ロックマンエグゼ世界でエックス的なナビを持ってしまった 作:黒兎可
「気を付けて。スカルマンは『オニビⅠ』と『シャレコーベイⅠ』の専用チップデータをインストールしたわ。おそらく両方とも使ってくるはずよ」
「口から火を吐くのと、頭を飛ばしてくるのですよね。
……腕は?」
「あれはボーンストーカー。チャージ技だから基本能力よ」
エックスバスターでいう二段溜め撃ちみたいな扱いなのだろうと、とりあえず話を聞きながら今回のカスタム用バトルチップを確認する。
……ショックウェーブはともかくキャノン2枚、エリアスチールにソードと手持ちの編成が色々微妙なところだ。まあ初期フォルダベースだからそこは仕方ないよね。
つまり、全然強いチップは入っていないのだ。
一応フォルダはゼータキャノン1と、使ったことはないけどドリームソード用にコードをそろえたものが入ってはいるのだけど、これも中々そろわないと言えば揃わない。
ただスカルマンは割と接近してくるようなので、今回はドリームソードの方をそろえよう。
肉を切らせて骨を断つ、と気楽にできる環境なら良いけど、生憎ここはデリートでゲームオーバーからリセットをかけてセーブポイントから再開ということができない現実世界。チップ選びとバトルオペレーションは、どうしても慎重にならざるを得ないんだ。
リカバリーとキャノンをインストールして、前方のスカルマンが放つオニビを避ける。
両腕をブーメランみたいに飛ばして来てるのを避けつつになるので、多少は行動が制限される。とはいえクラックアウトとかみたいにひび割れパネルとかではないので、実は今のところはそこまで影響が無かったり。
とりあえずキャノンを当てた後にエックスバスターを連射。貫通なので目の前のブーメラン腕も通過して、後方のスカルマンにダメージ。
怯みはしないけど動きが早くなるわけでもないので、今のうちに次のバトルチップ。ショットガンとキャノンのコードが共通だったので、リカバリーと併せてインストール。
リカバリー系のチップばっかり引いてるのは何と言うか偶然なんだけど、安全マージンがあるのは良い。
今の所安定して削れている。削れているけどその間、あのネットナビはこの場から移動したりしていない。どちらかというとスカルマンを操っているというよりも、僕とエックスマンのことを注目しているような気がする。
だからといって手出しはしてこないし、不気味といえば不気味だ。
そうこうして、スカルマンのHPが 300 を切った時。僕の手元には、同じコードのソード・ワイドソード・ロングソードの三枚が揃った。
エリアスチールとそれらをインストールし、エックスマンの視界で
そこには、ドリームソードではなくベータソードという文字が出ていた。
「…………えっ?」
あれ? ドリームソードではない? いやほら、ナビ視点で前方2マス、左右3マスの計6マス分を400ダメージでぶった切る、ゲーミングなグリーン色した刃のアレ。
ま、まぁそうは言ってもせっかく作ってしまったんだし、発動しない訳にもいかないけど…………。エグゼ3の最初の頃に、ゼータキャノンを発動したものの効果が解らず
さ、流石に大丈夫だよね…………。
『キッシャッ!』
『変な鳴き声!』
「変な鳴き声!」
そんなトラウマ? も、こちらに接近してきてオニビを放つスカルマンの変な鳴き声で我に返る。エックスマンと同じ感想を言った上で、僕らはベータソードを発動した。
…………視界の端に「6」の数字。PETの画面にも6の数字が、エックスマンの頭上に表示されてる。
「って、いやどういうことっ!?」
あー、やっぱりドリームソードと全然違うタイプのプログラムアドバンスだ……。
使い方わからないけど、まず無敵状態になっていないのと、頭上のカウントが時間で減ったりしていないことから、おそらくこれは「使用回数」だな。
とすると、ドリームソードの前身なんだから、たぶん6回分ソードの威力でドリームソードの斬撃範囲をぶった切るとか、そんな効果なんじゃないかな。
よし、と。とりあえず中距離にある程度離れたのを確認してから、エックスマンはベータソードを再度起動した。
