ロックマンエグゼ世界でエックス的なナビを持ってしまった   作:黒兎可

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第29話「あまり一喜一憂できなくなってしまった」

  

 

 

 

 

 脱出ゲーだ。ステージ自体はそこそこ長いのを、プラグアウトせず脱出する脱出ゲーだ。ちょっとだけメト□イド思い出す感じだけど、生憎とエックスの視界で背後から迫りくるドリームウィルスの腕から逃げるのは、色々と恐怖やら緊迫感やらが強い。

 つまりは色々、精神的にクるものがあった。 

 

「バトルチップ『ダッシュアタック』、スロットイン!」

『――――ッ! 駄目だガンくん、天井のデータが落下してきてる!?』

  

「テクスチャーの剥がれが早いですね……、江口君!」

「こちらも大至急急いで向かってる所ですけどね! せめてダッシュアタックは入れていなかったのが悔やまれる……」

『ダブルジャンプは一応出来るが、いかんせんダッシュの速度が遅くてなぁ……、ぬぅん! しまった足場を間違えた!』

「バンチョーマーン!?」

 

 名人が落下したらしいバンチョーマンに絶叫かけてるけど、その後の反応から無事っぽいのでそっちは気にしてられない。

 僕は僕で、バトルチップのスロットイン時以外はほとんど目を閉じているか、でなければ絶叫してるかのどっちかだ。他の人からすると画面のエックスに入れ込みすぎじゃ? くらいに見えると思うけど、体感的には命がけそのものなので笑い話じゃない。

 

 というか背後から迫って来てるドリームウィルスの腕っぽいの、こう、なんだろう、出来損ないのエイリアン(ゼノモ〇フだっけ)の口の中のアレを巨大化したみたいなインパクトがあって、片手のはずなのにガンガンネットワークの足場だったり壁面だったりとか、全体を破壊しまくってくるので恐怖だ。指なんて十本あって、わらわら動いて気持ち悪い。

 というかデカい。凄い大きいです。

 なんなら抱えてるはずのゼロも、時々引きつった声を上げてる。意識がどれくらいあるのかわからないけど、この赤いワイヤーフレームで構成されたようなエリアはどっちにしろヤバい状況なんだ。

 

『間に合うかな、出口まで……』

「……ダッシュアタックも切れちゃったし」

『一定時間に読み込めるメモリ量に制限があるのが恨めしい……』

「……でもそれはそうと、早い所ゼロと一緒にこのエリアを出ないと」

『こんな所で終わっちゃうなんて、色々駄目だからね……』

「……せっかく拾える命なんだから」

 

「……………………」

 

「『どうしたの、エイリアさん』」

 

 僕とエックスの独り言を注視してた感じがするエイリアさん。不思議に思って目を開け、エックスと一緒に確認してみると「いえ、何でもありませんけど……」と凄い納得していない顔をしてる。

 まあそれはそうと、地面に罅が入ってたりして、エックスバスターを地面に撃ってその反動で移動とか、アニメみたいな動きをしないとそろそろキツくなってきた。

 

「もう少しだ、ガンサイくん。ゼロアカウントから抜け出れば、科学省への直のリンクを使用できる」

「名人……、でもバンチョーマンは」

『そろそろ合流ポイントだ――――フンッ!』

 

 目を閉じてエックスの視界に集中しながら話を聞いていると、エックスの目の前のフィールドが破壊されて、地面から腕がせり出して来た!? あっこれ後ろに迫って来てる手と同じ奴だ。つまり両腕だ!

 挟み撃ちにされる恰好になったエックスマンだけど、直接バトルオペレーションして勝てるとは思えない。とりあえずバリア(+100)をスロットイン! して、襲い来る手と手の隙間をスライディングして避け……、避け…………、いや別に前転したところで回避とか無敵状態になったりするわけじゃないから、ギリギリかすめるような形で指一本がエックスを攻撃したりするんだけどさ。流石に今の一撃でバリアははがれなかったけど、もう一回きたら終わりだと思う。

 

『このままじゃ……』

『……………俺を、置いて逃げろ……、どうやら俺は、ここまでだ。こんなウィルスを庇って、お前まで死ぬ必要なんて、ない…………』

「ゼロ! 駄目だよ、それじゃここまで連れて来た意味がない」

 

