ロックマンエグゼ世界でエックス的なナビを持ってしまった 作:黒兎可
後で手直し入るかもですが、大筋は変りません
オフィシャルスクエアには、マーティを始めとしたエイリアさんの複数ナビの姿はなかった。
いや、会いにいくなら事前にアポイントをとっておけって話なんだろうけどね? でも平日だし科学省いる可能性の方が高いかな、研究中とかだと悪いかなー、みたいな考えが過る。就活とかじゃないけど、仕事中はあんまり邪魔するような形になるのは良くないと思うんだ。職場にもよるだろうけど、特に過剰に集中して仕事しちゃってそうな人相手には。
ただオフィシャルという前提で考えても、エックスの移動中に最近はネットマフィアとかの犯罪がまた増え始めてて、みたいなニュースがちらほら聞こえてきたりしてたので、どちらにいても忙しいことに変わりないのかもしれない。
とりあえずメールで一報だけ入れておいて、熱斗君たちに挨拶してプラグアウトした。……うん、メイルちゃんへの紹介がかなり雑というか、名前だけで終わってたのは流石に熱斗君だと思うけど、僕も僕で口下手だしエックスはロールちゃん相手にニコニコして終始無言だしで、何だこれって感じだ。そんなこっちの駄目具合をしっかり把握して「よろしくね?」ってしてくれたメイルちゃんやら、ちょっと不満そうだったけどメイルちゃんと同じようにヨロシクしてくれるロールちゃんは、流石というか何と言うか。熱斗君からのこういうやりとりも大分慣れてるような気配がするので、完全に持ちつ持たれつと言うか一方的にサポートしていた。
もう、熱斗君専用メイルちゃんといった具合だ。
ただし尋常じゃないレベルの美少女だから、無自覚に恋愛フラグいっぱい構築してそうだなー、とか、そういう余計なことも思ったり。
「熱斗君、しっかりメイルちゃん見てあげなよ? ウカウカしないこと」
『な、何の話だよー』
『ふぇ!?』
まあ、熱斗君のリアクションもまんざらじゃないように見えたし、あの二人はあの二人で上手く行ってるんだろう。流石に原作主人公とヒロインのコンビと言う訳だ。
で、プラグアウトした僕だけどさて何をしようかといつも通りマウスを操作……しようとして「スカッ」っと失敗する。あー、普段の癖でマウスは右側配置なんだよなぁ……。「左手で」マウスを動かそうと動き出す自分の感覚に、いまいち僕はまだ慣れていなかった。
「本当これ、不気味だよねエックス」
『まあでも、エイリアさんがやってくれたことだし』
「あんまり言うのも可哀想だよね」
『可哀想だし、また徹夜とかしそうだしね』
「……そういえば最近、エックス妙に饒舌だよね。何かあった?」
『何かあったかと言えばあったけど、ガンくんも利き手以外も変わったよね』
「何が?」
『親指』
「ん? …………あっまたやっちゃってる」
うん、まあ、何だろうね? 中の人というか僕的には前世大学生のはずなんだけど、例のエイリアさんがエックスにパッチを組み込んで以来、気が付くと右手の親指を咥えている事がある。こう、爪を噛んでるような感じじゃなくって、甘噛みしてストローを吸うような感じで。音は立たないけど突然生えてきた(!)謎の癖だ。正直いきなりすぎて我が事ながら気持ちが悪いんだけど普段外だとPETを右手に持つようになってるので、その関係もあってあんまり出ない癖ではある。
というかあんまり良くないんだけど、この癖を出させないために歩きスマホとかの感覚で歩きPETを普段からするようにならざるを得なかった。授業中もこれまたけっこう大変なんだけど、使わないときは机のスペースに直接突っ込んでおくとか、右足の下敷きにして座るとか対策が無い訳じゃない。
まあとにかく、そんな感じで僕自身、夏休み突入はけっこうありがたい話ではあったんだ。左利きになってしまったのに慣れる作業もそうだけど、右手の癖だけは是が非でも直さないと。
流石にエイリアさんとかみゆきお姉さんの前で見せたくない。……エイリアさんからは幼児を見るような目で見られそうだし、みゆきお姉さんからはなんとなく「…………吸いたい?」と胸を指さして逆セクハラかまされそう。いや、別に吸いたいわけじゃなんだろうけど、お
『ガンくんは巨乳大好きだからね~。エイリアさんのもガン見だったし。ガンくんだけに』
「こら、エックス! というか、アレはエックスが見てたんじゃないかッ!?」
『眼福だったでしょ? ガンくんだけに、ガン福』
「君もしかしてユーモアセンスみたいなの組み込まれてるでしょエックス。ユーモア
『
「本当に意味わからないよエックス……」
画面の中でニヤニヤしてるエックスマンに、僕はうめき声を上げる他なく。…………エックスが右手を上げたのを見て、口元にまた親指が突っ込まれてるのに気づいた。はあ。ため息もつきたくなる。
ここ最近のチャットとかメッセージアプリ越しじゃなくてもっともっと直に話すようになったエックスは、以前の3倍くらいのレベルで僕を煽り倒してくる。一発一発の破壊力はそこまでじゃなくなってはいるんだけど(多分意図的にデバフかけてるんだろう)、何でそんな無駄に僕をいじって遊ぶのかなこのナビは……。まあ結構ギリギリラインを見極めてはいるから、決してぶちギレるようなものでもないんだけれどさ。
そうこう話してると、ウチのチャイムが鳴る。誰だろう、郵便……じゃなくて宅配?
