というわけで勢いだけで書いてみました。
ゴッド・ジラじゃないのが。
ええ、そうですとも。
独自設定を盛り込んでやりました、だってキングだから。
「腹が減った」
「ちょっと待ってくださいってば、王サマ。んなにせっかちにならんでも王サマの食事は逃げちゃいませんことよ?」
大きく広い屋敷のリビング、起きてからの第一声が空腹を主張するのはいつものことで慣れっこちゃんだが、まずはほかにバリエーションを作るつもりはないかと内心で突っ込みを入れつつ(声に出せば殺される)、俺はソファで読んでいた近所のコンビ二で購入した週刊誌を閉じ、苦笑いを浮かべ、『声』に返事を返した。寝癖だらけの黒髪、爬虫類のような黄金色の瞳、溢れ出るプレッシャーと見上げるほどに高い背丈。整った顔立ちでありながらも、無地の黒のタンクトップから露出している肩には生々しい傷跡がある。この俺、フリード・セルゼンが『王サマ』と呼ぶ人こそ、主であり、この屋敷の主である。古めかしい屋敷の持ち主と言えば、失礼ながらにも、憎き悪魔ちゃんの上級悪魔がイメージできるし、大きな屋敷であるほど、俺はゲームの魔王城を思い浮かべる。実際、この『
「俺が起きてからの第一声がそれか、フリード。いい度胸だ」
「!?いやね、あのね、違うんすよ!?俺は別にそういうつもりでいったんではなくて……」
「他に理由があるというのか?言い訳は無意味だ」
不機嫌そうに『王サマ』は手の関節をポキポキと鳴らし、俺の中の鼓動がやたらめっちゃらと高くなる。
理由は『王サマ』と同じものを持つとされるからだろうが、妙に俺の中の『なにか』が『王サマ』を恐れている。このヒトの何が怖いかと言ったら、ほとんどのことを素でやってくるのが怖ろしいところだ。どこも吹くもところがなく、包み隠さず何事も口走る。考えていなさそうで考えているようで、そして考えていない。
そんな不安定なヒトを『王サマ』と呼ぶのは果たしていいのだろうか、との後悔は無用なのが辛いところ。
俺ちゃんをそうさせる理由がこのヒトにある。
G細胞。
それが俺ちゃんが『王サマ』に逆らえない理由であるのかもしれない。まっ、俺ちゃんが世話焼きでおせっかいと言うのが大きいかもしれないけどなっ!……とまぁ、冗談はおいといてと。
この細胞は伝説の種族の細胞を指すものであるとされ、その細胞を持つ者は『王』と認識した者に絶対の忠誠を誓うのだという。細胞って辺りがクソ忌々しい聖剣の適性っての?その辺を指す『因子』みてえで気に入らないんだけどな。
で、この細胞には『王』とされるもの一挙一動が『臣』の細胞を持つ者に影響を与えるんで、俺ちゃんはそれに当てられてると推測している。
「それにだ。考えてもみろ、食事はそもそも逃げやしない。仮に逃げることがあってもだな、捕らえるが」
「いや、それって同じことを繰り返しているだけじゃ……」
「捕らえる」
「あ、そうなんすか……」
ポキポキと関節を鳴らすのをやめ、王サマは強い意志の篭った瞳で俺ちゃんを見つめる。おいおい、そんなに見つめちゃって惚れちゃったんすかー?生憎、俺ちゃんはノーマルなんで王サマの想いには答えらんない……、あっ、熱ブレスは勘弁して下さい、シャレにならないんで、ハイ。
「あら?起きたの?」
すっと姿を見せたのは、主に王サマの食事を作っているレイナーレでした。元・堕天使のこの女が如何にして屋敷に住んでるのかは、王サマの性格から押してしるべしである。俺ちゃんと違って熱ブレスを浴びせられないし、むしろ、可愛がっているのはねえねえどういうこと、俺ちゃんと扱いが違うってどういうこと?おかしいよ、この人。なんであんな魔王サマサマをブッ飛ばせるくれー強ェ王サマとベタベタ出来るんだよ、てか、あんた、どうしてそんなに満更でもない顔してるんだよ!
