ロックマンエグゼ世界でエックス的なナビを持ってしまった   作:黒兎可

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ちょっと長くなったので今回はおまけ省略…


第48話「ユニーク」

 

 

 

 

「やっぱバトネ(バトルネットワーク)のシステムで読み込めるメモリが足りないし、アッー!? 全く、どうしろってのよ! 負けたの私のせいじゃないもの、何よそのヘンテコ顔はサーカスマン!」

『フルルッフゥー!?』

「作ったの私だって言いたいわけ!? いやそうだけど、それはそうとその変な笑い声止めなさいっ!」

『フルルッフゥー! フルルッフゥー!』

「ちゃんと言語プログラムも疑似人格プログラムに積んでるでしょ、ちゃんとしゃべれっ!」

 

 バトル終了後のお姉さんの言動と、それに振り回される彼女のナビの一幕だ。

 こう、多分その荒れっぷりのせいでナビがコミュニケーションとろうとしないんじゃないかな? こう、何言っても好き勝手に怒りポイントを発見して爆発しそうな気がするし……。

 

 この何かすごいアレな感じのお姉さんとのネットバトル。彼女のナビのサーカスマンとのバトルについては、端的に言うとギリギリ勝った。こう、本当にギリギリ。具体的に言うと、テントみたいなのに変形して相手ナビを覆ってくるような攻撃をしてくるんだけど、これが僕とエックスにとって相性が悪すぎたと言うか。

 それでも勝ちはしたけど、エックスが「久々に死を覚悟したよ……」とチャットを送ってくるくらいの状況だ。接戦というより、色々絶体絶命だった。お姉さんも「デリートはしないし」とかバトル中言ってた割に、絶対エックスデリートしようとしてるだろってところがちょっとちょっと散見されたので、これについては全く信用してない。

 一言二言文句も言いたいところなんだけど、口に出したら「うがー!」って火を吹きそうなんだよな……。今更ながら、エイリアさんもみゆきお姉さんも人間が出来てたっていうことだ。

 

 サーカスマンの外見は、こう、ピエロっぽい恰好をしたサーカスの団長さんみたいな、そんな感じだ。

 その周囲に白手袋っぽい手が四つ浮かんでいて、ちょっとしたスマ〇ラ味を感じる。

 

 そんなお手々が突然消えたと思ったら巨大化してこっちを「ぱちん!」を挟み込んできたり、火の輪からウィルスなのか何なのか動物っぽいのを出してきたり。ここまでの動きでバトルチップを使っている素振りが全くなかったので、拡張性もなく完全に特化型のナビということなのだろうか。

 彼女の飽きっぽそうな性格からすると、ちょっと意外なナビ構成ではあったんだ。あったんだけど、それより何よりさっき言ってたテントだ。

 

『攻撃用バトルチップ「グルームケイジ」、スロットイン!』

 

 多分、スカルマンのアレとかみたいに専用バトルチップなんだろうそれ。突如としててるてる坊主とかみたいに変形したサーカスマンが、四つのお手々につられてエックスの頭上に現れると同時に、周囲にテントの柱が降って来て動きを捕捉。そのままテントに覆われると、内部にさっき召喚されてた獣たちがわんさか出て来て、エックスの死角と言う死角から噛みついてくる。

 何がいやらしいかと言えば、俯瞰視点が全く役に立たないことだ。エックスと共有している一人称視点では死角に入って来るのに、テントで覆われてるせいでエックスが見えないところを全くサポートできない。ダメージフィードバックが生じなかったはずなのに、なんだか全身に悪寒が走ったくらい、その攻撃はものすごく気持ち悪く、またエックスとしたら痛いものだったはずだ。

 

 最終的にはドリームソードしたり、フォルダから抜き忘れてたシエルちゃんのチップで劣化版システマシエルしたりしてギリギリ持った感じだったんだけど、まあそれはともかく。

 

 ただ意外だったのは、バトルが終わった後にそのバトルそのものについては、僕の方にイチャモンつけたりしてこなかったことだ。ま、まあ、このお姉さん自身それくらいの判断力はギリギリ残っていたのかな? あるいはギリギリでの勝利だったから、たまたまとか自分に言い訳が出来そう、みたいな。

