星を守るは、私の使命   作:光からの使者

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色彩豊かな日々

 

私は夜が怖い。

寝ることがとっても怖い。

普通の人にとって、睡眠は何よりの幸福だろう。

でも、私は怖くて仕方がない。

目を閉じてしまえば、あの光景(アイさんの死)が繰り返されるから。

 

「うわああああああっ!!」

 

また、夜中に目が覚めた。

自分の頬を引っ張り、夢から醒めたか確かめる。

 

隣では、アイさん(今世ではお母さん)がすやすやと眠っていた。

彼女を起こさないように、そっとお顔に触れる。

 

・・・・よかった。ちゃんといる。

 

自分の後悔と罪悪感が、こんな悪夢を作り出したのか。自分でもわからない。

ただ、確信できるのは自分が後悔を払拭して、使命を果たさない限りこの悪夢は終わらないということだ。

本当に勘弁してほしい限りだ。

 

改めて今の自分についてまとめようと思う。

私は、星野翠玉(エメラルド)。人気トップアイドル星野アイの娘で、次女。

聡明でかっこいい星野愛久愛海(アクアマリン)君(長いため便宜上アクアと呼称)を兄、明るく快活な星野瑠美衣(ルビー)ちゃんを姉に持つ、末っ子。

 

ちなみにエメラルドと呼ぶのはやっぱりというべきか。名付けた本人としても面倒だったようで、良い感じに略してメルと呼ぶようになった

 

死んだ時期の都合上、アクア君とルビーちゃんとは年の離れた兄姉であるが致し方ない。

 

 

また、前世の礒野江カオリとしての記憶を持って生まれ落ちた。

正直転生なんてフィクションだと思っていたけれど、実際に起こった以上信じるしか他あるまい。

 

次に容姿だが、どうもお二人よりもアイさんの遺伝子が強かったようで頭髪が同じ紫がかった黒髪だ。父親の遺伝子は所々金髪が混じっているくらい。目は緑色で、名前のエメラルドもこの色にあやかって名付けられたらしい。

 

・・・前から思ってましたがアイさんのネーミングセンスって結構独特ですよね?

 

アクア君やルビーちゃんには片方ずつしかなかった瞳の星。それを私は、両瞳に宿している。少し黒く濁っているが気にすることでもないから割愛する。

 

 

聞くところによると私の出産は、苺プロダクションにとってまさに関ヶ原合戦だったそうな。

男と会ってもいないのに、訪れた2度目の妊娠。アニキとミヤコさんは顔面蒼白だった模様。

本当に申し訳ないと思う。

 

 

それはそれとして、私の赤ん坊生活は、実に楽しいことばかりだ。

 

例えば、ご飯の時―――

 

「メル~おなか減った?おっぱい飲む?」

 

コクッコクッ

 

「メルもおっぱい好きだねぇ」

 

かつての護衛対象に何やってんだって思うでしょう?

この行動は、今世で未練を残さないためのものなのだ。前世で後悔したことが悪夢となって現れている。だから、今回の人生でスッと成仏できるよう、やりたいことはやっておくべきだと思ったのです。

 

「メルばっかりずるいッ!!私もママのおっぱい欲しいッ!!」

 

「こらこら、ルビーはもう大きいでしょ?お姉ちゃんなんだから、我慢しないと」

 

「そうだぞ、ルビー。まだメルは赤ん坊なんだ、許してやれ」

 

「ぶぅー―」

 

・・・ルビーちゃんには悪いことしちゃったなぁ。ちょっと調子に乗り過ぎました。

 

 

 

 

 

 

 

 

赤ん坊としての責務を全うしながら、楽しく暮らす日々。

でも己の使命を忘れたことはない。アイさんは、どこか注意力が欠けているところが見られます。

この前もよそ見しながら作業していたため、危うく熱々のやかんに触れるところでした。咄嗟に私が泣くことで、注意を反らしアクアさんが気づいてくれたおかげでなんとか事なきを得ましたが‥‥

 

 

あの時、兄が私を見て不思議そうな顔をしていたことに気が付かなかった。

 

 

その日の晩。

 

また、悪夢を見た。

今度はご丁寧にリョースケがアイさんを刺し殺す一部始終を再演していた。

もう何回見たことかわからないが、いい加減メンタルがやられそうだ。赤ちゃんの時くらい、落ち着いて眠れないものか。

 

すっかりハイハイできるようにまで成長した私は、ベットから抜け出しアイさんのスマホを開く。

 

(プライベートと仕事用を分けているとはいえ、パスコード掛けないのはさすがに不用心すぎます…)

 

スケジュール表を開いてしっかりと確認する。

もう間もなくアイさんのライブが予定されている。販促イベントとはいえ、前世では堪能できなかった『推し』のライブ。絶対に行きたい‥‥!!

