「ジャーーーン!!!これがママと私達の、新しいお家だよ!!!!」
あれからしばらくして、アイの状態が良くなると、お世話になった病院の関係者にお礼を言い、彼女が復活したことを隠して、退院した。そして、以前の家よりもっとセキュリティの高い、フロアには自分達しかおらず、宅急便や来訪者でさえ、厳重なボディチェックを受けるレベルの超高級マンションに引っ越した。
「へーー。なんだか、とっても広いねー。踊れちゃうくらいだよー♪クルクル〜☆」
「あっっったり前だよ!!ママの印税凄いし、貯金も凄いんだから!!ね!!アクア!!」
「あー。まぁ、そうだな。ア、ママのお陰で、あと5年は全く働かないで今の暮らしできるぐらいの貯金はある。逆にいうと、何もしなければあと5年で全部無くなるんだけどな。」
「へぇーー♪アイドルってそんなに稼げるんだねー。じゃあ、ママがまたアイドルやって、二人のぶんも稼がないとね☆」
「いや、それはダメだ。世間にだってまだ起きたことを公表してないんだし。それに、危険だ。」
「えーー。アクアのケチッ。ルビーはママにアイドルやって欲しい??」
「え゛え゛え゛。み、み、見たい!!!!!!!
で、でも、ママに危険な目にあって欲しくないし、もう、ママと離れ離れにはなりたく‥ない‥」
「‥‥‥‥そっか。じゃあなんか別の仕事とか探さないとねー♪あ、ルビー。新居探索とかする?」
「する!!!!!お手手つなご!!!!」
「うん♪アクアはこっちのお手手ね♡」
「‥‥」
アクアは、恥ずかしそうに柔しくアイの手を掴む。
「それじゃあ、「しゅっぱ~つ♪」」
あれからずっとルビーとアイは二人でベタベタで、ルビーは病院で寝泊まりしてるほどだった。アクアも学校や勉強以外の時間は全てアイと共に過ごすことに
あてていたので、文句を言える立場ではないが。
まぁ、しょうがない。5年も一方通行だったのだ。それだけ、穴も大きい。一緒にやりたいこと、話したいこと、見せたいもの、行きたいところ、5年間溜まっていたものが溢れて止まらないのは、アクアもルビーも一緒なのだ。だから、気持ちは痛いほどよく分かる。
それに、
と、アクアは、手元の携帯電話に来ている一つのメールを読む
『アイさんの記憶喪失は、おそらく外的なものと内的なものの複合だ。外的な部分でどうしようもないところがある可能性が高いから、全てを思い出すことは一生無いかもしれない。だが、知ってのとおり、アイさんは寝ている間のお前らの話を聞いていたと言っていた。本来ありえないはずだが、そんな記憶があるということは、それだけお前ら二人は、彼女の記憶にとって、脳にとって、心にとって大事なモノだったということなんだと俺は思う。だから、お前ら二人と会話をしているうちに、何かを思い出すことはありえないことじゃない。たくさん会話をしろ。思い出を重ねろ。お前らにはもう、それができるんだ。』
会話をする。思い出を重ねる。言われなくても、しないわけがない。なんなら、アイドルとしてステージで踊っているアイを。武道館で踊るアイを必ず見てやるとさえ思っている。その前に、やらなくちゃいけないことはあるけども。
それでも今だけは、復讐を忘れて、怨念の炎を消して、淡く幸せな夢を、光を、浴びてもいいのだろうか。すると
「ねぇ、お兄ちゃん、聞いてる????」
「あ、えと、なんだ?」
「だからね。これから新しいお家の、家具買いに行こうって話だったじゃん。まったくもー。」
「まぁまぁ。アクアはとっても頭いいからね。難しいこと考えてたんでしょ?」
「いや、まぁ、ごめん。えっと、家具だったよな。でも流石に、そのままで行くのはマズくないか?」
「「え?なんで?」」
「イヤだって‥今も寝ているはずの伝説のアイドルだし、せめて変装するとかボディガードつけるとかしないと‥」
「「あ、確かに‥」」
「とりあえず、仕事に行ってるみやこさんが帰ってくるまで待ってから行ったほうがいいと思うぞ。それまでに変装の準備とかして。」
「「わかった!!」」
「ママは有名人だからね!!隠しきれないオーラがあるからね!!!頑張って抑えないと!!ク〜〜〜〜っっっうちのママが最強過ぎてツラい!!!」
「ハハハ。確かに私も、ルビーもアクアも、顔が良いからね☆。隠さないと死人か出ちゃうかも‥」
「「ハーハッハッハッ」」
「仲良いな‥」
と、一旦家に帰宅したのだった。
▽▽▽
「はぁ。なるほど‥外出ねぇ‥。出来れば危ないから控えてほしいところだけど‥‥まぁ、だからといって今後一切の外出を禁止するつもりもないし‥‥うーーん。まぁ、とりあえずアイのは変装して貰って、私が付いていけば大丈夫‥だといいんだけど‥‥」
