星を守るは、私の使命   作:光からの使者

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次章に入る前に、アクア視点で送るこれまでの振り返りをどうぞ。


幕間1:アクアマリンはかく語りき

俺こと星野愛久愛海(アクアマリン)は、所謂転生者だ。

 

前世は、雨宮吾郎というごく普通の産科医だった。前世からの推しであった星野アイが妊娠しその出産サポートを担当することになったのだが、ある時不審な男を追いかけた末に崖下から突き落とされ死亡。そのまま地獄に行くかと思っていたら、推しのアイドルの子供として転生するという天国にいた。

愛久愛海(アクアマリン)といういろんな意味ですごい名前を付けられたが、この際どうでもいい。現実を受け入れるには時間が掛かったが、今は充実した第二の人生を送らせてもらっている。

 

「お兄ちゃん?どうしたの?」

 

「いや、ごめん。考えごとしてた」

 

第二の人生を送る上で欠かせない人物がいる。

双子として産まれた星野瑠美衣(ルビー)。俺の妹でどうも同じく前世の記憶を持った転生者らしい。

 

え?なんでわかるんだって?

 

それが分かったのは、赤ん坊として暮らしていたある日の晩のことだ。

何か物音がすると思って起きてみれば、携帯でB小町 アイ と検索をかけアンチと壮絶なリプ合戦を繰り広げていたのである。

 

「‥‥お前、もしかして俺と同じか?」

 

「えっ・・・・・?赤ん坊が喋った!!きんも―ーー!!」

 

「お前もだろ」

 

・・・・といった具合で互いに前世の記憶を持ったままアイの子供として生まれてきたことがわかった。

そこからはうまいこと協定を結び、有意義な赤ちゃんライフを過ごすことになった。

ある時は、育児ノイローゼで週刊誌に垂れ込もうとした社長夫人のミヤコさんを神様の真似で諫めまたある時は、ライブにて兄妹で本能のままにオタ芸を披露しSNSで大いにバズった。

 

現役アイドルのアイが2児の母であることは社長や夫人以外には決してバレてはいけない。秘密がバレることはアイの社会的死だけではなく所属する苺プロも存続の危機に立たされてしまうからだ。だから俺たちは社長さんの子として戸籍上登録されている。

 

それから数年が経ち、俺は役者の道を志すきっかけに出会った。

元々はアイが出演する映画の見学。そこで出会った五反田監督に素質を見出されアイのバーターとして映画に出演することとなった。この時、人気を博していた天才子役有馬かなと会ったのもこの時だ。ありのままの自分を魅せたことで、俺は役者というのがどういうものなのか実感した。そして同時に役者に興味を持った出来事でもあった。

 

それから数年後、アイは二十歳になった。

B小町・・・・いやセンターであるアイの人気はまさに絶頂を迎えていたと言えるだろう。

いよいよ社長の念願だったドーム公演が叶いそうになったある日、社長はある人物を連れてきた。

社長と一緒にやってきたスーツ姿の女性。彼女は警戒する俺たちを前に優しく微笑みながら言った。

 

「初めまして。本日からアイさんの警備を担当します、礒野江カオリと言います。どうぞよろしくお願い致します」

 

護衛事務所サテライトから派遣されたボディーガード、礒野江カオリとの出会いが運命を大きく動かすことになろうとはだれも予想だにしなかった。

 

数日後

ボディーガードとして雇われたカオリさんは、社長の好意で俺たちの隣の部屋に引っ越して来た。

 

彼女の第一印象を挙げるとするなら、アイとは別ベクトルで心配だったことだ。彼女、カオリさんはボディーガードとしては実に頼りになる。常にアイや俺たちの傍にいて危険がないか見守っていてくれる。ただ、彼女も完璧人間というわけではなかった。家事ならば料理・洗濯・掃除とありとあらゆる雑務を文句なしで片付けるが、アイの嘘にしょっちゅう騙されている。アイの嘘は見分けるのが難しいため仕方のないことであるが些か心配だった。

 

また、ゲームがからっきし苦手なこともあった。特にババ抜きなど心理戦が大きく関わる勝負にかけてはまさかの最下位。児童に負ける成人女性というのはいかがなものか。

 

