ロックマンエグゼ世界でエックス的なナビを持ってしまった 作:黒兎可
「プラグイン! エックスマン・トランスミッション!」
「プラグイン。……スカルマン・トランスミッション」
モーションもそこそこに、ワイヤレスプラグ端子を接続して無線プラグイン。
ただ流石に、それよりも早くマーティの槍がゼロの眠るカプセル目掛けて――――。
『だ、駄目! 何やっているのマーティっ!』
そんな彼女の前に立ちはだかったのは、シエルちゃんだった。
パラレルショットに手先を変形させて、槍よりもマーティ本体に一発射撃。とっさの反応だったんだろうけど、マーティもシエルの方に攻撃を軌道修正して、彼女の腕を抉った。
流石に切断されて落ちはしないけど、腕を抑えてぺたんと座り込むシエルちゃん。
エックスとスカルマンのデータ転送が完了したのは、丁度そんなタイミングだった。
「エックス!」
『――――!』
口頭では何も言わず、
マーティも思わずといった風に後退、とほぼ同時にボーンストーカーを両腕から投擲。それを槍で往なして、マーティはエックスを見てびっくりした顔をした。
『あ、アンタ……、エックスって言ったかい? こんな所まで何しに来てるんだい、坊やたち。普通、科学省はお子様立ち入り禁止だよ? ネットナビも人間も』
「何しに、何しに…………? ゼロの修復の協力、とかになるのかな?」
『――――最終的には、そうだね。それ以前に入院とかもあるけど』
ついでにスカルマンの方も見て、少しばつが悪そうなマーティ。この感じ、もしかして僕たちとの初遭遇をちゃんと覚えてるってことかな……? やっぱりそこのところ、コピーマンとは全然違う。
そして「困ったなぁ」という風に頭をかいて、槍を背負い直した。
「……マーティ、いきなりどうしたんですか?」
『どうしたも、こうしたもないよ。エイリア、アンタこそどうしたんだい。何でそんな、ウィルス相手に何やってるんだい?』
エイリアさんの質問に、むしろ質問を返すマーティ。面倒くさそうにしてるけど、とくに前みたいな感じで歌って洗脳したりとか、そういうことはしてこない。それだけで戦意が思ったよりも低いってことはわかったけど、それはそうとしてシエルちゃんの方に注視していて、微妙な感じだ。まるで少しでも動いたら、すぐ攻撃できるような、そんな状態。
「どうしたも、こうしたも、ありません。光博士やその他数名、実際に戦闘した当事者たちの助命もあって、ゼロウィルスをネットナビに作り変えることになったんです。光博士お墨付きで、後天的に疑似人格を獲得したウィルスですので」
『えっ本気で言ってるのかい? うわー、ちょっと面倒だよ』
『面倒って、何が?』
『キッシェ?』
エックスマンとスカルマンのリアクション。……あっちょうどボーンストーカーが両腕に戻った。ガシャンガシャン! ってそんな音に、エックスマンはちょっとびっくりして横を見て、一歩後退。
そんな様を「何やってんだか……」みたいな顔をして、マーティは口を開いた。
『作り替える、オーバーホールするってところかい? だとするなら、アタイは反対だよエイリア。はっきり言って「恐ろしすぎる」』
「恐ろしい……? 何を知っているのです、マーティ」
『知っているって言うか……。アタイどうも暴走中、一度そこのゼロの
その時に解析したログが残ってるんだが、ヤバいよ。そもそも設計思想がヤバい。直のコードにコメントアウトされてんのか知らないが、関数名が完全にヤバい。直訳で「
「いや物騒すぎない?」
『いや物騒すぎない?』
「…………リアクションが素直ね」
「ええ」
『いや、それより何でそんなユニゾンしてリアクションしてるんだい?』
みゆきお姉さんやエイリアさんはともかく、マーティからそんなツッコミが入った。いや、でも別に僕とエックスって思考回路がかなり似ているから、それ以上の話はないような気が…………。
『……まあエックスの坊やたちについても色々言いたいことはあるけど、何よりコイツの封印されていたエリアって、ワイヤーフレームむき出しになって、ほぼ地面だけのエリアじゃなかったかい?』
「えっと、記憶はないのですよね? その部分については」
『嗚呼。でも、解析データを振り返ると「そうなる」のも当然なんだ』
『ゼロウィルスの本来の用途は、ネットワーク破壊プログラム――――既存のネットワークを低次元ネットワークレベルにまで落とし込み、あまつさえそのうちオンライン上の電子機器そのものを全て破壊する』