 わざわざ生存フラグみたいなのがあったんだから、こんなところで下手をうってくたばっちゃって、この事件の本当の解決が出来ない! みたいになったら、それこそ寝覚めが悪いとかじゃなく社会滅亡だ。

 そう言う意味でもゼロを逃がす必要があると思うのだけど、肝心のゼロは自嘲してるっぽく声だけで笑った。

 

『お、笑い種と、言うのだろうか。これではお前たちを庇って、先に行けと言う事もできないか』

「…………」『…………』

『この気持ちは、友情……、いや、感謝の、気持ち、か』

 

 

 

『――――ならばそれを大事にするんだ、ゼロ。お前もネットナビとなるのならばな』

 

 

 

 ば、バンチョーマン!

 ゼロのほぼ胸から上(腕無し)を抱えるエックスマンの背後に、バンチョーマンが殴り込みをかける形で現れた。……下から。多分アレだ、さっき落下してたから、そこから地上に上がらないでこっちまで歩いてきたってことなのかな。このあたりはどういうマップ構造なのかいまいちわからないから、名人のオペレートによるところが大きそうだ。

 

 僕とエックスが掻い潜った腕が、そのままこっちを狙おうとしたところを、アッパーする形でヒビの入った地面を砕きながらジャンプして出て来て(ちょっとウルトラマ〇みたいなポーズだ)、そのままオラオラオラ! って感じに拳のラッシュを、ドリームウィルスの両腕に叩き込んでいた。

 

『何をしている。二人とも早く逃げろ。私が足止めしているうちにな』

『だけどバンチョーマン、貴方が一番移動速度が遅いっていうのに、そんなことは――――』

 

 

 

『だから、「そういうこと」だ。先に行け、ではない。逃げろと言っている』

 

 

 

 バンチョーマンの一言に、僕は理解が一瞬追いつかなかった。

 それは、つまり……。隙を見て逃げるとかじゃなくって、つまり、この場で?

 

『重要度でいったら私とお前ならば、お前の方が断然重要だろうからな。なにせ「人命がかかっている」。私の場合はエグチの研究が少し遅れることになるだろうが……、そこは済まないがな』

「そんなことって……、名人さん! それで良いんですか!?」

 

 思わず目を開けて、隣の名人を見る。よこから見た名人は、眼鏡に光の反射が見えなかったせいか、随分とその姿が小さく思えた。「名人」じゃなくって、それこそ年齢相応の、青年という感じに思えた。

 

「“さん”は要らない。が……、元々バンチョーマンとは『そういう取り決め』だったからな。まさか今日、言ってくるとは思わなかったが」

 

 どういうこと? 困惑する僕のことを気にせず、名人はPETに映るバンチョーマンの背中へ声をかける。それは、かつてないくらい真面目臭くって、同時にちょっと寂しそうだった。

 

「……本当にそれで良いんだな。君は(ヽヽ)

『嗚呼。ゲートマンやケンドーマン達、あとはタケシ(ヽヽヽ)によろしく言っておいてくれ。……大体エグチも、私が「記憶を取り戻して」いたことには気付いているだろう?』

「それはな。お前のオペレーターは私だ。…………思えば、ウラで君を拾って、その『再生用メインフレーム』に搭載してから、長かったような短かったような」

『フン。付き合いの濃さに期間の長さをもって語るのはナンセンスだ。それに「バンチョーマン」としての新生したネットナビとしての生涯は、中々悪くはなかったぞ。

 この世界が正しく「ヒト」と「ナビ」が一心同体である世界だと身をもって実感できた』

 

「二人とも、一体……?」

『二人とも、一体――?』

 

 僕とエックスの声に、バンチョーマンは少しだけ後ろを振り返りながらニヤリと笑った。

 

『気にするな、とは言っても無駄だろう。ゼロはそのうち「悩まなくなる」だろうが、エックスは本質的に悩みを抱えがちだろう。だが、それは良いことだ。存分に悩むと良い。

 悩みに悩んで悩み抜き、その上で出た結論に責任をもって――引き金を引くのを躊躇うな』

 

 だから私は、私の決断に覚悟をもって、この場を抑えよう――――。

 

 そう言ったバンチョーマンは、エックスマンにラッシュの隙間、片手のフィストをぶつけて、エリアの外まで強引に吹っ飛ばした!