ただ騙されやすいという弱点はありつつもカオリさんは、ボディーガードとしてアイのサポート役としてはこれ以上ない人材だった言える。ミヤコさんに聞いた話では昔ひと悶着あった仲ではあるらしいが具体的な内容は聞き出せなかった。それにしても斎藤社長の人を見る目は優れていると言えよう。

 

例えば・・・・

 

「いや~だあ~~!!ママと一緒にいた~~い!!」

 

ある時ルビーがぐずり出したことがあった。家でみっともなく駄々をこねる妹。内心アイと一緒にいたいが8割、カオリさんに迷惑かけてやろうとする気持ちが2割と言ったところか。俺が何を言ってもルビーのぐずりは収まらない。今日に限ってミヤコさんも不在と最悪な状況だ。手がなく困り果てていると、カオリさんがルビーの前に近づき、そのまま優しく抱きかかえた。

 

「大丈夫ですよ、ルビーちゃん。仕事が終わったらアイさんはすぐに帰ってきますからねぇ」

 

「・・・・本当なの?」

 

「ええ。本当ですとも、帰ってくるまでに少し寝ちゃいましょうか」

あれ程ぐずっていたルビー説得したカオリさんはそのまま子守唄を歌う。

 

「ね~ん~ね~~ん、ころり~よ。おころ~り~よ~~」

 

「あぅ・・・・眠く・・・なって・・・・きた・・・」

 

カオリさんの子守歌を聞いたルビーはあっという間にすやすやと眠ってしまった。

いや、そうはならんやろ・・・・・いやなっとるがな・・・・・

 

「さて、せっかくだからアクア君もお昼寝しましょうか」

 

まずい、ターゲットがこっちに向いた。このままでは俺も寝かされてしまう。流石にアイ以外に寝かされるわけには・‥‥

 

「ね~ん~ね~~ん、ころり~よ。おころ~り~よ~~」

 

あっ・・・・だめだ。これ聞いた瞬間・・・・・意識が‥‥‥

 

 

 

次に目が覚めた時にはアイが仕事から帰ってきた時だった。

この一件でルビーもカオリさんに迷惑を掛けることは止め、彼女にも心を許して甘えるようになった

もう彼女の力は間違いなく信頼できるものだろう。だから俺たちは、ドームまでの数か月を安心して過ごせると

 

 

・・・・そう思っていた。

 

 

時は流れ、いよいよ今日はドーム公演の日を迎えた。

社長たちが迎えに来るまでの間、アイとカオリさんは身支度を整えていた。一方ルビーは昨晩の遅くまでアンチと壮絶なレスバをしていたためか少しお眠のようだった。

 

ピンポーン。

 

 

「社長たちかな?」

インターフォンの音に気付いたアイが玄関に向かうも、万が一を考慮して代わりにカオリさんが出迎えにいった。

 

・・・・・いや、ちょっと待て。社長たちとはいえ、いくら何でも来るのが早すぎないか?

 

確か、昨日の話では迎えに来るのは10時頃だったはず。時計を見ても今はまだ9時半だ。今来たのは本当に社長たちなのか‥‥・?

 

不審に思っていると玄関のドアが激しく閉じる音が響いた。

お眠のルビーを起こしていたアイも、急いで玄関に向かった。

 

距離が遠くて何の話をしているのか聞こえなかったが、何やら良からぬことが起きていることは分かる。

玄関に行ったアイは瞬時に受話器を手に取ってどこかに電話を掛けている。番号からしておそらく警察だろう

言葉は飛び飛びだし、文脈が意味を成していない程、アイは焦っているように見える。

 

「ルビー、起きろ」

「なぁに・・・・お兄ちゃん・・・・?」

 

お眠なルビーを起こし、今の現状を伝える。悪いが目を覚ましてもらわなければ。

 

「えっ!不審者!?」

 

「嗚呼、今カオリさんが食い止めてるけど戻ってきてない。アイの様子から見るに相当不味いことになってるかも」

 

恐る恐る部屋を出ると、俺たちに気づいたのかアイに抱きしめられた。

ぽろぽろと涙を流すアイ。彼女は震える口で俺たちに言った。

 

――”愛してる”

 

 

前世からアイのことを推していた俺たちには、アイの『愛してる』が嘘ではないことを感じとれた。

アイから送られた心からの言葉に俺もルビーもいつの間にか泣きそうになっていた。

―愛してる、と送られたならば当然返す言葉はこれしかない。俺もルビーも

 

「「ママのこと、愛してる」」

 