 

『後者かな~』

「口に出してもいない思考を読まないでエックス……」

 

 それはそうと、バトルネットワークの仕様云々でのあたりの言い回しが気になった僕だ。新垣君のナビを作り替えよう! という話をつい先日して、現在チームで着手している。だからこそ、自分のナビに対してどうのこうのという彼女の言い回しが気になったんだ。

 で、話を聞いたところ……。

 

「えっ? サーカスマンのその、宙に浮いてる四つの手……、お姉さんが制御してたの!?」

「何よ、悪い!!!?」

 

 どうしてかケンカ腰で迫って来るこのお姉さん、顔は可愛いけどなんとなく苦手だ……。

 

「だってだって、サーカスマンが制御できるお手々って一つもないもの。私、やるしかないじゃない! キーボードだろうと何だろうと!」

『フルルッフゥー、…………』

「何で!?」『何で!?』

「……ちょっとシステム仕込みすぎちゃっただけよ。それ以上もシステム的には存在してるけど、バトルネットワークの仕様で32ギガまでしか読み込めないしー。

 バトルチップのポリゴン処理ってことにして誤魔化そうにも、ブロックチェーン先からの転送速度の関係で結局使い物にならなかったから、直接制御するしかないだけよ」

「専門的な話っぽくて何言ってるかちょっとわかんないよ普通は……。

 でもそれ、積み込んだやつ減らしたらいいってことだよね? 多分重いのって、あのテントみたいなやつだよね。滅茶苦茶シェイプの動作が処理落ちしてたし」

「何よ、人のナビデザインに文句でもあるわけ!? たかるわよ!」

「たかるって……、何でそうカッカしてるのさお姉さん? えっと……」

「チロルよ。中州坂(なかすざか)チロル! チロルさまとお呼びなさい!」

 

 何て呼んだら良いか迷ってたら、お姉さんの方が察して自分から名乗ってくれた。……うーん? こういうところ、ちゃんと子供が何言おうとしてるか察して1秒もかからず返答してくれるあたりは、流石に教育学部ってところなのかな。

 ただ、チロルさま呼びは意味不明だ。ナンセンス。

 

「お姉さん一体何を目指してるのさ……。キャラがよくわかんないよ…………」

「目指してるも何もないかしら? うーん。

 ま、子供は嫌いじゃないし? それだけ」

 

 そして、これだけ荒っぽい反応をしてきてたからこその、彼女のその発言は意外すぎて思わず二度見しちゃったんだけど。

 

「──────何たって、このチロルさまの偉大さをわからせるのとか、絶対今後のニッポンに必要じゃない! グレイトフル!」

 

「チロル()()()は先生なっちゃいけないタイプの大人だよね」

「ちゃん言うな!? 年上! 年上だーかーらー!!?」

 

 ここまでの一連のやり取りの結果、僕の中で彼女の評価と呼び方が決まった。

 チロル、ちゃん。ちゃんだ。あくまで年下の女の子という、そんなイメージ。

 僕の中の人(?)的な年齢でも年下だし、エイリアさんみたいな自分の立場で必死に頑張ってる感じも、みゆきお姉さんみたいに()()()雰囲気も振る舞いも無い、ただただ単純に小娘っぽい(?)振る舞い全力全開。

 そんなこの()を、こう、年上として扱いたくない……。

 

『小物っぽいよね~』

『フルルッフゥー!? それ以上いけないっ』

 

 あっ。

 

「上等じゃない、あんた達……!」

 

 一気に怒りの炎が燃え盛ったチロルちゃん。そのまま立ち上がってぎゃーぎゃー周囲の迷惑顧みずに色々言おうというモーションに入りかけた、ちょうどそんな時だった。

 ────少し耳を塞いで、と。

 誰かの声が聞こえたと同時に、僕は無意識に耳を塞いでいた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、僕たちは一緒に耳を塞いだんだ。

 