『友達が来るって発想はないよね、ガンくん』
「…………」
エックスのコメントはともかく。今は母さんもパートに行っていていないので、応対とかも自分でやるしかない。諦めてエックスを筐体からプラグアウトし、一階入り口近くにあるインターホンまで歩いた。
まあ、相手は僕も予想外だったからちょっとコメントに困るんだけど。
『――――やあ! ガンサイくん、元気? 遊びに行かない? アスタランドのトレーダー回しにいこうよ!』
「
こちらの映像は相手側に表示されてはいないだろうけど、ランプがともってカメラが動いているのを確認したんだろう。インターホン越しに、転校生の
思わず「うっ」となる僕に、にこにこして不思議そうなケイくん。事の始まりと言うかついつい数週間前、ちょうどエイリアさんによるパッチをエックスが適用した前後。なんでも、親の仕事の都合でわざわざアメロッパから才葉まで、微妙な時期に転校してきたのが彼だ。
そして、なんとなく僕は彼に苦手意識を持っている。……そこのエックス、大体の人相手に苦手意識持ってるよねとか煽るんじゃない。
そもそも最初に僕らが交わした会話が、一番よくなかった。間違いない。
『鐘引くん? ……えっと、もしかして朝ごはんは哺乳瓶なタイプ?』
『えっ』
この頃、エックスのパッチを適用したてで右の親指を咥える癖が
ただこれ、人付き合いがいまいちうまくいってない僕的にはクリティカル。……後々まで尾を引いてクラスの笑い者にされなかっただけの人望(?)はあったかもしれないけど、当日その日その場所で、僕の右手を指さし、笑われ、それはクラス中に伝播した。
そのせいで彼を見ると、その時の周囲の視線にさらされた被害妄想みたいな追い詰められたダメージを思い出して、ちょっと「うっ」と来てしまうんだ。
まあ他にも理由はあるんだけど、それは一旦おいておいて。
とにかくそんな経緯もあって、僕を笑い者にしてしまったという罪悪感でもあるのか、ケイくんは割と僕といっしょに遊ぼうとしてくれるようになった。
大森君とか、隣のクラスの……、えっと…………、ごめん名前が出てこないんだけど(我ながら失礼)、いつもいつもつっかかってくるガキ大将タイプになりきれない子と、なんだかんだで学校ではそんな面々で顔を合わせることが増えている、そんな最中だった。
だからこの申し出、有難いと言えば有難い。友達が
ただ、だからこそ────────。
「……うん、わかった。行こうか」
『ありがとう! ────本当に』
だからこそ、時々その視線が「思わせぶりなくらいに」鋭くなるのが、引っ掛かるとしか言いようがなかった。
彼に対して苦手とする理由……というか、警戒する理由の一つがそれで。
もう一つ、決定的なものがあった。
戸締りをした僕に並ぶ、その男の子。
少し発色が抑えめの黒というには明るい感じの銀髪(グレー?)に紫のジャージを着た、いたずら小僧っぽい振る舞いに反してちょっと影があるような雰囲気の少年。
表情はともかく……なんとなく君、僕は見覚えがあるんだよなぁ。エグゼ3で。
つまりこの子もいわゆるネームドキャラクターの可能性が高くて……。そこと交友関係が出来てしまった以上、これからの
今更関わらないという選択肢が取る方が、それはそれで後々の被害の予想がつかないしね。
※ ※ ※
「えっと…………、バトルチップ『リフレクメット』データスロットイン」
『そぉい!』
「うおおおお! 踏ん張れバッテン! ダメナビの汚名を返上しろっ!」
『ダメナビ呼んでるのお前じゃねーか、このダメオペレーター!? ぐあああああっ』
まあ、うん、こう、何だろうね……。
クラスメイトの大森明日太くん、彼の両親が経営してるチップショップ「アスタランド」。意外とビビットに原色が強い店内の一角、ネットバトル用の筐体にプラグインして、僕は例の彼と対戦していた。
例の彼? ほらほら、彼だよ彼。隣のクラスの、あの……、新垣君。青っぽいジャージ姿でぼさぼさの髪をしてる、ちょっと日焼けしてる子。ガキ大将になりきれてない感じのあの子。アスタランドまでケイくんと遊びに来て早々に絡まれて、なんだかんだネットバトルって流れになったんだけど、戦績についてはまあお察しな感じだ。
行動不能状態で倒れたナビを見て、うおおおおお! と唸りながら文句を言う新垣君。
いや、倒れた相手のナビには悪いんだけど僕としては自分が使ったチップの方が気になっている。メットールから入手できたこれだけど、メットガードじゃないのか? 何だリフレクメットって。受けたダメージをショックウェーブ形式での反撃じゃなくてショット系の反撃みたいな形で射出するとか、一長一短だけど僕的には上位互換だよこれ。スピードも速いなんてものじゃないし、その割にはデンサンエリアの方のメットールからはメットガードとれたし、何だこれ? ネットワーク地域による収拾チップの違い、みたいな……?
