ロックマンエグゼ世界でエックス的なナビを持ってしまった   作:黒兎可

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時系列は現在、トランスミッションの頃になってます。


第2話「リョーカイだ、みゆき」

 

 

 

 

 

 自宅のウィルスバスティングも、手慣れていると言えば手慣れているけれども、あのレベルの被害は中々起こるものではなかった。まあ幸い? エックスマンのログを見せて、母さんたちには悪戯とか僕の失敗でああなったわけではないと納得してもらった。

 ただそれはそうとして、少し気掛かりなことがあると父さんはマシンのシステムログへとプラグインして調査を始めてた。

 

 そしてその日の夜、母さんがキッチンで夕食を作ってる途中、父さんはリビングで電話をしていた。PET越しに聞こえる電話の相手は、

 

「つまり、ウィルス散布にはネットナビが関わっていると?」

『詳しいことは断定できませんが、その可能性も高いかと。ウチの息子も、知り合いのネットナビが暴走していたんですが、その時周囲のウィルスが普段より殺気立っていたと言っています。自慢じゃありませんが、息子もネットバトラーとして腕は良いので、その感覚は信用しても良いかと』

「確かにウチのアクセスログには、明らかに公的な権限でのパスコード無視によるリンク接続がありましたが、そうなるとつまり……?」

『ええ。オフィシャルのネットナビにも、感染者がいる可能性が高い』

 

 電話に集中しすぎているせいか、僕が通ったことに気づいていない父さん。でもその電話の内容は、ちょっとギョッとしてしまうような話だった。

 話の仔細はわからないけど、オフィシャルのナビが何かに感染。……たぶん例のゼロウィルス関係なんだろうとは想像がつく。

 

 だからこそ、そのゼロウィルスがオフィシャルのナビについてるというのが問題だ。

 

 オフィシャルはオフィシャルバトルオペレーター、オフィシャルウィルスバスティングオペレーターの略称で、要は警察にも協力依頼が来る民間のネットバトラーだ。

 主にインターネット世界における市政の目であり、警察の目のようなものでもある。

 

 市民ネットバトラーからランクを上げることでオフィシャルネットバトラーへと昇進できるのだけれど、玉石混淆。要するに至難の業だし、つまりオフィシャルのナビは強い。

 そんなナビがゼロウィルスに感染して…………、となると、危険であると同時にかなり高い確率で、嫌な予感がする。

 

 あれ? これって何か、ひょっとしてスピンオフか何かのゲームの話…………?

 いやいや、全然知らないけどさ。昨日から色々続いててメンタルが色々ギリギリだ。

 

「とりあえず外食したい……。気分転換したい」

『――――』

 

 だったらここに行けば? と、エックスマンがチャットで地図情報を出してくれる。

 こういう風に空気読んでくれるところは有難いけど、「なんでもかんでも味噌入れる文化は疲れるよね」とか現地民を盛大にディスり始めるのは止めようか。今、僕だって才葉シティ人なんだし近いんだよ味噌タイプ聖地さぁ……。(名古屋)

 

 そして駅前のラーメン屋で塩ラーメンとミニカレーのセットを頼んだ。

 ま、まぁ別に味噌ラーメンが嫌いって訳じゃないけど、そこはこう……、ね? 美味しけど毎日お味噌味だと飽きちゃうし、僕。

 

 なんかインドの人みたいな綺麗なお姉さんが「はいよ!」ってカウンターに持ってきてくれた。アルバイトさんかな? って、あー、ちゃんと美味しそうなカレー ……。ラーメンよりカレーに目が行っちゃうのは僕のイメージがステレオタイプだからか。

 いや? まだエグゼ発売してた時代はそこ煩く言われる前だったし、こういう偏見持っても失礼じゃないよね、うん。

 

 とはいえ味についてはとびぬけて美味しいとか変わってると言う訳ではなく、ラーメン屋さんのカレーと言われて納得できる感じの味だ。

 そこは独自色を出さずしっかりお店の味をやってると考えると、好感が持てる。

 

 そんなことを考えながら食べていると、一つ席を開けた隣のカウンターに座った女性に思わず噴き出しかけた。

 

「――――にんにくラーメン、チャーシュー抜き」

 

 名前全然覚えてないけど、凄い見覚えのある美人(美少女?)さんだった。黒と紫の恰好で、ナビマークが髑髏っぽい。スカルマンだったっけ、骨っぽいネットナビのオペレーターさん。

 デンサンシティ在住だと思ったけど、何でここに……?