 そして直後。こちらに怒鳴っているチロルちゃんのPETに着信が一つ。マナーモードじゃない着信は若干音がくぐもっていて…………、って、あれ? 何、このアイドルソング? すっごいきゃぴきゃぴしてて、十年くらい前っぽい感じの曲調というか媚び媚びな感じなんだけど、その声が。

 ……ひょっとしてチロルちゃん、これ自前の録音した音源? っていうか、耳塞いでこれくらいしっかり聞こえるってこれ、通常でも大音量────。

 

「────────あああああ!? 聴かないで聴かないで聴かないでというか聴いてんじゃない!! えっ何で、マナーモードしてたじゃない? しかもこれ着うた設定してないから!? 何で!!? 止めてっ! 止めなさいサーカスマン!」

『フルルッフゥー!?』

「何言ってるかわかんないわよ!!?」

 

 コミュニケーション拒否されてるのは自業自得じゃないかなあ……。

 というより声すっごい可愛いというか、ロリロリしいというか、ポップポップというか……。幼いころの声とかじゃなくって、さっきから聞いてる声の感じからしてこっちの可愛い感じの声の方が地声っぽいなチロルちゃん。で、反応的に本人は幼い声はコンプレックスがありそうだと。

 気にするほどでもないのにとか、まあ指摘したら数百倍はキレ返されそうだから僕は何も言わないでおく。エックスすら煽り一つなく菩薩のような微笑み(無我の境地)に達してるので、チロルちゃんの声がどれくらいキンキンしてたかはお察しレベルだ。

 

 つまりはアレだ。

 キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン! って感じだった。

 

 ……何か違う? まあ、とりあえず物凄く煩いってことで。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 その後の話としては。チロルちゃんは「覚えてなさいよ! この貸しは高くつくから!」とか子供向けアニメの憎めない悪役じみた台詞を吐き捨てて、喫茶店を走って出て行った。ちょっと涙目だったような気もするけど、見なかったことにしてあげるのが僕の魂と言うか、中の人というかの実年齢相応に、大人らしい振る舞いだと思う。

 ちなみに、さりげなく立ち去り際に1万ゼニー紙幣をテーブルに叩きつけて「つりはいらないから!」とか叫んでたので、チロルちゃんもああいう振る舞いとはいえ多少は大人ということなのかもしれない。

 まあそんなことは置いておいて…………、目下の問題は。

 

 あの後、エンドシティ周辺を根城にしてるっぽい(?)チロルちゃんに遭遇しないために、才葉シティまで帰って来た僕を、駅を出てちょっとのところで出迎えた少女だった。

 見覚えのある少女。物静かそうな雰囲気の女の子。容姿はなんとなくハーフっぽい感じで、年は僕と同じくらいか少し下。髪の両サイドにちょうちょのような、ちょっと色合いがアヴァンギャルドな大きい髪留め。良い所のお嬢さん、みたいな恰好をした彼女は、駅を出てバス停手前。セントラルシティの公園からちょっと回ったあたりに、彼女は立っていた。

 

 上空に何か浮かんでる謎施設が建設中っぽいという中々シュールな背景に、ひっそりと立つ美少女……、うーん、何だろう。絵になるんだけど、それはそうとして空中に島というか町と言うか、多分あのままさらに上空にあるスカイタウンに持っていく施設の仮組みでもしてるんだろうけど、どう考えても前世的にあり得ざる光景過ぎてちょっと頭が痛い。

 目の前の美少女で中和しきれないくらいに、違和感が凄かった。

 

 だからむしろいっそ落ち着けたのかもしれない……、美少女と言ってもメイルちゃんよりは普通だし(好みの問題もあるかな?)。

 

「確か……、アイリス?」

「…………現実(こっち)で顔合わせは初めまして、です。鐘引ガンサイくん」

「アッこれはどうもご丁寧に」

 

 ぺこり、と頭を下げて来る彼女、アイリス。あれはそう、確か前、学校がゼロウィルスに侵されたナビの襲撃に遭った時、困っていた時にどこに行ったらよいか通信してくれた女の子……。アレもよく考えてみると、何でアドレスもってないのに通話できたのかとか色々謎な所は有るんだけど、あれ以来全く接触がなかったこともあって放置してたんだった、そういえば。