……ロックマンゼロにおけるゼロがエックスの親友で、エックスとの過去の関係はイレギュラー戦争って言うのが妖精戦争になったっていうのがふわふわ解ってるくらいだ。ゼロシリーズ範囲内の出来事ならある程度は色々いえるけど、この世界でマーティの口からその話を聞く限り、ゼロが相当ヤバいってことだけはわかる。
わかるけど、そこは重要じゃない。こんな、メタ的に重要っぽいキャラクターが、一回こっきりでぶっ倒されて終わりなんて、あまりにアレじゃないか。だってゼロってば、人気過ぎて単独スピンオフ組まれるくらいなんだし。割とシリーズの行く先々でロクな目にあってない気がするけど(ゼクス含めて)。
『だから危険なんだよ。アタイが色々やらかしてエイリアに迷惑かけたこととか、戦闘用でもないシエルを表に引きずり込んだこととか、それだけじゃない。そのオトシマエだけじゃなくって、もっと根本的に』
だから危険だから、例え修復したとしてもいつまた暴走しないとも限らないと言うマーティの前に、立ちはだかるエックスマン。
『何の真似だい、坊や』
『――――何と言うか、それを判断するのはもう俺たちじゃないでしょうってこと、かな』
メンチを切ってくるマーティの顔が怖い……。エックス視点でガン飛ばしてるマーティは、何だかレディースさんっぽい感じだ。なまじエイリアさんにちょっと似て美人さんなのも、その圧力に拍車をかけてる(目つきとかは全然似てないけど)。
そしてこの状況でも、いまだに遠くですーすー寝息が聞こえてくるので、アルエットちゃんは熟睡中らしい。大物というか何と言うか、そもそもネットナビに睡眠が必要かどうかみたいな話になってくる気がするけど、そこはナビの性能次第で必要不必要が変わるって父さんに聞いたことがあるので割愛。
「少なくとも、こうして一度捕らえて、改良して保護するって話に流れたのは、光博士がメインで話し合った結果だと思うんだ――」
『――だから、現場判断で勝手にやらかすと、それはそれで問題じゃないかなーって。主にエイリアさんの責任になっちゃうよね?』
「マーティが暴走して暴れてた時だって、色々ペナルティを喰らっていたみたいだし――」
『――1ネットナビとしては、そのまま大人しくエイリアさんの元に帰って、ワクチンプログラムをインストールして貰った方が………………』
『いやいやいやいやいやいや、気持ち悪いよ坊やたち!? せめてどっちか片方だけしゃべってな、双子のお笑い芸人でもここまでシンクロニティ発揮しないよ、気持ち悪い!』
「『えっそうかなぁ……?』」
「………………そういう所よ、ガンサイ君」
「というよりも、自覚なかったんですか……?」
みゆきお姉さんはナチュラルなまま、エイリアさんは昨日みたいな顔してる。えっと、いやでも別に、そんなに変なことでもなくないかな。似たような考えをしている同士が、一緒にしゃべってるわけだし……。思わず画面のエックスと顔を見合わせるけど、向こうも不思議そうにしてるから多分、大した話じゃないはずだ。うん。
「まあとにかく。一応方針が定まってて、今の所はゼロも沈静化してるわけだし……、バグ化してて色々ヤバいから早い所次の手を打たないといけないっぽいんだけど。
だから、むしろマーティがこうして時間稼ぎみたいなことをすればするほど、ゼロの改造? からは程遠くなっていくっていうか。シエルちゃんだって、バトルチップ転送されたらそっちに攻撃しかけるつもり、だよね」
『まあそうだねぇ。回復されちゃ、そこのゼロの修復を再開されちまう。
アタイからすれば、願ったりかなったりって言えばいいかい?』
『――どうだろうね。それが本当に君の望みだっていうのなら』
ん? おっと、エックスマンと思考がズレた気がする。今の一言で、エックスが何を言いたいのかちょっとニュアンスがわからない。
そんな僕の隣で、みゆきお姉さんが、マーティを見ながら一言。「そう、死にたいのね貴女は」と、やっぱり何か物騒なことを言っていた。
「マーティ、どうして…………。確かに未だ事件が立て込んでいるから、あなたの捜索には出ることが出来なかったけれど」
『そういうんじゃないよ、エイリア。別に嫉妬するような年でもないし。アンタに作られてから、アタイって何年経ってると思うんだい。入局してほぼすぐに作り始めたろ。
だから、そういうんじゃないんだよ』
『――――むしろ、だから今の行動に繋がってるんじゃないかな』
『……全く、わけがわからないねぇ。そんなに暇じゃないんだよアタイだって。
来な、ドリームビット! “LA~~~~♪”』