 

そういえば、アイさんは現在B小町を抜け苺プロ所属のアイドルタレントとして活躍しているらしい。なんでも、前世の私が事故で亡くなり、アイさんは一時期ノイローゼに陥っていたようだ。それを気遣ったアニキが、B小町からの脱退を提案したのだという。結果、アイさんの抜けたB小町はやがて解散。。メンバーも散り散りになったと聞く。

 

 

あぁ~~~行きたいなぁ~~ライブッ!!行きたい行きたい行きたぁぁい

 

深夜で寝静まっていたことにかこつけ、この時の私は少々テンションがおかしいことになっていた。それも誰かに見られていたっていうことも知らずに。

 

「なぁ、お前。もしかして俺たちと同じか?」

 

不意に兄さんの声が聞こえ、私は恐る恐る振り返った。

目と目が合う。

がっつりアクア兄さんに見られてました。

誤魔化しもできませんし、もう取り付く島もありません。

 

完全に詰みました。どうしよう!!?

 

 

・・・んっ?今、俺たち(・・・)って言いませんでした?

 

 

 

 

結局、その後ルビー姉さんとアクア兄さんには自分が前世の記憶を持っていると正直に明かした。ただし、前世が礒野江カオリであることはうまいことはぐらかしました。だって変に騒ぎになったら大変ですし。

でも、驚いたことに2人とも私と同じく前世の記憶を持っていると言うのです。しかもアイさんの大ファンだったという事実も一緒についてきました。

 

前世から推し続ける程熱意ある方々なら、私がライブに行けるよう頼めないか相談してみることにした。。

 

「―――というわけなんです。私、どうしてもアイさんのライブに行きたいんです!!」

 

すると、私の訴えを聞き終えた2人は、一度お互いの顔を見合って私の肩に手をおいた。

 

「任せろ。布教活動も奴隷(ファン)の仕事。同じアイを推すもの同士、俺たちで何とかする」

 

「ふっふーん!!ちょっと可愛くない妹と思っていたけど、ママのことを知りたい熱意に免じて許してあげる」

 

2人は自信満々に語っていたが、一体どうするつもりなんだろうか?ミヤコさんをどうにかしない限り、ライブは見れないだろうから、少し不安だ。

 

翌日、私たちの面倒を見に来たミヤコさん。おむつをとっかえている間に兄さんと姉さんはバックライトを照らしながら机の上に座った。

 

そして――

 

 

 

「久しぶりだな、娘よ。日々精進しているではないか」

 

「はッ!?その声は・・・・神様!!」

 

正直、信じられない光景を私は目の当たりした。

兄さんと姉さんは滅茶苦茶、神様っぽい口調でミヤコさんに話しかける。

 

「よくぞ、約束を守り我々を育ててくれた。感謝するぞ。」

 

「ハハッーー!!光栄でございますぅ!!」

 

・・・賢い言葉をスラスラ喋る兄さんと姉さん。そんな2人に平服するミヤコさん。

まさに唖然ですよ。だってこんなこと関係になってるなんて知らなかったんですから

 

続けざまにルビー姉さんは私を指さす。

 

「この者も我らと同じく神の使いであられる。久しぶりですまぬが、この者を今度のライブに連れていくことじゃ」

 

「さすれば汝に幸福がやってこよう」

 

「はいーっ!!おっしゃる通りにいたしますぅ!!」

 

そこからは、2人のペースだった。すっかりと兄さんたちの勢いに飲まれたミヤコさんは、私たちをライブに必ず連れていくと約束してくれたのだ。

 

・・・・我が兄姉ながら演技力に末恐ろしさだ。

 

将来、俳優として彼らが大成する可能性も大いにあるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後。

私たちは販促イベントが開催されるライブ会場に連れてきてもらった。

 

「いいですか?どうしてもって言うから連れてきましたが、バレたらどやされるのは私なんですからね」

 

 

「特にルビーとアクアは、前回似たようなことがあるんですから、絶対にしないように。わかりました?」

 

そうこうしているうちにアイさんのライブが始まった。

 

曲がはじまり、瞬く間に会場を沸かせた。

 

(胸がチクチクってする。なんだろうこの思い‥‥!!この衝動は‥‥ッ!!)

