ロックマンエグゼ世界でエックス的なナビを持ってしまった   作:黒兎可

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ボス戦とゼロの扱いにちょっと悩みましたが、あくまで外伝のトランスミッション編ということでこういう処理になります。


第36話「感動の再会だろう?」

 

 

 

 

 

『まさか初陣でお前達を助けることになるとはな。…………世話になった。借りは返す』

 

 そんなCM明けみたいな感じでセリフを繰り返すと、ゼロは口元をマスクオンした。全体のデザインはロックマンゼロっぽいけど、こういうところはエグゼのナビらしい。なんならマスクのデザインもウィルスの時のそれを思わせるアゴみたいな形状をしているから、これはこれで格好良い。

 

 って、いやそうじゃなく。ゼロ、外見上は完全に「エグゼに登場するロックマンゼロ」と言わんばかりのデザインになってしまっている。例えるなら、ウィルスのゼロがXシリーズのゼロをベースとしてるなら、こっちはロックマンゼロシリーズの方に対応しているというべきか……。オーバーホールを担当したのがシエルちゃんだったのが、ある意味決定的だったかもしれない。メタ的な意味で。

 手の甲の濃いグレーな色合いになっているナビマークはロックマンのナビマークの対になってる感じで、ひょっとするとこれワイリー様のマーク? とかうがった見方をしてしまうけど、それはともかく。

 

『ゼットバスター!』

「あっ、エックスバスターの2Pカラー」

 

 左手にゼットセイバーの柄を持つと、変形する右腕。そこにゼットセイバーの柄を挿して、先端がリコイルロッドとかチェーンロッドみたいな棘のある形状に。その状態でエネルギーを収束すると、ゼロはオレンジカラーのバスターを放った。

 威力はやっぱりそこまで高くなさそう。だけど、1発で相手をのけぞらせるくらいは出来ているので、40以上は確実にダメージがありそうだ(ゼロが現れた際にバトルオペレーションが解除されたため、ダメージ量がわからない)。

 とりあえずチャージしてゼロの背後から援護射撃。特に何か言うまでもなく、ゼロはエックスバスターの射程の範囲外へと瞬時に移動して回避し、前方へと攻撃を通してた。あ、ドリームビットに対してまたゼットセイバーしてオーラ剥がしてる……。

 

 そんなゼロの姿を改めてまじまじ見て、リンクゲートを見て、ようやく思い至った。

 

「そうか、リンクゲートは科学省の方にあるってことか。だからゼロがそのまま直接内部にこれたと…………」

 

 てっきりオフィシャルとかそっちの方に繋がってるのかと思ったけど、考えてみればエイリアさんが今科学省にいるわけで。だったらそっちに繋がってると考えた方が自然だったわけだ。

 って、そうだとするとこの場で使っちゃったのって拙いのでは?

 

「エイリアさんこれ、大丈夫だったんです? 言われるまま使っちゃったけど。多分、本当はオフィシャルの人たちが、ドリームウィルスに感染しないように目的地直通ルート作るつもりでしたよね」

『………………本当は駄目ですが、リンクゲートは予備があります。

 それに、ガンサイ君の命には代えられません』

「いや、そうは言いますけど……」

『ガンサイ君こそ、自分の命を軽く見積もりすぎです。そして、エックスマンの影響を甘く見すぎだと思います。

 良いですか? 普通何かしら特別なことなく、フルシンクロでもないのに精神にあれほどダメージを蓄積させるなど、特定分野のサヴァンでも早々ありません。ましてやガンサイ君はその類ではない、普通の男の子です。……普通の男の子なんですよ、ガンサイ君は』

 

 何で二度繰り返されたのかな。念押しされるまでもなくその自覚はあると思うんだけど。

 父さんの職種が研究職の公務員だったりとか色々あるけど、それは置いておいて。

 

『とにかく今は……、ゼロ!』

『嗚呼。エックス、この場のナビは俺が引き受ける。お前はスターマンを倒せ。率いているのは奴だ、奴さえ倒せばコイツらも戦いは出来まい』

 

「ゼロ、でも――」『――大丈夫?』

 

 フッ、と苦笑いするゼロは、僕たちの方へ何かアイテムを投げて寄越した。キューブ上に隔離されたデータ群。これは……、何だろう、本当にわからない。

 

『サイバーワールドのシステムアップデートに関して給電量が間に合わないのを解消する目的で、現在試作しているサブチップです。それはフルエネルギー、使用すればHPが全回復します』

「あっエイリアさん……」

 

 サブチップ、そうかこの段階(たぶん1と2の切り替えの際)での実装なのか。3では普通に使っていたから、バトルごとにHPが全回復する方に違和感を持っていたけど、つまりここからは今まで以上に慎重にバトルしていかないといけなくなるのか……。安心感が薄れまくりだ。

