ロックマンエグゼ世界でエックス的なナビを持ってしまった 作:黒兎可
「プラグイン! エックスマン・トランスミッション!」
「プラーグ・イン! バンチョーマン
伊集院炎山が「こっちも忙しいんで、成果を出すなら三十分以内にお願いします」と鼻で笑って立ち去った後。年上の余裕もなく炎山君とガチ口喧嘩して最終的には事件解決数を盾に負けるというアレな事をした結果「ぐぬぬぬ……!」とか言っちゃったりして、流石にそのまま置いていくのも忍びなくなってしまった。
協力だけでいいのでぇ! って目をウルウルさせて年上のお姉さんらしさ皆無のガチ泣きべそしている姿に快太君はドン引き、名人は手で目元を覆って空を仰いだ。
ただ、不覚にもその際に抱き着かれたりして、あと泣き顔のエイリアさんが結構可愛いかったので、ちょっとだけ下心が出てしまった僕を誰が責められよう。もうちょっと仲良くなってもいいよね、僕まだ小学生だし、とか。そんな言い訳を、大学生くらいの魂な自分がしているのは色々滑稽かもしれない。
ただ今回は大丈夫だろうとタカをくくりたいところだけど、今までの展開的にそうはいかないのはもう確定事項として、エイリアさんにちょっと話をした。例のお願いを、保険のために先に貰っておこうという事だ。
「あっ、はい。例のチップの件ですね。手配はできていますよ? ……えっと、えーっと、はい! これ」
「電子チップじゃなくて物理チップ!?」
そう言ってエイリアさんが手渡してくれたのは、バトルチップ「ホーリーパネル」。以前テレビ局の事件の後に、エイリアさんに頼んでいたものだ。
具体的にどんなチップが欲しいとリクエストした訳じゃなく、バトルオペレーションで回復とか防御系の強いチップが無いかと相談した。その結果、エイリアさんおすすめでホーリーパネルを提供してくれることになった。
当然のごとくレアチップなのでお高いだろうと思い聞いてみると、エイリアさんが「流石に今までお世話になりっぱなしで申し訳ないので……」と顔を青くしながら言ってきたので、そのあたりは今後どうするかということで、とりあえずレンタルするという形式で落ち着いた。
だからといってまさか物理チップでもっていらっしゃるとは……。みゆきお姉さんのフォルダ使えないなこれ。自分の物理フォルダ(巾着袋)のチップ構成も「バトルオペレーションV2」に合わせて変更したから、まあ問題ないと言えば問題ないんだけど。
ただそうするとスカルマンのV2、V3が使えなくなるので、地味に全体のチップパワーが足りなくなってくる。どうしたものかと悩んでいると、名人とエイリアさんがそれぞれチップを提供してくれた。
バンチョーマンのチップと、シエルちゃんのチップだ。
「バンチョーマンはオーラ・オールラッシュ。今日のバトルでバンチョーマンが最後にやったアレだ」
「シエルはパラレルショットをランダムに撃った後、回復効果がありますので、是非!」
「あ、ありがとうございます」
かくしてそんな訳で、今日は久々に物理フォルダでのバトルオペレーションになる。
PET画面が電子フォルダに占有されずしっかり電脳世界を映しているのが、久々すぎて軽く笑ってしまった。
「快太君はPETの準備を。ガンサイ君、江口君はこれから作戦を再確認します!」
エイリアさんの掛け声に、一緒に頷く名人と僕。
「作戦フェーズは3段階。
メインストリートと暴走するナビたちからターボマンを引き離すフェーズ1。
ターボマンをこの研究所の電脳方面のルートへ誘導するフェーズ2。
誘導したターボマンをインスタントパルスマンの疑似パルスで確保するため足止めするフェーズ3」
『話を短く整理するのは悪くないなぁエックス』
『こういうの見てると有能そうなんだけどね……』
『い、一応マーティの指揮官用プログラムを組むときにそういう勉強もしているもの……』
「そこ、電脳世界で私語は慎みなさい!
