ロックマンエグゼ世界でエックス的なナビを持ってしまった 作:黒兎可
おれ、光熱斗! 今は相棒のネットナビ、ロックマンと一緒にゼロウィルスっていうのが引き起こした事件を追っている。
それでゼロウィルスの本拠地としてたどり着いた先、ゼロアカウントってエリアは、なんていうか凄いシンプルっていうか、まあそういうのだった。
真っ赤なワイヤーフレーム? で作られてて、テクスチャ(画像らしい)とかが張られてないのを見てロックマンがびっくりしてた。
普通のネットナビが行き来するように作ったエリアじゃないっていうのは、ロックマンの感想。おれは、何かちょっと目が痛い色してるなーって。
それこそメガリア系のウィルスが何かすごいいっぱい出て来てバトルするのが面倒だったりとか、そういう愚痴はあったけど、エリア自体は結構シンプルっていうか。
エレキマンの時みたいに、右往左往したりあてずっぽうでパズル解くみたいなことしないで、一本道って感じ。
そしてリンクを辿って奥にたどり着いたとき、おれとロックマンはかなりびっくりした。
『教授のスターマンではない……?』
「こいつがゼロ、ゼロウィルスの本体だって!?
でも、どう見たってこいつ……」
『ネットナビ……、それも、ぼくたちと同じ、心と知性を持つナビみたいだ……!』
何か赤い感じのアーマーに、白いズボンみたいなの。腕とか脚とかは赤いアーマーついててちゃんとネットナビしてるけど、頭の後ろからブルースよりギザギザした髪というか、マントみたいなのが伸びてる。
そんなゼロ? は、ロックマンとウィンドウのおれを見て、不思議そうな感じだった。
『そう、か。お前は…………、お前たちが、光熱斗、そしてロックマン……。本当に「似ている」な。しかもスターマンを倒して来たのか』
「えぇ! おれ達を知っている!?」『えっ! ぼく達を知ってるの?』
『……実際に会うのは初めてだがな』
やっぱり、ネットナビみたいだ。ゼロ「ウィルス」じゃない。お前いったい何者だよっ! って思わず大声出したら、そのナビは自分の手を見て、一度握ってからこっちを見て来た。
『オレはゼロ。……ネットワーク社会への呪い、ウィルスのゼロ』
このナビは、自分でウィルスって言ってる。しかも、ゼロ。……言われてみると、なんか顔がちょっとドリームウィルスっぽい感じ。ひょっとしてWWWが関係してるのか?
「自分で名乗った、じゃあ本当に自分で判断する心を持ってるってことかよ……!
でも、ウィルスが心を持ってるなんて、聞いたことないぜ!?」
『いや、熱斗君。僕たちネットナビも、ウィルスも、プログラムとして見た場合は――――――』
ロックマンが何か言おうとしたけど、ゼロが自分で話し始めたから黙った。
『…………全てのゼロウィルスは、俺の耳目となりこの電脳世界に散らばっていった。それらの情報を蓄積し、本体たる俺の内で培養、学習、再構築し全てのゼロウィルスに伝播させる。
そうして無限に成長……、進化か? 進化を続けたゼロウィルスは、やがてネットワークそのものを喰らいつくし、いずれゼロウィルスこそがネットワークそのものへとなり替わる。……それが俺の作られた理由。
数多のプログラムの情報の伝達……、最初はそれをひたすら蓄積するだけだった』
情報の伝達……、今までのネットナビの動きが遅くなったり、変な動きをしたりしたのはそのせいか!
思わず睨みつけたけど、でもゼロの次の一言で、思わず「うっ」って息をのんだ。
『だが、いつの頃からだったか。俺の中に、人間やネットナビがいう「心」のようなものが生まれた。
人とネットナビが積み上げて来た思い出が、喜怒哀楽が、俺に「ココロ」を与えてくれた』
「進化したっていうのか!? ウィルスが、自分で……!」
『心が生まれたウィルス……、心を育んだウィルス……!』
ゼロの言ってることが正しいなら、それは……、それって、もうウィルスって言っていいのか? だってこんな、ちゃんと話せるし、自分からおれ達に襲い掛かってこないし。
でも、ゼロは少し嫌そうって言うか、何か「苦い」感じで話を続けた。
『お前達は、電脳世界の平和のために今まで戦ってきていたな。
ファイアマン、ガッツマン、ニードルマン、ブライトマン、アイスマン、クイックマン、カラードマン、エレキマン……。
他のネットナビたちから得た記憶ですら、それが良く判る。
だからこそ、それ故に……、存在するだけでネットワークを崩壊させるだろう俺を、デリート……、いやウィルスバスティングと言った方がいいか? しようとするだろう』
ゼロは少し俯いて、頭を振って、そしてこっちを見る。
ドリームウィルスみたいな感じの顔だから表情なんて変わらないけど、なんか、睨んでるって言うか、決意した感じのイメージがあった。
『だが俺は、まだ消えるつもりはない。消えたくはない……!
