ロックマンエグゼ世界でエックス的なナビを持ってしまった 作:黒兎可
済みません、ターボマン登場まで行けなかった…展開的にはそろそろなんですが汗
「いいか! お前なんか俺が絶対倒してやるからな! 覚えておけよ鐘引ガンサイ!」
『いや、倒すって言っても戦うのオレだろ』
「黙れダメナビ!」
『なんだとダメオペ!』
放課後、教室の前にわざわざやってきた新垣君は、僕とエックスマンに宣戦布告するようにしながら持ちナビとイチャイチャしてた。
いや、まあケンカするほど仲が良いって言うし、イチャイチャしてたって冗談交じりに表現したくなる気持ちも判って欲しいんだ。
それはそうとクラスの女の子たちが外に出れなかったりするから、どうどうと仲裁しつつ彼を教室に引っ張り込む。部屋が騒がしくなる分には大丈夫だろうし、ということで。
女の子たちだけじゃなくてサッカー部の子とかも急いで走って行ったのを見て、ちょっとバツが悪そうになる新垣君だった。うーん、こういう所を見るとそこまで悪い子とかじゃないよね。
「まあ、とりあえず落ち着いて……」
「岩のくせにウルせぇんだよ!」
「い、いわ……、そんな、古典の厄ネタとかじゃないんだから」
「やくねた?」
「あー、まあそういうのがあるんだよ。お皿数える奴」
それはそうと、ネットバトルするなら断る必要もないよ? と言う話を新垣君にした。
「流石に毎日とかは無理だけど、都合が付けばいいよ」
「えっ? な、なんかやけに簡単に応じるな」
「クラス違うけど、そんなに気にする話でもないでしょ。まあ皆小学生だし、経験積んどいたほうがウィルスバスティングとかも安全にできるようになるだろうし」
「…………」
「新垣君?」
「こ、これで勝ったと思うなよ! 岩! 今度は手加減してやんねーからな! 絶対だからな!」
そんなことを言いながら、慌てたように教室を去っていく新垣君。
いや、だからその呼び方……。たぶん僕の下の名前、ガンサイ(岩砕)を馬鹿にしてのその呼び方なんだろうけど、どっちかというと岩砕くからドリルとかの方が正解なんじゃないかな、と個人的に思ったり。
まあドリルマン(エグゼ3に出てくる)とか全然縁がないけど、僕ら。あっち確か新
『友達出来て良かったんじゃない? ガンくん』
「友達? 友達……、うん、まあ友達、なのかな?」
『そういうところでちゃんと言わないから、ガンくんはぼっちなんだよ』
「こらこら」
ニコニコ笑いながらまるで実の兄が弟の交友関係を見てるような生温かい目を向けて来て、同時に煽ってくるエックス。いつものようにチョップをして、僕も校舎を出ることにした。
そして少し歩いた先、駅前付近で名人がツナギ姿の男の子に泣きつかれている姿を目撃した。
「め゛い゛じ゛ん゛さ゛~~~~~~~~ん゛!? ぼ゛く゛の゛、タ゛ーボ゛マ゛ン゛た゛す゛け゛て゛~~~~~~~~!!?」
「さんは要らない! いやそういうことではなく、一応オフィシャル資格も持っているとは言えど私は本職研究者なんだ! 放したまえっ!」
何をやってるんだろうとツッコミ入れるのは野暮かな?
名人さんは名人さんで「このキャラ付けのせいで見捨てるに見捨てられない……!」とかなんかアレなこと言っちゃってるし。そもそも科学省の広報みたいなことをやってるからあのヒーローっぽい? エージェント的な振る舞いなだけであって、こっちの名人さん素は結構普通の二十代のお兄さんって感じなのかな……。
とりあえず声をかけてみると、「どわァ!? びっくりしたぁ!」と名人、キャラ崩壊レベルのオーバーリアクションと大声だった。
「ガンサイ君だったね。どうしたんだい?」
「それはこっちの台詞というか、名人さん、その子は一体……?」
「“さん”は要らない。
あー、彼は…………」
「ボクの……、ボクのターボマンを助けてーッ!」
涙目で名人の腰にしがみ付いている男の子は、僕のプレイ記録(記憶)的には見覚えはないんだけど、それでもどこかで見たことのある顔をしてる。小学二、三年生くらい? の身長とかで、見覚えがある。
見覚えが…………、ツナギ……、あっ。
「F1カーの子? 科学省の時の」
『だね、ガンくん』
うおォン、僕はまるで人間発動機だ……! みたいなこと言って、びゅーん! びゅーん! って効果音を声に出して走っていた子だ。西古レイの手でなんか気絶させられた一人だったのを覚えているような、覚えていないような。当然向こうはこっちの事なんて知らないから「誰?」って聞いてくる。
とりあえずPET画面を向けながら、先に自己紹介。
「僕はガンサイ。鐘引ガンサイ。こっちはナビのエックスマン」
『ヨロシクー』
「ろ、ロックマンさん!?」
その男の子の素っ頓狂な声に「ゲゲェ!?」と一瞬顔をしかめそうになった。うっそ、この子ってば光熱斗の知り合いっ!!? 硬直した僕とエックスマンを前に泣き止んだ彼は「スゲー! 熱斗シショーと関係あるの? ねえねえ!」と名人から離れて僕に迫ってくる。その様子を見てなんとなく察した、アニメとかで見覚えがないってことはこの子、きっと熱斗君の弟子とかじゃなくってファンか何かだな?
