ロックマンエグゼ世界でエックス的なナビを持ってしまった 作:黒兎可
今回のマップは、エグゼ1と2の中間くらいの想定です
科学省の電脳は、エグゼ3時代とは全然違った。
当たり前って言ったら当たり前なんだけどね。
でもそれにしては本当、構造が全然アレというか……。ちょっとだけ色は付いてるけど、省内の施設に外部のネットワークからのラインが直接伸びていたりして、パスコードだけでそれぞれ管理してるみたいにまばら。
おまけに言えば、電脳がだいぶ複雑に入り組んでいたりして、一目で相当混乱させられるマップだった。
「何か現在位置とかも表示されないし、何なんだろうこれ……」
『……たぶん一部、デンサンタウンの電脳と入り乱れてる気がするよ、ガンくん』
「それは酷いね」
PETを見ても電脳のアドレスが出てこない。例えば「科学省の電脳」とか、そう言う感じのもの。施設内の電脳の整理が遅れてるのは、テレビ局とは違って予算をかけるヒトが居ないからか、お役所仕事的に対応が遅れてるからか。
色々邪推しちゃうけど、とりあえず道なりに進もう。
…………そして進んだ先のマップが見覚え有る所だったりして、ちょっと困った。
ここ、みゆきお姉さん家のところの電脳へ行くルートだよね。本当にデンサンタウンと繋がってるよ。しかも色分けされてないから、どこからどこまで科学省範囲なのかとかわからないし……。
「つまり迷子かな?」
『つまり迷子だね!』
何故か元気に応答するエックスマン。
そんなに僕の表情が微妙になるのが楽しいのだろうか。
とはいえ今は緊急時だから、そういう変な習性を出さないでもらいたいな。
「あんまりやりたくないけど、右手法でも使うかな、エックス……」
『総当たりだね。仕方ないけど――――左手でもいい?』
「どっちでもいいけど。なんでそんな微妙な反発してくるのかな、君は……」
『――――――――』
「そういう時に限ってスマイルだけ寄越されてもさ」
ひたすらこっちが困惑するばかりだけど、とりあえず右手法――――迷路なら、右手側の壁にずっと手を当てて周回していけば、必ずゴールにたどり着ける、と言う原理。
つまり、迷路における総当たり作戦みたいなものなんだ。
それをこの、妙に入り組んだマップに対して行うのって、正直何とかして欲しいんですが…………。
まあいい、仕方ないか。
とりあえず、しばらく周回して見よう。
行き止まり、Uターン。
『これ、多分接続先の電脳とケーブルが断線してるね、ガンくん』
「仕方ないか、次行こう」
行き止まり、Uターン。
『ここはアップデート中なのかな? こっちのカーブに入るとさっきの道まで逆戻しにされそうだ』
「マップ構造いじるまえにせめて色分けして欲しいよね……」
行き止まり、Uターン。
『こっちに行くとみゆきさんの所の電脳にまた行っちゃうね』
「いや明らかに電脳、複雑すぎないかなエックスこれっ!?」
僕の絶叫に、「整理されてないタコ足ケーブル配線の電脳世界の構成なんてこんなものだよ」と笑うエックスマン。
その詳細とか全然わかんないけど、一刻も早いネットワークのアップデートお願いします……。
しばらくそんな感じで迷子というか、アナログマッピングというか、延々とダッシュしていたエックスマン。道中のウィルス遭遇についてはデリートされない程度に適当に戦っておけば大丈夫なので、そこは省略する。
しばらく走ってると、上の電脳(マップに高低差があって、坂道の上、中、下という風に分けられる。エックスマンが下)から名前を呼ばれた。
『エックスー!』
「あれは……」
『――――』
シエルちゃんだ。エックスマンは名前を呼ばず、にこにこスマイルのまま片手をあげる。いやそこは名前呼んでも良いんじゃないかな……? いまいちエックスマンのこういう時の挙動というか、何か投げてるか僕はわからなかった。
彼女は両手をあわせてメガホンのように声を拡散させる。
『連絡を受け取ったので、私が代理で来たわ! エイリアは今、省内で暴走してる人たち相手に色々頑張ってる!』
『――――!』
「いや科学省の省内まで!?」
『ええ! 光博士が「僕が! 僕たちが! 勇者だ!」とか言ってるわ!
それと、どうやら地下の発電エリアに侵入者が向かっているらしいわ! さっきサーバのログを確認してきたの!』
その感じだと光博士に頼るのは厳しいのかな。エイリアさんも電話通信入れてこないとなると、てんてこまいなのかもしれないし。
光博士の暴走っぷりも「どういうことだ」と思うけど、ナビが発電所エリアに向かってる……、たぶんフラッシュマンあたりなんだろうけど、なんでわざわざそんな地下エリアに?