 

・・・・うおおおおおおおおおおおおおおっ!!

 

 

 

「バブバブバブバブバブバブバブバブっ!」

 

 

『なんだこの子たちッ!オタ芸踊ってるぞっ!』

 

『あの乳児、すげぇキレだッ!!』

 

『こっちの小さい子たちもすげぇ!!そろって動きが一切ぶれてない!!』

 

今の私たちに、胸の中の鼓動を止めることはできなかった。

どよめく観客もお構いなく、私たち3人は一心不乱に踊る。

 

(ああもう!!やっぱりこうなった!!だから連れてきたくなかったんですよ!!)

 

盛大にテンパるミヤコさんを他所にし、私たちはひたすらアイさんを応援し続けた。

 

 

(やっぱり、うちの子。きゃわーー!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰宅後、SNSに投稿されていた私たちの動画は42万リツート、転載動画も既に300万再生を記録したという。

 

当然ミヤコさんはアニキに引きずられていった。

 

・・・・本当に申し訳ない。

 

 

 

あれから1年。

私もようやく身体が安定して立ったり、歩いたりできるようにまで成長した。

夜になるたび悪夢を見るのは変わらないが、このところマシになってきた。前世でやり損ねたことを消化したのか、おかげで一か月に三日は悪夢を見ることがなく熟睡できる日が出来た。

 

しかし、肝心の黒幕探しは難航の一途を辿っている。

 

何せ、前世持ちがバレたとはいえ、兄さんと姉さんに打ち明けるわけにはいかないし、最もお母さんには知られるわけにはいかない。それに、一度ストレートに父親のことも尋ねたが‥‥

 

「お父さん?今はな~いしょ♪メルが大きくなったら教えてあげるね。」

 

「あんな奴‥‥」

 

「お母さん…?」

 

「ううん、なんでもない」

 

アイさんは相変わらず可愛かったが、答えははぐらかされてしまった。

ただ、一切収穫がなかったわけではなかった。

 

兄さんと姉さん、そして私の頭髪から見るに父親は、たぶん金髪。

世間体とは言え、アイドルのアイさんと隠れて交際関係になれるほどだから、恐らく芸能人。

そしてアイさん事態人間関係がそこまで広いわけじゃない。そこを探ることができれば自ずと黒幕にたどり着けると思う。まだ父親が黒幕の線は薄いが、可能性は十分にあり得る。

アイさんの新居がバレるとしたら公演1週間前の電話しかない。そこから、あの厄介ファンを嗾けたと考えれば・・・・

 

ああもう!!考えてくるだけで腹が立ってきた!!

 

 

‥‥一旦落ち着こう。

今日はアイさんとアクア兄さんが出演する映画撮影を見学させてもらう日だ。

 

いずれ黒幕を探しに芸能界を目指す。

それまでに多くの世界を見て学ばなければならない。少しでも周囲に自分の存在を知らしめる術を少しでも盗んでいく。前世から他人のいい所を盗むのは得意だ。やれないわけがない。

 

 

ミヤコさんが運転する車で揺られること数十分、私たちは撮影現場に到着した。

でもまさか、前世では無かった変な才能が開花することになるなんて。

 

私も家族もいや現場に居合わせた誰もが思わなかった




星野エメラルド(メル)
割と早く前世持ちがバレた。
それでも兄と姉から理解を得られ、念願のオタ芸を習得し披露した。
毎夜悪夢にうなされている。

星野アクア
メルの様子がおかしいのは前々から気になっていたが案の定だった。
どうして、アイには普通の子が生まれないのか気の毒に思っている。
ただ、ファンとしての務めは当然果たす。布教活動、大事。絶対

星野ルビー
まだまだママに甘えたいお年頃。前世発覚前は、メルをママとの時間を奪う奴とライバル視していた。発覚後は、同じアイ推しとして教育に努めるつもりらしい。

星野アイ
うちの子たちがきゃわいすぎてたまらない3児の母。
B小町の引退後、アイドルタレントとして活動中。フォロワーは200万人を突破したという。

次回、映画撮影体験編。
お楽しみに!!
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