 

 なんだか綾波〇イみたいな注文をして、でもニンニクラーメンがないと店主さんに言われて愕然とした表情をしていた。……物静かなタイプに見えるけど、結構お茶目さんなのかな? ラーメン屋なら絶対あると思ってたのに、とかつぶやいてるし。

 と、ちらりとこちらの方を見て、僕の手元のラーメンとカレーを見て、ラーメンじゃなくカレー大盛を頼んでいたのは中々謎だった。

 

「あっ美味しい……」

 

 それは良かったですね、と。声だけ聞きながら微笑んでしまいそうになるのを、ラーメンを啜って誤魔化した。

 

 

 

 

 ちょうどそんなタイミングで、厨房が火を噴いた。文字通り。

 

 

 

 

「うぉわちゃあああああああああ!?」

「店長ォー!」

 

 嗚呼、インド人のお姉さんが、ギリギリ厨房の火器が噴いている炎を躱してるのに絶叫あげてる……。

 というかその熱気がこっちにも伝わって来て色々と悲しいものが……、って熱い!?

 

 見上げると、上部のスプリンクラーからも火が出てる。火が出て回転してる。いやどういうことだよ!? どう考えてもスプリンクラーって水出す装置で合って、仮に何か暴走しても火は出ないでしょ!!?

 

『――――』

「ちょ、ちょっと待って」

 

 幸い後はラーメンが半分くらい残ってるだけなので、勢いよく掻っ込む僕。いまいち危機感がないと言われそうだけど、せっかくウィルスバスティングで貯めたなけなしのお小遣い(ミステリーデータからのドロップも渋いのだ)なので、無駄遣いするつもりはない。

 と、スープを無理やり飲み干していると、背後からひょいっと持ち上げられだっこされた。

 

 驚いて丼をおろし、後ろを見ると。一つ隣の席でカレーを食べていた彼女だった。

 

「ここから出るから、置いて?」

「えっ、あーハイ」

 

 咄嗟の事で混乱したのもあったけど、彼女の指示通りに丼と箸をおく。

 彼女はそれを見て無表情に首肯すると、僕を抱えて表に出た。

 

 見れば近隣の飲食店も皆、人が出てあーだこーだと悲鳴を上げている。どこも火が、とか炎が、とか。……なんかサラリーマン風のおじさんの頭が大変酷いことになってるけど「せっかく新調したカツラが……」とか呻いていて、なんというか、ご愁傷さまです。

 

 抱っこして連行した僕を下ろした彼女は、中華料理屋から店主たちが出て来るのを確認してから周囲を見渡した。

 

「一店舗だけではなく周辺店舗にも、か。…………」

「お、お姉さん? 逃げないの、皆みたいに」

「食い逃げになっちゃうから。支払いする前だと」

 

 この状況でその妙な返答は、やっぱり変なところでお茶目さんな感じだった。無表情クールキャラとのギャップが可愛らしい。ただ「それに……」と彼女は言葉を続ける。

 

「この後お仕事の予定だったから、潰されるのは困るもの。私、一応、市民ネットバトラーのBランクだから」

「あー、なるほど」

 

 オフィシャルとは別に、その前段階として。大きな権限こそないけど一般市民でもネットバトルやウィルスバスティングで、大掛かりな事件の解決に奔走して良い資格というのがあったりする。

 どうやら一応、彼女はその資格を持っているらしい。

 

 自分のPETを確認して、ここで待っていてと僕に言って走っていく彼女。そんな彼女の背中を見送りながら、何となく心配になる僕。

 

「……アニメにはいたけど、3には出てこなかったよね。あの人」

『……?」

 

 つまり、続編に出てこない程度には実力が低いのでは? という疑惑を抱いていた。いかに市民ネットバトラーとは言え、ちょっと実力に心配がある彼女を一人で送り出すのはどうなのだろう、みたいな。そんな感想だ。

 だからと言って僕が強いというわけでも何でもないので、どうするかという話はあるのだけど。

 

 ただそれでも言えることがあるとするなら、僕のエックスマンは「ナビ性能としては」相当優秀な部類に入るはずだ。単なるカスタムタイプのナビじゃない。

 何せベースがロックマンなんだ。ロックマンをロックマンたらしめる特殊な何かが例えなくても、基本的に「使用出来るチップに制限がない」このエックスマンは、汎用性という意味でトップクラスのはず。

 メインで戦わないにしても、サポートなら何かできるのではないか、と。まだ火事になってないお店に走っていく彼女の後を追い、僕もお店に入った。

 