だからこそ、お前たちを迎え討とう…………!』
『ま、待ってゼロ! 君は、本当は……』
ロックマンが止めようとするけど、もう「バトルオペレーション」のプログラムが起動しちゃってる。
ばっ! って左手で振り払う動きと一緒に、マントっぽい髪がばさって動いた。
ゼロは心がある。だからこそ、死にたくないって言っておれ達と戦おうとしてる。
だけど、おれ達だってゼロがこのままだと、インターネット社会が大変なことになっちゃう。
やるしか、ないのか……っ!
「……ッ、ロックマン!
バトルオペレーション・セット――――」
『――――イン!』
『展開しろ、「ゼットセイバー」!』
腕をふった瞬間、ゼロの右腕がブルースよりも大掛かりに変形して、長いソードが出て来て。その剣部分に、青白いオーラみたいなのがまとわりついた。
※ ※ ※
光博士とエイリアさんの依頼。結局、受けることにした。……このままいくと、おそらく現場ではゼロをデリートする以外に手立てがないって状態になるから、それに待ったをかけて欲しい、というのが光博士からのオーダーだった。
僕的にも、なまじこの世界でロックマンエックス的なナビを使っている立場からすると、ゼロがいなくなるっていうのは確かに嫌なものがある。別にエックスシリーズをやっていたわけじゃないけど、やっぱりエックスとゼロには仲良くしてもらいたいという感覚がどこかにあった。
さて。待ったをかけるっていっても戦闘に乱入するとかじゃなく、ゼロアカウントに疑似的な
ゼロアカウント。デンサンエリア(もっとローカルな秋原エリアでもいい)から外に出て、世界規模のネットワークが繋がっているグローバルエリアに接続。そこから熱斗君が入手して光博士に共有したパスコードを使って侵入できる特殊なエリアらしい。
接続上はおそらくWWW関係のサーバーがどこかにまだ残っているんだろうと博士は言ってたけど、どっちにしてもそこそこリスクが伴うエリアに違いはない。
ということで、バンチョーマンおよび名人と一緒にこの作戦に入ることになった。今、名人と僕はエレベーターで電波関係の研究室(グローバルエリアへ直結してるリンクがあるらしい)の階まで移動中。ここなら父さんの才葉シティの研究室ともすぐホットラインをつなげるということで、光博士が気を利かせてくれたみたいだった。
それはそうと……。
「名人さんは何か、いつも通りですね」
「“さん”は要らないさ」
「名人!」
「よし!」
びしッ! と眼鏡に手をあてるポーズをとってる名人は、なんというかいつも通り過ぎた。エイリアさんや光博士みたいに、居心地が悪そうな顔をすることもない。
そのことを聞いてみると「私は一応、反対の立場だったからね」と肩をすくめられた。
「あんまり一般人に頼る話じゃないっていうのは、官民共同で何かやるにしても普通じゃないかな? 単に私が入省してから歴が浅いから、その辺の感覚が民間寄りってだけかもしれないが」
「はぁ、えっと……?」
「嗚呼すまない。まあつまりだ…………、いくら状況が合致していても、あまり無茶をする必要はないってことだ。そういう時に責任を取るのが大人だからな。
そう言う意味では、光主任はしっかり大人ってことだ。……エイリアさんや私含めて、全体の不手際の責任をとっているからな」
だから逆に私が謝るのはお門違いだろう、と名人は言う。
「言ったところで私が君に責任をとれるでもなし。そもそも積極的に君を引き込んだわけでもなし」
「才葉のメインストリートの時は連れて行きませんでした……?」
「あれは、ごめんなさいだ……。まさかエイリアさんが、普通に君を巻き込むとは思っていなかった…………。
ただ、だからこそだな。今回、君が自分から受けると言った以上、まだ『歩行すら覚束ない』今の君にかかる負担を最小限にするのが、私が大人として出来ることだと思っている」
「……覚束ないって言っても、まあ、入院してたからってだけですけどね」
苦笑いする僕は「車椅子の上から」、名人を見上げて苦笑いした。
現在、僕は車椅子で運ばれていた。というのも原因は2週間の入院生活で、意識がなかったころに点滴で打たれていた栄養素は当然、平常時のから考えたら全然足りない。おまけに運動もしてないから、筋力とか体力とか、一気に落ちてるってことだ。