 とりあえずそれをエックスが砕いてインストール。あぁ、確かに60くらいだったHPが300に戻った。

 

『わかるかエックス。こんな数で勝負するような方法でお前を倒そうとしているということは。敵はお前たちのことを酷く恐れているという事だ。

 他ならぬスターマン自身が人間とネットナビの絆を信じているからこそ、ロックマンでもないお前達を単なる路傍の石と捨てることが出来ないでいる』

 

『……いうじゃないか、たかだか元ウィルスのくせに。パパさんが解放した直後は、バグもないくせに獣のようだった君が! まるでネットナビらしいことを言うようになったじゃないか!

 嗚呼、否定はしないさ! 僕はパパさんとシズくん(ヽヽヽヽ)のためのネットナビさ。だからあの二人のためならどんなことでも出来る。だから絶対に負ける訳にはいかないんだ――――』

 

『――――――――――――!?』

「えっここまで来て逃げるの!?」

 

 スターマンは言いながら、エリアの奥のリンクゲートへ。ゼロを一瞥してから、エックスも急いでそっちへ走る。

 と、その先の一本道になってるエリアの直前で、エックスが立ち止まった。

 一見何の変哲もない場所だっていうのに、エックスの表情が苦い。マスクオフして、エックスはPET画面側(今は液晶ディスプレイにしてるけど)のこっちに振り向いた。

 

『――――ガンくん、ここから先はドリームウィルスのパワーが乱れすぎていて、セーブできないよ』

「いやそんな、ゲームじゃないんだからセリフ回しさぁ……」

 

 まるでロックマンエグゼに限らないけど、最終ステージ開始の際みたいなセリフを言ってきた。思わずツッコミをいれると、エックスマンも少しだけ微笑む。

 と、それはそうとしてエイリアさんからもコメント。

 

『………………データ帯が乱れているのは本当のようです。少なくとも、このエリアの先に行けば通話などは難しくなるでしょう』

 

「それは……、結構一大事ですね。エイリアさんと話せないの、厳しいというか寂しいと言うか」 

『――――――――』

 

 エックスがチャットアプリで「今のうちに何かやり残したこととかない?」と聞いてくる。あの状況でスターマンが逃げたってことは、多分この奥にはシステマシエルすら超える何かがあるってことなんだろう。少なくとも、何も考えず素直に戦って勝てるかどうかは怪しいかもしれない。

 こっちも何か対策を考えておくべきかな。……あんまり効果があってもなくても。

 

「エイリアさん、マーティってナビチップはあります? ちょっと打てる手は打っておきたいっていうか」

『えっ? えっと、有りますけどこれは…………』

 

 何故か躊躇うエイリアさんに、「いいさ、構わないよ」と画面外から声が入った。

 PETに映るエイリアさんの映像の左下に、小さなアイコンでシエルちゃん同様のナビマーク。ただ色味がちょっと赤いかな? 声の感じからして、多分マーティだと思う。

 

『エックスとオペレーターだね。この間はちょっと迷惑かけたよ』

 

『――――声音的に、悪いと思ってなさそうだけれどね』

「エックス、思ってても言わない……、あー、エイリアさん落ち込まないで落ち込まないで」

 

 だ、大丈夫ですと言うエイリアさんだけど、やっぱりちょっと目が潤んでいる感じでリアクションに困る。そんなエイリアさんに「嫌われたくないのはわかるから、ちょっと落ち着きな!」と揶揄ってるんだか真面目なことを言ってるんだか、よくわからないテンションで言った。

 

『全く、これだから年頃にしちゃ精神年齢が幼児みたいなエイリアはねぇ……。

 おっと、話がそれたね。アタイのナビチップ、あるにはあるけれど、使いこなすのがちょっとクセがあって難しいんだよ』

 

「癖がある?」

『癖がある?』

 

『うん。シエルのチップを使ったことがあるねぇ。アレに基本は近いけれど、後続にチップを選択してるとそれらを消費して攻撃回数が上昇するんだ。

 システマシエルみたいな逆転一発! みたいなプログラムアドバンスとかは無いと思うから、そこは注意しときな』

 

 それはわかったけど、実際使ったら結構強力なのでは……? いや、案外今の名人フォルダだとチップコードがバラバラだから、そこまでオイシい話にもならないか。そして使用したチップ編成によっては、プログラムアドバンスすら食ってしまう可能性もあると。

 確かにちょっとクセがありそうだ。だけど、問題の本質はそこじゃない気がする。だって、話しててマーティが、何故か突然顔を赤くし始めた。

 

 首をかしげる僕とエックスに「と、ともかく!」とマーティは大慌てで話を進めた。

 