 腹部の痛み、だけど確かに光博士のパッチのお陰だろうか、吐き気を覚える程じゃない。ただ、状況はそういう次元の話じゃない。

 

『バンチョーマン!』

 

 エックスと僕の心は重なってる。ここに繋がる道の崩落したエリアの出入り口のリンクゲートで、思わずバンチョーマンの名前を叫ぶ。

 彼はこちらに背を向けて、そして。

 

 

 

『あまり悲観する必要もない。何故ならば、番長とは不死身だからな。

 それにだ。――――このオソマツなゲテモノのウィルスを、別に私が倒してしまっても構わないのだろう?』

 

「それ死亡フラグ!?」

『それ死亡フラグ!?』

 

『…………っ』

 

 

 

 思わず僕とエックスの声が重なり、ゼロが悲し気に呻く。

 そしてバンチョーマンの拳と、合計20本の指から放たれたヒートブレスみたいなのがぶつかった瞬間、その衝撃でエックスとゼロはエリアの外まで弾き飛ばされた――――。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

「名人、バンチョーマンは……」

「……エリアのリンクが完全に遮断された。仮に生き残っていても、プラグアウトは不可能だな」

「…………えっと」

「あやまらなくて良い。さっきも言ったが、もともと私と彼は『そういう取り決め』だった」

 

 僕の病室というか、ベッドのあるあの部屋まで戻って来た。エイリアさんとシエルちゃんは、破損したゼロのデータの復元を試みている。隔離カプセル内のゼロは、光博士の解析したソースをもとに、色々と調整する予定らしい。

 とりあえず数十分もあれば一通り目途を立てられるらしいから(早すぎない!?)、その間に僕は一旦横になった方が良いだろうって話だった。

 

 とはいっても目は冴えちゃって、全然寝れそうにない。暇をしてそうな僕に、バンチョーマンがなくなってしまった名人が暇つぶしにと話し相手になってくれることになった。

 

 自分の持ちナビがデリートしてしまったかもしれない、という状況でも。名人は大きく落ち込んだり、寂しそうにしてたり、そんなことはあまりなかった。理由を聞いてみると、けっこう凄い理由だった。

 

「前に、プログラム君の話をしたことがあったね。現在は私がインターフェイスなどを担当してると。…………その関係もあって、あまり一喜一憂できなくなってしまった。

 日に何体ものプログラム君を呼び出しては、その内部構造をいちいちこちらの手で調整したり操作したりする。いわゆる『疑似人格プログラム』まで複雑化はしていないが、そういった中身に触れ続けることで、感動したり驚いたりすることはあっても、プログラム1つ1つへの思い入れは、そこまで強くなくなってしまったんだ。……コーディングした結果、出来が良いものを作れればそれは誇らしいがね。

 もちろん、プログラム君もナビも思い入れはある。思い入れはあるが、思い入れすぎることが難しい。……冷たい言い方になってしまうかもしれないが、『没になったら次の企画』があるから、ウジウジしていられないという都合かな」

 

 まあコーディングでもエイリアさんには一生かかっても勝てそうにないが、と苦笑いする名人。それって、美容整形とかで女性の人体にメスを入れ続けたお医者さんが、女性に対して人体構造を連想することはあっても性的な興味を抱けなくなっちゃったー、みたいな。そういう慣れみたいなものなのかな。

 ……我ながら酷い例えだけど、母さんがテレビ見て「私も脂肪吸引してもらった方が良いかしら」とか言ってるのを前に聞いたせいだと思う。ちなみに父さんに猛反対されて、運動療法をしている(サボり気味だけど)。

 

「ただ、バンチョーマン個人に関しては少し惜しくは思うな。()は少しだけ扱いが違うから」

「…………えっと、バックアップとかないってことですか? さっきのやりとりを聞くと」

「嗚呼。バンチョーマンは、構造が特殊でバックアップを容易に残せないんだ。

 というよりも、彼の『本体』に疑似的なそういう機能が搭載されているような構造をしているらしく、ナビデータの差分バックアップをする際にメモリ不整合や論理矛盾を引き起こして、ディスクをクラッシュさせてしまうというのが正しい」