喉に手を当てて歌い出すマーティ。と、それと同時に目の前にエリアの穴が開いて、中から出て来たのは……、あのトゲトゲした感じの本当にドリームビット!? しかもしっかり5色な赤青黄緑白!? ドリームオーラ標準装備では特に最後の? ウィルス自体はなんかよく知らないけど、エグゼ3の飼育ウィルスに出て来たから存在だけは知っているんだ。
そんなのが目の前に出て来たものだから、内心腰を抜かす僕と、「まずいなぁ……」と呟きながらエックスバスターを構えるエックスマン。ちらっと見ればシエルちゃんも周囲をドリームビットに囲まれてるし、スカルマンもそれは同様。なんならアルエットちゃんも囲まれてるけど、彼女は彼女でいまだに気持ちよさそうにぬいぐるみ的な何かをもって寝てて可愛い。可愛いけど、色々将来が心配になる。
そんな僕の内心とは異なり、エックスは一人で、マーティに言葉を投げかけていた。
『――――ターボマンってナビと戦ったんだ』
『あ゛ン?』
『――ターボマンは、自分はオペレーターにとってヒーローだって言ってた。そうじゃなくなった自分になんて、存在価値なんてないみたいなことも言ってた。
マーティも、そうなんじゃないかな?』
『何を、言いたいんだい…………ッ』
エックスに襲い掛かってくるドリームビットを、丁度タイミングよくスカルマンのシャレコーベイが遮る。それに合わせてエックスはジャンプして、ドリームビットたちを飛び越える。
あれ、打ち合わせもしてないのにコンビネーション的な動きしてる……? 思わず横のみゆきお姉さんを見ると、口だけ少しにっこりした無表情のままぐっ! とサムズアップしてた。やっぱりちょっとお茶目だこのお姉さんは……。
ともかくエックスは、エックスバスターを下ろしながら聞いた。
『エイリアさんと付き合いが長いんでしょ? だったら、エイリアさんがマーティと似てるってことは、マーティはエイリアさんにとって多分「頼れるお姉さん」みたいなニュアンスで作られたりしたんじゃないかな』
『――――――――』
『だから、そんな自分が彼女に泥を塗ったことに耐えられない、とか? だから表向きに自分が現在も「暴走してる」って、そんな感じのことを――――』
『――――アンタ、ちょっとデリカシー持ちな! っていうかアンタに何がわかるっていうんだいッ』
槍をエックスに向けて構えるマーティ。顔つきがちょっとだけ照れてるようになってるけど、それでも戦意は全然衰えていない。それに対応するみたいに、エイリアさんも少し照れたように、あと僕をやっぱり訝し気に見ていた。
いや、これは完全に見られても意味不明なやつなんで、ちょっとですね……。
そんな状況でも、エックスはあんまりペースを乱されなかった。
乱されなかった代わりに、珍しいものを見た。
『俺にはわからないよ。健康に生まれて健康に育って、健康に人工知能を育んだネットナビのことなんて』
エックスは、ひょっとしなくても怒っていた。
何を考えているかは伝わらないけど、語調に潜むちょっと強い物言いというか、ぶっきらぼうな物言いと言うか。そんな感じのが、ひしひしとエックスマンの苛立ちを僕に伝えて来ていた。
『――――ただ、こっちはさ? 色々けっこう切羽詰まってるし、いっぱいいっぱいなんだ。大人組は頼りになるのかならないのか微妙だし、世界の命運は僕たちの知らないところで小学五年生が頑張ってなんとかしようとしてるし。そんな状況に巻き込まれて、しかも
『……? えっと、アタイ関係ない話していないかい?』
『関係ないけど、関係はある。
ゼロを生かさないといけないっていうのは、多分必要なことだと思う。光博士だって無策でそんなことは言いはしないだろうし。だっていうのに、その主導をしているエイリアさんのナビがなにさ、まるでゲームとかで適当な形でつっかかってくる章ボスみたいじゃないか。しかも結構強いの。
止めてよ。
「エックス、意味がわからないところ多いけどちょっと落ち着こうか。流れ弾でエイリアさんの表情が死んでる……」
大人組は頼りになるのかならないのか、のあたりで、エイリアさんの顔が真っ青だ。僕に何でもするって謝ってた時の顔もそんなだったし、彼女なりに色々思う所は有るんだろう。
ちなみにみゆきお姉さんは我関せず。どっちかと言えば、エックスマンの吐露した内容に少し興味深い、みたいな感じで、思案しながら観察してる。
そんなエックスは、顔を横に向けて、視線だけを背部のウィンドウ、僕のPET画面に向けた。
『でも、ガンくんだって思ってるじゃん』
「いやそれは似たようなことは少し考えてはいるけど口に出したらオシマイ……、ハッ!?」
「……………………………………………………」