…………前方、通常の近距離だけのソードが振るわれた。
以上。
『――――――――』
「……………………」
思わずエックスマンも僕も黙り込んでしまった。頭上のカウントは「6」から「5」に減少していて、何だコレって感じだ。というか何だこのプログラムアドバンス。ひょっとしてソードを6回使えるとかそんな効果か? いや流石にそれだとゲームバランス成り立たないだろうから、もうちょっと違う効果もあるんだろうけど…………。
「……エックス、接近しよう」
『…………仕方ないね、ガンくん』
ただ一つだけ確定しているのは。少なくともソード系のバトルチップなので、接近さえすれば後はどうにでもなるってことだ。
最大ダメージを狙うなら目の前に相手を置いた状態で、ベータソードを全部振るう事。
それなら確実に全部の攻撃を当てることが出来るだろう。
……まあオニビの直撃に怯えながらになるんだけど。
ゲームのソードと少し違い、「現実世界」としてのエグゼ世界はアニメのバトルに近いところもある。バトル開始時にお互いのエリアテリトリーが表示されて、バトルチップの効果範囲とかもそれに準じるのだけれど、だからといって絶対に踏み込めないと言う訳ではないのだ。
それこそ普通はそれを許さない戦闘をするし、トラップだって仕込むオペレーターもいるだろうけど。これによって何が起こるかといえば、つまりソードだ。
ゲームなら敵が手前のパネルから離れられたら、こちらからは絶対に当てられない通常のソードが、それでも頑張ればギリギリ当てられる装備になっているのだ。
「うおッ!」
『――――!』
ただ、僕らの場合は大変なのは僕になるのだけど。
フルシンクロしてる訳でもないのに視界を共有してる僕とエックスマン。なので僕のオペレート状況をエックスマンはPET越しに俯瞰して見ることも出来るし、逆に僕もエックスマンの視点でどう動いて視えているか、どれくらいの距離感が合って、相手がどれくらいの強さなのかをより肌で感じることが出来る。
それはつまり、痛みだけに限らず目の前で攻撃されたりすると、普通にびっくりするし怖いってことだ。
『キッシャッシャ!』
だから目の前にスカルマンの顔面が巨大化して落下してくる姿とか見てしまうと、思わず腰が抜けてしまいそうになる。
情けないけど悪いか! どう見てもインディ〇とかの映画にありそうなトラップだぞ! 撮影じゃなくって一歩間違えれば本当に命を奪われるようなのと相対している状況。小学生、前世込みで考えても大学入ってちょっとくらいの僕に、こんなものに慣れろと?
いや無理無理、こんなの何度もやってたら直接死なないにしても寿命縮まるって。
メットールとかはその点、こちらと一定距離を保ってゲーム通りの動きをしてくれるので凄い可愛いものだ。
「今だ、エックス!」
『――――ッ!』
タイミングをはかり、再びスカルマンの巨大生首が落ちる瞬間を狙って全身。背後に落ちたそれを無視して、前方の胴体を二度切りつける。
一度目はソード、2度目のこれは……、ワイドソード?
…………あー、なるほどそういうことね完全に理解した(大体理解した)。
とするとベータソードのベータって、そういうことかな? ギリシャ文字の2番目だからとか、そんな理由。
どうやらこのベータソード、材料に使用したチップを2回まで使用することが出来るようになるタイプみたいだ。
総合計ダメージは 480 と考えると中々だけど、この待機状態の持続時間がいつまで持つのかとか、そもそもドリームソードと比べて当てづらいだろうこの仕様。いかにも初期の頃の調整不足みたいな「らしさ」を感じる。
ひょっとしなくても、これやっぱり最初の頃にだけ存在して後のシリーズで消え去ったプログラムアドバンスなんじゃ…………。
まあソード、ワイドソード、ロングソードがドリームソードにいつかなる日が来ると信じて、この微妙に使い辛いプログラムアドバンスのチップはフォルダに残しておこう。
『とりあえずこれで、残りは半分――――』
「頭が消えたら一歩後退して発動だエックス!」