フェーズ1は単純に誘導するというよりも、ターボマンにメッセージを送る必要がありますので、そこは快太君も参加お願いします!」
押忍! と気合満タンに腕をぶんぶん振り回してる快太君が年相応の男の子らしく見てて微笑ましい。
「フェーズ2はターボマンの移動速度に合わせてダッシュアタックなどのチップによる移動を多用してください。ガンサイ君、お願いします」
「あ、はい」
「フェーズ3ではシエルがインスタントパルスマンを直接操作して快太君のPETのプラグインに対応する必要がありますので、江口君、バンチョーマンのオペレートで頑張ってください」
「私が一番キツいなぁ……」
ぼやく名人を無視して、エイリアさんは作戦用の調整を進めているらしい。どうやらインスタントパルスマンのエリア調整(メインストリートじゃない場所のやつ)が微妙に終わっていないらしく、そのプログラム調整を最後までやるらしい。終わっていない調整といっても8割くらいは効果があるらしいけど、逃げられる確率はとことん減らしたい、という理由で、またキーボードが壊れそうな勢いのタイピングを再開していた。
って、その状態のまま作戦の号令とかは続けてるから、さっきよりは余裕があるのかもしれないけど。
「では、作戦名『オペレーション・ピットイン』! 開始!」
『頑張りましょう!』
「はいっ!」
『――――!』
「押忍っ!」
「応とも!」
『程々にな』
エイリアさんとシエルちゃん、僕とエックスマン、快太君、名人さんとバンチョーマン。それぞれが応じて作戦開始!
手始めにメインストリートまで移動するエックスマン。僕の隣の快太君が、こっちのPET画面をのぞき込んでいる。ターボマンに話しかけて誘導するために準備しているのだけど。
「よし、おーい! ターボマン! 返事を…………、返事を……、ターボマン?」
『パラパラパラパラパラ!』『オーンオンオンオーン!』『フン! フン! ダーイブッ!』『ウワォ~~~~~~~ン!』『ほああああああああああッ!』『ブロオオオオン! ブロオオオオン!』
「聞こえてない? アレ」
「いや、やっぱり速くない? 移動速度。声届くかなアレ……」
作戦開始したはいいけど、目の前を1秒かからず通り過ぎてあらもうあんな遠くに……。どう考えても法定速度を守った移動速度ではなかった。あとコンボイマンの移動した迫力が一番ヤバい。ドドドドドドドとか地鳴りが聞こえるんじゃないかっていう迫力があった。キャリアー一体何積んでるんだろう。
いっそ飛び乗った方が早いかもね、とエックスの提案に、首肯して巾着からダッシュアタックを数枚用意する。
「勝負は、次にターボマンが来た時かな」
『バトルチップのバトルチップ時以外の応用とか、初めてだね』
「あれ? あー、そういえばそうか。…………でもまぁ、何とかなるでしょ」
言いながら、僕はエックスマンの「半分の視界」の側に集中して、道の奥から走ってくるナビたちを確認する。距離は遠く見えるけどさっき1秒かからずこっちに来たってことを考えると、もっと遠くを見てから発動して良いはずだ。このあたりバイクの教習所でやった内容を思い出す。
「いくよ、バトルチップ『ダッシュアタック』、スロットイン!」
『――――ッ!』
かくして次の瞬間、エックスマンは飛び乗った――――――――コンボイマンのトレーラーの上に。
って、あれッ!? おかしいな、ターボマンの上に乗るつもりだったのに……。
『思いっきり、目の前の車線に割り込まれたね……。全長が長いから』
『ほあああああ!? 一体どうしたというのかね、我々に残された作戦はエネルギー切れになるまで捨て身の周回作戦しかないというのに!』
「コンボイマンさんでしたっけ、あの、良い声でアレなこと言ってるところ悪いんですけど……」
事情を説明しようとターボマンの方を見てから、車両先頭の赤いトラック的な何かに声をかけると。
『大体わかった。あのF1カーのようなナビに用事があるということかね』
「そうです」
『ではこちらも協力しよう。――――サイバネット・
色々駄目じゃないかなそれ!? 何か色々とんでもないこと言ってるコンボイマンさんはともかく、減速こそしないけれど彼は走行の速度を安定させて、ターボマンのすぐ前方、車間距離凄いことになってる位置まで移動してくれた。ブロオオオオン! ブロオオオオン! っていう声が凄い近いし、エンジンの出力が色々ヤバくて心配になってくる。
『ありがとう、コンボイマン』
『健闘を祈るッ!』
今度は自由落下で多分ターボマンに跳びつけるけど、念のため手にはダッシュアタックの準備。
果たしてコンボイマンのトレーラーから飛び降りたエックスマンは、ターボマンのリアテールに掴み、ギリギリセーフといった感じで飛びついた。
『ブロロロロ!? 一体どうした、誰だこんな急ピッチでスタントしてくるバカヤロゥは!』
「ターボマン、ボクだよターボマン!」
『快太!? お前どうしてこんなところに!』
前方を見ながらだからターボマンはこっちの状況を把握できていないらしい。エックスマン経由で事情を説明する。かくかくしかじか、って感じだ。