「…………会心の一撃、ね」
エイリアさん、ちょっと涙目だった。いえあの、悪気はなかったんで、ちょっと落ち着いてもらえませんでしょうかね、ええ。
いや、確かにエックスが考えてるようなことは思ってはいたけどさ。ゲームの強制的なイベント進行みたいに事件に巻き込まれるはネットバトルは半強制されるわ、思ったほど大人たちがメインを張れる感じじゃないし……。僕、エグゼシリーズ経験あるから多少勘所は残ってるけど、チップパワーしかり「現実の」ナビオペレーティングしかり、そんなにネットバトルとか強くないし……。
おまけに二週間寝込んでしまったというのを踏まえると、ますます色々思う所はあるわけで。
ただ口に出して言うのも、またちょっと違う気はするんだよなぁ。なまじエックスなんてのを名前に持つネットナビ、外見はほぼロックマンなのを手に入れてる以上、何かしら巻き込まれかねないってのは思ってはいたわけだし。
ただ、そのエックスにしても、何かそこそこ秘密は多そうだし…………。あっそうか。振り返って思いついたけど、エックスが怒ってるのって、また僕が昏睡状態になったりしかねないとか、そういうリスクがあるからか。
『だったら逃げたら良いじゃないかい』
『――逃げたら、もしかすると世界がまた終わっちゃったりするかもしれないし』
意味がわからないねぇ、という感じのマーティだけど、このあたりはメタ的な読み? みたいなのが必要だから、他の人に共感を求めるのは無理だと思う。エックスも、そこはそれ以上は言わなかった。
…………みゆきお姉さんがしきりに何度もうなずいてるのはどういう理由からなんですかね。理由がわからないから怖い。本当にこの人、オカルト的なパワーで何を視ているのだろうか。
「…………どちらにせよ。ドクターワイリーが作ったウィルスであっても、光博士を含めて科学省側が修復に賛成してるんだから、何か理由は有ると思うんだけど、マーティはどう考えてるの?」
一応、エックスほどイライラはしていないから、僕からフォローじゃないけど一応聞いておく。
科学省において、そういう決定がなされるっていうと……、ひょっとすると
僕の疑問に、エックスのイライラに引いてたマーティは、はっとして咳払いして、レディースさんみたいなポーズを取り直した。……うん、そう言う仕草はやっぱりオペレーターに似てるな、このマーティ。
『そんなもの関係ないよ。……仮にエックスが言ってることが正しいとしても、それ以上にゼロウィルスは危険だってんだ。アタイ、最期の仕事としちゃ、上々だよ』
『――――ッ、だから、それがイライラするんだよ』
『何さ、男のくせにみみっちぃ』
『――――俺だって設計年齢は小学五年生とかその前後だから、そんなの関係ないもの。そうじゃなくって、マーティはさ。普通に戻れるじゃん。そんな理由色々言わなくったって、戻ろうと思えば戻れるじゃん。戻って歓迎されるじゃん。
だったら戻りなよ。「僕と違って」歓迎されて戻れるんだから』
「エックス……?」
ちょっと待って、本格的にエックスが何を言ってるかわからない。わからないけど、やっぱりエックスがイライラしているのだけは伝わってきて、困惑するしかない。
マーティはそんなエックスを見て、話にならないねぇと頭を左右に振った。
『だったら、最後は決まってるよ――――腕っぷしで勝負さ!』
『……ごめん、ガンくん。協力してくれないかな。
バトルオペレーション・セット――――』
「――――イン、ってだからそれ僕の台詞だから……」
まあ、結構珍しいことになってるし、マーティも口ぶりからしてデリートまではするつもりはなさそうだから。どういう決着になっても何とかなるかなーと思って、とりあえず僕は巾着袋に手を入れて、バトルチップを5枚取り出した。
【作者メモ】
・大物アルエットちゃん:実は将来的にマーティとかシエルよりも高性能になるのを前提に作られているナビなので、この状況でも寝てるのはある意味仕様通り。
・ゼロに対するマーティの懸念:原作ゲームでは本作で言ってるほど、厳密には定義されたりしてませんのであしからず。ただワイリー製となると最終目的はそこに行きつくだろうということで、途中で何かトラブルに気付いて凍結したとしています。
・キレるエックスマン:「そもそも生まれから祝福されて誰からも存在を認められて帰って来いって言われてるくらい恵まれてるんだから、四の五の言わずに普通に帰れよ僕なんて父さんが目を背けてるのに(意訳)」
・二重にメンタルにダメージを追うエイリア:今後の2編とかでもまた曇る(予定)
次回こそマーティ(真)戦