「ああ、レイナーレか。腹が減った」
「欲望に忠実ね、でも嫌いじゃないわ」
「嫌いじゃない?つまり、好きなのか」
「もう、分かりきってるくせに!待ってて、何か作ってくる」
で、そこでどうしてベタベタするんだよ、レイナーレ!王サマ、アンタも 真顔で答えるんじゃないってば。同僚と王サマがイチャイチャベタベタしてる絵なんか、見ててブラックコーヒーが欲しいくらいだ、畜生、リア充末永く幸せになれよバーカ!……あ、ようやくレイナーレが離れた。レイナーレも怖いもの知らずっつーか?スゲェよな、王サマも。とてもじゃねーけど、種族が違うヤツとイチャコラできねーわけでございますよ、全く。
此処で視点を変えよう。
フリード・セルゼンは聖剣計画の被験者として選ばれ、想像を絶する実験を受け続けてきた。周囲の同年代の者は死に絶え、いつ自分が死ぬか分からない。『偶然』自分には才能があったが、信念のように生きる目的のようにもなっている悪魔を殺すこと、そして戦闘を求める心からフリードは異端者扱いとなり、はぐれエクソシストとなってからも一人でに悪魔を殺し続けてきた。
その衝動が満たされてきたか、と言えば、そうではない。一度得た快楽より上のものを求めるように、フリードもまた同じものを求めるようになっていた。様々な人ならざる者を『不浄』として聖剣の名の下に切り伏せていた頃、フリードは絶大なる『力』と出会ってしまった。
それが、現在のフリードが『王サマ』と呼ぶものである。
相対した時、フリードの全身は逆立つようなものを感じた。実験を繰り返してきた幼少期によって頭髪は真っ白に染まってしまうが、『力』はそれ以上に恐怖を感じさせた。
立ち向かってはならない、戦ってはならない、相対してはならない。
本能がフリードにそれを告げ、恐怖を煽るが、フリードの戦闘衝動はそれに勝るものであったのか、口端を吊り上げて剣を抜いて襲い掛かった。フリードの剣の技術は天性の才能によるものか、非常に秀でている。
一度に仕掛ける剣の突きは突くたびに素早さを増すが、普段と違い、『悪魔を殺す』という狂気染みた信念に身を浸しているのが常時だとするのならば、そのときのフリードは狂気と恐怖がブレンドされている状態だった。
「素早い剣の突きだな、なかなかのものだ。だが、まだ足りないな。お前ほどのものであれば、俺に掠り傷をつけることくらいは容易だろう。お前、恐れているな?」
「誰が!」
強がって見せるフリードだったが、目前の青年の言うように剣を握る手は震えていた。怒涛の連撃にも対応し、あまつさえ息を吹きかけるだけで周囲の気温を上げ、右手の指から放出された光線を槍のように掴んでフリードの刃を抑える。衝撃で刃をはじき、槍を軸に円を描くように回転するように蹴りを入れれば、それをフリードがガードする。ガードによって出来た隙に乗じて大きく息を吸い込んだ青年はブレスを放出した。
人の姿を取りながらも、その勢いは伝説のドラゴンの
上級悪魔が人間界の地域を管轄している、という事情を一応はフリードは知識として知っているが、この成年のブレスで森の大半は焼き払われている。
ブレスを放つ、その一瞬の間にフリードには青年の身体を包み込むように青白い光が包み込み、エネルギーが覆っているようにも見えた。
「どうした?人間。俺のブレス如きで驚いているくらいでは、一流の戦闘者とは言えないな。戦闘者たるもの、常に堂々とあるべきだ。そう、この俺の様にな」
悠然と仁王立ちしている青年の言葉には嫌味が感じられない。むしろ、「それが自然」であるのを誇張しているようにも見えた。青年の言う、「ただのブレス」によって余波がフリードの上半身を包む衣服の布を飛ばし、上にはワイシャツ一枚の青年の胸部のケロイドのようなものが浮かび上がっている。