「ボディガードお願いね♪みやこさん♡」
「みやこさん♪ちゅき♡」
「はぁ‥この親娘は‥。で?アクアもそれでいい?」
「まぁ‥出来ればもっとしっかりSPとか付けたいレベルだけど、そんな金も無いしな‥よし、気分転換も含めて、出かけるか。みやこさん。なんなウィッグとか変装用の道具無い?」
「まぁ‥そこらへんは、任せなさい!!!!私に考えがあるの‥‥‥ニヤリ」
「??」
▽▽▽
「考えって‥どうしてこうなった‥」
「お兄ちゃん‥‥‥‥可愛い!!!」
そう。星野アクアは今、ロリータ系のファッション。つまり女装をしながら街を歩いていた。
ヒラヒラ舞うスカートと、高いヒールが歩行をだいぶ邪魔してくる。それに下がスースーして気持ち悪い。スカートを抑える指には、わざわざ星が散りばめられたネイルがしてあり、これだけで2時間もかかっている。さらに極めつけは、頭の中が少し蒸れて気持ち悪くなるこの黒髪ウィッグだ。髪が肌に当たるのも変な感覚だし、なにより邪魔だ。なぜハロウィンでもないのにこんな格好をしているのか。それは、他のメンバーも共に見ればわかる。
「フッ。お兄ちゃんの子猫ちゃん☆」
「いやお前の中のイケメン像どうなってんだよ。」
ルビーは、右目にかかっていた短髪の赤色を、片手でかき上げ、その独特な星が入った目を瞑り、ウィンクした。洋服はいわゆるストリート系であり、ダボダボのパーカーがよく似合っている。
「ほらほら、早く行きますよ二人共。確か電化製品はこっちでしたかね。」
そう騒ぐ二人を催促するのは、長い茶髪を、ポニーテールで縛り、黒スーツに眼鏡をかけた、いわゆる社会人インテリキャラといった感じのみやこさんだ。
極めつけは、
「ふふふ。お出掛け楽しいね♪僕は大きいTVとか欲しいなー♡」
短髪白髪のウィッグに、赤いカラコン、白いセーターに黒いパンツ、白の大きいコートのモノクロ王子様系ファッションが、抜群に似合っているアイだ。
アニメやファンタジー世界から出てきたレベルの美男美女集団は、まぁ目立つ。さっきから人混みがモーゼのように割れ、ちょっと目が合うだけで黄色い悲鳴が飛ぶ始末だ。
変装うんぬんの話はどこへ行ったふざけんなといった話だが、みやこさんいわく、どっちにしろアイのキラキラやオーラは隠しきれる訳が無いから、だったら逆に、変にコソコソするよりは、堂々としていたほうが良いという。
まぁ、アイはその特徴的な目はカラコンで隠して貰っているし、声もなるべく低くして喋ってもらってるから大丈夫だとは思うが、不安だ‥。なんだか最近、アイが起きてからみやこさんもテンションが上がっているのかおかしくなっている気がする。
ああ、そういえばみやこさんといえば、逃げた社長の件だが、まだアイが起きた件は伝えていないらしい。というか、本当に誰も連絡先も居場所も知らないため、伝えようとしても伝えられないのが正解なのだが。しかし、本気で探せば見つかる可能性は無くはない。なのになぜそうしないかといえば、社長がみやこさんをおいて逃げたことを、みやこさんもルビーも俺も良く思っていないからだ。まぁ、あっちが何かしらこっちにアプローチをかけてこない限り、わざわざ労力を割いてまで伝える必要性も無いだろといった感じだ。
「あ、あの!ほ、本日はこのドラム式洗濯機がお買い得です!」
「あ、そうなの?ありがとう♡‥うーん。ちょっと安く出来たりしないかな‥♪」
「え!!も、ももももももちろんです!!///////////////お、お客様には特別に、き、90%オフで販売しますよ!!」
「やったあ!!ありがと♪みやこさーん。これ安く売ってもらえるって☆」
「あんた‥悪いわね‥。」
と言った感じで洗濯機を手に入れ、
「おねーさん♪」
「ん゛ん゛。ん?ぼ、僕、どうしたの?ビショウネンダ‥」
「僕ね‥実はお金あんまり無くて‥。ふかふかのベットで寝たこととか無いんだ‥だから‥お姉さんと僕が寝ても全然大丈夫なくらいの大きいベットとか‥欲しい‥な♡」
「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛っっっっ////////////////////。」
「あ、そ、そういうことなら、このキングサイズベットとか、君にプレゼントしちゃおっかなぁ〜」
「本当に?わ~い!!おねーさん大好き〜☆おに、おねえちゃ〜ん。この大きいベット買ってくれるって〜。」
「お前‥。いつか痛い目見るぞ‥」