『――――話はわかったが、オレはあまりオススメしたくないな。快太には悪いが』
「どうして?」
「どうして、ターボマン!?」
『現在のゼロウィルスは、多分オレたちのマシンモードでの運動系プログラムを暴走させている。それを緊急停止させたときに、オレ達の疑似人格プログラムにどう影響するか……、そっちに浸食した時、何が起こるかがわからない。最悪、大勢のナビに迷惑を――――』
「それを言ったらメインストリート使えなくなってる時点でアウトだし」
『それを言ったらメインストリート使えなくなってる時点でアウトだし』
「い、息がピッタリだな彼等……」
「私もいつも思ってますよ、江口君」
ターボマンが躊躇っているのは、今の自分の自我がどうなるかわからないから、理性的な判断をできず酷いことになるんじゃないかっていう不安があるからだ。ただそれを言ってしまえば、今暴走しているのだって十分アウトな訳だし、誤差の範囲でしかない。一々細かく言うのなら、むしろ君がその実験台になる方が意味があると、そんな感じのことを言う。
『……それもそうだな。ただエックスマンと言ったか。
もし最悪の場合、オレがネットナビとしてコースアウトを起こしたら、潔くクラッシュ! デリートしてくれ』
「何でそんなに話が極端なのさ、君……」
『エックスマンのオペレーター。オレたちネットナビには、それぞれ生まれた目的があるはずだ。ナビとしてオペレーターのサポートをする、という意味じゃないぞ? もっと根本的な、哲学的な、生命が生まれた意味の様なものが』
突然妙なことを言い出したターボマンだったけど、そういう思春期めいた自我の確立っぽいことをまさかネットナビから直々に言われるとか思ってなかった。
『オレは、快太のヒーローであるべきなんだ。快太が憧れるロックマンたちにいずれ追いつき、追い越し、俺達が強いネットバトラーになるとしても、ならないとしても。その時一番信頼を置かれる立場はオレなんだ。
そのオレが、快太の信頼を裏切るようなことをするくらいなら、消えた方がマシだ』
「ターボマン…………」
いや、そうは言ってもバックアップはあるよね? と思ってしまうのだけれども。バックアップから再生したナビと、その場でデリートされたナビが一緒の存在かどうかというのは、決してイコールで語れる話ではない。
脳裏に浮かぶビデオマンとナルシーさん最期のやり取り。……あの人でさえ、あのビデオマンはあのビデオマンだって考えたから、最後の最後まで見届けたはずだ。
「………………そんな簡単に、ハラキリみたいなこと言わない方がいいよ。だったらなおさら、君は快太君のもとへ帰るべきだ」
『――――』
『エックスマンと、オペレーター?』
少し思いつめたような表情のエックスと僕に、ターボマンは声だけだけど不思議そうに聞き返す。
「君が君自身をどう定義しているかは知らないけれど、そういうのは命あっての物種だから。君がいなくなったら、一体誰が快太君にそんな言葉を投げかけてあげられるのさ。デリートされたら、今の君と再生後の君とは必ずしも一緒の存在じゃなくなるんだってのに」
『それは……』
「ボクも…………、ターボマンには帰ってきて欲しいんだ」
快太君のその一言で、ターボマンも覚悟を決めたらしい。少し逡巡したのか押し黙って、でも「なら、手早いピットインのごとくよろしく頼む!」とか返してきた。
良し来た! となった僕だけど、ここからの話が地味に面倒だった。ゲームだと多分ミニゲーム的なアレなんだろうけど、とにかく口頭でターボマンを操縦していく感じだ。右! とか左! とか言って動くやつ。ただターボマンの速度が速いから、角度切り替えは直角でいけるんだけど(そこは流石にプログラムだ)、一言言ってから曲がるまでに距離が開くと言うか、タイミングを掴むのが難しい。何度かコースアウトしかかりながらようやくエイリアさんとバンチョーマンがいる目的のところまで誘導できたけど、途中を思い出すのが面倒になるような話だった。
しいて言うと、今の才葉シティの電脳、メインストリートに対して横道がいっぱいある理由がこれかな? と思わせられるくらいに、動きが縦横無尽というか。幸い他のネットナビと衝突したりすることがなかったのが救いだ。
『待っていたぞエックス、そしてターボマン! 私が貴様を抑えてやろう!』
『忝い、自動車ライセンス学校の教官めいたケツアゴナビ!』
『その呼び名は後で訂正しろ、フンッ!』
飛び降りるエックス。がっしりと、正面から両手で受け止めるバンチョーマン。大きさ的には普通のナビよりちょっと大型くらいの全長なターボマンを、中腰位になって正面に突き出たフロントを抑えている構図だ。ぎゃりぎゃりと空回りするホイール。徐々に徐々に推進力が溜まり、抑えた姿勢のままバンチョーマンが後ろに圧されていく。
「踏ん張れ、バンチョーマン! バトルチップ『トップウ』、スロット・イン!」
『助かるぞ、エグチ!』
バンチョーマンの背後にボックス状の疑似ウィルスが生成されると、その表側のファンから風が吐き出される。それがホイールの動きに関係なくターボマンを押し返し、バンチョーマンの抑え込みと力関係が釣り合った!