剣を支えにして辛うじてフリードは立ち上がるが、ほとんど虫の息で気力だけで保っているような状態だ。
満身創痍の状態にあるものの、フリードは戦意を失っていない。まだまだ、目前のこの青年に立ち向かうつもりでいる。支え代わりの剣を引き抜き、構えを取ろうとした途端ーー。
「ち、畜生……!」
軸を失ったフリードの身体は地面に倒れこみ、地を這う状態で『圧倒的な力』をねめつける。蝿は人間にはかなわない。それは当然のことであまりにも力量のかけ離れた小さな存在が大きな力を持つ存在に立ち向かうことは不可能に等しく、フリードの状態もまた然りだ。フリードが死を覚悟した時、『力』はゆっくりと歩みを進めて地を這う『勇敢なる好敵手』を見下ろす。
「なん、です……?俺ちゃんをこのままトドメをさせばいいじゃねーですか。アンタにとっては俺ちゃんで満足できなかった。だから、俺ちゃんを早く殺「何を馬鹿なことを言っているんだ」
「へ?」
フリードは目を疑った。戦闘中は真顔であったはずの青年は破顔し、禍々しいと形容するまでの笑顔を見せている。満身創痍になって動けなくなったフリードの前にしゃがみ、無傷の自らの手の甲に爪で傷を付け、そしてその血をフリードのケロイド状の傷に塗った。わずかに痺れる感覚にフリードは襲われるが、その痺れはすぐにおさまって身体中の怪我が青白く全身が発光したかと思うと、一気にそれらが塞がった。
「
「それにどんな意味があるって言うんだ、よっ!?」
フリードは平然と軽口を叩けているのに驚愕した。傷も塞がり、まだ乾いていない水溜りには目前の青年と同じ黄金色の瞳を持つ自分の姿がある。悪魔の眷族作りに近しいものを感じ、フリードは怒りを催した。
力が及ばない相手に手も足もでずに一方的な蹂躙を受け、あまつさえ、その敵に温情をかけられている。
その事実を簡単に受け入れられず、フリードは吠えていた。
そんなフリードの頭部を掴み、青年は不敵に笑う。
「意味はある。俺はお前が欲しい。お前ほどの力を持つ者が恐れを克服し、不死身の肉体を手に入れられたら、どうなるだろう?我が臣下となれば我が覇道にどのように作用してくれるのだろう?そればかり考えていたよ」
「あの短時間でそれほどのことを……」
フリードは絶句した。一方的な蹂躙を自分にかけている間、この青年は取るに足らないはずの相手の用途を考え、そして己の野望に組み込もうとしていたのだ。悪魔の眷属は主にとってのもののような扱いだが、この爬虫類のような目を持つ男は成長に期待しているように見える。
悪魔への憎しみ、自らに与えた聖剣計画による実験で受けたときのトラウマへの憎悪とは違う、別のもの。
すでに自分の身体の変化が起こっており、後戻りできないと知った上でも不思議なカリスマを抱いていた。
「答えを聞こう」
「答えはーー
YES、ってところっスかね」
互いに狂気染みた笑みをその顔に浮かべながら、その日、黒い王に白い狂獣が臣下となった。
……ってくらいにカリスマ抜群あったんだけど、人は本当にチェンジングしちゃいますよね~。もうちょっとハードボイルドな性格だったんじゃないか、って思ったわけよ、俺ちゃんは。で、そこからの王サマのカリスマブレイク。見てくれよ、王サマ、ソファの上で肘掛に肘ついて眠ってるけど、若干丸くなっているように見えるのは気のせいじゃないはずなんだ。
「風邪引きますよっと、そんなところで寝てると」
「そんなところとは失礼だな、白髪……」
寝ぼけながらも、俺ちゃんが言ったなんでもない一言に突っ込みを入れる王サマ。さりげなーく、上着を俺ちゃんが気を遣ってかけてやったってのに、ちょっとは感謝してくれてもいいんじゃないんですかねえ?こんなんでも実力があるんだから困るんだよ、---『