『使うんだったら使いなってことさ。この際アタイもちょっとくらい恥ずかしいのは我慢するさ。

 そもそも出会ってから間もないのに、エイリアが珍しく頼りまくってるくらいだ。アンタたち、相当気を許されてるよ。だから、そのナビとしちゃあアタイだって力を貸すのは吝かじゃないってことだねぇ……(これを機にちょっとエイリアの方で関係が進展できれば良いだろうし)』

 

「えっとー、何か言った?」

『――――――――――?』

 

『マーティ!? ちょっと、貴女変な誤解してますから絶対、何ですその表情ッ!』

『まーま、とりあえず頑張りな。デリートさえされなければ、最悪ゼロがどうにか出来るだろうさ』

 

 そんなにゼロって強いの? と思わずマーティに聞き返してしまう。確かにエックスが手古摺っていたナビ複数体との戦闘を平然とこなしているけど……。

 そのことを聞けば、それはエイリアさんから答えが返ってきた。

 

『元がゼロウィルスベースですので、ゼロからすれば復活したナビたちのことは手に取るようにわかるようです。ですから対処が比較的簡単にできると』

『さらにバトルパターンとしちゃ、アタイやアンタたち含んだ多くのネットナビのバトルオペレーションデータを集合知として持ってる様なものさ。本人にその自覚はないだろうけど、贅沢な生まれのナビだよ本当』

 

 あっ、まだゼロへのイライラは残っているんだ。マーティ、凄い忌々しそうな声をしてる。その後方から「まぁまぁ……」とシエルちゃんの抑えるような声が聞こえてきたりしてるから、実際は僕が思ってるほど軽いイライラ具合ではないのかもしれない。なんならアルエットちゃんの涙声も聞こえてくるような、そうでもないような……。

 

 ともかくメール経由で転送されてきた電子データのバトルチップ「マーティ」を、名人さんフォルダのウッドマン一枚と交換して入れた。威力的にマーティの方は100とバンチョーマンと一緒に見える。とすると連撃1発につき100は流石に法外というかだから、多分後続の攻撃は威力が低くなってるんだろうな……(多分最大でも200とか?)。

 

 後なにかやり残したこと……、やり残したこと…………。

 ゲームじゃないんだからってエックスに言ったけど、ゲームじゃないからこそ「やり残したことはない?」という最終確認の意味が重い。

 

『――――ヘイヘイ、ガンくんビビってる?』

「うん」

 

 僕の即答に、エックスは「そうだよね」とだけ返して来た。言葉は軽かったけど、画面を見ればエックスも緊張しているように見える。

 そりゃそうだ。多分これが、このゼロウィルスに端を発した事件の、僕たちのラストオペレーション。

 ということはつまり、ゲームじゃないけどゲーム的に考えるのなら、この先はスターマンとの戦闘だけで終わらないかもしれない。文字通りラスボス戦に相応しいバトルみたいなのが待っているとか、十分考えられる。

 

 父さんは言っていた。何があってもエックスマンをデリートされたらいけないと。

 

 つまりここが最終分岐点。僕の意志は前へ進めと願っているけど、それでも心のどこかに本能が、こんな状況に放り込みやがってみたいな、そういう恐怖心が漏れ出ている。

 手に汗を握って、動くことが出来ない。

 みゆきお姉さん曰く、どっちにしろこの先もこんなことがいっぱい起こるらしいけど。それはそうとして、今は目の前にある濃厚な「死」の予感に、確かに僕とエックスマンはビビってるんだ。

 

「あの、エイリアさん」

『はい。……何ですか? ガンサイ君』

 

 だから、ちょっとでも希望を持つために、少し理不尽だけれど聞いてしまった。

 

「前に『何でもする』って言ってくれたのって、有効ですか?」

『へ? あ、はい。全然有効ですけど』

「どこまで?」

『……えっ?』

「どこまでならOKです?」

『えっと、あの、ガンサイ君……?』

 

『何だいエイリア、そんなこと言っていたのかい。随分大胆なこと言ったものじゃないかい』

 

 マーティ? とエイリアさんが不思議そうに聞いたけど、多分マーティも気を使ってチャット表示を使ったんだろう、その内容を前にエイリアさんの顔は真っ赤に染まった。

 あー、お肌結構白いから赤らんだ色がにじむにじむ……。ついでに胸も揺れる揺れる。うん、思ったより結構大きいんだよねこの人……。

 

『そそ、その! えっと、決してそういう、え、えええええええええええええ、っちな意図で言ったようなわけではなくってですね! ハイ!』

 