『今だ、インスタントパルスマン!』
「ええ。快太君、準備はいい? シエル!」
『ええ、エイリア! …………プラグコネクト・インスタントパルス、照射!』
バンチョーマンの掛け声とともに、やや離れた別なルートの奥にいるインスタントパルスマンのメーサ〇戦車みたいなアンテナ的砲門から、電気エネルギーみたいなものが放出! そのままバチバチと音を立てて、ターボマンやバンチョーマン周辺を包む。
「プラグイン! ターボマン、トランスミッション!」
そして快太君は、PETを頭上に掲げてジャンプ!? そのまま足を広げて着地すると同時にジャックを引き抜いて、PETをハンドルに見立ててぐるっと回転させてからプラグを接続した。腕の回転としてはちょっと僕のモーションと反対な感じだ。
「今行くよ、ターボマン! ナビチップ『ターボマン』、スロットイン!」
『く、おおおおおおおおッ!』
チップは転送されたけど、どうもF1カーの走行している状態と、チップ転送とが競合でもしてるのか、バチバチ音を立てながら微妙に変形しかかっている状態のままだ。「ギゴガガガ」みたいな音がなりそうな中途半端な変形具合で、しかも脚のホイールは回転して動こうとしている
『何とか持ちこたえろ、全ての感情を持つネットナビは自由と可能性を持つべきなのだ! 貴様の心がそう選択したのなら、貫いて見せろ!
…………ぬぅ、後ろだエックス!』
『っ!?』
バンチョーマンの声に、咄嗟に反応するエックスマン。後ろを振り向き1歩(1パネル)後退、エックスバスターを放つ。そこには誰もいなくて、でも落ちてくる星型の何かには見覚えがあった。
『愚の骨頂だよ、まったく。君も僕のように「進化した」ネットナビだというのに、こんな所でやってることは人間の小間使いか』
『スターマン!』
瞬間移動みたいにバッ! とエックスと僕の視界に現れたのは、前に一度見たことのある、コピーマンを倒したスターマンそのもの。とするとさっきの星型のはキラキラメテオなんだろう。
「なんで君が……?」
『――――?』
『二人そろって頭脳は低いのかい? 僕としてはあと数日、才葉シティのネットワークが停止してくれていた方が好都合なんだよ。だというのに君たち人間ときたら……。面倒は掛けて欲しくないんだよねぇ、そんな暇があるなら星空でも眺めていてくれないかな』
「スターマン! あなたには聞きたいことがあります、大人しく投降しなさい!」
エイリアさんのその声に、スターマンはくつくつと笑う。バンチョーマンはターボマンにかかりきりで、おそらく今手を離すとパルスマンの射程外に出てしまうんだろう。
だからといって、この状況だと…………。
「………………やれる? エックス」
『……まあ仕方ないよね、ガンくん』
そう長くは悩めないけど、数秒。ここで戦わないという選択肢をとったところで、状況は改善する訳でもないし、流石にそれが出来る状況でもない。
エックスバスターを構え、スターマンをアナライズ。スターマン、HPは 400 と案外低い。これなら……!
「バトルオペレーション、セット――――」
『――――インッ!』
『ティンクル、ティンクル♪ 星屑の欠片も残さないよ!』
とにかくターボマンの変形が終わるまでの足止めだ。意を決して、僕とエックスマンはスターマンにエックスバスターを打ち込んだ。
【折り畳み式PET(1、2モデル)でのプラグインポーズ】
・轟快太:
「プラグイン! ターボマン、――――」
ゲーム版熱斗みたいにPETを振り上げて一度ジャンプ。その後両肩の幅に足を広げて着地、目の前に突き出してジャックを引き抜き、車のハンドルをイメージした構えをする。
「――――トランスミッション!」
そのままPETとジャックを車のハンドルでいえば右→左とするように回し、もう一度振りかぶってプラグイン。
【作者メモ】
・コンボイマン:CVはきっと玄〇哲〇さん。
・車飛び乗り:ゲーム版だったら剣道とかギャンブルみたいなミニゲーム扱い。ちょっとしたルーレットゲームみたいな形で、右だ! 左だ! と指示を出した数秒後に反応するターボマンを操作する流れ。延々と描写する話でもないので省略。
次回、スターマン戦
Q.ターボマンと戦わないの?
A.章ボスはターボマンなので戦います