 アイリス……、何かこう、前世のロックマン系の名前で聞き覚えはあるし、そんなキャラの見覚えもある気がするんだけど、正直全く引っ掛からないのでゼロシリーズには出て来てないのは間違いない。ネームドなのは多分間違いないんだけど、アニメでこの子を見たことがあるかと言っても、それはそれで記憶があいまいだし……。

 記憶が歯抜けってわけじゃない。確かあの頃のアニメって宇宙篇? が終わってから、異世界篇みたいなのが始まりそうな感じで、面白そうだったけどちょっとだけ見て、僕の肌には合わなかったんだ。だからそもそも視聴が適当だったとか、まあそんな話。

 

 そして、僕としてはその声はちょっとつい最近、というかさっき聞いたような、そんな声だったというか…………。あれ?

 

「ひょっとしてさっき、僕、助けてくれた? えっと、ちょっと意味わかんないけど」

「…………()()()()が、あなたが絡まれてるのを見かけたから、ちょっとだけ。褒められたことじゃないけど、パソコンの電脳からPETに入って、あのサーカスマンといったかしら? ナビとちょっと相談して、ね?」

「グルだったのか……」

 

 無表情系というか、あんまり感情が表に出ない女の子。だけどそれを言う時だけ、少し口角が上がっていた。いたずら成功! というような喜び方ではないけど、あのチロルちゃん妨害工作(?)には少しくらい茶目っ気があったらしい。

 いや、それは良いとしてどうして……? 別に友達って訳でもないし、面識があったわけでも無いし。というより彼女、何年何組なんだろう……?

 口には出さなかったんだけど疑問が顔に出てたのか、アイリスは少し思案するように上を見上げてから続けた。

 

「お礼。……学校の皆を、助けてくれたから」

「学校……? あっゼロウィルスの時の? うーんでもなあ」

『ガンくんも生徒の一人だし、あのまま進行していくってのもね~』

「普通に誰か死にかねなかったしね」

『…………』

「それでも、率先して動いて解決してくれたのはガンサイくん。オフィシャルのナビが到着するよりも早く動いたから、学校には悲しみが溢れなかった。だから、それは誇って良いと思う。

 ありがとう」

「…………あー、ど、ど、ドーモ」

「?」

 

 不思議そうにしてるアイリスだけど、ちょっと顔を合わせづらい。女の子に褒められて照れてるって訳じゃない。好みのタイプには幼過ぎるし(※メイルちゃんは特例)、こう……、何だろう?

 

『そもそも褒められ慣れてないからね~、ガンくん。ぼっちキングはそも────』

「エックス、シャラップ」

 

 ぺし、とPETにチョップ一発。褒められ慣れてないってのは確かにあるかもしれないが、初対面(?)の女の子相手にぼっち煽りは止めろってのっ!

 そんな僕らの動きにクスクスと口元を押さえてアイリス……って、笑ってる仕草なのに目はぱっちりしててて全然笑ってないのね。何だろう、表情の作り方がめちゃくちゃ下手?

 

「助かったなら、何より。それじゃあ…………」

「えっ? それだけ言いに来たの?」

「…………うん、そう」

「結構暇なのかな君、夏休みだって言うのに健全な小学生が……?」

 

 変わった子だな~と思った僕に「ガンくんも小学生にしてはだいぶ変わってるよ」とエックスからツッコミが。……ま、まあ、中の人的な事情でそれは否定できないので、僕はそれに苦笑いを浮かべるしかなかった。

 一方のアイリスは「変わってる?」と不思議そうに首を傾げた。いや、不思議そうと言ってもあんまり表情変わってないからリアクションからの推測なんだけどね。

 

「どの辺が変わってる……? ヘン? というより、気持ち悪い?」

「へ? あー、いや、単に僕の中にある小学生の子供ってイメージの話だから、必ずしもアイリスに引っ掛かからないからといって、文句とかある訳じゃないよ。うん、そんな程度の軽い話」

 