一歩後退してそのままワイドソードをあえてからぶり、ロングソード二発。
それでバトルが終了するのは、なんというかシンプルすぎないだろうかとちょっと思ってしまう。こう、HPが減ったら行動が変わったり特殊な攻撃したりと言うのが染みついてるというか…………。
アニメだと超高速移動とか、なんかそんなことをやっていた気がするスカルマンだったけど、こっちだとゲーム版に準じているのかそんなことはなかった。
あくまでも普通の、民間人のナビっていう扱いなのだろうか。……いや、逆に言うと今のプログラムアドバンスのゲームバランスで成り立つレベルだということだろうか。
『キッシャ…………』
「お姉さん、いけます? プラグアウト」
「ええ。……スカルマン!」
なお、HPがゼロになってもこの世界では即座にデリートと言う訳じゃない。
HPがゼロになった状態は、イコールで行動不能と言う判定になる。その時点でネットナビは活動停止し、オペレーターのプラグアウトを待つか、外部からエネルギーを得られないと、となる。3ではミニエネルギーとか回復アイテムもあったはずなんだけど、この時代はPETからの給電で自動回復する仕様らしかった(本当かよ)。
この状態で攻撃を当てるとデリートと言う判定になるので、隣のお姉さんは流石に行動が迅速だった。
無事プラグアウトされたのを確認して、エックスマンはマーティというらしいネットナビに向き直る。既にPAはアンインストール状態になっているので、戦闘するならバトルチップを再度読み込み直さないといけない。
とはいえ、エックスバスターは構えて相手の出方を見るしかない。
そんな僕らに、へぇ、とマーティは愉し気に笑った。
『中々やるじゃないか、アンタ。名前は……エックスで良いかい?』
「…………」
『…………』
あー、うん、まぁエックスでいいかな。とりあえず同時に首肯する僕とエックスマンに、隣のお姉さんは「エックスマンではないの?」とか小声で聞いて来るけど、こればっかりは無視だ。
いやだって、エックスマンって名前ダサいし。エックスで止めとこうよ父さんさぁ…………。僕の名前だって「ガンサイ」だし。岩を砕くで
僕の名前どころかエックスマンの名前すら、既にナビネームとナビマークとに紐づけて登録されちゃってたものだから、今更変更が利かないので仕方ないんだ。すべては僕が知らない間に全て始まり、全て終わっていたんだから。
まぁ、それがなくても改名とかはするつもりもないんだけど。せっかくつけてもらった名前だし……、ダサいけど。
なので意図的に騙した? とかじゃないけど、エックスってシンプルな名前を何度か口にして「良い名前じゃない!」とか言ってくるマーティに、敵ながらなんとなく申し訳ない気持ちになってきてるんだよね…………。
さてと。
「エックス、行くよ――――」
『――――プログラムアドバンス、ゼータキャノン!』
とまこうやって、とりあえず一掃するために必要なバトルチップを目視で選んで準備する。
バトルチップって、PETが意外と大きいせいで小学生の手でも気持ち大きいサイズなので、ちょっと時間がかかるから、その分エックスのエックスバスターで頑張ってもらうしかない。とりあえずゼータキャノン中は5秒前後余裕があるので、その間に次のチップを――――。
「これね」
「えっ?」
そして、僕が選ぼうとしていたショットガンを、無表情なまますっと差し出してくれたお姉さん。
この一回だけなら特に何かあるわけではないのだけど、同じ要領で「これね」「次はこれ」「これで終わりかしら」と次々に僕が手を伸ばすよりも先にバトルチップを選んで手渡してくれる。
この妙な動きに、ちょっと恐怖を抱く僕だった。えっなにこのお姉さん怖い……。超能力者か何か?
とにもかくにもウィルスの一掃が終わると、インターネットエリアのウィルスも姿を消していた。
「お姉さん、スカルマンどうです?」
「…………暴れているわ」
言いながら、彼女はPETの電源を落として折りたたんだ。暴れてる? 電源を切る対処をするってことは、ひょっとしてゼロウィルスとか?