最初普通に立とうとしたんだけど、一気にもつれて転んで、エイリアさんを押し倒しちゃったくらいだ。……別に役得とか思ってはいないけど、でもエイリアさんの胸にダイブしちゃった頭が全然起こせなくって、早々に「あっこれ自力だと駄目だ」って判断をした。だから頼み込んで車椅子を貸してもらったんだ。
「でも、名人が一緒に来てくれるのなら嬉しいです。バンチョーマンも」
『――――』
「……私もまだまだ若造だし、直因ではなかったにしろ思う所はあるからね。特に、未来あるネットバトラーの卵たる君たちには」
『あまり気負う話ではない。シンプルに、共に戦おうというだけだエックス』
と、そんな話をしてるとついた。……うん、やっぱり部屋は全然見覚えがない感じだ。エグゼ3の研究室みたいなグレー張りじゃなくって、もっとちゃんと官公庁っぽい感じのと言ったらいいのかな。ただパラボラとかアンテナがいくつもあるのと一緒に、サーバーが数台。
そのうちの一つの前で、エイリアさんが待ち受けていた。
「遅いですよ江口くん。……あっ、私がかわります、ガンサイ君の車椅子」
「お願いします、っと。…………遅いのは正直エレベーターの込み具合のせいなので、私に言われてもですね」
今回、エイリアさんは僕のサポート。車椅子でプラグインする僕の様子に、異常が発生したら中断させたり、あとは父さんに連絡をいれたり、といったところだ。……トイレは名人に連れていってもらって先にいってきたから、多分大丈夫だと思う、うん。セクハラになっちゃいそうだし。
シエルちゃんもエイリアさんのPETでお留守番だ。ゼロアカウントはゼロウィルスの総本山。アクセスするだけで常時高密度のゼロウィルスを浴びることになるから、ゴールにたどり着く前に症状が発症しちゃうだろうということだ。
名人は指抜きグローブの位置を整えてから、白衣の下から例の帽子を取り出してつける。……今更だけど、それってやっぱりバンチョーマンを使ってるから持ってるのかな。うん。
まあ、とにもかくにも。
「プラグイン! エックスマン・トランスミッション!」
「プラーグ・イン! バンチョーマン
僕と名人、エックスマンとバンチョーマンは科学省の電脳に、ひとまずプラグインして、リンクコードを辿って行った。
※ ※ ※
『「ファントムゼロ」、セィヤァッ!』
「ロックマン!」
『くぅ……ッ、ロックバスター!』
おれとロックマンは、ゼロに苦戦してた。
ゼロのやつ、普通に強い……! 下手すると炎山とブルースよりも!
バスターは普通に防御で弾いて来るし、すぐさま背後に回って斬りかかってくるし、かと思えばソニックブームの凄いやつみたいなのも飛ばしてくるし、威力も洒落にならない。
攻撃後に隙が出来たりしたのを狙って削っていってはいるけど、簡単に逆転できる切り札なんて思いつかない。
だから、それだけゼロが生きることに必死で戦ってるっていうのがよくわかっちゃって、すごい辛い。辛い戦いだ。
「攻撃用バトルチップ『ソード』『ワイドソード』『ロングソード』、スロット・イン……!」
『プログラム・アドバンス――――――!』
だけれど、止めなきゃいけない……! 後のことはともかく、今はゼロを!
発動したドリームソードは、ゼロのソニックブームの凄い奴を飲み込んで、そのままゼロ本体にもダメージを与えた。これでHPもゼロ。ゼロだけに。……これで行動不能状態だ!
腕を抑えて膝をついて、ゼロは苦しそうにして笑ってた。
悲しい笑いっていうか、自虐っていうのか? そういう笑い方だった。
『やはり、スペック以上の力か……。これがWWWを倒した、恐るべき可能性の力。
人とネットナビとの絆……、信頼、友情の力というもの、なのだろうか? 友情か……。ハハ。学習はした。だが感じ取れなかった。
それでも、悪いものでは、ないな…………』
『ゼロ……』
『俺の、負けだ。……さぁ、トドメをさせ』
なんだか満足したみたいな、今から自分がデリートされようとしてるってのに、安心したみたいな、そんな声を出すゼロ。
そんなゼロに、ロックマンはロックバスターを向けない。
おれも、バトルチップを用意したりする気が起きなかった。
『何を、躊躇ってる。同情、というものか?