「えっと……、流石にそこまではわからないですけど、やっぱり特殊ってことです?」

「ああ。…………そうだね、暇つぶしには丁度良いか。バンチョーマン、それになる前の『彼』との出会いの話を少ししよう」

 

 苦笑いする名人は、眼鏡越しだけど遠い目をした。

 

「…………何年か前、科学省に入省する前後だったか。大会でブイブイ言わせてたり、『ソウルバトラー』なアイツとしのぎを削っていたりと、それなりに青春っぽいことをしていたのだがね。その時、ゲートマンと一緒にウラの最奥を探索するような遊びをしていた時期があったんだ」

「ゲートマン?」

「ああ。私の『元々のナビ』だ。今でも現役だが、用途で使い分けてる」

 

 そういえば、そんなナビもいたような……。エグゼ2だったっけ、やったことはないんだけどコ□コ□で、友達に見せられたことがあった覚えがある(僕はボ〇ボ〇民だった)。

 ……あー、そういえば確かに名人のナビだった。あの名人、マスクしてたから今の素顔の名人とイメージがあんまり一致しないんだけど。

 

「エイリアさんのコーディング技術を間近で見たり、炎山君と大会で対戦して負ける前だったから、私もだいぶ調子に乗っていてね。

 あー、ウラそのものはわかるかな? ウラインターネット。アンダーグラウンド、ダークウェブとか言い方は色々あるが、よりハッカーやクラッカーや危ない人も多く生息(ヽヽ)している、メインストリートみたいなのとは対照的なエリア。

 そのウラインターネットの最奥に有る隠されたリンクゲート、その先のエリア。そこにいる最強のネットナビ『S』と戦ってみたいと衝動にかられて、色々とやっていた時だった。

 ヤマトマン、というナビと遭遇した」

 

 ヤマトマンってそれは……、エグゼ3の水色なメタリック甲冑を着用したナビ? だった覚えがある。確かシークレットエリア、名人が今言った「ウラインターネット」の最奥から行けるエリアで、守護者的なことをしていたはずだ。

 そんなヤマトマンと遭遇したってことは、名人けっこう凄いところまで足を進めたってことでは……?

 

「ヤマトマンは元オフィシャルのナビでね。面識はなかったが、私自身は情報を持っていた。

 そんなヤマトマンと遭遇した際、彼が持っていた『崩壊しかかったナビ』、それがバンチョーマンの元になった彼だ」

「…………さっきから彼って言ってますけど、何で名前とか呼ばないんですか?」

「本人いわく『記憶喪失』だったからね。……私も解析を試みたが、色々とお手上げだった」

 

 なにせ未知の言語体系を用いたプログラムソースとしか説明がつかなったからな、と名人は肩をすくめる。

 

「既存のどのプログラミング言語をベースに逆コンパイルをかましたり、仮想環境でデバッグモードを探したりしても、欠片も情報が出てこないどころか文字化けしたまま。唯一、動作の傾向に『作業用ロボット』のような微細な指示とマニピュレーター操作のようなアウトプット情報があったが、それだけだった。

 まあ、そんな彼を、ヤマトマンが裏の適当なところに捨てたのを見てね。ヤマトマン自身と戦う必要性もなく、彼もゲートマンをスルーしたから、せっかくだしと拾って色々いじったり確認してみたんだ」

「悪性ウィルスだったらどうするつもりだったんですか、名人……?」

「まあ調子に乗っていたんだろう。まだ十代だったし……。

 そこから不思議なことにね。どうしても私は、そのプログラムデータの残骸を復元してみたかった。これくらい簡単に戻せるだろう、戻して情報を聞き取れるだろうとか、そういうプライドもあったかもしれないが。まあ、それでかな? 『既存プログラムの保護、再構築』というのを、私が掲げるようになったのは」

 

 その後、科学省で広報活動とかしながら新人らしく右往左往しつつ、それはそうとして趣味で「彼」の復活をさせられないか、手を尽くしていたらしい。

 

「メインフレーム構造とかについて、エイリアさんに聞き続けて、未だに理解できるところと理解できないところが共存していたりするが……、そんなちょっと足りない技術力でも、作れたのが今のバンチョーマンのメインフレームだった」