えっでも、感染したら暴走するって話はあったけど、明らかにこれってあのマーティってナビに操られていただけなんじゃ…………? 駄目だ、全然調べてないからそのあたりの情報、全然しらないや僕。
まあ、バトルは終了だ。エックスマンもプラグアウトさせて表に出て周囲を見渡すと、避難するかしないかでパニックになっていた人たちも落ち着いている。……あー、あのカツラが焼けちゃったおじさんはご愁傷様です……。
でも何と言うか、いくら何でもウィルスを倒したからって即日すぐに営業再開しようとしている店があるのは一体どういうことなんですかね、ゲームじゃないんだから……。一応現実なんだから、コンロとかスプリンクラーとか壊れてるんじゃない? と思うのだけど。
いや、でも火事が止まったとするなら最終的にスプリンクラーが動いたからってことになるのかな? 何だろう、この理不尽。目の前でスプリンクラーが火を放ってるのを見たせいなんだけど…………。
『――――』
エックスマンがチャットで「火を噴く中でラーメン食べてたガンくんが何か変な事考えてる!」とか煽ってきたので、ハハハと笑いながらPETの画面に軽くチョップのポーズ。
「とりあえずは何とかなった、のかな? って、わっ!?」
軽くため息をついてスカルマンのオペレーターのお姉さんの方へと視線を向けたら、少し屈んだ彼女の顔が、凄い近くにあった。なんというか、こう、普通に美少女な感じで非常にどぎまぎする。大学生的には色々アレかもしれないけど、一応小学生なのでこれくらいは許してもらいたい。
超近距離で僕の目を覗き込む彼女。じーっと数秒見つめて、少し口を開いて。
「…………どうして生きていられるのかしら。その魂は『1つしかない』のに」
「えっ?」
「割れた魂。ロックマンのように二つの魂を重ねるのではなく、それは常に一つがそこにあり続けてるだけ。…………消滅はすなわち、魂の崩壊」
「あ、あのー …………」
何か物凄く危なそうなことを言われたような気がする。割れた魂とか、さっきもそんなことを言っていたような……。一応はロックマンエグゼのゲーム世界がベースであることを考えると、このお姉さんの謎キャラっぽさにも何か意味は有りそうだけれど。
少し逡巡するように腕を組んで足元を見つめると、彼女はバトルチップを一つくれた。
「これは……、スカルマン? お姉さんのナビチップです?」
「うん。あと、PETを出して」
「えっ」
何をするのかと思いきや、そのままこちらのアドレスを確認して、彼女のHPのパスコードを共有された。
「あの、ごめんなさい、何か色々展開がいきなりすぎて、良く判らないことになってるんでしゅけど…………?」
「噛んだ?」
「噛みました。って、それは別にいいんでっ」
「今のままだと……、何か良くないことになりそうな気がする。だから、困ったときは連絡して良いから」
「は、はぁ……」
「私は、黒井みゆき。デンサンシティで骨董店をやってるけど、占いもしているわ。結構当たるって評判だから、そういう相談でもいいから。
何か困ったことが有ったら力になるわ――――――
ぎょっとした。僕、全然名乗ってないのにそれ占いで当てて来たの!? と。そんな僕の顔を見て、彼女は少しだけクスリと笑った。
「PETの横にマジックでお名前が書いてある」
「…………あっ!」
小学生あるある? 子供の私物に親が全部しっかり名前を書いてるっていうアレだった。
って、いやそう言う話じゃなくって……。一体何がどうしたものなのか、色々何か聞いた方がいいのかもと思ったんだけど、そしたら彼女の方が時計を見て「仕事の時間だから、またね」と言った。
「はいこれ。
あっそれから…………、今日はもう、寄り道しないで帰ることをおすすめするわ」
「えっ? えっ、いや、気分転換で来たからそういう訳にも……。
あー、行っちゃったよ…………」
去り際、彼女のやっている骨董店のビラっぽいものを渡され、僕はロクなリアクションを返せなかった。……ちなみに中華屋さんにお金を払いに行ったら、みゆきお姉さんが僕の分まで支払ってくれてた。何というか、凄い。
※ ※ ※
なお、みゆきお姉さんのその占い? っぽいアドバイスについてだけど。
「――――私はオフィシャルネットバトラーのエイリア・C・防守です。さきほど近隣のネットワークで目撃証言があったのはアナタですね。少しお話を聞かせてもらえますか?」
「…………」
本屋とおもちゃ屋と電気屋で時間を潰して、ファーストフード店でハンバーガーをおやつに食べて帰ろうとした時。
何か身長の高い、ハーフっぽいオフィシャルの美人さんに絡まれた。
頭の中に響く、みゆきお姉さん、去り際のアドバイス。………………この世界、占いとかそういうオカルトも信じた方が良いのかもしれない。
みゆきさんの扱いについて、ちょっとアンケートお願いします…
黒井みゆきの扱いについて、以下どちらが良いでしょうか? 参考にします
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ゲスト
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準レギュラー
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サブヒロイン