とはいえ事情の説明が面倒くさいので、少し適当に濁さないとかな……。
「一応、同時期に作られたって聞いてるかな。えっと、そっちの人は名前だけ僕が知ってるってくらい。知り合いじゃないよ」
「なんだー」
『――――――――』
チャットこそ出さなかったけど、あきらかに「つまんないの!」と言いたげな男の子にエックスマンがちょっとイラついてる笑顔してる。とりあえずチャット越しに罵詈雑言を放たれる前にPETを閉じてしまい「それで君は?」と問い直した。
「ボクは
おぉー、と、とりあえず相槌を打ってみたけど、あっちとは面識がないのであまり感じ入ったようなリアクションはとらないでおこう。
自己紹介もほどほどに、詳細を聞いてみる。ターボマンと言う名前は憶えがある。あのF1カーみたいな形をして科学省の電脳に侵入してたネットナビだ。現在才葉シティの電脳、メインストリートを爆走してるゼロウィルス暴走族(?)の一体だ。
そんなターボマンの名前を出すと、また彼は泣き出してしまった。会話にならない……。
「あー、私が説明しよう。一応聞いてはいるからな」
「名人?」
PETを操作してメールを1通開いた名人は、それを僕の側に見せて来る。見出しは「防波堤作戦第四弾・またまた失敗! 今後の対策は……」というもの。
「まあこの通り、昨日オフィシャルが実行したネットワーク上にバリケードを張り暴走するナビたちを一網打尽に捕まえようとしていた作戦が、完全に失敗した。今まで徐々に徐々にバリケードの強度や性能などを引き上げていっていたが、今回が『現在の技術的な限界』だったらしい。これ以上の強度は持たせられないと来ている。
加えて、一部のネットナビがゼロウィルスへと感染した」
「まあ何度も何度も間近で接近すればリスク上がりますよね……」
絵面としてはテレビアニメ初期みたいなトンチキ騒ぎじみたものだけど、実際問題真面目に考えると大変な騒ぎってことらしい。そう言う意味ではこの間のトンチキ騒ぎの時と一緒だ。実際メインストリートで暴走されているせいで、才葉シティの通信関係がほぼ停止しているという意味で厄介極まりないんだ。
……ちなみに事件後、みゆきお姉さんの家を訪ねたら、全身筋肉痛になりながら出迎えてくれたのは記憶に新しい。どうやら彼女も催眠にかかっていたらしく、とんでもないレベルで身体を酷使したようだった。
「そこで上層部の会議結果、やむなく暴走しているネットナビをデリートすることになった。現状だと回収が困難、PETでの確保をしようにも『活動停止状態』ですら暴走を始めようとしたという記録がある。つまり現状、対策が打てないんだ」
「それはそれは…………」
「その話を親御さん経由でされたらしくてね。学校を休んではるばるデンサンシティから私を追ってこっちまで来たらしい」
「いや、学校はいかないと駄目だよ快太君」
「で! でも、ターボマンのことの方が大事なんだ!」
気持ちはわかるけど学校の授業の方が優先度が高いんじゃないかなと思ってしまうあたり、やっぱり僕はこの世界の住人にはなり切れていないってことなんだろう。エックスマンは特に何も言わず、PETの中で静かにしていた。
「…………で、何で名人に?」
「さっきも言ったが、一応オフィシャル資格は持っているからね。メディアでそれを知って、失意の中たまたま私を見かけて着いてきてしまったらしい。
とはいえバトルの腕はともかく、常時あちらの仕事をメインにしている訳じゃなからな。いきなり電撃参戦しても邪魔になるだけだ。
それに、これでも研究者ないしプログラマーなものでね。今日もそっちの仕事がメインで才葉シティまで来たんだ」
「「プログラマー?」」
僕と快太君の疑問に、名人は「嗚呼そうさ!」と腕を組んで得意げにポーズを決めた。眼鏡がキラリと光る。
「君たちが良く知る緑のプログラム君。現行世代1つ前から、その対話型インターフェイスは私が作り上げたものだ。今回もその関係の仕事になる」
「えっと、どういうこと?」
「…………つまり、プログラム君の台詞とか全部名人さんが作ってるってことだよ!?」
「ホント!? えっ、それ凄いよ名人さん!」
「名人さん!」
「“さん”は要らないッ!」
「「名人!」」
「よし!」
『何なんだろうね、これ……』
『小芝居に付き合わせてしまって済まないな、エックス……』
僕の腰と名人の腰で、エックスマンとバンチョーマンが疲れた声でお互い慰め合っていた。
それはそうとして、話を戻して。……いや、あのプログラム君って光博士が作ったーみたいな話を何かで見た覚えはあったんだけど、そうか、光博士の後輩にあたるわけだから、そういうコーディング? とかも名人がやってて不思議はないんだよね……。
ちょっと意外な世界の裏側みたいなのを見た気分だ。
「でも名人、快太君このまま放置するのも忍びないでしょ?」