発電エリアってことは、もっとエネルギーチャージとかして、もっと眩しく光り輝きたいとか?
…………何の意味があるんだろう。
『ヘンなこと考えてないで、行くよ! ガンくん!』
「別に変なことは考えてないと思うけど! って、だからどっちに行ったら――――」
『こっちよ! 一旦上がって来て!』
シエルちゃんの言葉に従い、坂道を戻って2段階上の高さまでのぼるエックスマン。
横に揃うとエックスマンの方がちょっと身長が高いな。……改めて見ると、シエルちゃんもちゃんとエグゼナイズされたサイバースーツタイプだし。ただ白衣っぽいピンクのコートとか、スカートタイプあたりがゼロシリーズのイメージを残している。
髪型は結構違うんだけど、それでもゼロのシエルちゃんを連想するデザインになってるな。
まあそれはどうでもいいか。シエルちゃんは僕らに先行しながら上に行った後、時々「LA〜♪」って良い声で歌いながらスキップしてる。研究室のシエルちゃんの感じじゃないから、ひょっとしてこっちもちょっと催眠かかってる……?
『ちなみにエイリアさんって、今どうなってるの?』
『……えっと、オペラ歌手みたいになってるわ。まだ暴走が浅かった頃に、私をギリギリプラグインして……』
うーんカオス。
そしてエイリアさん、シエルちゃんも歌ってたってことは、マーティがセイレーンモチーフっぽいのってそういうところに由来してるのかな。
マーティの場合、歌には特殊効果付きだから対戦だと結構害悪戦法使ってきそうだし。そういう意味ではチャージショットが状態異常デフォルトなシエルちゃんも中々な性能、ここはアルエットちゃんだけは正統派な性能であることに期待したい。
それはそうと、本格的に僕らで事件止めるしかなくなっちゃったのでは? これは……、光博士が言ってた話が嫌に現実味を帯びてくる。
エックスマンが主人公属性のナビを元ネタにしてるから、必然的に僕も巻き込まれ体質みたいな感じになってるとか。
そのうちみゆきお姉さんに占ってもらおうかな……。
道中のウィルスバスティングはエックスマンが対応。チャマッシュ系の敵がなんか結構生えて来てるのは、フラッシュマン戦で使えと言う事なのかな……。ただ生憎、クサムラパネルのチップデータがないのでそこには意味が無かったりする。
今からどうこうするのって無理だし、どうしようかな……。
『エックスバスター!』
まあ、一旦考えるのをやめよう。
ナビと違ってウィルスはエックスバスターの射撃で牽制にあまりならず、当たるやつは当たりに来る。
移動ルーチンに学習が組み込まれていないせいもあるんだろうけど、例えばメットール1とかはそのまま後方とか棒立ち(?)のままエックスバスターの連撃を受けていたりするから、地道に頑張ればチップなしで対応はできる。
その分時間はかかるけど、攻撃が遠距離主体で対応できるっていうのは素晴らしいと思う。ウィルスに近づかなくていいから、怖くないからね。
……メットールとはたまに触れ合いたい気持ちになるから、エグゼ3のウィルス研究室の登場、まだかなーと思ったりはするけど。
「バトルチップ『スプレッドガン』、データスロットイン!」
『――――っ!』
『……何て言うか、本当に息ぴったりなのね』
シエルちゃんに案内されている科学省、またキノコ(直喩)へと攻撃して誘爆。後方にいたキノコも巻き込んで誘爆して、今回はトドメとなった。
ステージとしてはどこに向かってるのか聞けば、どうやら地下発電所へのリンクまで行くことになっている。だからこのまま直進していけば、目的の電脳へのリンクに辿り着くはず。
そして肝心の青白い扉というか電子ゲートというか、そういうのの前で立ち止まるシエルちゃん。
『私が持ってるパスコードで、あっちのリンクまで直接飛べるはずなんだけど……』
「どうしたの?」
『?』
続きを聞くと、どうやらパスコードがすでに解除されているらしい。てっきりここで待っているものだと思っていたらしいけど、それをせずに中に侵入しているとなると……。
「ナビとかプログラム君相手に、何かやらかしてるのかな」
『――――』
『そうだとすると、事件性として相当凶悪なものになりそうなのよね。……ゼロウィルスの被害に関しても、そんなものをセーフティなしで普段から運用できるようにしているのとか』
『――――マーティもアウトじゃない?』
『うん、アウト。セーフティはあったはずなんだけど、解析時に外した状態でって時にかかっちゃったから、少しは酌量してもらえてるみたいだけれどね。
……だからエイリアも相当頑張って、自分の研究をストップしてまで必死に動いてるもの』
どうやら表向きにわからないだけで、エイリアさんもそれなりにペナルティを負ってオフィシャル活動しているらしい。