まあそんなメタっぽい話はおいておいて。別に彼個人が特別弱いって訳じゃない。正直、大体の同学年のネットナビ相手だったらごり押しで勝てたりするんだと思う。チップ選びとか動かし方が悪い訳でもないし。
ただ僕みたいなズルっぽいシンクロだったり、熱斗君とかみたいなバトル適性異常者(直喩)とか相手に戦うと、そのごり押しに穴が出てくるというか……。熱斗君の場合は対戦してると何かよくわかんないアドをとられて気が付くとコンテパンにされちゃう印象があるし、僕相手よりも比較には向いてないかもしれないけど。
僕自身も、エックスとの視界共有は相変わらず。「利き手が変わった影響」なんて全くなく、ごくごく自然にエックスも動いてくれるし。バトルチップもデータフォルダでスロットインする分には、キータッチ操作だけでいけるので違和感もあんまりなくて助かっている。
いや、そんな僕らの話はともかくとして。
「なんであんなヘナヘナチャージショット耐えられないんだよダメナビ!」
『そうフォルダも組んでないからだろーがダメオペ! 大体、避けようとするの無理やり止めてるだろ! 止めろよ、のけぞるだろうが!』
「うるせぇ! オレは相手のバトルチップなんて怖くねェ……! 岩野郎みてぇにいちいちこっちのチップにビビっちまう臆病オペレーターとは違うんだよ!」
『そりゃそうだけどオレの判断にも任せろっての!』
「頼りないから仕方ないだろうがバッテン!」
うん、これだ。マ○クかな? とか思っちゃうけど、とにかく新垣君は、こっちのチップを避けるより自ナビの攻撃を優先する傾向にある。それが、バッテンっていうらしい彼のナビといまいち上手くかみ合っていない。ノーマルナビをベースに改造してると思うバッテンは、そんなに耐久性が高いタイプのナビとして作ってる訳じゃないみたいだし。
本人はゴリゴリパワータイプ、それこそガッツマンみたいなのを使いたいようなイメージなんだろうけど、手持ちのバッテンがそれに反してるってことは、本人のカスタム技術の限界もあるんだろうけど、親御さんおさがりなのかな? あのメインフレーム自体は……。
『バトルスタイルで見るとチグハグだよね~』
「本人の立ち回り的に向いてなさそうだよな。好き嫌いなんだけど、躱したりって方向だと」
なので余計に、一般小学生のナビのはずのガッツマンのカスタマイズの特殊性がやっぱり際立つと言うか何というか……。アニメと3含めて考えて、ご両親がそこまでお金持ち~、みたいな話は見たような覚えがないので、ますます。いや、記憶の方はだいぶガバガバなんだけど……。
そんな風に色々考えていると、筐体にプラグインされてるナビと一緒にケイ君が会話に混ざって来た。
「そうだよね、こう、比較的バランス型のエックスとガンサイくんにつっかかる割にはって面もあるけど。ね、
『ウホ? ウッホ』
「いや何言ってるかわかんないよ~」
イェティングマン……、何かちょっと小学生的には言い辛い名前をしてるネットナビだけど、見た目はこう、ゆるキャラのキグルミみたいな感じだ。頭と胴体が簡単な雪だるま、そこから生える手足はデフォルメされたUMAというか幻獣というか猿人というかな、イエティっぽいというか。雪だるまに茶系な猿人の腕と足が生えたような見た目に、胸のナビマークは氷のような形状。
らしいといえばらしい、のかな? それはそうと、ケイくんはケイくんでその見た目をしているナビ相手にイエティごっこをさせるのが好きらしい。学校でも真面目に宿題一覧とかの読み上げをしようとしてたイェティングマンに「そこはウホ! って言わないと」とか無茶振りして、ずっとウホウホ言わせてるし。結局口でウホウホ言わせながらチャットアプリで意思疎通するようにしてるので、見ててややこしいことこの上ない。
変な趣味の子だなあ、というのがケイ君に対する感想だ。
まあ、もちろん口に出しては言わないけど。
『変な趣味の子だなぁ~』
「エックスぅうううううううッ!?」
いやだから、普段の煽り具合からして君からしたら僕の考えてる様なことなんて丸っとオミトオシなのかもしれないけどさあ!? もうちょっと色々慮ろうかなこう人間関係とかそういうのさぁ!?