「もともとナビ自体は、業者が作ってたってことです?」

「言ったろう? 『既存プログラムの保護、および再構築』だと。

 あのメインフレームは、1つは本体たる()を内部に搭載し、その出力されるアウトプットの数値をもって、通常のネットナビと大差ない動作を実現すること。

 もう1つは、その傍らで失われたはずの彼のデータソースに相当する物を、彼自身のデータ出力からメインフレームが学習し、補填し、再構築していくという仕様になっている」

「…………? 何かしれっとトンでもないこと言ってません? 色々」

「まあアレだな。構造は未知のプログラムでも、インプットとアウトプットのAPI(プログラム接続部分)そのものは、案外簡易に出来ていたのが大きかったよ。しかもそれでいて種類が多く、拡張性『だけ』は著しく高いとか……。彼を作った人は天才だな、きっと。あんなものがウラに存在するなど、正直世界の広さを思い知ったとも」

 

 そして、そんなメインフレームを調整して生まれたのがバンチョーマンだったらしい。

 

「外形が番長なのは、元々の彼の顔が現行のものと同様のデザインでね。思わずピンと来て、帽子をかぶせたりして私の趣味でデザインしたんだ」

「あー、なるほど…………」

「彼自身は記憶を失っている、と私に言ってきた。そしてこの世界のことを広く知りたいと。……どこまで本当のことを語っていたかは定かではないが、流石に内部のメモリーまでは解析の仕様がなかったのでね。そこは流石に放置させてもらったが…………、そこから1年以上は、バンチョーマンがメインだったな。

 もともと戦闘用ナビとして作られていたのか、バトルオペレーションの処理や判断力は高かったのでね。色々データ改造やアーマー追加も含めて、後は趣味の領域だ」

 

 苦笑いする名人は、そこで一つだけ取り決めていたことがあると言った。

 

「バンチョーマンがもし記憶を取り戻したら、私の元を出奔するかもしれない。その時に、話し合って、納得してもらえなくても見送って欲しいと。……その代わり、バンチョーマンはそれまで私に全面協力してくれる、というものだった」

「………………」

「記憶は、最近妙な言動が増えていたから『もしや』とは思っていたけれどね。再生プログラムで破損していたその部分が補填されたのかは定かではないが。

 それを、まさか君たちを逃がすための口実として言ってくるとは、思っていなかった。…………番長とは名付けたが、どっちかと言えばこれじゃ、まるで隊長と言うべきだったかもな」

 

 だから気に病まないでくれ、と名人は僕の頭を撫でる。

 

「全く、思う所が無い訳ではないが。そうするのが必然だとバンチョーマンが判断したのなら、私はその意見を尊重したい。

 それでも、流せないと言うのなら……。心を病まない程度で良いから、彼のことを忘れないであげてもらいたい」

 

「………………」

『――――――』

 

 名人のその言葉に、僕も、エックスも、何一つ反応を返せなかった。

 しこりみたいなのが、心のどこかに残った。その事実だけが、僕とエックスとに残った。残って、しまったんだ。

 

 

 

 

 


【作者メモ】

・ドリームウィルスハンド:正確には「R」のハンド。ゼロウィルスを完全に取り込み出来ていないので、そのゼロの破片を持ってるエックスたちを追って来てる。

 

・ガンサイとエックスに訝し気なエイリア:二人のやりとりが二人分の会話じゃなく、一人分の独り言になっていたため。

 

・別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?:た し な み。きっとバンチョーは凄い皮肉めいた状況だとか笑ってる。

 

・名人の過去:このあたりは当然のように本作の為のお話。アニメでも経歴不明すぎたりしたけど、あくまでエグゼの名人は名人であって、江口Dではないということで(汗)

 

・ウラで捨てられたバンチョーの「本体」:詳細やるとしたら「2」編以降予定。まあ正体? というかは一部知ってる人にはお察し(?)かと思うので、あえて言及はしときません(Σ)

 エイリア向けには、流石にウラで拾った怪しいプログラムだとか言えないので、もっとそれっぽい詐称(?)をしているはず。

 

 

 




次回、お見舞いと悩んだ末の答え(予定)
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