フッ……俺だって、望んでウィルスとして生まれたわけじゃない、望んで、心を持ったわけじゃない。
ただ、それでも知りたかった。知りたかっただけだ。俺が生まれたこの世界ってものを。そこで暮らす、他の誰か、大勢のヒトを。例え、俺が理解できないものであっても』
「ゼロ、お前……」
『だが、それでもお前たち人間やネットナビにとって、俺というウィルスは存在そのものが悪だ。
だから気にする必要はないんだ。何も気にする必要はない。全て……、当然の結果なんだ、光熱斗、ロックマン』
顔はわからない。ウィルスの顔をしてるから、どんな表情なのか全然わからない。
だけど、おれにははっきりゼロが、悲しそうに微笑んでるってのがわかった。
「……ッ! そう簡単に出来るかよ、お前は! だって……お前、べつに悪いヤツってわけじゃねーだろっ!」
『ぼくも、ゼロの気持ちは、なんだかわかる気がする…………』
ロックマンは……、光彩斗
彩斗兄さんは、ずっと、意識が生まれてからずっとネットワークで過ごしてきたから、だからたぶん本当の意味で、たった一人の人間として、ネットナビじゃない人間としては、ゼロみたいなそういう気持ちみたいなのが、あるんだと思う。
だから、おれに対して兄さんとしてふるまう時は、ちゃんと、おれも弟らしくしたりしてるけど。
ゼロにはそれがない。それどころか、ゼロが頑張れば頑張るほど、被害は広がる。
それが、ゼロにはわかってる。だから、死にたくないけど、倒されたらそれまでだって、そういう覚悟してたって、言ってるんだ。
でもそんなの、簡単に受け入れられるわけ、ないじゃないか…………!
『――――甘いぞ、ロックマン』
そんな声と一緒に、リンクゲートから飛んできた赤いナビ。サングラスに靡く長髪は、ブルースだ!
『ブルース、お前も知っているな。……フフ、今日は、悪くない日だ』
『ブルース! 無事だったんだね!』
「ってことは、炎山か!?」
前にネットナビにやられて、ゼロウィルスが悪化したって来てたけど、そっか。おれとロックマンみたいにワクチンプログラム打って、何とかなったんだ。
おれ達の声に反応して、ブルースの後ろにウィンドウが開く。そこにはあんちくしょう、伊集院炎山が、いた。
……あれ? 炎山のやつ、ちょっと何か、テストの点数が凄い低くて叱られたみたいな、そんな感じの顔だ。バツが悪いっていうのか?
『……世話をかけたな、光。
だが、冷静になれ。こいつは進化し続ける凶悪ウィルス……。コイツ自身がわかってるように、コイツ自身がどう思っていても、今トドメをささないと、今後どんな被害を生むかわからないんだ』
「えっ! どこからお前、その話、聞いてたんだよ?」
『そんなことはどうでも良い! ……どっちにしろ、早く倒さないといけない。このゼロアカウントがゼロにとってのPETだとするなら、行動不能状態はそう長く続かない。
あっという間に復活して、また襲い掛かってくるぞ!』
「だけど……、だけど……ッ」
『…………お前が「やれない」のなら、おれがやる……!』
『どけっ、ロックマン!』
ブルースがロックマンを押しのけて、腕のソードを振りかぶる。そして、そのままブルースのソードは、ゼロのナビマークみたいな胸のマークを…………。
『バトルチップ「ダッシュアタック」、スロットイン!?』
『――――ちょっと待ってッ!』
「はっ!?」「何ッ」
『えっ!?』『くッ』『……ッ、まさか!』
そんなブルースとゼロの間に、何かこう、「飛んできた」。特撮番組みたいな飛び蹴りみたいなポーズで、足先にキオルシンくっつけたナビ。衝撃波放ってるけど、ダッシュアタック、だよな……? ブルースも、その衝撃波に煽られて吹っ飛ばされる。
ナビの色は青っぽくて、ナビマークはちょっと「X」っぽい感じ。煙というか砂嵐と言うかが晴れて、良く見えるようになって、おれは、思わず言った。
「ロックマン……? ロックマンが、二人……!?」
色とか微妙に違ったけど、間違いない。毎日見てるからよくわかる、そのナビのデザインは、ほとんどロックマンそのもの。ちょっとカッコイイ感じのアーマーとかついてるけど、肩とか全体のラインはロックマンそのものだ!
ロックマンも、その変なナビを前に、おれみたいに「ぼくが、もう一人……!?」ってびっくりして。
『……ついに遭遇してしまったか、ハァ』
そのナビの頭上にウィンドウが開いて、何か、全然知らない小学生の顔が出て来た。
だ、誰……?
【作者メモ】
・熱斗君とロックマン:今回で丁度ゼロ戦。直前のスターマンステージからほぼ休みなしでここまで来てる。
・ゼロが名前をあげたナビ:トランミッション中でロックマンが戦ったナビ。これはロックマンについての情報を収集した相手について言及しているということなので、違う相手が出たら別なナビの名前を挙げることになる(例えばエックスならビデオマンやらフラッシュマンやらターボマンやら)。
・ガンくんラッキースケベ:冗談でも何でもなく体力が相当落ちてるので、本当ならリハビリしないとまずいガンサイ。特にそのままエッチなことを続けた訳でもなかったので、エイリアも気にせず流した。
・色々と対面:熱斗君は普通にびっくりしてるけど、彩斗兄さんは裏事情をちょっと察してしまえるので、もっとびっくりしてる