場所の把握だ。
耳を澄ます。小さくだが、緑谷君と飯田君の会話が聞こえる。
うーん……。まぁ僕の個性知らないし、仕方ないかもしれないけど、敵が侵入してるのに核の前で作戦確認はちょっと悪手だ。訓練だからいいけど、後で助言しておこう。とりあえず、核の場所は分かった。
ついでに、先程から近づいてくる足音は爆豪君かな?もうそろそろ接敵しそうだ。できるだけ音をたてないようにしているし、奇襲を仕掛けるつもりだろう。
「死ねぇ!!」
角から飛び出し、爆破を僕に浴びせる爆豪君。
「ふむ。奇襲からの煙幕で混乱を狙い、後ろに回り込んで、――次は足。」
「何!?」
僕は少しだけ跳ねて足を掴もうとしていた爆豪君の手を躱し、逆に勢い余って無防備になっている爆豪君の足を掴む。
「確かにいい手だけど、君みたいな感覚派の天才は動きがパターン化している事が多いからね。分かりやすい。」
爆豪君を投げ飛ばす。
「がはっ!!」
無意識に受け身は取っているが、かなりダメージを受けたようだ。
「クソが!!」
すぐさま立ち上がり、爆破で僕の周りを縦横無尽に動き回る爆豪君。それも通常ならいい手だ。だが、
「スピードで負けてる相手にする動きじゃない。」
僕の蹴りが顔面に突き刺さる。だが、爆豪君は倒れずにそのまま向かってくる。手加減しているとはいえ、流石のタフネスだ。
「受けきって確保テープか。君のタフネスなら実行可能だけど、僕にゴリ押しは通じない。」
蹴られたまま確保テープを巻こうとしてくる爆豪君を殴り飛ばす。
「ぐっ!!クソ!!」
本当にタフだな。すぐ立ち上がった。時間制限もあるし、そろそろテープで確保するか。
ちょっと本気を出して、一瞬で爆豪君の背に回る。
「は?」
僕を見失い、動きが止まった爆豪君を一秒も掛からずにテープで確保する。
「ふぅ。まずは一人。」
「―――っ!!!」
もの凄い形相で悔しがっている爆豪君(正面怖い)を視界に入れないように意識しながら、緑谷君達の待つ核のある部屋に向かった。
◇◆◇◆◇
さて、到着したはいいが、どうやら僕が遅かれ早かれ爆豪君を倒してここに来ることは分かっていたので、罠を仕掛けているようだ。罠といっても、麗日さんの個性で浮かせたテープや瓦礫やらを組み立てたものを、いつでも落とせるように上空に待機させているだけのようだが。
「まぁ、正面からでいいかな?」
気をつけていれば対策は容易いので、そのまま部屋に入る。
部屋に入ると、すぐさま飯田君が僕に近づき、飛び蹴りを仕掛けてきた。
「すまないが、本気で勝ちに行かせてもらう!!」
「いいよ。負けないから。」
余裕をもって躱す、が、そこに石が大量に飛んでくる。
「【彗星ホームラン】!!」
どうやら麗日さんが個性で軽くした鉄筋で、石を弾き飛ばしているようだ。既に上空に罠を仕掛けている上にもう一度個性を使うなんて、キャパは大丈夫なのだろうか?少し顔色も悪い気がする。
「まずは麗日さんだね。」
一瞬で麗日さんに肉薄する。そして、テープを巻く―――寸前に緑谷君が僕に不意打ちのドロップキックを放った。いい身のこなしだ。訓練が生きている。
「今だ!!飯田君!!」
僕が回避行動を取ると、それを読んでいたのか、飯田君が僕にタックルを仕掛ける。
「はあああ!!」
ここは……下手に踏ん張ると地面にヒビが入りそうだな。仕方ない、相手の策に乗るか。
「今だ麗日さん!!」
「解除!!」
なるほど。飯田君が罠の位置まで誘導して飯田君ごと、か。中々大胆な作戦だな。飯田君がテープを持ってなかったのは、罠に使うのと直接テープを巻くのは流石に通じないとの判断かな?
「なるほど。惜しいね。」
罠の位置まで誘導するまではいいが、まだ即席のチーム。罠の発動までタイムラグがある。麗日さんの個性解除に1秒、罠が落ちてくるのにも1秒程だ。その間、一瞬とはいえ飯田君は個性を切らなければならないのだ。僕が増強系、そして機動力にも優れているのは分かっているのだから、そこをどう抑えきるかまで考えるべきだ。
垂直蹴りで飯田君の顔を蹴飛ばし、のけぞった飯田君を掴み、緑谷君に投げ飛ばす。
「なっ!?」
緑谷君は想定外のことに弱いからね。何も想定してないときの咄嗟の判断はかなり良いんだけど。どうも、自分の想定は的確と心の何処かで思っているのかもしれない。
そして床が崩れないギリギリの力で跳躍し、罠を回避する。罠は床に激突し、床に大きな穴が空いた。どうやら脆いのは部屋の一部分だけらしく、床が全て抜けるなんて事態にはならなかったが。
「タッチ。核を確保しました。」
跳躍した先には核があり、そのまま核を触れた。
『ヒーローチー厶 WIN!!!』
お父さんが僕の勝利を宣言し、最初の戦闘訓練は幕を閉じた。
その後、反省やら他のチームの試合やら色々あってヒーロー基礎学最初の戦闘訓練は終了した。途中から、爆豪君が抜けて緑谷君が追いかけていった。なんだかんだ付き合いは長いようだし、爆豪君のフォローは任せても大丈夫かな。(後々後悔する)
ちなみに家に帰ってから興奮したお父さんに長時間付き合う羽目になった。