「名人さああああああん…………!」
「“さん”は要らない。いや、だがそうだなぁ……。私個人の力でどうこう出来る訳では無いんだが、そうだな」
涙目の快太君から目を逸らし、名人がキラリと僕を見る。あら、なんか嫌な予感。
「…………ナビのメインフレームの回収ができずとも、データログさえ残っていればバックアップからでも『ほぼ』同様のネットナビを復元できる、かもしれない。このあたりの再生技術的な部分は、色々と興味深い所はあるのだが、それは一旦置いておいてだ。
抜本的に全てのナビを捕獲することは難しい以上、何かしら動けなくする方法があればなぁ……」
「動けなく……? だったら、マシン状態からナビ状態になればいけます?」
えっ? と、僕と名人が同時に快太君を見る。きょとんとした顔で、彼は人型のなんか格好良いナビ……、多分ターボマンと思われるナビチップを見せていた。
「これでターボマン、マシンモードとナビモードの切り替えが出来ますけど」
「えっ? うっそ、凄いこのデザイン格好良いんだけど。変形するんだ、アルゴリズムどうやって組んでるんだろう。市販されてないよな……、自作?」
「いや、ナビボディはお父さんのお古ちょっといじったやつで、システムはコンセプトだけ伝えてオーダーメイドで作ってもらって……、こういうの詳しいの? ガンサイさん」
「そこそこかな。僕もナビのカスタムパーツ作ったりして――――」
「――――って、それじゃないかッ!」
「「わっ!」」
名人が地団太踏むみたいなポーズして声を張り上げた。「それもっと早く言わないと駄目だよ!」となんかテンション上がってる。
「ナビの対処は暴走している時点で走行が止まらないってところに問題があるんだ。つまり、ターボマンを始め変形機構を有しているナビなら、プラグアウト射程に入っていれば変形することで、活動停止状態での疾走を止めることが出来るかもしれないってことだ」
「えっ? じゃあ…………、ボクのターボマンは?」
「連絡は私がする。君以外にも、オフィシャルにオペレーターが協力すれば状況が好転するかもしれない」
そこまで行けばあとはネットバトルの腕だけだ! と肩をブンブン振り回す名人。元気になる快太君を見て、話しはまとまったかなーとその場を後にしようとすると、がしりと肩を後ろから掴まれた。指抜きグローブで誰だかよくわかる。
「……何で引き留めたんです? 名人」
「此処まで来てハイサヨウナラは、流石に人情味がないだろうガンサイ君」
眼鏡がゲーム漫画アニメの通りに光ってて視線は見えないが、なんだかエックスマンが僕を揶揄ってる時みたいな大層いい性格をしてそうな顔をしてるのはなんとなくわかる。
「いや、人情とか言われても……、僕も用事があるんですが――――」
「この調子だと流石に私も、快太君をオフィシャル対策チームに一人で向かわせるわけにもいかないからね。マリンハーバーではなくこっちの科学省研究室近くに臨時対策本部があるから、そっちに行ってエイリアさんと話をつけたい」
色々情報がわっと話されたけど、それよりもエイリアさんへの名人の呼び方がエイリア「さん」? さん? ……えっ? ちょっと待って、ひょっとして名人よりエイリアさんの方が年上!? 嘘でしょっ!!? いくらエイリアさんがちょっと子供っぽい性格してる割には大人だからといって、いや流石にそこまでは……。
いや、そうでないにしても科学省的には絶対先輩か、あの人。十三歳入省とか言ってたっけ。普段の言動がちょっとポンコツっぽいせいもあるけど、よくよく考えてみると思い当たった事実で、勝手に呆然だった。
「どうしたんだい? ガンサイ君」
「大丈夫? ガンサイさん」
「あー、なんでもないです。ちょっと衝撃を受けただけです」
「なら続けるが。君の目的地も、この後に鐘引博士の所に行くことだろう。つまり才葉シティの研究所だから、場所としてはそう離れていない。一緒に来てもらえると何かと好都合なんだが」
「何が?」
「……………………遅刻原因の証言者的な意味でな。どちらにせよ残業はもはや不可避だ」
「あ~ ……」
快太君はいまいちよくわかってなさそうだけど、なんとなく名人の言ってることは理解できるので同情した。
【作者メモ】
・「“さん”は要らない!」:こっちの世界でも有名な名人のフレーズ。名人本人もノリノリでやってくれる。
・プログラム君の台詞は名人さん作:エグゼ3まで現実の江口名人が拘って担当していたという話が元ネタ。プログラム君自体はパパさんが作ってるので、本作はエグゼ1~3時期のプログラム君のインターフェイス担当ということになってる。
・江口名人とエイリア:ガンサイの予想通り、名人の方が2つ年下(大学在学中に入省)。
なおお忘れかもしれないが本作ヒロイン、科学省歴はあれで10年である。