といった感じでベットを手に入れたりして何だかんだ他にも家具を格安で手に入れて周ったのだった。他にも
「キャーーー/////この娘可愛いーーー!!!!//」
「んねぇーー!!!お人形さんみたい////」
「写真取ってもいいかな??いいよね??取らせてよー///」
「あ、あはは。ど、どうぞ‥」
といった感じでアクアがギャルに囲まれたり、
「あ、あの。た、宝塚の方ですよね???あ、握手してもらってもいいですか?!」
「え?あー。うーん。い、いいですよ〜。」
「あ、ありがとうごさいます!!顔が良いですね!!」
「あ、ありがとうございます〜」
といった感じでみやこさんが主婦のような方々に大人気だったり色々とハプニングはあったのだが、そのまま何とか買い物ミッションは成功し、無事に帰宅したのだった。
「いやー。買った買った〜。お出掛け楽しいね〜☆にしても、アクアもルビーもお洋服とっても似合ってたよ〜♪とっても可愛いかった♡」
「でしょ〜/////。ママの遺伝子最強だもん!!!それに、ママもとってもカッコよかったよ!!1000枚ぐらい写真取ったもん!!!!」
「まぁ、そうだな。正直、ア、ママは、最強だった。この世のどの男よりもカッコ良かった。」
「え〜〜〜。ありがとう〜〜/////」
「「「えへへへへへ」」」
「仲良いわねあんたら‥」
「そろそろ私お風呂入ろっかな〜。ママも一緒に入ろ♡」
「いいよ〜♡みやこさんも一緒に入る?」
「入るわけないでしょ。ご飯作っとくから早く入ってきなさい。」
「「は〜い☆」」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
チャプンと、湯船に身体が入ると、身体の芯まですぐに暖かさが広がってくる。ルビーは、アイの足と足の間に座っており、頭を完全にアイの胸に預け、上機嫌に足をゆらゆらさせながら、歌っている。
「あなたのアイドル♪サインはB♪chu♪」
「それ、私がアイドルやってるときに歌ってたという曲?」
「そうだよ〜。良い歌でしょ?私、1000回は聞いてるよ、この曲。」
「そっかぁ〜。‥‥‥‥ねぇ、ルビーはさ、ママの記憶、戻って欲しいって思う?」
「え?‥うーーん。そりゃあ、うん。思わない訳じゃないよ。私達が生まれてから3年間の記憶も、大事な、大事な思い出だし、ママにとっては人生の19年間っていう自分自身の世界がまるごと消えちゃったみたいな感じなんだし。でもね、それでも、私は今のママも大好きだから。ママ、今頑張ってるでしょ?私達の求めるママをやろうって。記憶が消える前は、どんなだったんだろうって、いっぱい過去の映像見たり、記録を辿ったりして。でもね、それでもね、私、ママがくれる愛情とか好きって言葉とかが、嘘って感じたことはないんだ。だからね、その、記憶とか戻らなくても、ママはママだし。ママが辛くなければ、どっちでもいいかなーって感じ☆」
「‥‥‥‥。そっかぁ〜‥‥うん。そっかぁ‥。」
アイは胸元のルビーを抱き締めると、そのままおでこにキスをしたのだった。
▽▽▽
一方そのころ
みやこさんが料理をしている間、アクアは大門と定期報告を取っていた。
「そういえばアクア、アイさんの記憶は、戻りそうな感じあったか?」
「いや、どーだろな。分からない。アイの記憶さえ戻ってくれれば、誰が俺等の父親で、殺すべきやつが誰なのか、分かるんだけどな。」
「あ~。父親ね〜。本当は記憶なんて無くしてなくて、父親のことを話したくないから、記憶を無くしたフリをしているっていうのは、性格が悪すぎる考えかたか?」
「いや、それは俺も考えなかった訳じゃないが‥。まぁ、無いんじゃないか?あの人、夜な夜な自分の過去の映像とか写真とか文書とか片っ端から見まくって自分にインストールしてるし。もし、それが嘘だったらそんなことやらなくてもいいだろ?それに‥確かに事件前のアイと事件後のアイは、なんか違う気がするんだよ。明らかに、何かを失ってる。それが何なのかはわからないけどな。」
「そうか‥。まぁ、医者の俺としても、あの記憶喪失が嘘には見えないしな。引き続き、なんかあったら連絡するから、そっちもアイさんがなんか思い出したら連絡とかしろよ〜じゃあな〜」
「ああ」
アクアは、通話終了のボタンを押す。アイの記憶は、戻るのか、戻るべきものなのか、
「はぁ‥。まぁ、とりあえず今日は、飯でも食ってねるか〜」
後日談として、この日取られた女装写真を、アクアは一生脅しの道具として使われるのだが、それはまた別の話‥