 あー、この感じだと前に言った時、そういう覚悟まではしていなかったってことかな……。マーティがさっき言ってたように、こういう情緒は案外初心なのかもしれない。だからかな、エイリアさんをエイリアお姉さんって呼べないの。みゆきお姉さんは本能的に最初からお姉さん呼びしてた気がするけど、エイリアさんはとてもそういう雰囲気じゃないんだ。

 なんでそんな話を出したのか理由を聞かれたので、そこは素直に答える。

 

「何かこう、プラスに考えられる話が欲しいって言うか! その、意外とビビっちゃって先に進みづらいと言うかですね、うん!」

『そ、そうですか。……そうですね、ガンサイ君は「本当に」命をかけているというのに』 

「……あの、やっぱりエックスってデリートされたりすると、僕って死んじゃったりしますか?」

 

 エイリアさんは僕の質問に、視線を伏せて。

 

『……ガンサイ君が倒れた時に、鐘引博士に聞こうとしたんですが、はぐらかされてしまいました。でもその時のやりとりからして…………、どんなに軽かったとしても植物状態にはなるかと思います』

「うわぉ…………」

 

 エックス知ってて黙ってたね? っていう僕の視線に、エックスマンは何故かニコニコ返してくる。割と初期から匂わせていたし、みたいな感情が読み取れて、本当は気付いていたろう? みたいなことを言われてる気がする。

 

 ま、まぁ、そもそもエックスマンとのこのシンクロ率自体が、僕をこの世界に転生させたあの女の人(人?)の仕業な訳だし、もしかすると僕の持つ原作知識というかを悪用しないように、悪用して調子に乗ったら簡単に封殺できるようにとか、そんな理由とかがあるんじゃないかと邪推したりしてしまう。

 いや、それはまあいい。良くないけど、そこは今は飲み込もう。父さんにだって色々聞かないといけないしね、うん。

 

 ただそんなこと言われるとますます心はマイナスに傾いちゃって、中々辛い。

 それでも一歩踏み込まないといけないのだから、世知辛すぎる世界だよここって。

 

 そんなことを思いながらエックスマンに前進を指示した、丁度そのタイミングで。

 

 

 

『…………その、ちゅーくらいでしたら、やりましょうか? 無事に帰ってこれたら』

 

 

 

 ………………。

 エイリアさんのそんな一言が、ぼそっと聞こえて来て。

 

「よし、頑張ろう! 凄い頑張ろう!」

『結構単純だよね、ガンくん…………』

 

 エックスの呆れた声も気にならず、僕はエックスの視点でリンクゲートに入ってワープした。

 

 

 

   ※   ※   ※

 

 

 

 移動中、エイリアさんのテレビ通話が途絶えた。丁度その後に1階のみゆきお姉さんからメールが届く。

 

「ロックマンがドリームウィルスと交戦開始、か」

『タイミングが嫌に被ってるね、ガンくん』

 

 どちらかというと僕たちに向こうが合わせたというより、向こうに僕たちが合わせている形なんじゃないかな。あっちの方が主人公のわけだし。

 後、そのお知らせの後に「私もほっぺにキスくらいはしても良いわ」とか文末に書かれてるのが怖すぎた。何なのだろう本当にあのみゆきお姉さんはさ……。からかい半分とかなんだとは思うけれど、あの目で見られるとこっちの内心とかまで透けて見られてるみたいな気がして、うん、やっぱりちょっと苦手だ。

 綺麗なお姉さんだし、お茶目だから結構好きなんだけどね。

 

 そんな感じで移動中にウィルスとの接触もなく、奥のエリアへパスコードを使って入った僕たちを待っていたのは。

 

 

 

『どうだいエックス、感動の再会だろう?』

 

「バンチョーマン……?」

『バンチョーマン――?』

 

 

 

 スターマンの目の前、破損した状態のゼロが入っていたようなカプセルの内部で。バンチョーマンの時とは全然違う、緑とか紺色っぽいアーマー姿の、まるでバンチョーマンのアーマーを外した「中の人」みたいな姿をしたナビみたいなものが、苦し気にうめき声をあげていた。

 

 

 

 

 


【作者メモ】

・復活ゼロ:詳細データは後々予定。武装はとある事情から、ゼットセイバーの他にゼットバスター(デザインはエックスバスターの2Pカラー)を所持。

 

・ここから先はセーブができない:お約束。ポイントは、ガンサイではなくエックスの口から言ってるところ。

 

・恥じらうマーティとおぼこいエイリアさん:エイリアさん二十三歳児。マーティが恥ずかしがってる理由は、多分次回あたりチップ使用時にでも。

 

・バンチョーマンの中の人:一体何者なんでしょうかね(すっとぼけ)。デザインはマント無の初期タイチョーをボロボロにした感じ。

 

 

 




次回、ラストオペレーション開始(予定)
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