 ひょっとしたら何か地雷を踏んでしまっただろうか。多少なりとも表情変化がある彼女だけど、いまいちその顔から何を言いたいか想像できない……。まあそんなに親しい相手って訳じゃないから、完全無表情だと何を考えてるか読み取れないのはフツーだと思う。フツー。

 ただそのまま放置するのも何か違うかなーと、中身年上のお兄さん的に思う所があるというか、なんとなーくナナ母さんがトーマ父さんに切れてヒステリーしそうな前兆みたいなオーラを感じたと言うか。まあ、あれもそんなに毎日あるわけじゃないし、母さんってば父さん大好きだから仕事忙しくて中々二人でゆっくりできないのにストレスあるんだろう。うん。いや、そんな話はどうでも良くて。

 

 つまりご機嫌取りの必要があるって訳だ。僕的には。

 なので特に他意はなく……、本当に他意はないのでエックスはチャットで「エイリアさん……」とかボソッと呟かない。別にあっちもこっちも何もないったらないのだ。いいね? そう、特に他意はなく、アイリスに「コンビニでアイスでも奢るよ」と提案。せっかく会ったしお近づきのしるしに、みたいなことを適当に言うと、不思議そうな顔をしながら僕の後についてくる彼女。

 ……いや、何だろうその反応? その、まるでこう、宇宙人が初めて地球人の食事というものに触れるような微妙なリアクションっていったらいいのかな? 本当に不思議そうというか、雰囲気ぽわんぽわんしてるなあ。

 

 そんな感じで彼女が選んだのは、植物油性のよくあるオイリーなソフトクリーム型のアイス。見た目の割には意外と値段が張ってるけど、アイリス的には「大きい……?」とか色々と自分のPETと相談し合っていた。エックスみたいにチャットアプリ越しにやり取りしているのか音声は聞こえなかったけど、最終的に「食べれる()()、試してみる」と意を決した? 感じで僕に差し出して来た。

 僕は僕でゼリー食品みたいなパッケージした溶かして食べるタイプのアイスを買って、一緒に店を出る。……別にあえてお揃いにしなかったとかじゃなくて、食べやすさ優先ってだけだから。本当だから、本当に他意はないから、フリじゃないから……。

 

『そうやってオドオドしてるからぼっちなんだよガンくんはさ~』

「関係ないよねエックスさあ。煽り段々テキトーになってない?」

『正直、ガンくんいじってるくらいしかやることなくて暇になって来てるってのはある』

「僕煽るくらいならエックスも何かアイデア出してよ、新垣君のバッテンのさあ……」

『何かって言ってもねぇ。巨大化プログラム(ヒュージスケーラー)かな? あのイメージだと搭載しないといけないプログラム。でも多分、新垣君が目標とするような要件を満たそうとすると、バトルネットワークとバトルオペレーションのメモリ的にアウトじゃないかな~、ってくらいかな?

 巨大化させられても、その分の制御系とかを大幅にカットしないと物理演算の計算用に確保するメモリが足りなくなると言うか』

 

 意外と真面目にっていうか、的を射たことを言って来るエックス。まあエックスってネットナビな訳だから当然そっちの方が色々詳しくても不思議じゃないのかもしれないけど(モデリングしたりする時にエックス経由でネットサーフィンして調べものしてるので追加学習されてると思ってる)、実際問題そういう壁がありそうではあった。

 そもそもあんまりナビを大型化しすぎると、バトルネットワークの道を歩くのも一苦労になるし……。バトルネットワークって単なるポリゴンと当たり判定を乗っけてるってだけじゃなくて、いわゆる物理演算による重力が働いているから、ハヴォ〇ク神が祟り(ゲ〇ダン)しないように各々のナビごとに調整用のプログラムが働いている。そしてヒュージスケーラー、巨大化プログラムといっても単に同一のポリゴンを大型化するというものではなく、物理演算をするために相応に巨大化時とそれに合わせて解像度やポリゴン数も調整しないといけないし、大きな巨体に働く物理演算とそこから導き出されるダメージ計算とを合わせて……みたいな制御系を通常のナビシステムとパラレルに非同期で回し連携させて荒ぶらない様にしないといけなそうだし、そうなるといっそPETに外付け演算装置でもエクステンションチップか何か経由でスロットインしたりする必要が出てきそうだけど、そうするとそれはそれでバトルチップの大型化みたいな()()()は難しくなるし……。

 

『あっ、熱斗君』

「そうか、チロルちゃんみたいな人力操作って実際そんな簡単じゃないし、あの性格言動で意外と頭がちゃんと良いんだなあチロルちゃん…………って、ん?