 僕を一瞥すると「やっぱり来たね」と、まるでこっちが後を追うことを予想していたみたいな一言。

 そのまま特に僕に帰れということもなく、火のついてないキッチンの三つ並んだ端子が露出してる前面に、一歩隣にズレてスペースを開けてくれた。

 

 隣に並ぶ僕とお姉さんは、それぞれ少し距離を空けて。

 

「プラグイン。……スカルマン・トランスミッション」

「プラグイン! エックスマン・トランスミッション!」

 

 ポーズに口上、これはもうお約束なので恥ずかしくない。ないったらない。

 

 ただアクセス先に出現するスカルマンと、その横に並んだエックスマンを見て「ロックマン……?」と、物凄い驚いた顔はしていた。その様子を見る限り、ちゃんと主人公側との面識はあるようで、それはそれで謎の安心感があった。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

「何だ、これ」

「ネットナビ、ね」

『――――』

『いや、みゆき。ボク、彼そういうこと聞いてるんじゃないと思うんダ』

 

 そんなことを言う骨っぽいネットナビ(声もなんだかちょっと細い)。全体的にその声の印象通りに細長い姿をしているけど、登場時から周囲のウィルスに腕を取り外してブーメランのように投げたりとかなりトリッキーな戦い方をしていた。

 お店のコンロの電脳から店の電脳、街路の電脳空間まで出た時点で、その際にも大量のウィルスが出ていたのは間違いない。

 

 でもそれより気になったのは、それらのウィルスたちの中心にいたネットナビ――――金髪のツリ目な、耳に水かきというかヒレというか、二足歩行だけどなんとなく人魚っぽさを思わせるデザインをしている。

 そんなネットナビの周囲を、エックスマン達に気付いたらしいウィルス(なんかヒーターというかバーナーっぽい?)とかが囲み始めて、すぐさま手出しはしづらい状況……。

 

 とはいえアナライズするくらいなら関係ない。

 

「エックス!」

『――――エックスバスターッ!』

 

 すぐさま腕を構えて銃撃するエックスマン。威力的にはそこまで高くないエックスバスターだけど、チャージショットには地味に貫通効果がある。貫通というよりは通過と言うか、弾丸が大きい分ぶち当たってもエネルギーの余剰分が後ろの敵に漏れて当たっているという感じなんだけど。

 でも、これのお陰で相手の注意をこちらに引くことが出来る。

 

 アナライズ結果は……、マーティ? 知らない名前ですね。3とかゼロシリーズの方でも名前は聞かないし、テレビ版にも出て来てないから一般系のナビなのかな。

 HPは…… 540 !? おいおいブルースとかじゃないんだから。

 というかそのHPの数値、どう考えてもボス戦とかの数値なんですよね。

 

「……私のスカルマンのHPは今200だから。この間のネットワークアップデートでHPメモリの性能比が下がったから」

「へ? あ、はい」

 

 そして思ったよりもこっちのHPは低かった。

 とりあえずウィルスはボルケルギアと、あと見覚えのあるカブタンク。球体に何か足みたいなのが付いてて先端にカブトムシの角みたいな大砲がついてるの。

 

「えっと、とりあえずきんちゃく袋……」

『――――遅いよガンくん』

「スカルマン。……『オニビⅠ』、スロットイン」

『リョーカイだ、みゆき』

 

 僕がバトルチップを選んでいる間に、スカルマンが口を開いて青い炎を吐きだした。速度は遅め。だけど周囲のウィルスが徐々に徐々に一掃されているので、威力はそこそこ高いと思われる。たぶんソードくらいの威力はあるのかな……?

 そのままチャージショット扱いなのか、両腕をはずして回転、ブーメランみたいに飛ばしている。僕と違い掛け声はなかったけど、それで一部のウィルスの動きを抑制して、あのマーティってネットナビまでの道を開き。

 

『もらった! みゆき――――』

「……『シャレコーベイⅠ』、スロットイン」

 

 両腕もなくまたオニビを放つのかと思ったら、今度は首から上が一瞬消える。

 流石に状況がおかしいことに気付いたらしいマーティというネットナビは、エックスマン達を見るけど、その時には既に頭上に巨大化したスカルマンの頭部が。

 

「これで、終わり――――」

 

 

 

『その見た目で電脳のナイト様気取りは無理だよ――――La~♪』

 

 

 

 マーティというネットナビは、その場で突然歌い出した。

 次の瞬間、落下途中だったスカルマンの頭部が空中で停止する。

 

 隣の彼女も驚いた顔をする。と、スカルマンの頭部が小さくなり元の胴体に戻り、放たれた両腕もスカルマンに接続される。

 