そういう事情だとわかると少し微妙な心境になっちゃうけど、早い所何とかしないといけないことにかわりはない(メトロだって止まってるし)。
そしてシエルちゃんの後をエックスマン視点でついていくと、その先はこう……、色々想像の外を行くフィールドになっていた。
「…… 一本道だね」
『―― 一本道だね』
『いえ、おかしい! こんなの絶対おかしいわ!』
絶叫して指さすシエルちゃん。多分もともとのここの電脳の構造を知っているからこそのそのリアクションなんだと思うけど、だったらもはや原形がないマップになっているはずだ。
だって本当、延々と一本道が伸びているだけなんだもん。周囲になんか小島みたいにマップの破片とかプログラム君とかが残されていて、電脳内部のマップ改造の無理やりさがよくわかる。
この調子だと相手の目的達成されてるんじゃ……、手元のウッドマン(ナビチップ)を確認して、僕は少し頬が引きつった。
※ ※ ※
『何故だ、何故開かない――――! ここにエレキプログラムがあることは判っているのに!』
一本道となっていた発電所エリアの電脳。多少は行ったり来たりするような構造にはなっていたけど、さっきまでの迷路みたいに難しいマップ構成じゃない。
その最果て、液晶パネルみたいなフィールドの上で、避雷針みたいなものに囲まれた透明のプロテクトに隔離されている、黄色に輝く球形のプログラム。それを前に、フラッシュマンは地団太を踏んでいた。
フラッシュマンの見た目はマイナーチェンジとかもなく、そのままエグゼ3もしくはアニメのフラッシュマンのままだ。顔もバイザー状だし、なんかより電球らしさがデザインに出てる。
『そこまでよ! そこのネットナビ、大人しく投降しなさい!』
『――――!』
右手の手首から先が変形した拳銃型のパラレルショットを構えるシエルちゃんにならい、エックスマンもエックスバスターを構える。
答えろ、そこのネットナビ! と。フラッシュマンは僕らの方を振り向いた。表情はデザイン的に判り辛いけど、両目でこちらを睨んでいるのはわかる。
ただ様子がおかしい。フラッシュマンは、何かを混乱したように左手で頭を押えた。
『…………オレは、何でこんなところに居るんだっ!?』
「えっ?」
『とぼけないで! あなたは多くのナビを催眠にかけ――――』
『それは、間違っていない。ヒプノシス・フラッシュを真の性能を、レイ様がオレを恐れて封印していたと、そう心が抑えられなくなった。それは間違っていない。
なのに――――』
フラッシュマンは、睨みながらも目を大きく開けた。
『何故オレは、この場所にエレキプログラムがあると知っている……!』
「エレキプログラム?」
『――――四属性それぞれに対応した究極プログラムと呼ばれる実行ファイルだよ。噂によると、属性に対応した施設や装置に組み込んで動作補助をさせると、その動作が超高効率に最適化されて、例えば浄水場なら凄い美味しい水になるとか』
「詳しいねエックス」
後、名前がすごいオーソドックスっぽい名称をしてるから、これって多分エグゼ1か2で出てくる単語か何かなんだろう。
混乱しているフラッシュマンに、シエルちゃんは確認するように言葉を重ねる。
『……確かに数カ月前まで、ここにはエレキプログラムがあったわ。ただし、WWWによって奪取され、オリジナルは残っていない。
あそこにあるのはエレキプログラムの過去の処理データと一部の差分バックアップから、光博士が組み直した、いわば発電用エレキプログラムもどきよ。
ナビに組み込んだところで、パワーアップなんて出来る訳はないわ!』
『そんなことは関係ない! オレは、そもそも「エレキプログラムなんて求めてなかった」!』
フラッシュマンのその発言で、驚きと困惑が僕らにもたらされた。
だったら何のためにこんな場所に。僕やエックスマン、シエルちゃんの疑問が出るより先に、フラッシュマンはうずくまった。
『何だ、このログデータ……!? 「ロックマン」! いや違う、オレは、誰だ? エレキ? 誰だこの金持ちのように見えるオペレーターのログは……?』
その発言だけ聞くとロックマンと相対したことのあるナビが思い出しているようだけど、それは何もかもがおかしい。
そもそもフラッシュマンは3までロックマンたちと面識はないはずだし、西古レイのことをレイ様なんで呼んでいる以上、その金持ちみたいなオペレーターは別人のはずだ。
なんならエレキ、とその金持ち、ってフレーズで、頭の中にはアニメのロックマンエグゼに出てきてたエレキ伯爵とエレキマンの姿が思い起こせる。
おそらくエグゼ1に出て来た人たちなんだろうと思うから、そのログというのはエレキマンの記憶とか、そんなデータなのかな?