だって今も昔も、アイの奴隷(ファン)なのだから

 

 

 

 

 

 

「アクア、ルビーをお願い」

 

そう言ってアイは再び玄関に向かった。現状、カオリさんは何かしらの怪我を負っている可能性が高い。だとすれば・・・・

 

「ルビー、救急箱を取ってきてくれ。包帯とかもありったけ頼む。俺は救急車を呼ぶから」

 

「わかったお兄ちゃん!!」

 

ルビーが救急箱を取ってきてくれている間、急いで119番に通報する。

電話に応じた救急隊員も言葉の感じから非常事態ということを察してくれたのかスムーズに対応してくれた。

 

「お兄ちゃん、持ってきたよ!」

 

電話を終えたころちょうど良いタイミングでルビーが戻ってきた。我が家に置いてある包帯や薬を用意し2人で玄関に向かう。

ドアを開くと見えたのは、過呼吸に陥りそうになったアイと脇腹を負傷し吐血して壁にもたれ掛かっているカオリさんの姿だった。

 

幸いなことにナイフが患部に刺さったままなため大出血を免れている。ただ、かなり深々と刺されているため応急処置を施さなければどっちにしろ死んでしまう。

 

「ママ、救急車は呼んである。到着まで間に合わせるぞルビー!!」

 

「うん!!」

 

人の生命が掛かっている。

この際アイやルビーになんと言われようとも構わない。

俺は、医者として生きた前世の知識を総動員して応急手当を施した。

 

 

 

 

 

 

 

それからというもの救急隊員が到着するまでの間、何とかカオリさんの命を食い止めることができた。まぁ、ナイフが大動脈に接触しなかったことが不幸中の幸いだったと言える。

アイを狙いにやってきた不審者・・・・いやストーカーは駆けつけた警察官に逮捕されそのまま連行された。前世の俺を殺めた相手ではあったが、今回の件で安心だ。もう奴がアイの前に現れることは二度とないだろう。

 

カオリさんもあの後目を覚まし、社長とミヤコさんにこってりと絞られていた。

アイのドーム公演も延期したけれど無事再開。俺もルビーも推し(アイ)の輝きを十分に堪能できた日になった。

 

 

 

 

ドーム公演が無事成功して一か月が経った頃。

寝静まったある晩、リビングにて何やら物音がしたからこっそり覗くことにした。

 

「ちょっ・・・・アイさん!流石にこれは―ーー」

 

「しーー。アクアとルビーが起きちゃうでしょ?」

 

「ぁぁぅ…でもこれはさすがにまずいですってっ!!」

 

「いいのいいの。私はねぇ、貴女もあの子たちのパパも欲しいの

 

「普通ならどっちか片方かもしれないけど、私はどっちも欲しい!!」

 

「だって星野アイは、欲張りなんだ!」

 

「それ説明になってな・・・・アーーーーッ!」

 

・・・・何だろう。スゲーもん見せられた。

 

前世からアイを推してる身としては、父親不明の子供を妊娠したって発覚した時も脳が破壊されそうになったが、今回はそれをはるかに凌駕しそうだ。

 

妹が起きてなくてよかった‥‥。アイ推しのルビーが親の情事見せられたら脳破壊じゃすまないだろう。

 

いや、案外受け入れるのかもしれない。けど、これは見なかったことにしよう、そうしよう。

 




星野愛久愛海(アクアマリン)
今回の語り部。前世の知識を活かし、カオリの命を救った。赤ん坊でもないのに寝かしつけられるが意外と悪くないと思っている。ただ、親の情事を目の当たりにすることになった可哀そうな被害者。

星野瑠美衣
アクアの妹。実を言うとアイとカオリの関係性について否定的な感情はない。むしろパパができると喜んでいた。

星野アイ
経緯は違えど子供たちに愛してると心から伝えられた。自分自身の命に無関心なカオリをわからせるべく、強引にいった。

礒野江カオリ
この時まだ転生前。アクアとルビーを即座に寝かしつけた子守歌は、母親直伝のもの。幼少期にこれでもかと歌われたためいつの間にか習得していた。年齢=彼氏いない歴のため色恋沙汰には疎く初心。そんな彼女を当然アイが見逃すはずがなく‥‥

年上が年下にへにゃへにゃにされるシチュって良くないですか?私は良いと思います。

次回:アクア視点の幕間その2
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