とはいえ、僕のリアクションとエックスの反応が直接結びつかなかったらしいケイ君は「?」とニコニコしながら不思議そうにして、対してイェティングマンは疲れたように「ウホ……」と一息ついていた。
まあそうやって色々勝手に騒いでいる僕らだけど、大森君はちょっと店番していてこっちには入ってこないで、ちゃんとチップ仕入れとかやってるみたいだし……というかあのもじゃもじゃ頭に眼鏡、どっかで見覚えがあるような、いや、藪蛇だスルーしておこう。とうもかくそういう状況で、新垣君はナビのバッテンだけじゃなくって僕らにもキレた。
びしっと指さして、ずるい! と大声で言ってきた。
「いや、ずるいって言われても……」『ずるいって言われてもねぇ……』
「だって絶対ズルいだろ岩野郎! お前、オレのダメナビより見た目にも性能にも金かけて、そんなの強くて当然だろうが! 試しにダメナビとそっちのダサい名前のやつ交換して戦ったらわかるだろ!」『一々オレをけなす必要ないだろダメオペがァ!』
否定できる要素は少ない。実際、今回はHPメモリについては積んでいるタイプの構成にしているので、初期HPは確かに高めになっている。
だからといってメインフレーム自体僕が作ったわけでも無いし、いわゆるロックマンやエックスみたいなバランス型って
もちろん疑似人格プログラム上で問題がない範囲でって意味だけど。
「訳わかんないこと言ってるんじゃねェ!」
「いや、わかりやすいと思うけど……。素材のベースに応じて上限に限界がある、みたいなのは間違ってる訳じゃないかな?
うーん、でも自意識過剰みたいで言いたくないんだけど、別に嫉妬してる訳でもないでしょ? 僕に」
「嫉妬!? 何意味不明なこと言ってんだ!」
「ずるい、ってこういう場合は相手の置かれてる環境に嫉妬してる時に使う言葉だから、違うって言うのなら言い方変えた方がいいと思う。要は何を目的としてるの?」
「お前ばっか戦いやすいのはおかしいだろ! 何でお前のダッサイ名前のナビと戦うために、俺の戦い方を変えなきゃいけないってんだ!」
『滅茶苦茶言ってるねぇ……』
『世界はお前を中心に回ってねーんだぜコジロー ……』
怒りの感情の発露が滅茶苦茶で、普段はここまでじゃないと思うんだけど…………、コントロールが利かなくなってるのは、子供らしいといえば子供らしいのかな? 飲み下せと言えるほどに非情ではないし、僕もそこまで大人というわけではない。
敵愾心を向けられない場合に限るけどね。
「お前みたいにズルして勝つようなことじゃねーだろ、ちゃんと戦って勝てるってんならズルくはねぇよ、お前と違って!」
『ダメオペ、別にズルしちゃいねーだろコイツ等』
「うるせぇダメナビ」
「うーん言ってることしっちゃかめっちゃかだ……、そう駄々っ子攻撃みたいなことされてもなあ」
「駄々っ子!?」
あっいけないつい本音が……。とはいえ口から出てしまった言葉は取り返しは付かない。
エックスが数週間ぶり? にチャットアプリで「これだから対人経験の薄いぼっちは……」とか煽って来るけど、そっちを気にするより顔を真っ赤にして今にも何かが爆発しそうな新垣君の方が気がかりで――――。
「じゃあ、これから作ればいいんじゃないかな? そのバッテンくんの新しい身体ってやつをさ!」
『ウッホッホ?』
いまにも喧嘩に発展しそうだった僕らの間に、ケイ君がにこにこ笑顔で割って入って来た。
いきなり想定外の内容をぶつけられて、しかも全然空気読んでないような表情なものだから、流石に新垣君も鳩が豆鉄砲喰らったみたいな顔してる。
というか、えっと、それってナビ制作しようってこと?
依頼、っていう話でもないだろうし…………夏休みの自由研究か何かみたいな、そんなノリ? ケイくん。
それにしてはだいぶテーマけっこう重めだと思うんだけど……。