 うぅ、うぅ、と。スカルマンが両手で頭を抱えて唸り始めた…………? 展開的にこれって、何だろう。洗脳とかされてそうな動きというか。その僕の予想は、マーティ本人が腕を組んで笑って肯定した。

 

『ムダよ。アタイの歌を聴いたものは、誰であろうとアタイに逆らえないの。それこそデリートするか、行動不能にするかしないとね!』

 

「スカルマンの制御が、効かない……? ッ、プラグアウトできない」

「マジ大変じゃないですかっ!? って、エックス――――!」

 

 瞬間、スカルマンが口からオニビを放った。速度自体は直線的なので、エックスマンの動きで対応できない訳じゃない。なんなら「視界が共有されてるので」、こういう指示のタイミングについては他のオペレーターよりもちょっと早いって自負すらある。

 

 だからこそわかる。あれは、確実にこちらをデリートしようとしていた動きだと。

 

 …………ついでに何か目が青白くギラギラ光ってるので、もうこれ完全に洗脳されて戦闘モードだよね。

 両腕をはずしてブーメランみたいに振り回し、周囲の電脳本体やら、逃げまどってる周囲のプログラムくんを攻撃したりデリートしたりしていたり。

 

「スカルマン……」

「お姉さん…………」

 

 自分のネットナビが破壊活動をしている状況に、目を見開いて硬直しているお姉さんだったけど。すぐさま隣の僕を見て、少し頭を下げた。

 

「ごめんなさい。……貴方のような『割れた魂』に、こんなことを頼むのも酷だけれど、お願い。私のスカルマンを、止めて…………!」

「…………」

 

 割れた魂とか何ですかね、というのとは別に。これは……、いや、まあ確かに今後彼女の出番がシリーズ的にはないような気はするんだけど。一般的にこのまま破壊活動を続けられるのも拙いし、何より目の前でこうなっているのを見捨てるのも目覚めが悪い。

 

 エックスマンの方を見ると、彼もこちらの画面を一瞥して首肯してくれた。

 エックスバスターで射撃し、スカルマンの注意をこちらに引きアナライズ。

 

 スカルマンZ、HP400。隣の彼女の申告の倍か…………。

 

「バトルチップの持ち合わせ的に厳しいかもしれないけど、まぁ何とか出来るよな、エックス!」

『……誰に聞いてるんだい? というよりも、隣の彼女にフォルダを借りたらいいんじゃない?』

「使い慣れてない他人のフォルダを借りるのはまずいでしょ。僕らお金ないから『電子フォルダ』じゃなくて『物理フォルダ』なわけだし。まあ…………、デリートだけはしないように頑張ろう。

 エックスマン! バトルオペレーション、セット――――」

『――――イン!』

 

 これがゲームだったら画面がくしゃって歪みながら光ってSEが鳴って横移動のアクションモード画面とかになったりするんだろうけど、特にそういう事にならないのはまぁご愛敬ということで。

 

 …………ただ実質、ゲームでいう初期フォルダで本当にこのスカルマンを倒せるのかどうか。

 

 とりあえず、こっちもデリートだけはされないように注意しながら戦おうと、僕はきんちゃく袋(手持ちフォルダ)から五枚、バトルチップを取り出して構えた。

 

 

 

 

 


・名前:鐘引(かねびき)ガンサイ(主人公)

・外見:ロックマンDASHのロックをメットオフして子供にしたイメージ。

・年齢:11 歳

・身長:150 ㎝

・家族構成:父、母

・特徴:友達がほぼいないせいもあって、空気があまり読めない。エックスマン程ではないが、クラスとかだと無口な方

・特技:3DCG制作。ナビカスタム用の素材などを自作できる。エックスマンはそれによってつくられたアーマー(各パーツHPメモリ20相当)を4つ装着している。

・特記事項1:大事故にあって全身不随一歩手前の時に特殊な手術を受けて少し性格が変わり、友達がいない。自分のナビからよくぼっちぼっちと煽られる。

・特記事項2:転生? 憑依? 少なくともこの世界由来ではない人格。ロックマンエグゼの経験は3のみ。他はゼロシリーズ、ゼクスシリーズのみでXシリーズと初代シリーズはノータッチ。エグゼのアニメとか漫画とかの記憶は曖昧で、なんならゲームの方もちょっと怪しいくらい。ただし、ボクタイは全部やっていたりする。

 

・ネットナビ:エックスマン

 




次回、スカルマン戦。
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