 あっ本当だ」

 

 コンビニを出てすぐ手前、家電量販店のテレビに映る映像。熱斗君にインタビューするのはケロさん……? うーん、あんまりテレビ詳しい訳じゃないけど、朝の情報番組で最近はよく目にするな。カエルっぽい被り物も相変わらずなキャスターというかアナウンサーのお姉さん。

 そして熱斗君の横の方に見切れてたまに画面に入ってくるメイルちゃんの美少女っぷりよ。緊張してるのかハニワみたいな表情してるデカオくんとか、ピカピカしたオデコしか映ってないやいとちゃんと違ってカメラ映りだろうと何だろうと尋常じゃない美少女っぷりを発揮してるのは流石と言うべきか何と言うべきか……。

 

「知り合い? あの、額当ての子」

「まあね。何と言うかまた変なことに巻き込まれて……、美味しい? それ」

「ユニーク」

「その感想がユニークだね……」

 

 アイスをぺろぺろ舌先でおっかなびっくり舐めているアイリスはともかく。テレビの字幕を読むと「ダム爆破テロ阻止」だとか「お手柄少年」だとか色々とセンセーショナルにしようという感じの文字が躍ってる。ワイドショーにぱっと速報って出てきてるし、これって今日の出来事だよな……。

 

『でも……、みんなヒーローって言ってくるけど、本当のヒーローは炎山なんです。オフィシャルネットバトラーの。最後の最後で阻止したのはアイツですし。今、犯人、ネット警察に連行されていくのに付き添っていって…………』

『んー、でも? だから今この場にはその子はいなし、犯人のナビを倒したのは君なんだよね。

 なら、それはそれで良いじゃない! だってそれだって凄い事なんだから。途中途中、色々頑張ったんでしょ? だから胸を張って! ほら!』

 

 どこか釈然としてなさそうな熱斗君を、はげますようにニコニコ言ってるケロさん。なんとなく微笑ましいという気持ちになりながらも、そうか炎山君ちゃんと仕事してるんだという感想が湧いてくると同時に。

 

『今回の事件も、近年WWW(ワールドスリー)に並んで世界的に知られてきたネットマフィア「ゴスペル」の関与が一部で噂されています。民間からのテロ、潜む凶悪な犯罪に対して、果たして我が国の警察だけで対抗できるのでしょうか?

 市民ネットバトラー制度の普及もまた、私たちの暮らしの安全のためオフィシャルが打ち出した対抗策の一つ。我々DNNは、これからも現実と電脳の最先端の取材を継続していきます。

 現場から「緑川ケロ」がお伝えいたしました!』

 

「ゴスペルねぇ……」

 

 聞いた覚えのある名前がちらりと出て来て、いよいよ色々な事柄が動き始めてるんだなあと他人事のように思った僕。

 

 この時の僕はまだ……、今回は流石にデンサンシティ方面に行かなければ、巻き込まれないで済むだろうとタカをくくっているのだった。

 

 

 

 ……何ならすぐ隣で、アイリスがぼそぼそと手持ちのPETで会話してる内容や、そのナビの姿すら全く気にしていなかったくらいに。

 

 

 

「…………()()()()食べられるらしいって知ってたけど、こっちでの味って、こういうものなのね。

 ? どうしたの?」

『いや……、これは嫉妬、というのだろうか。俺は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()から、つくづく惜しい。だが後ろ暗い訳ではないから……羨ましい、という感情なんだろうな』

「そうね。本当、残念に思うわ? ──────()()

 

 

 

 

 


※ガンサイは気付いてませんが、時々右手の親指しゃぶってるのでアイリスから不思議そうな目で見つめられてます

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