ただ、それをフラッシュマンが発言しているのが、何もかもおかしい。
苦しむようにうめくフラッシュマン。シエルちゃんが「いけない」とパラレルシュートのチャージを始めた。
『ゼロウィルスによるデータのハッキング……? ナビの感情データの暴走だけじゃなかったの? こ、こんな時にエイリアはアリアなんて歌ってるし……!?』
「えっと、どういうこと!」
『リアルタイムに、あのネットナビの内部にリモートコントロールするための別なプログラムが組みあがって、それが動作してるってことなの! つまり……』
フラッシュマンの状況がいまいちわからないけど、警戒の意味も込めてエックスバスターをこっちもチャージしておく。
と、突然フラッシュマンの頭部が強く発光――――眩しい!? 思わずPETの画面を閉じてしまった。音声はオフにせずスリープしてないから、PETから断続的に強い光が漏れている。
「二人とも、大丈夫!?」
エックスマンの視界を共有してるから無事なことはわかってるけど、流石に画面を閉じてまで判るのはおかしいので、口頭で確認した。
エックスマンは適当な「うん!」というか「おう!」というか微妙な生返事、シエルちゃんは「大丈夫!」と元気いっぱいの回答だ。
『――――ほう、このフラッシュマンの「ヒプノシス・フラッシュ」を前にPETを閉じたか。判断が早い』
エックスマンの視界越しで見るフラッシュマンは、自然体に腕を構えたポーズだ。あれはエグゼ3での立ち姿、既にバトルモーション直前の恰好…………。
と、それだけ言った後にフラッシュマンは「ぎ、ググ……グ……」みたいな声を出して、直後に電子音のビープが流れる。PETが故障したとかじゃなくて、これはナビのカスタムとかに失敗した時のエラー音だ。
『パラレルショット!』
シエルちゃんがショットを放つ。今回は火属性だった。ただその射撃の瞬間、フラッシュマンの頭部がまた強烈に光る。
そのせいで照準がぶれたのか、横に回避するフラッシュマンの動きとずれて射撃。銃から放たれた橙っぽい色をしたサイバーエルフ的な何かが空ぶり、そのままシエルちゃんの周囲に戻ってきた。
『……ぜ、ゼロ、ロロロ……ウィルス…………』
ガクガクと感電したみたいに震えるフラッシュマン。いや、感電と言うよりちょっとゾンビとかマリオネットめいてる。それが落ち着くと、フラッシュマンはまた素立ちみたいなファイティングポーズの姿勢をとって、頭部が断続的に発光している。あれは……?
『まずい、たぶんアレの光は催眠だ……! ガンくん、PET開けたら駄目だよ、ガンくんまでおかしくなっちゃったら打つ手無くなるから!』
「打つ手無くなるって、ちょっとエックス!? このままだとバトルチップもスロットインできないんだけど!」
『――――ゼロウィルスを嗅ぎまわるネットナビは、デリート、デリートする』
フッフッフと笑いながら一瞬でこちらまで距離を詰めたフラッシュマン。そのまま腕を振り上げて、電気エネルギー的なものを掌にためてる。
その動きは見覚えがあったので、僕とエックスマンはシエルちゃんを抱えて後方に飛んだ。
前方、放射状に電気が放たれ、地面へと漏電する――――ギリギリ、僕たちのほんの目の前まで浸食するその電気。
『あ、えっと、その…………』
『――――』
「シエルちゃんは下がって。本当に僕らに万一あったときに、状況を外部に説明する人もいるよね!」
『それは……、はい…………』
僕とエックスマンの言葉を受けて、シエルちゃんは無力感をかみしめる様に後ずさる。その表情はゼロシリーズで、ゼロ一人に戦いの負担を負わせている時のシエルちゃんみたいで、なんだか変な気分になった。
ただ、そんなことも言ってられない。
『デリート、デリート…………、ロックマン』
「エックスマンなんだけどなぁ……。ま、仕方ないかな、よくわからないけど。
行くよ、エックスマン! バトルオペレーション、セット――――」
『――――イン!』
フラッシュマンZ、HPは350。
数値的には一般ナビ的にまあまあって感じだけど…………、それはそうとして頭部は相変わらず光ってるので、ひょっとしなくても僕とエックスマン、バトルチップ縛りになるのかなこれ。
【おまけ:今日のみゆきさん】
「――――――――ももももももももももももももももももも」
『コシュー……、コシュー……! 止めろ貴様、仮にも我がオペレーターとなった女が何故そんな、最近ペット人気の高いタイリクモモンガみたいなことをしている!
大体どうやって空を飛んでいる貴様、滑空じゃなくて飛行しているだろ! 推進力はどこから捻出しているのだ! コシュー……、コシュー…………!? ゲホッゲホッ』
デンサンタウンの一区画。人間動物園のような有様と化したそのエリアで、紫色のマントを手と足に繋いで、空を自由自在に飛行する女性の姿があったそうな。
次回、縛り強要フラッシュマン戦